ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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活動報告で書いたコメントの結果、①の内容を載せる事にしました。

これ見て分からない人は、私が書いた最新の活動報告を参照願います。

今回はプロローグみたいな話で短いです。

それではどうぞ!


予想外の出会い①

「すいません、フィンさん。何から何まで対応して頂いて……」

 

「気にしないでくれ。元はと言えば、神ヘスティアに無断で君をメレンに連れて行ったからね」

 

 現在、とある酒場で僕はフィンさんと飲み会をしていた。これには当然理由がある。

 

 昨日の昼頃、【ロキ・ファミリア】が港街(メレン)から帰還した後、団長のフィンさんが一人で【ヘスティア・ファミリア】の本拠地(ホーム)――『竈火(かまど)の館』へ訪れた。

 

 招いてすぐに神様は速攻で文句を言うも、彼はそうなる事を予想していたように謝罪し続けていた。同時に報酬は迷惑料も兼ねてと言う事で、一千万ヴァリス渡された瞬間に神様が仰天したのは言うまでもない。

 

 これは僕も流石に高過ぎると言ったが、フィンさんから告げた理由を聞いて納得する。これは神様に対する迷惑料の他に、港街(メレン)で起きた事件を口外しない為の口止め料でもあると。

 

 今回、フィンさんから【ロキ・ファミリア】のサポーター並びに治療師(ヒーラー)として雇われ、港街(メレン)に同行した。その際に冒険者依頼(クエスト)中で知った情報は、ギルド側からすれば非常に都合の悪い物らしい。それ故に今回の報酬は高額と言う訳である。

 

 僕はそこまで知らされてはいないが、思い当たる事はあった。【カーリー・ファミリア】が起こした事件の中には、ニョルズ様も関連していたのも知って少しばかり動揺した。神様と同様に善神なあの方がと最初は信じられなかったけど、裏取引をしなければいけない程に思い詰めていたようだ。部外者である僕が、以前世話になったニョルズ様にとやかく言う筋合いは無い。なので僕は【ロキ・ファミリア】に事後処理を任せてオラリオへ戻った。

 

 フィンさんが神様の謝罪と報酬を渡した後、僕にコッソリとある事を言ってきた。『良かったら明日の夕方、二人で飲みに行かないかい?』と。

 

 流石に【ロキ・ファミリア】の団長と行くのは不味いと断るも、そんな肩書きは抜きで男二人で行こうと言われた為、僕は結局承諾する事になった。尚、飲みに行く酒場は『豊穣の女主人』じゃない。別の酒場で飲みに行くのもいいと言う事で、フィンさんが偶にお忍びで行ってる店を案内すると。

 

 以上の経緯で、僕はフィンさんと二人で飲み会をしている訳である。と言っても端から見れば、【ヘスティア・ファミリア】代表の僕と【ロキ・ファミリア】団長のフィンさんが、何かしらの密会してると勘違いされるかもしれないが。

 

「そう言えば、ティオナさんは大丈夫ですか? 治療した後、結構疲れてたみたいですけど」

 

「んー……まぁ元気だよ。と言うより、僕としてはちょっと気になる事があるんだよね。ベル、君はティオナに何か変な事を言わなかったかい?」

 

「? いえ、何も……」

 

 フィンさんが妙な事を訊いてくるので、僕は首を傾げながら答えた。

 

 僕がティオナさんの前に姿を現わした後に、負傷している彼女を敵から守ると言っただけだ。別に何もおかしな事は言ってない。

 

「なら良いんだけど。ああ、そうそう。今後は【カーリー・ファミリア】のアマゾネス達に会ったら気を付けるように」

 

「何故ですか?」

 

「君が女神カーリーと会った際、向こうのアマゾネス達とも交戦して倒したそうだね。それが原因で、彼女達が君に心底惚れて子作りしたがってたよ」

 

「え゛?」

 

 いきなり恐ろしい事を言ってきたフィンさんに僕の頬は引き攣った。そして同時に思い出した。アマゾネスの習性を。

 

 確かアマゾネスは強い雄に負かされたら心底惚れこんで、その雄の為に尽くそうとするって。なので僕は失態を侵したと言う事になる。もし神様に知られたら一大事だ。只でさえティオナさんの対応で精一杯なのに、これ以上他のアマゾネス達に迫られたら色々な意味で不味い。

 

 僕が不安がっていると、フィンさんは次にこう言ってきた。

 

「と言っても、ベルがそこまで心配する必要はない。君に惚れたアマゾネス達はティオナが全部抑えてくれたから、向こうからオラリオに来る事はないよ」

 

「そ、そうですか……」

 

「だけど、君の方はまだマシだよ。僕なんか、【カーリー・ファミリア(むこう)】の団長に目を付けられてね。しかもティオネより厄介なアマゾネスときた」

 

「そ、それは、また……」

 

 ティオネさんがフィンさんに仕掛けるアプローチは知ってるけど、あの人以上に厄介って……。

 

「フィ、フィンさんは結婚のご予定とか無いんですか? 余計なお世話でしょうけど、厄介なアマゾネスに追われるぐらいなら、早く結婚すれば良いかと……」

 

「そうしたいのは山々だけど、今は【ロキ・ファミリア】の団長としての仕事で忙しい上に、相手も中々見付からなくてね……」

 

「え?」

 

 意外だった。この人はティオネさん以外に、他の女性達に人気もあると知っていたので、すぐに結婚出来る相手も見付かると思っていた。

 

