ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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久しぶりの更新ですので短いです。


予想外の出会い⑫

 カヌゥ達に襲われてから一時間後――

 

「どうしたんじゃリリちゃん、帰って来るのが遅かったじゃないか。(じじい)ちょっと心配したぞ」

 

「ごめんなさい。ちょっとばかり寄り道してしまいまして」

 

「……まぁリリちゃんも女の子じゃから、寄り道の一つや二つするのは当然か。じゃけど、今度から前以て言ってくれ」

 

「はい、気を付けます。なのでご心配を掛けたお詫びとして、今日は急遽お爺さんが食べたいご飯を作ろうと思います」

 

「本当か? 今日は病人食の筈なのに」

 

「お爺さんの様子を見る限りもう大丈夫そうですから、一日早くする事にしました」

 

「ほほう、それは朗報じゃわい。急に夕飯が楽しみになってきたのう」

 

「あ、だからと言って急に身体を動かさないで下さいね」

 

「分かっとる分かっとる。リリちゃんの料理が出来るまで、(じじい)大人しく待っておるわい」

 

「それを聞いて安心しました。では早速作りますから、暫しお待ちを」

 

「うむ」

 

 ――リリルカはボム爺さんの質屋へ戻っていた。それどころか全くの無傷で、何事もないように料理を作る準備に取り掛かろうとしている。

 

(………フフフフフフフ。カヌゥ様たち、明日どうなるか楽しみですねぇ~♪)

 

 調理中に待ち遠しいと言わんばかり、凶悪な笑みを浮かべていた。

 

 何故彼女がそうなっているのか、それは本人にしか分からない。

 

 

 

 

 

 

 ヴェルフさん……いや、ヴェルフから『クロッゾ』の家系について、そして魔剣嫌いの話も聞いた。

 

 神々が下界に降り立ち人々に『神の恩恵(ファルナ)』を施すのが主流となった神時代よりも前、人々が『神の恩恵(ファルナ)』無しにモンスターと戦った古代。モンスターに襲われていた精霊を助けた初代クロッゾは、お礼として与えられた精霊の血によって魔剣を造る事が出来た。初代以降の血縁者も、その身に宿した精霊の血の恩恵で強力な魔剣を造る事が出来た事から「魔剣鍛冶師の一族」と呼ばれるようになった。

 

 強力な魔剣を王家に売り込んで地位を得た事により戦争で敵知らず、更には称賛の声と褒美も引っ切り無しだったようだ。それで味を占めたクロッゾは段々思い上がるようになって、殆どが私利私欲の為だけに、魔剣を安易に量産し続けた結果……悲劇が起きてしまった。

 

 どうやら王国は戦争中に暴れ回っていた際、エルフの里までも焼いてしまったようだ。言うまでも無く、クロッゾの魔剣を使い続けた事によって。その所為でエルフ達は『クロッゾ』に憎しみを抱き、今でも恨んでいるほどの魔剣嫌いがいるとか。

 

 しかし、エルフだけじゃない。初代に血を与えた精霊達からも恨みを買ってしまった事により、そこで悲劇が起きてしまった。

 

 精霊は自然豊かな土地に好んで住み着く。そこを魔剣の力で山は抉れ、湖は干からび、森は燃えてしまった為、精霊達も居場所を追われただろうとヴェルフはそう見解していた。

 

 正に恩を仇で返されるような結果になってしまい、『クロッゾの魔剣』から大切なものを奪われた精霊達が怒りを示すのは当然であった。

 

 その報いなのか、王国が戦場で使おうとしていた全ての魔剣が、何の前触れもなく破砕したみたいだ。使用する前に木端微塵となってしまい、王国軍はあっと言う間に惨敗。いかに魔剣に頼りきりだったのが僕でもよく分かる。

 

 今まで常勝無敗であった王国はその後も連戦連敗と言う悲惨な結果が続き、その責任を『クロッゾ』に全て負わせた挙句、地位も剥奪されてしまった。いわゆる没落貴族となってしまい、ヴェルフが生まれた頃には家は完全に廃れ切っていたようだ。

 

 キョクヤ義兄さんが知れば、絶対に侮蔑の言葉を送っているだろう。魔剣に頼り切っていた王国と、精霊の血を自分の力だと思い上がったクロッゾに対し、『堕落し力に溺れきった醜く愚劣極まりない莫迦共だ』と。

 

 僕も似たような気持ちだけど、王国に対して嫌悪感を抱いている。散々他人の力を借りておきながら、負けた理由を他人の所為にした挙句、責任転嫁して平然と切り捨てる行為に。

 

 そう言った個人的感情を別として、『クロッゾ』は魔剣が作れなくなったけど、ヴェルフだけが何故か打てるようだ。それは当の本人も全く分からないまま、今も理由がはっきりしてないと言っていた。

