ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
ベルがバベルでヴェルフと会う前まで時間は少し遡る。
場所はダンジョン。多くの冒険者達はモンスターを倒し、魔石やドロップアイテムと言った戦利品を獲て一稼ぎしようと探索している。
突然だが、既に知っての通り『サポーター』と言うダンジョンの探索時における非戦闘員もいる。
主に魔石やドロップアイテム等の戦利品を回収し、地上に無事運び届ける事が役目だ。
前線でモンスターと戦う冒険者達に負担を掛からないよう、支援全般を担う裏方役でもある。
ベルが【ロキ・ファミリア】の遠征に参加した際、
だが生憎、それは
別の【ファミリア】では……と言うより、多くの冒険者達はサポーターを単なる荷物持ちとしか見ていない。
「遅ぇぞ! いつまで掛かってやがる!」
ダンジョン探索中に、一人の冒険者が罵声を浴びせた。
大きく膨らんだ大荷物を背負いながら、回収に少し遅れただけで、冒険者である男は遅いと責めた。
迷宮の中である為に、蔑みを隠さない声が酷く反響していく。
「申し訳ありません。遅くなりました」
「たかが魔石回収にちんたら手間取ってんじゃねぇ。ったく、能無しが!」
素早く回収しても、冒険者からすれば遅く感じたのだろう。
傲慢な言葉に憤ってもおかしくないが、罵られたサポーターはそうしないどころか事実と受け入れるように頭を下げるばかりだ。
これがもう一つの視点だった。冒険者はサポーターの重要性を全く理解しないどころか、単なる役立たずな存在としか見ていない。
何一つ文句を述べず、預かった荷物を持ち運び、言われた通り回収をしている。凄く頑張ったとアピールしても、それが当たり前だと言わんばかりに侮蔑の叱責が飛んでくる始末。
それでもサポーターは耐えらなければいけなかった。戦えない自分に代わって冒険者が頑張っているのだと必死に言い聞かせて。
けれど、冒険者はサポーターに更なる仕打ちを平然と行う。探索前に約束した少ない報酬を減額、もしくは反故にして命懸けのタダ働きをさせる事がよくある。所詮は口約束に過ぎないので。
そうする理由としてはいくつかある。自分達が満足出来る仕事をしなかった、そんな約束をした覚えはない等々と。他にもあるが、自分達が必死で頑張って得た報酬を、戦闘の役に立たないサポーターに払うのが我慢出来ない。要するに身勝手な言い分で誤魔化してるだけに過ぎないのだ。
「いいか、今度またやらかしたら
「はい」
冒険者の警告に、サポーターは頷くしか選択肢はなかった。
サポーターが冒険者に逆らえば命はない。危険なダンジョンで命を預けている以上、従うしか方法がないから。
「ああ、そうだ。もしモンスターに囲まれた時はしっかりと仕事をしろよ――
なの筈なのに、冒険者はモンスターの囮にすると言い放った。
死刑宣告も同然であるが、サポーターは絶望に打ちひしがれながらも言われた事を実行しなければならなかった。
しかし――
(はぁっ。今も変わらないですね、この世界の冒険者は。アークスのルコット様が見たら、徹底的に矯正される対象確実ですね)
言われた当人は全く気にしてないどころか、相手の身勝手な言い分に只管呆れるばかりだった。
このサポーターの正体は、先日までオラクル船団でアークスの活動をしていたメイドの少女だ。今はメイド服を脱いで、オラリオで仕入れた服とローブを身に纏っている。
彼女がサポーターとして活動しているのは、携帯端末機に反応した
なので少女は情報収集も行っている。サポーターの仕事をしながらも、一応この
(ええ、仕事はしっかりやりますよ。寧ろそうなって欲しいです。こっちからすれば、もう既に貴方様は用済みですから)
大した情報も得られないだけでなく、自分を罵倒する事しか出来ない冒険者に彼女は辟易していた。
この冒険者の実力を見ていたが、それほど強くなかった。キラーアントの大群に囲まれたら間違いなく殺されるだろうと既に見切りを付けている。
好き勝手に罵倒されていた昔の自分を思い出すだけで、
(この方をリリが愛用してる『スプレッド』で蜂の巣と針鼠か、もしくは『ブラスター』で爆殺か殴殺……おっと、いけませんね。つい本音が出てしまいました)
電子アイテムボックスに収納してる武器を取り出し、どんな風に殺してやろうかと考えるも、すぐに己を戒めた。この男を殺すのは簡単だが、色々面倒な事になってしまうと思いながら。
加えて、メイドの師であるルコットにも申し訳が立たなかった。今は別世界にいても、彼女からの教えを無下にする愚かな行為はしたくないと彼女は考えている。
(それにしても、全く反応がありませんね。今日はダンジョンにいないんでしょうか)
後を追いながらも、コッソリと携帯端末機を確認していたが、今も全くアークスの反応が無かった。
そして冒険者が雑魚モンスターを倒した後――
「ちっ、俺もあの【
(【
何やら聞き覚えの無い単語を言っていた。
少女が嘗てオラリオにいた頃、そのような二つ名を持った冒険者は記憶にない。【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】の有名冒険者は辛うじて憶えてるが、それらに全く該当しなかった。
目の前の自分勝手な
「あの、【
「あ?」
今度はさっき以上に素早く回収し、さり気なく質問をしてみた。
「なんだよ、知らねぇのか? 能無しな上に馬鹿なのかよ」
「……申し訳ありません、冒険者様。この愚かで無知なサポーターにどうかご教授を」
見下しながら蔑む冒険者の言葉に、少女は頭を下げながらどうか教えて欲しいと乞う。
すると、
「だったら情報料として、
「ええ、問題ありません」
まともに払う気もないのに何が等価交換だか、と少女は内心呆れていた。
別に報酬額を下げてまで態々聞く必要はないのだが、こんな奴でも一応冒険者だ。もしかすれば一般人と違う視点で聞けるかもしれないので。
再び移動しながらも、モンスターが現れない限り
オラリオにいる一般人でも知っている情報なのだが、少女にとっては非常に有益なものだった。聞いた内容の所々に、アークスらしき情報が多々あったので。
そして、地上へ帰還した際に約束通り、ただでさえ少ない報酬が半分となった。自分にとって都合の良い事はちゃんと記憶してるんですねぇ~と思いながら。
少女は有益な情報を教えてくれた
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