ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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いつもより長めです。

それではどうぞ。


【ヘスティア・ファミリア】の休日⑥

 全速力で港街(メレン)へ向かった僕達は、大して時間を要する事無く早々に到着する。

 

 久しぶりに訪れた事で、以前世話になったニョルズ様の事を思い出すも、それは一旦後回しにした。この件が片付いたら、もう一度会おうと決めて。

 

 先頭を行く【ロキ・ファミリア】は、見張り役と思われる女性――アマゾネス達を一瞬で蹴散らし、あっと言う間に港街(メレン)奥の貿易港区画へ辿り着く。

 

「フィン、来てくれ……って、ベル! 何故お前がいるのだ!?」

 

「すまない、リヴェリア。彼については後で説明する。それより状況は?」

 

 他のアマゾネス達と戦闘を繰り広げる【ロキ・ファミリア】の男性団員達とは別に、僕はリヴェリアさんと合流した。

 

 僕も一緒にいる事で当然驚いて問い詰めるも、一緒にいるフィンさんが後回しにして欲しいと言いながら、現在の状況を聞き出そうとする。

 

 どうやら現在、行方不明となっているティオナさんとティオネさんは分断されているようだ。ティオネさんは大型船に乗っており、ティオナさんは街外れの西にある(かい)(しょく)(どう)へと向かってるようだ。

 

 (かい)(しょく)(どう)には憶えがあった。以前メレンで滞在していた時に偶然見つけた。その時は危険だから入らないようにと、僕と一緒に探検しようとした神様がニョルズ様に注意されたが。

 

 リヴェリアさんから一通りの話を聞き終えたフィンさんは、ガレスさんに指示を出そうとする。

 

「ガレス、ベルとラウルを連れて街の外れに行ってくれ! 西の方角だ! ティオナとロキが向かったらしい、ベートは?」

 

「あやつなら、もうとっくに港に突っ込んでしまったぞ!」

 

「いや、いい! あっちはベートに任す!」

 

「フィンさん達はどうするんですか?」

 

 二人の会話に僕が割って入って問うと、フィンさんはリヴェリアさんに彼女専用の長杖(ロッド)を渡していた。

 

「僕等はこれから船の方へ向かう。君はティオナを頼むよ」

 

「分かりました。では僕は――」

 

「ま、待ってくれないか、ベル」

 

 僕がガレスさん達と一緒に西へ向かおうとするも、リヴェリアさんが急に待ったをかけた。

 

「? どうしました、リヴェリアさん?」

 

「あ~、その……今は非常事態だから、出来ればお前が持っているあの杖(・・・)を貸してはもらえないだろうか?」

 

「いやいや、もう杖が直ってるんですから必要無いかと思いますが」

 

「ぐっ……!」

 

 僕が当たり前の事を言うも、リヴェリアさんは痛い所を突かれたような表情となった。

 

 多分だけど、ゼイネシスクラッチに認められたから再び使いたい衝動に駆られているんだろう。その気持ちは僕も分からなくもない。

 

 しかし、そんなホイホイと貸してしまえば、リヴェリアさんが持っている長杖(ロッド)には申し訳がたたない。悪いけど、ここは諦めてもらう。

 

「リヴェリア、ベルの持っている杖を使いたい気持ちは分からなくないけど諦めようか」

 

「全くじゃ。早く行くぞベル。こやつに構っておったら、また駄々を捏ねてしまうかもしれんぞ」

 

「おい待てガレス、私を何だと思って――!」

 

 リヴェリアさんが何か言おうとするも、僕はガレスさんと一緒に西へ向かった。同行しているラウルさんは重い武器を背負いながらも、必死に僕達の後を追い続けている。

 

 

 

 

 

「ガレスめ……! 後で覚えていろ……!」

 

「まぁまぁ、取り敢えず僕達は早く船へと向かおう」

 

「それとフィン、何故ベルまで連れて来たのだ!? ロキはこの事を知っているのか?」

 

「いいや、まだ知らない。今回は僕の独断だ。後ほど説明するつもりでいる」

 

「……ロキが何を言っても、私は一切口出ししないからな」

 

「分かっているさ。おっと、どうやら他のアマゾネス達がまだ残っているようだね」

 

