ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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【ヘスティア・ファミリア】の休日⑦

 カーリー様を捕縛した事により、ティオナさんの方は無事解決となった。ティオネさんについても、フィンさんの方で解決してるから問題無いとロキ様が断言しているので大丈夫だろう。

 

 その際、僕は戦闘によって負傷したティオナさんの怪我を回復魔法(テクニック)で治療した。猛毒状態をアンティで、怪我と体力をレスタで。その間に何故か分からないけど、ティオナさんが凄く大人しかった。いつもだったら喜びながらお礼を言うのに、今回は全くそんな素振りを見せなかったから訝るも、何でもないからと言われる始末。赤い顔をしたまま、何故か僕から距離を取っている状態だ。

 

 他にラウルさんの治療も施した。戦闘をしてないから必要無いと思われるだろうが、凄く重い(ティオナさんの)武器を背負ったままずっと移動していたので、腰が参っている上に体力がかなり消耗していた。なのでアンティで元の健康状態に戻し、レスタで体力を回復させる事となる。戦闘はもう終わったので、また持ち運び続ける破目になる為、後ほど再び治療する予定になっている。

 

 それとは別に、僕が港街(メレン)に来た事を全く知らなかったロキ様や女性団員達に思いっきり詰め寄られた。フィンさんが全て対応すると言う旨を伝えると、取り敢えずと言った感じで一旦収まる。

 

 (かい)(しょく)(どう)を出て港へ戻り、そこで再びリヴェリアさん達と合流すると、海の上に大きな氷の橋があった事に僕は驚いた。けど、大体の予想はついている。アレはリヴェリアさんの魔法によって出来た物だと。氷の橋の先には大型船があったから、恐らくフィンさんはそれを使って移動したんだろう。

 

 予想が的中したように、氷の橋を渡って岸へと戻って来たフィンさんとティオネさんを視認した後、僕は再び傷の治療をしようと駆け寄った。てっきりティオネさんも僕の登場に驚くと思っていたが、そこはフィンさんから既に聞かされたようだ。『戻ったら一緒に連れてきた(ベル)に治療してもらうように』と。

 

 これで【ロキ・ファミリア】と【カーリー・ファミリア】との戦いは終結した。ティオナさんとティオネさんが顔を合わせ、共に笑顔になった途端、まるで狙っていたかのように夜が明けて、雲一つない青空と太陽が昇ってきた。まるでアマゾネス姉妹の心が晴れたかのように。

 

 全てが一件落着かと思いきや、もう一つ別の案件が残っていた。それは勿論、他所の【ファミリア】である僕をどうして港街(メレン)に連れてきた事だ。ロキ様が代表して訊き出すと、フィンさんは『自分の独断で連れてきた事を含め、全ての責任は自分が持つ』と一通り説明した。ティオナさんを連れ戻すには、どうしても僕が必要であった事も含めて。

 

 ロキ様は納得するも、『ドチビに借りを作ってしもた~!』と叫んだ。と言っても、神様にはフィンさんがオラリオに戻った後、誠心誠意を込めて対応する予定になっているが。

 

 そしてここから先は事件の収束をさせる為の事後処理となる。尤も、それは【ロキ・ファミリア】がメインとしてやるから、僕は一切関わらない事になっている。その為、用件が済んだ僕は一足先へオラリオへ戻る事になった。向こうがオラリオへ戻って来た際、フィンさんから改めて僕達の本拠地(ホーム)へ来て報酬を渡す予定となっている。

 

 だけど、それとは別にやって欲しい事があるとフィンさんから頼まれた。僕がオラリオへ戻る際、ロキ様とフィンさんが(したた)めた手紙をギルド本部へ届けて欲しいと。内容については【カーリー・ファミリア】が起こした騒動や、その他諸々の案件だそうだ。

 

 本当は『その他』について何なのかを訊きたい衝動に駆られるも、部外者が首を突っ込んではいけない案件だと何となく察した。流石に港街(メレン)へ来て早々戻るのは悪いというのもあって、【ロキ・ファミリア】が用意してくれた宿で一休みと同時に、短い時間だけど観光を済ませた。観光内容は当然、神様へのお土産を買う為だ。

 

 観光の間、てっきりティオナさんが付いてくるかと思っていたんだけど――

 

「そのお魚を買うの?」

 

「ええ。メレンのお魚は美味しいので、神様にまた食べてもらおうと」

 