 

 打てると知った彼の家族は魔剣を作るように強要し、嘗ての栄華を取り戻すと聞いた事で、嫌気が差したヴェルフは故郷を飛び出してオラリオに流れ着き、ヘファイストス様に拾われ今に至っている。

 

 他にも魔剣が嫌いだと語ってくれた。如何に強力無比でも、使い手を残して必ず砕けていくのが嫌だから絶対に打たないと。そんな中、彼の魔剣に対する認識が変化したようだ。僕が『壊れない魔剣』を持っていると知った事で。

 

 尤も、それで完全に認識を改めた訳ではない。あくまで僕の持ってる武器に興味を抱いただけに過ぎなく、未だ壊れる魔剣を嫌っているままだった。

 

 それ等の話を一通り聞いた僕は、思わずある事を訊いてみた。「壊れない魔剣を作る事は出来ないんですか?」と。

 

 一瞬面を喰らったような表情になるヴェルフだったが、即座に無理と言う答えが返ってきた。魔剣と言うのは本来、刀身に魔力が籠められている物で、それを使い果たしてしまえば砕け散ってしまう代物であると、前に説明してくれたヘファイストス様と全く同じ内容だった。

 

 だから、どうして僕の魔剣が今も壊れずに維持出来ているのかと疑問を抱いているらしい。これは彼だけじゃなく、椿さんやヘファイストス様、そして他の魔剣鍛冶師達も相当気になっているようだ。 

 

 直接契約を結んだとは言え、いくらヴェルフでも流石に異世界の武器を教える訳にはいかない為、僕は(ぼか)すようにこう答えた。フォトンを魔力と置き換えて、「僕が使ってる魔剣は、自身や周囲の魔力を吸収する事で壊れる事はない」と。

 

 言っておくが別に嘘は吐いていない。アークス製の武器は、体内にあるフォトンエネルギーを利用するのが条件となっている。例えそれが尽きようとしても、大気中に存在してる魔力(フォトン)を取り込む事で、アークスの僕は武器を使い続ける事が可能なのだから。

 

 その直後、何故か分からないがヴェルフは途端にポカンとした表情になり、僕が帰るまでずっと上の空だった。

 

 

 

 

 

 

 騒がしいギルド本部で、多くの冒険者達がロビー内を行き来している。

 

 そんな中、僕は受付に向かっていた。

 

「え? いないんですか?」

 

「ゴメンねぇ~。エイナは今日視察に行ってるのよ」

 

 受付にいるエイナさんの同僚――ミィシャさんに訊ねるも、少しばかり面を食らっていた。いつも待機してる筈のエイナさんがいない事に。

 

 昨日にヴェルフの事を報告するつもりだった。ダンジョン探索だけでなく、()()()と直接契約を結んだ事を報告するのも必要であったから。

 

「ギルドが視察するなんて、何か遭ったんですか?」

 

「【ソーマ・ファミリア】が問題行動を起こしたのよ」

 

 え? 確かそこはリリが所属してる【ファミリア】の筈じゃ……?

 

 僕が彼女の事を思い出している中、ミィシャさんは話を続けようとする。何でも昨夜に【ソーマ・ファミリア】に所属する男性冒険者数名がとんでもない事をしていたそうだ。

 

 通報者の話によると、酒で酔い潰れた男達が重傷になるほどの大喧嘩をして倒れた挙句、強臭袋(モルブル)を周囲に撒き散らしていたらしい。それを聞いた【ガネーシャ・ファミリア】が出動し、彼等を即座に幽閉して尋問した結果、【ソーマ・ファミリア】に所属する冒険者達だと判明。これを聞いたギルドは、流石に看過出来ないと判断して視察する事を決定したそうだ。

 

 中立であるギルドが【ファミリア】の本拠地(ホーム)を訪れるのは不味い。けれど【ソーマ・ファミリア】は今回起きた件以外にも問題行動を頻発してるらしく、エイナさんも含めたギルド職員達が、調査も兼ねて視察しに行ったとか。

 

「そう言う訳で、視察が終わるまでエイナは戻ってこないのよ」

 

「分かりました。では明日にもう一度伺います」

 

 エイナさんがいないと分かった以上留まる理由が無いから、僕はギルド本部を後にした。

 

(リリ、大丈夫かな?)

 

 歩きながら僕は考えていた。

 

 ギルドが【ソーマ・ファミリア】の本拠地(ホーム)へ視察に行ってるなら、間違いなくリリも其処にいる筈。だから明日に予定してるダンジョン探索に支障を来たすどころか、延期になってしまう可能性が充分ある。

 

 どんな結果になるかは分からないけど、今の僕に出来るのは、リリの身が無事である事を祈るしかないか。

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