「すまないが、アレは全部私一人でやる。つい先程まで、魔法が無ければ何も出来ない魔導士と侮られていたからな」

 

「了解、君に任せるよ。………………もう完全に八つ当たりだね」

 

「何か言ったか?」

 

「いいや、何にも言ってないよ」

 

 

 

 

 

 

「お二人とも、こっちです!」

 

 僕はガレスさんとラウルさんと一緒に街外れの西へ向かい、造船所へと辿り着いた。

 

 一見すると(かい)(しょく)(どう)は見当たらない。僕が先頭で進んで裏手に回り、雑多な部品群が置かれた一角を越えて、湖岸が近い雑木林へと入る。

 

 真っ直ぐ突っ走って林を抜けた先に、目的の(かい)(しょく)(どう)の出入り口を発見する。

 

「メレンにこのような洞窟があったのか……!」

 

「ベル君、よく知ってたっすね」

 

「以前、メレンで世話になった時に偶然見つけまして……」

 

 驚くガレスさんとラウルさんに、僕は苦笑しながら理由を言った。

 

 けど、移動してる最中に違和感があった。移動している最中、妙な臭いがして思わず顔を顰める程に。例えるなら、カビの臭いの中に交じる強い鉄の異臭みたいなものがしていた。

 

『――――!』

 

 すると、奥からアマゾネスらしき人達が出現する。

 

 共通語(コイネー)じゃないから何を言っているのかは分からないけど、少なくとも僕達を歓迎していないのは確かだ。武器を構えて襲い掛かろうとしている。

 

「こ、此処にもアマゾネスが……!」

 

「ふむ。あやつ等がここにおると言う事は、ティオナとレフィーヤがおるのは間違いなさそうじゃな」

 

「ですね」

 

 驚くラウルさんとは別に、僕達は向こうの出現に確信した。ティオナさん達がいると言う事を。

 

 武器を出そうとするも、必要無いと言わんばかりに前へ出るガレスさん。

 

「あの小娘共はワシがやる。ベルは武器を運んでるラウルを頼む」

 

「良いんですか? 僕も一緒に戦った方が……」

 

「そんな心配は無用じゃ。それにこのところ、ずっと執務をやってて身体が鈍り気味でな。少しばかり運動しておきたいんじゃ」

 

 どうやらガレスさんはデスクワークの日々で身体を持て余していたようだ。この人は見て分かるように根っからの前衛者なので、執務等のデスクワークをやっていたら身体が鈍るのも当然だろう。

 

 他所の【ファミリア】である僕が口出しする訳にはいかないので、ここはガレスさんに任せようとした。

 

「分かりました。では僕とラウルさんは後から追います」

 

「おう。ベルは物分かりが良くて助かるわい」

 

「ベル君、もうガレスさんとすっかり馴染んでるっすね。もしウチに改宗(コンバージョン)したら、あっと言う間に幹部の一人になってるかも」

 

 僕とガレスさんの会話に、ラウルさんが妙に真剣な顔をして言っていたが敢えて聞き流した。【ロキ・ファミリア】に改宗(コンバージョン)する気は最初から無いので。

 

 直後、襲い掛かってくるアマゾネス達が武器を翳して攻撃するも、斧を持ってるドワーフの一振りであっと言う間に吹っ飛ばした。 

 

 先へ行くと言って敵を撃退し続けるガレスさんに、僕とラウルさんは気を失っているアマゾネス達を無視して進んでいく。

 

「どうした小娘共ぉ! そんな物でワシは倒せんぞ!」

 

『―――――!?』

 

 運動出来る事に張り切っているのか、瞬く間に奥へ奥へ進んでいくガレスさん。このままだと出番は無さそうに思えてしまう。

 

 敵を倒せばティオナさん達の元へと辿り着くかもしれないが、僕としては本当にそれで問題無く行けるかと疑問を抱く。

 

 一応確認してみようと、僕は足を止めてアレを出す事にした。けど、その前に。

 

「ラウルさん、今から僕がやる事をガレスさん達には内緒にしてくれませんか?」

 

「え? 何をするんすか?」

 

「その前に約束して下さい。ランクアップ可能を密かに教えてくれたラウルさんだから頼んでいるんです。もう一度言います。内緒にして貰えませんか?」

 

「…………」

 