 何とアイズさんだった。部外者の僕が【ロキ・ファミリア】から得た情報を港街(メレン)の住民に漏らさないかの監視、と言う建前らしい。

 

 ティオナさんの事を訊いてみるも、どうやら戦いで疲れているから休んでいるらしい。いつも元気な姿を見せる彼女らしくない行動に疑問を抱くも、そう言う日もあるかと思って気にしないでいた。

 

「それにしても驚いた。ベルが来るなんて思ってもいなかったから」

 

「僕も最初フィンさんから声を掛けられて、再びメレンに来るなんて思いもしませんでしたよ」

 

 目当てのお魚や他のお土産を一通り買った後、このまま宿に戻って帰る準備をする予定だ。

 

 すると、アイズさんは急に話題を変えて話しかけようとする。

 

「この前の遠征はありがとう」

 

「いえいえ、僕も色々と勉強させてもらいました。それにランクアップも出来ましたし」

 

「………一つ、聞いていいかな?」

 

 ランクアップと聞いた瞬間、アイズは唐突に真剣な顔となって訪ねてきた。

 

「君が強いのは分かってるけど、どうやったら早く『Lv.3』にランクアップできるのっ?」

 

「どうやったら、って聞かれても……」

 

 遠征中に多くの下層や深層のモンスター、他にも『精霊の分身(デミ・スピリット)』を倒したから。としか言いようがない。僕としてもランクアップを意図して戦った訳でもないし。

 

 フィンさんも、あれ程の戦いをすれば『神の恩恵(ファルナ)』が偉業と見なして昇格(ランクアップ)したかもしれないと言っていた。神様も似たような見解だったし。

 

「僕は遠征中で必死に戦っただけですし、早くランクアップする方法なんて分かりません。ただ……」

 

「ただ?」

 

「……いえ、何でもありません」

 

 危うく、『僕が所持しているアークス用の武器を使えばランクアップするかもしれない』と言ってしまう所だった。それを口にすれば、アイズさんがどんな行動に出るか容易に想像出来る。以前の椿さんみたいに『武器を貸して欲しい』って只管お願いしてくるのが。

 

 リヴェリアさんが正にその体現者でもある。僕がゼイネシスクラッチを貸して、アレがあの人を所有者と認める事をしたから、『Lv.7』にランクアップしている。恐らくアイズさんにも相応の武器を貸せば、同様の事象が起きるかもしれない。

 

 だけど、フィンさんから絶対に教えないようキツく言われたので貸さない事になっている。数日前、『黄昏の館』でフィンさんと話した時――

 

『もうベルも察してると思うけど、アイズは他の誰よりも強さを求めようとしている。君の武器を使ってランクアップ出来るのを知った瞬間、どんな事をしてでも欲しがる筈だ。最悪の場合、【ヘスティア・ファミリア】に改宗(コンバージョン)するだろうね。だからそんな事態にならないよう、あの子には伏せて欲しい。お互いの為にね』

 

 と、深く釘を刺された。僕も反対する理由はないので承知している。

 

「ベル、何か隠してない?」

 

 何でもないと言った僕にアイズさんが不審に思ったのか、ジーッと凝視していた。

 

「別に隠してなんかいませんから」

 

「…本当に?」

 

「ちょ、近い、近いですよアイズさん……!」

 

 まだ疑惑が晴れてないみたいで、彼女は凝視しながらも顔を近づけていた。

 

 お願いだから止めて! さっきから僕の心臓がバクバクしてるんですけど……!

 

 ああ、でも改めてよく見ると、アイズさんって本当に綺麗な人だなぁ。髪もサラサラしてるし、ダンジョンじゃないから凄く良い匂いもして――

 

「何してるんですかぁ!?」

 

「!?」

 

 すると、明らかに僕達に言ってる叫び声がした。振り向くと、そこには顔を真っ赤にして憤慨と言わんばかりの表情をしてるレフィーヤさんだった。

 

「ベル・クラネル、人がいないのを良い事にアイズさんに何て破廉恥な真似を……!」

 

 いや、僕は何もしてないです。アイズさんが迫ってきたんですが……。と言ったところで、今のレフィーヤさんは絶対信じてくれないだろう。

 

 だけど、これはチャンスだ。あの人の事だから、僕に狙いを定めて襲い掛かって来るだろう。なので――

 

