ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
「のう、フィン。ベルの奴がここ最近らしからぬ行動をしているようだぞ」
都市北端、【ロキ・ファミリア】
とある調査をしている彼等だが、未だに進展がない状態だった。
加えて
それでも地道に何とかやっているも、不意にガレスがベルの話題を出してきた。
話しかけられたフィンだけでなく、リヴェリアも同様に反応して振り向いている。
何の尻尾も掴めてないから気分転換代わりとしてガレスが振ったから、二人も敢えて乗ろうとした。
「彼がどうしたんだい?」
「『Lv.3』になったベルが何故かダンジョン上層に留まっているようだ。それを目撃した冒険者達から疑問視されとるらしい」
「んー……多分ランクアップ後に起きる感覚のズレを修正してるんじゃないかな。ベルは普通の冒険者と違って、一年も経たずにランクアップしてるからね」
「それを理解してるから上層にいるんだろう。賢明な判断だな」
他の冒険者達は自分達に対する嫌味と思っているが、フィン達は逆に理解してるどころか賞賛していた。寧ろそれは当然の事だと言わんばかりに。
第一級冒険者の彼等はそう言う経験をしているからこその視点と言えよう。未だランクアップをしてない下級冒険者からすれば知った事ではないのだが。
話を振ったガレスも当然、フィン達と同じ考えでいる。しかし、次の話題はすぐに答えが出ないだろうと思いながら口にした。
「その上層におるベルが、何とサポーターを雇ったようだぞ。しかも
「え?」
「確かベルには収納スキルがあった筈だ。態々雇う必要性などないと思うが……」
リヴェリアもすぐに答えが出なかった。以前の遠征でベルがバックパックが必要無いスキルがあると聞いたから、何故今になって雇ったのかが分からない様子だ。
「今後パーティを組む際の経験として雇ったのではないのか? あの小僧は腕が立つとはいえ、まだまだヒヨッコな部分があるからのう」
「我々に言ってくれれば喜んで手伝うのだが。もう知らぬ仲ではないと言うのに」
「お主の場合はそれを口実に、あの杖を貸してくれと強請るのが容易に……冗談じゃリヴェリア、そう睨むな!」
リヴェリアが眉を顰めながら睨んできたから、からかっていたガレスは降参の意を示すように両手を軽く上げる。
「まぁまぁ二人とも。しかし、ベルがサポーターを雇ったのは意外だけど、それもまさか
フィンは宥めながらも思い出す。ロキや団員達に内緒でベルと二人で飲みに行った時の事を。
その際に『結婚する相手は
もしや本当に自分の為に嫁探しをしてくれている……何て事を微塵も考えていない。ただの偶然だとフィンは結論する。仮にそんな事をすれば、ベルは間違いなくティオネに命を狙われる破目になる。言うまでもなく
フィンとしてもそんな命知らずな行為はして欲しくないし、ベルと決裂する事は避けたい。前回の遠征で漸く友好的な関係を築き上げたのに、こんな私事交じりの出来事で断たれてしまっては堪ったものじゃない。
そうなれば未だあの杖に執着してるリヴェリアが本気で怒る上に、ベルにベタ惚れのティオナが【ヘスティア・ファミリア】に
それはそうと、フィンはリヴェリアとガレスとは別の視点で考えていた。ベル側にではなく、そのサポーターについて。
(他の冒険者達とは違う理由があってベルに接触した、としか今は考えられないね)
これまでベルが今まで他の冒険者達からパーティを組もうとしてるのを断っているのを知っている。ベルの武器や魔法目当てという理由も含めて。
そんなのが今も後を絶たないと言うのに、雇ったサポーターはそれに該当しないかのようにベルと行動している。だから何か別の目的があって接触したのではないかとフィンは予測したのだ。それが何なのかまでは流石に分からないが。
もしも出し抜く行為をしても、あの用心深いベルから簡単に逃れる事は出来ないと踏んでいるが、それでもフィンとしては少しばかり不安だった。彼は強くても結構お人好しなところがあるので、そこを上手く利用されるんじゃないかと危惧している。
と言っても、例えそうなったところでベルの自己責任になってしまう。他派閥の【ファミリア】に隙を見せてはいけないのがオラリオの常識となってるから、それを知らずに隙を見せたベルが悪いという事になるので。
(まぁ結果はどうあれ、僕達が口を挟む事じゃないんだけどね……)
いくら繋がりがあるとは言え、正式な同盟をしていない【ファミリア】相手に口出しをする権利はない。尤も、向こうから助けを求められたら喜んで手を差し伸べる。
そんな中、執務室の扉からノックする音がした。それを聞いたフィンは入室を許可すると、入って来たのはラウルだった。
「団長、失礼するっす」
「何かあったのかい? 君は確か明日までダンジョン探索すると聞いたはずだが」
今は既に夕方だが、彼は今朝からダンジョンに行っていた。調査が思うように進まない事もあって、フィンは団員達に気分転換をさせようと自由時間を与えていた。
目の前にいるラウルは『Lv.5』にいつでもランクアップ可能だが、それに見合う為のアビリティを上昇させようと、珍しく単身でダンジョン探索をしようと出掛けていた。
本当なら明日に帰って来る予定だったのだが、一日も経たず夕方に帰って来たので、話を聞いていたフィンが疑問を抱くのは当然だ。
「急遽報告する事があって……団長、悪いっすけど場所を変えて貰っていいっすか?」
「それは何故だい? 報告ならここで問題無いと思うが」
「いや、その……出来れば先ずは団長だけに話しておきたくて」
「………分かった。なら別室で聞くとしよう」
訝るフィンにラウルが段々と言い難そうな表情となる。主にリヴェリアの方をチラチラと見ながら。
取り敢えずは向こうに合わせておこうと思い、執務室から出ようと席を立った。
「どうしたんだ、ラウルは? 何故か私を見ていたが、訳が分からないぞ」
「さぁのう」
ラウルの行動を不審に思いながらも、リヴェリアとガレスは後で分かるだろうと思い、再び本日の情報整理を再開する事にした。
そして、別室に案内されたフィンは――
「……………えっと、もう一回言ってくれないかい?」
「信じられないと思うけど事実っす。ベル君が、
「……………リヴェリアが暴走してもおかしくない内容だね」
ラウルからの報告を聞いて久々の頭痛に襲われていた。ベルの非常識極まりない行いに対して。
そして納得した。何故自分だけにその報告をしたのかを。もしも執務室でそんな事を話したら、一緒に聞いていたリヴェリアが速攻でベルがいる
俄かに信じ難い内容極まりないが、ラウルが嘘を言うとは思えないし、あの
いずれ自分達も直接目にする事になるだろうが、それまで誰にも喋らないようフィンはラウルに箝口令を敷いた。特にリヴェリアやレフィーヤなどの魔導士達には絶対口外しないようにとキツく厳命して。
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