 僕が真剣な顔をしてお願いする事に、ラウルさんは無言となった。

 

 恐らく必死に考えていると思う。自分は【ロキ・ファミリア】だから、気になる情報を入手したらフィンさん達に報告すべきか黙っているかを。

 

 あの人達の事だから、僕に関する情報は絶対に欲しがる筈だ。けど僕がそれを前以て阻止するから、ラウルさんに命令を背くよう頼んでいる。

 

 無言で考えている彼の返答を待っていると――

 

「了解。この後に何があっても、自分は団長達に何も言わないっす」

 

 内緒にする事を承諾してくれた。

 

「ありがとうございます。僕の我儘を聞いてくれて」

 

「ベル君には色々と助けられたっすからね。恩返し、と言う事にしておくっす」

 

 ラウルさんに感謝しながら、僕は懐から端末機を取り出した。

 

 それを起動している最中、彼は気になるように見ていると、突如ディスプレイから立体映像が出現する。

 

「おわっ! な、何すかコレは!?」

 

「ふむ………っ! やっぱり!」

 

 立体映像には(かい)(しょく)(どう)の構造だ。けど、一度も入った事がないので具体的な順路は映っていない。

 

 だけど、それでも分かった事がある。ガレスさんが向かっている先には【ロキ・ファミリア】のレフィーヤさんが示す反応があるも、そこにはティオナさんの反応は無かった。その場所とは反対にティオナさんの反応がある他、複数の生命反応が示す丸い点がいくつも表示されている。

 

 用心の為に端末機で確認して正解だった。危うくティオナさんを見捨てるところだったと、僕は安堵の息を漏らす。

 

「ラウルさん。レフィーヤさんの救出はガレスさんに任せて、僕達はティオナさんの元へ向かいましょう」

 

「え? ど、どう言う事っすか? と言うかその地図みたいな物は一体……?」

 

「コレはですね――」

 

 ラウルさんを連れて、急遽進路を変えながら簡単に説明しようとする。

 

 遠征の時はレフィーヤさんに内緒で済ませたが、今回は少しばかり教える事にした。流石に機械については分からないから、敢えて魔道具(マジックアイテム)と言う事にした。相手の位置を探知できる便利なアイテムであると。

 

 それを聞いて仰天するラウルさんだけど、僕の約束を思い出したのか、何も聞かないというジェスチャーをする。理解してくれて何よりだ。

 

「凄いっすね、そのアイテム。一体どうやって手に入れたんすか?」

 

「流石にそこまでは教えられません」

 

 異世界のアークス船団から支給された物です、何て言える訳が無い。

 

 そう思いながら立体映像を見ると、ティオナさんを示す丸い点と別の丸い点が衝突していた。この様子から見て、恐らく戦っていると思われる。戦っている相手は分からないけど、多分フィンさんが言っていた【カーリー・ファミリア】のアマゾネスだろう。

 

 移動している最中に思ったが、僕とラウルさんが進んでいる道にアマゾネスは一人もいなかった。見張りらしき人影も見当たらない。レフィーヤさんの方を集中的に見張りを配置している可能性が高い。

 

 そして僕達とティオナさんの距離が約1.5(キルロ)だが、この先には敵は一切いない。ティオナさんがいる場所に複数の(アマゾネス)がいるだけだ。

 

「ラウルさん、周囲に敵はいませんから大丈夫です。ここからは先に行かせてもらいます」

 

「え? ベ、ベル君!?」

 

 言うべき事を言った僕はファントムスキルで姿を消して、ラウルさんより早く先へ向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァ……!」

 

 筒状の空洞に、ティオナは戦って勝利した。嘗て戦いを教わった師である『Lv.6』のアマゾネス――バーチェ・カリフに。

 

『――汝こそ真の戦士(ゼ・ウィーガ)! 汝こそ真の戦士(ゼ・ウィーガ)! 汝こそ真の戦士(ゼ・ウィーガ)!』

 

「見事だティオナ。お主が『儀式』の勝者じゃ」

 

 周囲には観客と思われる【カーリー・ファミリア】のアマゾネス達が興奮して叫喚し、その主神であるカーリーも称賛するように拍手をしていた。

 

 その後に『儀式』を完遂させようと、倒れて気を失っているバーチェを殺せとカーリーが命じる。しかし、ティオナは誰も殺さないと拒否した事で状況は一変した。

 