「リヴェリア様から凄く怒られたけど、今やってる貴方の行いは非常に目に余るから……って、消えた!?」

 

「あ……」

 

 ファントムスキルで姿を消して逃げる事にした。

 

 アイズさんレフィーヤさんから逃走に成功した僕は、宿に戻ってオラリオに帰還する準備をする。

 

 その後にはニョルズ様と会ったけど、事件の関係者という事もあって大して話せなかった。また港街(メレン)に寄る機会があったら、ロッドさんと一緒にゆっくり話そうと。

 

 事後処理中のフィンさんと会った際、ギルドに渡す約束の手紙を受け取り、僕は【ロキ・ファミリア】より早く港街(メレン)を後にした。

 

 オラリオに戻って早々――

 

「ベ~ル~く~ん~、詳しく説明してもらおうかな~♪」

 

 神様が爽やかな笑みで僕を出迎え、即刻問い詰めようとしていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 ベルが一足先に港街(メレン)へ去って翌日、事件は漸く収束を迎える事となる。

 

 昨日にギルド上層部はベルから渡された手紙を読んだ後は、とても迅速に動いていた。手紙に書かれた内容の一部には、港街(メレン)のギルド支部にいる総責任者であり支部長――ルバート・ライアンが密輸していた件が詳しく書かれていたからだ。

 

 この汚点が世間に知られたら最後、ギルドは盛大な非難を浴びる事になり、他の【ファミリア】からもつけ入る隙を晒してしまう。そうならない為の処置として、ルバートを懲戒免職させ、事件の騒動となった原因は全て【カーリー・ファミリア】に責任があると押し付けた。他にも共犯者がいたが、余計な騒動が起きないようにと有耶無耶にしている。

 

 他にもベルと同じく既に港街(メレン)から姿を消しているが、【イシュタル・ファミリア】も【カーリー・ファミリア】と関わっていた。が、ギルドはその【ファミリア】に手痛いしっぺ返しを食らった件もあり、敢えて追及する事はしなかった。それを知ったロキは不服だったが、『イシュタルには、いずれ落とし前を付けさせたる』と密かに誓うだけに留まる。

 

 そんな中、【カーリー・ファミリア】は凄まじい変化が起きていた。一人を除いたアマゾネス達が全員恋愛真っ盛りとなって、【ロキ・ファミリア】の男性陣に迫っていた。因みにラウルは含まれておらず、一人泣きしているところをアキが慰めていた。

 

 だが、アマゾネス達は【ロキ・ファミリア】の男性陣にだけ迫っている訳ではなかった。

 

 それは――

 

「ベル・クラネル~! どこにいるのぉ~!?」

 

「貴方の子供を孕ませてぇ~!」

 

「私と子作りを~!」

 

「聞いた話だとオラリオにいるそうよ!」

 

「だったら今すぐにそこへ行くわ!」

 

 ベルに倒されたアマゾネス達もいたからだ。今は既に港街(メレン)から去ったベルを必死に探している。

 

「コラ~~~~!! アルゴノゥト君はアタシのなんだから、アンタ達にはぜぇ~~ったい渡さないからね!!」

 

姉さん(アルガナ)だけでなく、ティオナも本当に変わったな」

 

 憤慨して阻止するティオナの行動を見たバーチェは、余りの変わりように驚くばかりだった。尤も、それは良い意味の方で。

 

 それとは別にロキは現在、事件の首謀者であるカーリーと、共犯者であるニョルズの三柱と話をしていた。

 

 カーリーに事件の関係者である【イシュタル・ファミリア】と結託した理由を尋ねるも、教えられないと突っ撥ねられて下手糞な口笛を吹かれる始末。ロキは大体の想像をしたが、結局はこれ以上聞き出すのは無理だと結論して諦める事にした。

 

 しかし、それとは別に是が非でも確認したい事があった。

 

「おいクソチビ、ずっと前からベルを狙っておったみたいやが、もしメレンに来てなかったらどうするつもりやった?」

 

「そんなの決まっておろう。もしもこの件が片付いた後、オラリオに潜入して捕獲する予定じゃったわい」

 

 結局は阻止されたがな、と付け加えるカーリー。

 

「はっ、そんな事やろうと思ったわ」

 

「何故お前がそこまでベルを付け狙ってたんだ? 事情を知らない俺には全然分からないんだが」

 

