ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
神様への置き手紙を書いて
運が良いのか悪いのか分からないけど、対応する職員がエイナさんだった。至急
けど、そこをフィンさんが出た事で状況が一変する。「例の『手紙』を、そちらの上層部は読んでくれたかな?」と言った瞬間、エイナさんの表情が凍り付いた。
あの人があんな表情をするとなると、フィンさんが言ってた『魔法の手紙』に書かれてる内容は、ギルド側にとって相当不味い案件だったんだろう。それも表沙汰にしたくない程の。
フィンさんはエイナさんの表情を察して、すぐに僕の外出許可を求めようとした。【ロキ・ファミリア】はともかく、部外者である【ヘスティア・ファミリア】の僕だと話は別ですとエイナさんが反論するも――
「彼は今回の件に、どうしても必要不可欠なんだ。これは寧ろギルド側の為でもある。それとも『手紙』に書かれている内容が公になっても、ギルドは平気な顔をしていられるかな?」
まるで痛い所を突くようなフィンさんからの指摘に撃沈する事となった。
思わず同情したくなりそうだが、僕は敢えて何も言わない。ここで下手に口を出してしまえば、色々と突っ込まれてしまいそうなので。
エイナさんがギルド長に話してくると奥へ行った数分後、あっと言う間に僕の外出許可が下りる事となった。
中立を主張しているギルドでも、弱みを握られたら従わざるを得ないんだと改めて思った。まぁそれだけ後ろめたい事をしていたと言う証拠でもあるんだけど。真面目に働いている職員のエイナさん達は別としてね。
しかしまぁ、【ロキ・ファミリア】の手腕には恐れ入る。そして自らの主張を通す為に用意周到な手筈を整え、相手が強く出れない情報を入手して叩きつける大胆さも含めて。
ちょっと勉強になったなぁって思ってると――
「ベル君は絶対に真似しちゃダメだからね!」
僕の心を読んだのか、エイナさんが真剣な顔になって思いっきりダメ出しをしてきた。
ギルドからの外出許可を取った後、今度はオラリオ都市南西部の市壁上へと案内された。
そこには準備を終えているのか、【ロキ・ファミリア】のメンバーが勢揃いしていた。と言っても、殆どが男性団員ばかりで、女性団員は
向こうは僕とフィンさんに気付いた途端、一斉に驚愕の表情となる。主に僕を見ながら。
「おい待てフィン! 何でソイツが此処にいやがるんだ!?」
皆の代表としてベートさんが問い詰めた。ガレスさんは前以て知っていたのか分からないけど、フィンさんを見て嘆息している様子だ。
こうなる事を予想していたように、フィンさんは団員達に僕が急遽参加となった事情を説明する。今回は自分の独断であり、全ての責任は自分が持つと。
相手が自分達【ロキ・ファミリア】の団長だからか、特に異を唱えることをしない様子だ。ベートさんだけを除いて。
「ざけんな! 遠征はともかく、こんな小競り合いなんかで
「
「死んでも御免だ!」
ティオナさんを引き留めるのを凄く嫌がるベートさんが速攻で拒否すると同時に、僕の参加に文句を言わなくなった。
結果、僕の参加を【ロキ・ファミリア】が認める事となった。ついでに、僕がギルドに外出許可を出した際は建前上として、『サポーター並びに
前回の遠征の時と同様、再びラウルさんと行動する事となった。それを聞いたラウルさんは少しばかり嬉しそうな表情だ。
「ラウルさん、また宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しくっす。この前の遠征は本当に助かった上に、色々と感謝してるっす」
準備の最終段階に移っている際、僕とラウルさんは再会の挨拶をしていた。と言っても、ほんの数日しか経ってないけど。
感謝とは一体何の事かと聞いてみると、こっそりと教えてくれるみたいで声を潜めながら彼は教えてくれた。
「実は自分、ランクアップしてないんだけど、いつでも『Lv.5』になれるんすよね」
「え!?」
ラウルさんのランクアップに思わず驚いた。
遠征の後処理として行うギルド報告の時には彼の事について一切触れていなかった。正式にランクアップしていたら報告しなければならないが、ラウルさんはそれをしてないから報告をしなかったんだろう。
けど、冒険者はランクアップ出来るなら即座にやろうとする筈だ。何かやらない理由でもあるのかな?