 見付からないと予想外な事を聞いて僕が驚いている中、理由を話そうとする。

 

「僕はね、結婚する相手は同族の女性と決めているんだよ」

 

「同族って……貴方と同じ小人族(パルゥム)の女性を、ですか?」

 

 確認するように問うと、フィンさんはコクリと頷いた。

 

「理由については省かせてもらうけど、どうしても小人族(パルゥム)じゃなければいけなくてね」

 

「因みにティオネさんには?」

 

「じゃあ逆に訊くよ。僕がそれを話して、彼女が諦めてくれると思うかい?」

 

 その問いに僕は何も答える事は出来なかった。

 

 他所の【ファミリア】だけど、僕にも分かる。ティオネさんが例えフィンさんに断られたとしても、絶対に諦める性格じゃないって事を。

 

「……え、えっと、いつか良い人が見付かるといいですね」

 

「その機会が訪れれば良いんだけどね」

 

 そう言いながらフィンさんはグラスに入っているお酒を呷るように飲んだ。

 

 因みに僕は酒でなく、果実水(ジュース)にしてもらってる。お酒は一応飲めるけど、アークス船団にいた頃は未成年だから飲むなとキツく言われたから、二十歳になってから飲むと決めている。尤も、アークスの僕がお酒を飲んでも体内フォトンでアルコールが消化されるから酔う事はないけど。

 

「ふぅっ。若い君と酒を飲んで語り合うのも良いものだね。思わず昔の自分を思い出しそうだよ」

 

「若いって、フィンさんも充分に若いじゃないですか」

 

「おや? ベルは【ステイタス】の副次作用は知らなかったのかい?」

 

 ………あ、そう言えばギルドの講習で学んだな。

 

 『神の恩恵(ファルナ)』を与えられた冒険者は、ランクアップをする事で『器』は衰えにくくなって全盛期の期間が長くなる。そしてその度合いはレベルが上昇するにつれて顕著になる……だったな。

 

 となればフィンさんは見た目と違って、僕より結構年上なんだろう。

 

「あ、あの、失礼ですけどおいくつなんですか?」

 

「もう四十は過ぎたかな?」

 

 四十過ぎって……道理で僕を若いと言う訳だ。

 

 けどフィンさんの年齢から考えて、もうとっくに結婚してもおかしくない筈だ。なのに未だ独身だから、小人族(パルゥム)の結婚を早く望んでいるかもしれない。

 

「もし良かったら、ベルの方でいい小人族(パルゥム)がいたら紹介しておくれ」

 

「え、遠慮しておきます。ティオネさんに殺されたくないので」

 

「それは残念」

 

 と言ってるフィンさんだけど、僕が断るのを初めから分かっていたのか、既におかわりを注文したお酒を再び呷った。

 

 しかし、この時の僕は全く予想してなかった。フィンさんが望んでいる小人族(パルゥム)の女性を見付けて、【ヘスティア・ファミリア】に迎え入れる事を。

 

 

 

 

 

 

「やはり此処はオラリオ、でしたか」

 

 キラーアントの群れを片付け、魔石を一通り回収したメイドの少女は地上へ辿り着いた。

 

 そして同時に思った。嘗て自分をどん底に追い詰めた冒険者(ひとでなし)共が跋扈している迷宮都市(オラリオ)に再び帰って来たと。

 

 そう考えるだけで少女は非常に最悪な気持ちとなっている。今までいた場所は凄く大変でも、此処に比べれば遥かに良かった。そして自分を一人前のメイドにしようと鍛えている、少し考えがズレたキャストの女性には自分が補佐しなければならないと。

 

「……取り敢えず移動しますか」

 

 オラリオの風景を見渡していた少女だったが、周囲にいる冒険者達から奇異な目で見られた事に気付いたので場所を変える事にした。

 

 今の時刻は夜で、バベルの塔周囲にそこまで人はいない。だが彼女はメイド服を着ているので、ダンジョンから帰還したばかりの冒険者達から見れば訝るのは当然だ。

 

(本来でしたら、あそこへ戻らなければいけないのですが……止めておきましょう)

 

 少女は嘗て所属していた【ファミリア】の本拠地(ホーム)を思い出すも、すぐに却下した。何しろそこにいる眷族(れんちゅう)から散々虐げられたので、戻ったところで同じ事をされるだけだ。今更戻って生存報告をする義理など無い。

 

 だが、オラリオへ戻って来た以上はどこかで寝泊まりしなければならない。今の自分にはオラリオで通用する通貨は持っていなかった。アークス用の武器やアイテムを売ればお金になるが、異世界の物を売ったら色々と面倒な事になるので即座に却下した。

 

 なので少女は考えた結果――

 

(お世話になったお爺さんのお店に行ってみますか。向こうが覚えてくれてれば良いんですが)

 

 自分を匿ってくれた質屋へ行く事にした。

 

 久しぶりに戻った所為か、彼女は少し迷い気味になりながらも何とか辿り着こうとする。

 

 そんな中、二つの出来事が起きていた。

 

 一つは、彼女が所持している携帯端末機からアークスの反応を示している。しかし、それに全く気付いていないのか、今の彼女がそれに気付くのは質屋の主人と再会した翌日となる。

 

 そして二つ目は――

 

「ん? あのメイド服を着たガキ……どっかで見たような」

 

 偶々通りかかった冒険者の一人が、少女の顔に見覚えがあったように立ち止まっていた。




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