 ニョルズが疑問を抱きながら問うも、カーリーは答えようとしなかった。同じ事を何度も説明するのが面倒なのだろう。

 

 そこをロキが代わりに教えると、ニョルズは納得した。彼も以前に戦争遊戯(ウォーゲーム)を見ていたので、『Lv.1』であの強さなら付け狙うのも仕方ないと。

 

「クソチビ、これだけは言っておくわ。仮にベルを捕獲したところで、【カーリー・ファミリア】は全滅どころか、自分も天界送還されとったで」

 

「何?」

 

「ベルを気に入ってるのは【ロキ・ファミリア(うちら)】だけやない。実はあの色ボケ(フレイヤ)もベルにお熱なんや。自分の眷族にしたがる程にな。もし捕獲されたと知れば、周囲の制止を無視しながら【ファミリア】ごと動かして闘国(テルスキュラ)を確実に潰そうとする筈や」

 

 ロキはフレイヤがどう動くかを頭の中で想像しながら話した。【猛者(おうじゃ)】オッタルを含めた第一級冒険者達がアマゾネス達を蹂躙し、フレイヤがカーリーを徹底的に追い詰めた後に天界送還させる内容を具体的に。

 

 カーリーとしては【フレイヤ・ファミリア】と戦うのは吝かではなかったが、天界送還されるのは流石に勘弁して欲しかった。あの退屈極まりない天界に戻らされるのは嫌だったので。

 

「……成否に関係無く、妾が動いた時点で詰みだったという訳か」

 

「そう言う事や。良かったなぁ、戦った相手がウチ等で」

 

「確かにフレイヤの性格を考えれば、本気でカーリー達を潰しそうだな」

 

 ニョルズはフレイヤの事を知っているのか、どう言う行動に出るのかを容易に想像出来た。

 

 しかし、カーリーはそれでもベルの事を諦めきれないようだった。

 

「だったらせめて、ベルに惚れたアマゾネス達に子胤(こだね)だけでも授けて――」

 

「んなもん却下や! ティオナがガチ切れするわ!」

 

 ロキは即座にダメだと却下した。こう焦るのには当然理由がある。

 

 そうなったら最後、ベルからプロポーズ紛いの事を言われて更に惚れ込んだティオナが、ティオネ以上に暴走する可能性が非常に高い。それどころか、ベルの貞操を守ると言うバカバカしい理由で【ヘスティア・ファミリア】に改宗(コンバージョン)するかもしれない。ロキとしては絶対に避けたい道である。大嫌いなヘスティアに自分の大事な眷族を渡すのは絶対に嫌なので。

 

 一悶着が起きそうな会話だったが、一先ずはこれにて事件は収束する事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~????~

 

 

「ん………んぅ……あれ? ここは……」

 

 メイド服を纏った一人の少女が目覚めると、周囲は薄暗い場所であった。

 

 自分は先程まで、メイド修行をする為に探索シップで惑星アムドゥスキアへ向かう筈だった。なのに何故こんな場所にいるのだと。

 

「一体何が……。ルコット様もいないし……ん? 何か見覚えがあるような場所ですね……」

 

 少女は考えながら、この薄暗い場所を見て深く思い出そうとする。訳あってアークス船団に来る前の事を。

 

 そして思い出したのか、ハッとなって周囲を再度見渡す。

 

「まさか此処は……オラリオのダンジョン?」

 

 

『キィ……』

 

 

「ん?」

 

 どう言う訳かは分からないが、自分は再び元の世界に戻ったのではないかと一人で結論に至ろうとしている中、どこからか呻き声が聞こえた。

 

 少女が振り向くと、異形の姿をした大型虫――キラーアントがいた。しかも大量にいて、少女を今にも襲い掛かろうかと取り囲んでいる。

 

「……はぁ。昔のリリだったら何も出来ずに諦めていたでしょうね」

 

 そう言いながら少女は、どこからか得物を取り出して構えようとする。

 

「モンスターに言葉は通じないでしょうが、ルコット様より教わったメイド作法を、お教えしましょう」

 

『―――!』

 

 少女の言葉が合図になったように、モンスター達が喰らいつくそうと一斉に襲い掛かって来た。

 

 しかし、一分後には全て倒されてしまう事を、モンスター達は知る由もなかった。




 最後辺りに出て来たキャラはもう予想は付いてるでしょうが、次回のシリーズに登場予定です。
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