 女神が片手を上げたのを機に、周囲で観戦していたアマゾネス達が一斉に立ち上がって包囲しようとする。満身創痍となっているティオナを闘国(テルスキュラ)へと連れ帰る為に。

 

「お主を闘国(テルスキュラ)連れ帰る。安心するがいい。お主を知っておる例の雄も一緒に――」

 

 

「残念ですが、そうは行きません」

 

 

『!!!』

 

 突如、どこからか聞き覚えの無い第三者の声がした。しかも若い男の声が。

 

 ティオナや【カーリー・ファミリア】のアマゾネスだけでなく、カーリーですら驚愕して周囲を見回している。

 

「い、今のって……」

 

 しかし、ティオナだけは違った。港街(メレン)に来てない筈なのに、自分が知っている大好きな人の声が耳に入った事で疑問を抱いている。

 

「どこにおる!? いい加減に姿を現わせ!」

 

 神の自分ですら第三者(オス)の接近に気付けなかったのが屈辱だったのか、カーリーは歯軋りしながらも喚き立てる。とても先程まで優位に振舞っていたのとは別神のように。

 

 その言葉に反応するように、ティオナの目の前に突如現れようとする。見知らぬ衣装を身に纏った、白髪の少年が。

 

「!? お、お主は、まさか……!」

 

「……え? アルゴノゥト、君……?」

 

 まるで死神の如く、不気味な大鎌を手にしながら姿を表す少年――ベル・クラネルの存在に誰もが驚いた。

 

 ティオナだけは他のアマゾネス達やカーリーと違い、呆然と彼を見ている。すると、ベルは彼女の方へと視線を向け、優しい笑顔になってこう言い切った。

 

「ご無事……とは言えませんが、ティオナさんの姿を見て安心しました。もう大丈夫です。ここから先は、僕が貴女の盾となってお守りします。一人の男として」

 

「ほへ……?」

 

 いきなりプロポーズ紛いの台詞を言われた事で、ティオナは頭の処理が追い付かずに停止する。顔を真っ赤にしたまま。

 

 そうなってる事に全く気付いていないベルは、戦闘のダメージで動けなくなったのだと判断した後、表情を切り替えながらカーリーの方へ視線を向ける。

 

「お初にお目に掛かります。貴女が女神カーリー様、で宜しいのですか?」

 

「…………ク、クククク……」

 

 挨拶をするベルに、無言だったカーリーは急に笑みを浮かべる。

 

「如何にも。妾こそが【カーリー・ファミリア】の主神であり、テルスキュラの主よ。まさか、お主が自ら此処へ来るとは思いもしなかったぞ、ベル・クラネルよ」

 

「? 僕をご存知なんですか?」

 

 自己紹介をしながら自身の名前を言った事にベルは訝った。会っていない筈なのに、何故自分を知っているのだと疑問を抱いている。

 

 問いに答えるカーリーは愉快そうな笑みのまま教える。

 

「当然じゃ。以前にオラリオでやった戦争遊戯(ウォーゲーム)を観戦させてもらったからのう。あの時から、お主の事が気になって気になって仕方ないのじゃ……!」

 

「………成程」

 

「『Lv.1』と侮っていた【アポロン・ファミリア】が次々に倒されるのは愉快痛快じゃった! あれ程の道化振りをさらした阿呆(ざこ)共は真に滑稽で、見ててもう笑いが止まらなかったわ……!」

 

 既にいない【アポロン・ファミリア】を嘲笑う事に、ベルは少しばかり眉を顰める。

 

 以前の本拠地(ホーム)を壊した恨みがあったとは言え、ただ観戦していただけの第三者が好き勝手言う事は不快だった。

 

 しかし、相手は【ロキ・ファミリア】が厄介だと警戒する派閥。それだけ実力者揃いのアマゾネスがいるから、この女神は平気で嘲笑っているのだとベルは推測する。

 

 以前の話題から変えようと、カーリーは獰猛な笑みをしたまま再びベルを見下ろす。

 

「さて、そなたについての話はこれまでとしよう。お主もティオナと一緒に闘国(テルスキュラ)へ来てもらうぞ」

 

「どう言う事ですか?」

 

