ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
今回は短めですがご容赦ください。
「つ、疲れた……」
向こうが必死に武器を売り込もうとするも、『僕は防具が欲しいんです!』と言って分かった瞬間、即座に自作の鎧や盾を出して結局何も変わらない始末。
折角出してくれたので取り敢えず一通り手にして見てみたが、これと言ってシックリくる物が無かった。悪く言うつもりじゃないんだけど、僕に合わないどころか、防具自体の作りがいまいちで使う気にはならなかった。
キョクヤ義兄さんから教わった事がある。『純粋な暗黒の闇を穢れた不純物で混ざらぬよう、必ず己に相応しいと見定めた闇の防具を纏え』と。要は自分がコレだと納得出来る防具を見定めろと言う意味だ。
今回見た防具は残念だけど、とても買う気にはなれなかった。脆い箇所があったり、武器を使う際に支障が出てしまうという、脇が甘い部分がかなり目立っていた。作ったのは新人
折角頑張って作った新人
一人目、二人目、三人目と、僕に売り込みをしてくる新人
まだ途中だったけど、もしかしたら椿さんがこの騒ぎに嗅ぎつけて来るかもしれないと危惧した僕は、適当な理由で退散する事にした。今は大して人がいない少し寂れた感じのする防具店にいる。隠れるには絶好の場所だったからだ。
(やっぱりどれも同じ物ばっかりだな……)
アーマー系統の防具を見ているが、自分に合いそうな物はなかった。それなりに良い値段のした甲冑はあるが、僕の体型に合わないどころか、今もステルス化して装備してる僕の防具――クリシスシリーズとぶつかる恐れがある。
出来れば軽装――ライトアーマーが良いと思ってる。それなら重ね着しても問題はないと思って探してるけど、そう簡単に見つからないのがお決まりだった。
「……?」
探してる最中、不意に僕の足は止まった。
数々あるボックスの中で、ある防具の塊があって、僕はそれに目を奪われている。
純粋な白い金属光沢の鉄色で、彩色が何も施されていない素材のままの姿だ。
その防具は僕が探しているライトアーマーだった。
膝当てや、僕の身体にフィットしそうなブレストプレート。肘、小手、腰部などの最低限な箇所だけ保護する構造だ。
確認する為に持ち上げてみると、かなり軽い。しかも強度は……さっきまで新人
もしかすると掘り出し物かもしれないな。サイズも恐らくピッタリだろう。
それに何と言うか……この防具に惹かれている感じがする。基本に戻る時にしか使わないとは言え、これなら安心出来そうだと。
よし、コレにしよう。何か明日のダンジョン探索が楽しみになってきたなぁ~。
製作者を見ようと、プレートをひっくり返してみたら【ヴェルフ・クロッゾ】と言う製作者のサインがあった。
この店は【ヘファイストス・ファミリア】のお店だから、作った物に【Hφαιστοs】がある筈だけど……どうやらそのブランド名はまだ許されてない
今更気付いたけど、この防具の名前が色々な意味で凄かった。『
取り敢えず
「だから、何でいつもいつも、あんな端っこに……!」
さっきまで静かだった筈だったのが一変し、既に見えてるカウンターから怒鳴り声がした。
カウンターで【ヘファイストス・ファミリア】の店員と、客らしき人と揉めごと、ではなく言い争っている感じだ。
「こちとら命懸けでやってんだぞ! もう少しマシな扱いをだなぁ!」
目前まで来ると、弱り果てた店員の前にいる男性のヒューマンが怒鳴っていた。
その人は着流した黒衣を着流し、炎を連想させる真っ赤な短髪で、身長も僕より少し高くて中肉中背だ。
恐らく何かしらの苦情だろう。内容までは分からないけど、深く関わる気はない。なので早く買って退散するつもりでいる。
「いらっしゃいませ。お買い上げですか?」
青年の対応に辟易したのか、その人を無視するように後ろにいる僕に声を掛けてきた。
早く買いたい僕としては好都合だったので、持っているボックスをカウンターの上に置く。
「はい、この防具を買おうと思いまして」
「! お、おまっ、その防具……!」
「え?」
すると、さっきまで店員に怒鳴っていた青年が僕が購入しようとする防具を見て驚愕していた。
中身を確認するようにジッと見た後、今度は僕の方を見てくる。
「おい、本当にこの防具を買うのか? まさかとは思うが、返品する気はないだろうな?」
「え~っと……。どなたかは存じませんが、僕はヴェルフ・クロッゾさんが作った防具を気に入ったので、最後まで使うつもりですよ」
ランクアップによる感覚のズレが無くなるまでは。
最後の一言を内心だけに留め、返答を聞いた青年は――
「ふ……うっはははははははははははは!? ざまぁーみやがれっ! 俺にだってなぁ、顧客の一人くらい付いてんだよ!!」
いきなり高らかに笑い始めた後、さっきまで食ってかかっていた店員の方に向き直って得意気になった。
店員は何も言い返せず、とても居心地悪そうに視線を左右にやっていた。
「?????」
一体何がどう言う事なのか全く理解出来ない僕は只管戸惑って首を傾げていた。
そして青年は僕の方を見て、清々しい笑みを見せる。
「ありがとな、冒険者。俺の防具を買ってくれて」
「えっ? 俺のって……ま、まさか貴方が……!?」
「おうよ。その防具の製作者はこの俺、ヴェルフ・クロッゾだ」
まさか製作者本人だったとは思いもしなかった。
驚く僕を余所に、目の前の青年――ヴェルフ・クロッゾさんは面倒見のいい兄貴分のように笑っている。
そして後ほど、僕が自己紹介した瞬間に今度は向こうが驚愕する事となる。
皆さんの予想通り、とある人物はヴェルフでした。
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