ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
ヴェルフさんと(防具のみ)直接契約を結んだ翌日の朝。僕はダンジョン探索する準備をしていた。
本当だったら昨日購入した防具を使う予定だったけど、製作者から修理と補強が必要と言われて預けている。なので今回はいつも通りのコスチューム――『シャルフヴィント・スタイル』で行く。勿論、ステルス化してるアークス用の防具もちゃんと装備済みだ。
以前まで物珍しそうに見られていたが、【Lv.3】にランクアップした為に違う意味で注目されていた。今はもう慣れてるけど、それでも警戒するように見るのは正直言って勘弁して欲しい。
そう思いながらも準備を終えた僕は私室を出て、隣の部屋の扉をノックし、少し開いてこう言う。
「神様、じゃあ行ってきますねー!」
「う~ん、いってらっしゃぁ~い……」
僕の声に反応した神様が返事をする。
言うまでもなく、隣の部屋は神様の私室。完全に扉を開けてないから見えないが、恐らく今もベッドに沈んだまま返事をしたんだろう。
聞いた話だと、昨日のバイトは凄く大変で疲れたそうだ。僕がいなくなった後、確実に二度寝をすると予想する。
確か今日もバイトがある筈だから、そろそろ起きた方が良いと思うんだけど……そこは神様の自己責任と言う事で。
言うべき事を終えたので、扉を静かに閉めた後に
(いい天気だ……)
「さあ、今日も頑張るか!」
そう意気込みながら、ダンジョンがあるバベルの塔へ向かっていく。
目的地へ近づいていくにつれて、僕以外の多くの冒険者達もそこへ向かっていた。当然、彼等もダンジョン探索をする為だ。
「おい、【
「何か聞いた話だと、このところ上層に籠ってるらしいぞ」
「マジかよ。もう『Lv.3』になってるのに、何で今更そんなところに……」
「あんなすげぇ魔剣持ってんのに、どう言うつもりなんだか……」
「ふざけやがって、普通は中層に行くべきだろう。俺達に対する当てつけか?」
………どこからか、僕に関する話し声が聞こえた。主に敵視とか嫉妬の。
別に僕は他の冒険者達への当てつけとか、何の理由もなくダンジョン上層にいたりしない。あくまでランクアップによる感覚のズレを修正する為だ。
けど、向こうからすれば知った事ではないんだろう。例え説明したところで、どの道は中層以降でやれと言い返されるオチであるのが分かってる。
それに、ああいう人達に関してはキョクヤ義兄さんより無視しろと言われてる。
思えば【ロキ・ファミリア】のフィンさん達も同様、こんな風に見られているんじゃないだろうか。有名に成れば成るほど、敵視や嫉妬されるのが、一種の宿命であるので。
僕がオラリオへ来たのは、死んだお爺ちゃんに対する親孝行だった。有名な冒険者になろうと来た訳じゃない。オラクル船団へ戻る手段がない為、このオラリオで自分がどこまでやれるか程度の事しか考えてなかった。
その結果、僅かな期間で注目されるどころか、オラリオで有名な
はぁっ………。この世界へ戻ってからもう二ヵ月以上、か。今更だけど、キョクヤ義兄さんやストラトスさんに会いたくなってきたなぁ。あの二人、今頃どうしてるんだろうか。
そう言えば、もう一人いたなぁ。アークスでありながらもメイドの仕事もしていた、少々変わった二人の幼馴染が。
オラクル船団に来たばかりの僕を親身になって接してくれたのは良いんだけど、何故かメイドの作法も教わりそうになっていた。そこはキョクヤ義兄さんが、『俺の義弟に要らん事を教えるな!』と言って止めてくれたから事無きを得てる。
今も会いたいと思ってるけど、生憎もういない。五年前のある出来事の後、行方不明となった後に死亡確認と判明したので。
でも、死亡と言っても遺体は未だに見付かってないから、ストラトスさんはどこかで生きているかもしれないと言ってる。キョクヤ義兄さんはもう既に諦めていて、僕は……どちらかと言うとストラトスさん寄りだ。
その人の名前はルコ――
「お兄さん、お兄さん。白い髪のお兄さん」
すると、自分だと思わしき少女の呼び声に、思い出そうとしていた名前を中断された。
「えっ?」
声のした方向に振り向くも、巨大なバックパックがあった。
気のせいか……何て言うのは冗談だ。下へ目を向けると、僕に声を掛けたと思わしき人物がいた。
身長は凄く小さく、クリーム色のゆったりとしたローブを身に纏い、深く被ったフードから栗色の前髪がはみ出ている。背には、僕の視界に映った巨大なバックパックを背負っていた。
見た感じ
「えっと、君は?」
「初めまして、お兄さん。突然ですが、サポーターなんか探していたりしていませんか?」
そう言いながら、少女は人差し指を僕の背へ向けた。指してる方向には僕のバックパックだ。
しかし、生憎このバックパックは周囲の人達を誤魔化すだけのフェイクだ。僕が使っているのはアークス用の電子アイテムボックスで、通常のバックパックと違って大量に収納する事が出来る。それの存在がバレないよう、この世界の冒険者に合わせるようバックパックを持ってるだけに過ぎない。
多分彼女は僕が
「あ~、その……ん?」
「もしかして迷惑ですか? 冒険者さんのおこぼれにあずかりたい貧乏なサポーターが、自分を売り込みに来ているのが……」
「いや、そんな事は思ってないから!」
どうやって断ろうかと考えるも、サポーターの少女が悲しそうに言ってきたので、思わず慌ててしまった。
でも、何だろう? 見るだけで明らかにこの世界の住人である筈なのに……この妙な違和感は一体何なんだ?
「だったらどうでしょう、サポーターはいりませんか?」
「ええっと……まぁ、丁度いいかな、とは思ってたところだから……」
「本当ですかっ! なら、リリを連れてってくれませんか、お兄さん!」
押しの強いサポーターの少女に僕はタジタジとなりながらも、それに負けてしまう事となった。
しかし、だからと言って簡単に認めるわけにはいかない。
「出来れば、君の事を教えてもらえないかな? 流石に名前も知らない君と同行するのはちょっと……」
「あっ、これは失敬。まだ自己紹介すらしていませんでしたね」
少女は一歩後ろに下がり、朗らかな笑みを浮かべながら洗練された動作でペコリと頭を下げる。
「リリの名前はリリルカ・アーデと申します。以後お見知りおきを」
………あれ? あの動作、どこかで見た事があるような……。どこで見たんだろうか?
新たな違和感が浮上した事に、僕は記憶の奥底から引っ張ろうとするも全然思い出せなかった。
やっと出会う事が出来ました。
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