 下ろしていた手を再び上げるカーリーを見ながらベルは問う。それとは別に、主神からの指示を提示されたアマゾネス達が構えようとする。今度はティオナではなくベルの方へと。

 

「言ったであろう? 妾はベル・クラネルの事が気になって仕方ないと。お主の子胤(こだね)を使えば、そこで倒れておるバーチェや、ここにおらんアルガナ以上の戦士(アマゾネス)を量産出来るやもしれん。故に、お主を捕獲じゃ! 手荒でも構わん、その雄を即刻捕らえよ!」

 

 理由を言いながらカーリーが命じた瞬間、ベルとティオナを取り囲んでいたアマゾネス達が一斉に動き出した。

 

「! アルゴノゥト君、逃げ――」

 

 突然の強襲を見てハッと意識を取り戻したティオナが逃げるように言うも、その必要は無かった。

 

 ベルは自分に襲い掛かるのを既に予測していた。なので既に迎撃出来る準備は完了済みだ。ベルが持っている大鎌――カラベルフォイサラーの先端から青白い球体を出現させている。

 

 そして―― 

 

「フェルカーモルト!」

 

『ガッ!』

 

 自分の周囲に衝撃波を放つ長杖(ロッド)ファントム用フォトンアーツ――フェルカーモルトを発動させた。

 

 ベルが回転しながら得物を振るった途端、さっきまであった青白い球体が急に爆発した瞬間、その衝撃波によってアマゾネス達が一斉に吹き飛んで壁に激突する。

 

 因みにティオナも攻撃の範囲内に含まれていたが、ベルは彼女の位置を把握して当たらないようにしている。それ故に無事だった。

 

 このフォトンアーツは初めてベートと決闘した際に使った。その時も本気でやったが、『Lv.3』にランクアップしている今では、当時と比べて威力が一段と上がっている。

 

 その為、直撃したアマゾネス達は壁に激突しただけでなく、思いっきり壁にめり込んでいた。一部は上半身ごと壁に埋まっているアマゾネスもいる。そうでない者は余りの威力に立ち上がれないどころか、完全に気を失っている。

 

「……嘘」

 

 ティオナも驚きながらも呆然としていた。ベートに使った時とは威力が全然違うと。

 

「バ、バカな! 一撃じゃと……!」

 

 カーリーも当然驚いているが、ここまで一方的な展開になるとは思っていなかった。

 

 倒れているバーチェより遥かに弱い『Lv.3』や『Lv.4』のアマゾネス達なので全滅するが、それでも手傷を負わせる事ぐらいは出来ると踏んでいた。が、無傷な上に一撃で終わってしまった事で痛恨の誤算となる。

 

「『Lv.1』でも相当の実力者と見ていたが、まさかこれ程であったのか……!?」

 

「その情報はもう古いですよ、カーリー様。僕はもう『Lv.3』です」

 

「何じゃと!?」

 

 ベルからの情報に、これには流石のカーリーも度肝を抜かれた。

 

 以前の戦争遊戯(ウォーゲーム)が終わって、まだ一ヵ月程度しか経っていない。

 

 ベルが『Lv.2』にランクアップしていたら大して驚きはしない。一人であれだけの戦いをこなせば『神の恩恵(ファルナ)』が偉業と見なし、更なる高みへ昇華してもおかしくないと。

 

 だがしかし、ベルが『Lv.3』にランクアップするのは完全に予想外の範疇だった。一ヵ月程度で更にランクアップするのは到底あり得ない。

 

 命懸けの殺し合いをして、過酷な環境から高レベルの実力者を多く生み出している【カーリー・ファミリア】でも無理だった。短期間で【Lv.2】から【Lv.3】へ至らせるのは、それなりの時間を要するので。

 

「………………ク、ククククク………ハハハハハ…………ア~ッハッハッハッハ!!」

 

「「?」」

 

 明らかに異常だとカーリーは思わず戦慄するも、それは一瞬だった。途端に立ち上がりながら高笑いをする。

 

 突然の奇行にベルだけでなく、ティオナも思わず訝ってしまう。

 

「何たる事じゃ! お主は神である妾の予想を遥かに超える素晴らしき雄ではないか! 今決めたぞ、ベル・クラネル!」

 