「あのぅ、どうして『Lv.5』にならないんですか?」
「それはまぁ……色々と事情があるって事で勘弁して欲しいっす」
疑問を抱いた僕が聞いても、流石にそこまで詳しく教えられないようだ。
やっぱり内部の事まで訊くのは無理か。まぁそれは当然だろう。
一先ず「おめでとうございます」と祝福の言葉を送ると、ラウルさんは照れた様子だった。
すると、彼は意を決したように何か頼もうと僕に言ってくる。
「あの、ベル君。自分は今度ダンジョン探索するんすけど、もし良かったらベル君も一緒に――」
「ちょっとラウル、なに抜け駆けしようとしてるのかしら?」
「げっ、アキ……!」
ラウルさんが言ってる最中、耳を立てながらこっちに来たアキさんが睨んでいた。
僕としては嬉しいお誘いだったけど、結局ダンジョンのお誘いは叶わず、何故か怒ってるアキさんに耳を引っ張られてるラウルさんは連れて行かれてしまう。
そんな中、フィンさん達がこの場にいないアイズさんやリヴェリアさん達の武器について話していた。
どうやら
アイズさんの剣はベートさんが、リヴェリアさんの杖はフィンさんが、ティオナさんとティオネさんの武器がラウルさんが運ぶ事になる。特にティオナさんの武器は大重量なので、ラウルさんは完全に貧乏くじだ。
「あの、ラウルさん。ティオナさんの武器は僕が持ちましょうか? 知ってると思いますが、僕には収納スキルがありますから」
「うう……本当なら頼みたいんすけど、ベル君は他所の【ファミリア】だから無理っす……!」
言われてみれば、確かに。もしも僕が【ロキ・ファミリア】に所属していたら、ラウルさんは即行で頼むだろう。無理だと分かった僕は引き下がる事にする。
因みに今回はリヴェリアさんに
そして【ロキ・ファミリア】の準備が完全に終わると、団長のフィンさんが振り向いた。
「さて、みんな。これからお騒がせな姉妹を迎えにいく。念の為に確認するがベル、準備はいいかい?」
「いつでも行けます」
他所の【ファミリア】である問うので、僕はコクリと頷く。
「なら結構。では総員、行くぞ!」
何の躊躇もなく駆け出すフィンさんに、僕や【ロキ・ファミリア】の団員達が一斉に巨大市壁を飛び降りる。
壁を蹴って問題無く着地を決める僕達が目指す先は、現在光が消えている
【ロキ・ファミリア】+【ヘスティア・ファミリア】の共同
~おまけ~
ベルが【ロキ・ファミリア】と共に
「門番君、今すぐロキを連れてくるんだ! もしくはそちらの団長君でもいい!」
「ですから、どちらも外出していると先程から言ってるでしょう!」
現在、『黄昏の館』の門前で一柱の女神が騒いでいた。その女神はヘスティアで、目の前にいる門番にロキを出せと何度も言っていた。
しかし、残念な事にロキとフィンは
因みに門番はヘスティアが何故此処へ来て、主神と団長に会いたがっている理由は分からない。フィンがベルに
「むむむ……嘘じゃないのは分かるけど、どうしてどっちもいないんだ!?」
「申し訳ありませんが、他所の主神である貴女様には一切お答え出来ません」
「そっちがベル君に
「……え?」
ヘスティアの叫びを聞いた門番は疑問を抱く。
どういう事かを聞こうとするも――
「何だい、その反応は? もしかして
「うぐっ!」
突如、女神の台詞が門番の心に深く突き刺さった。
補足しておくと、彼は以前にベルを追い出した門番の一人だ。逸材であった筈のベルを独断で門前払いした為、首脳陣(特にリヴェリア)からの評価がガタ落ちとなっていた。
門前払いした事をリヴェリアから酷く咎められた上に謹慎処分を下され、彼は深く反省をした事で仕事を再開している。真面目にやっている事で今は何とか許されている……筈だった。
先日の遠征から戻って来た際、多くの女性団員達から軽蔑の眼差しを送られた。何故と疑問を抱いた彼は一人の男性団員に聞いてみると、ベルが女性冒険者の悩みを解消する魔法を使えると知って、今度は彼女達から恨まれる要因を作ってしまったと再び後悔する事となった。
更に肩身が狭くなってしまった事により、門番はこれまで以上に自粛している。別の【ファミリア】に
ヘスティアから
その直後――
「う、うぉぉぉぉおおおおおおおお!」
「!? と、突然どうしたんだい!?」
ついに門番は号泣してしまった。
いきなりの事に、さっきまで詰問していたヘスティアは戸惑いの表情だ。
「俺は、俺は……! どうしてあんな事をしちまったんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「いや、だから何で泣いているんだい!?」
「ベル・クラネルを門前払いをした後、副団長に怒られ、更には同僚達から蔑まされて、俺は、俺はぁぁぁぁぁ!!」
「……あ、ああ~……何となく分かってきたよ」
ヘスティアは泣いてる門番の話を聞いて察した。
以前に彼女はベルから【ロキ・ファミリア】に門前払いされた話を聞いた。その門番は
自身の眷族がとんでもなく強いと分かった事で、門前払いした門番は肩身の狭い日々を送っているだろうなとヘスティアは予想していた。
それが的中したように、目の前にいる彼が号泣しているから、改めてベルの凄さも分かったと認識する。
「え、えっと、門番君。ボクは君の主神じゃないけど、愚痴くらいなら聞いてあげるよ?」
ヘスティアは両膝をついて彼の肩にポンと手を置いた後、親身な気持ちで相談相手になろうとしていた。
こう言ってるが、今の彼女はとても複雑な気持ちになっている。もし門前払いしてくれなければ、自分はベルと出会うことなく今も眷族募集している日々を送っていた。だから彼には非常に感謝している。けれど、号泣しているのを見た途端、ヘスティアは非常に申し訳なく思い始める。
取り敢えずは聞くだけ聞いてあげようと、ヘスティアは別の門番が来るまで、彼の愚痴に口を挟む事無く傾聴するのであった。
今回のおまけは【ロキ・ファミリア】門番の話メインでした。
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