 そう言ってカーリーは全身から『神威』を発動させようとする。

 

「こうなれば妾の『神威』を開放し、お主の自由を奪ってでも必ず闘国(テルスキュラ)へ連れて行く! 覚悟せよ!」

 

「「!」」

 

 いかにベルが強くても下界に住まう人間である為、神に手を出せなかった。そして『神威』を発動させれば打つ手はない。カーリーもそれを分かっているからこそ、ベルを動けなくしようとする。 

 

「逃げて、アルゴノゥト君! カーリーの『神威』はいくら君でも!」

 

「もう遅いわ、ティオナ! この場で二人纏めて――」

 

「させるかボケェ!」

 

「がぁっ!」

 

 逃げるように促すティオナより一足早く発動させる瞬間、突如背後から現れたロキが飛び蹴りをかました。

 

 ロキの足がカーリーの後頭部に直撃して悲鳴を上げ、そのまま床に這いつくばる姿勢となって無様に倒れる。

 

「床の味は美味しいか? クソチビィ」

 

「ロキ……! 何故お主が此処に……! さてはニョルズから聞き出しおったか……!?」

 

 頭を踏まれているカーリーが辛うじて後ろを向き、ロキの他にニョルズも一緒にいた事で察した。抜け道を利用して此処へ来たのだと。

 

「ケンカを売る相手を間違えたなぁ、このダァホゥ。それと……」

 

 朱色の瞳を薄っすらと開け、唇を吊り上げて邪神の如く表情で邪笑するロキだが、すぐに別の方へと視線を向ける。

 

「何でベルがおるんや!?」

 

 さっきとは打って変わるように、驚愕しながら下にいるベルに突っ込みを入れた。

 

「あ、ありがとうございます、ロキ様。お陰で助かりました」

 

「礼はええから、うちの質問に答えんか! どないしてオラリオにおる筈の自分がメレンにおる!?」

 

 カーリーよりもベルの事が最優先みたいで、彼女の頭を踏みながらも聞き出そうとするロキ。

 

「あれ? フィンさんから聞いてないんですか? 僕はあの人からの冒険者依頼(クエスト)で、急遽【ロキ・ファミリア】に同行してるって」

 

「んなもん初耳や! そないな話は全然聞いとらんわぁ!」

 

「そ、そうでしたか……」

 

 ベルはてっきり既にロキの耳に入っていると思ってたみたいだが、実はそうではなかったと認識した。

 

「よう、ベル。まさかお前も来ていたとはな」

 

「あ、ニョルズ様」

 

 憤慨しているロキとは別に、ニョルズがひょこっと顔を出して声を掛けた。

 

 港街(メレン)で世話になっていた男神の顔を見た事で、ベルは思わず口元を綻ばせる。

 

 その直後、ティオナさんの背後にある空洞の壁が突如破壊され、一陣の風が突入してきた。

 

 この場にいる者達が全員そこへ振り向くと、金髪金眼の女剣士――アイズが着地する。

 

「………え、ベル?」

 

「アイズさん!?」

 

 ティオナを救出する為に全速力で来たアイズだったが、ベルがこの場にいる事に困惑した表情となる。

 

「ええい! 【剣姫】などどうでもいいから、いい加減にその足を退かぬか! 神を足蹴にするなど不敬じゃぞ!」

 

「うちも神やボケェ!」

 

 観念しているカーリーだが、いつまでも頭を踏まれている事に憤慨するも、ロキが速攻で返した事で未だ踏まれるままとなっていた。

 

 ついでとして、大型船に乗っているティオネは手遅れだと苦し紛れに一矢報いようとするが、それも解決するとロキは一蹴する。一番強い騎士様(ナイト)が助けに行ったと、してやったりな笑みをしながら。

 

「全く、ワシに何も知らせずティオナの方へ行くとはのう」

 

「どうして貴方が此処にいるんですか、ベル・クラネル!」

 

「あ、ガレスさんに、レフィーヤさん……」

 

 その後、別の穴からガレスとレフィーヤが現れ――

 

「ひ、酷いっすよベル君、自分を置いてくなんて……」

 

「あっ、ラウルさん! ごめんなさい!」

 

 大重量の武器を持ってきたラウルに、すっかり忘れていたベルは謝るのであった。




連日更新はここまでになります。

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