ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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久しぶりの更新か、ダラダラ感がある内容です。


予想外の出会い⑭

 ロキ様から【ソーマ・ファミリア】の内情も含めた情報を一通り聞いて色々な意味で愕然とした。

 

 まず最初に、僕が六万ヴァリスで買った神酒はソーマ様にとって『失敗作』らしい。それを聞いた瞬間に僕は『これが失敗作!?』と思わず叫んでしまうほどだ。僕の反応にロキ様は『まぁそれは当然の反応やな』と苦笑していたが。

 

 それとは別に『完成品』の神酒があって、市場で売られている物とは全く異なると言っていた。一口飲んだだけで心から酔いしれるほどにヤバいと。分かり易く言えば、酒によって心身を掌握されてしまうという事だ。

 

 僕は思わずゾッと寒気に襲われながら、ある意味『魅了(チャーム)』より性質が悪い代物だと内心思った。そんな物を飲んでしまったら正気でいられなくなる他、悪い方向に性格が変わってしまいそうであったから。

 

 その懸念が的中した訳ではないが、【ソーマ・ファミリア】の眷族達は完成品の神酒を飲んだ事で酔いしれただけでなく、それをもう一度飲みたいが為に必死でお金を搔き集めているそうだ。僕は直接見てはいないが、ギルドで換金する際に相当揉め事になっているとか。

 

 まだ他にも向こうの内情について色々教えてもらうも、その団員の一人であるリリが気掛かりだった。あの子も完成品の神酒を飲みたい為にお金を集めているのかと。

 

 今まで一緒にダンジョン探索をしていた際、酒に溺れた感じはしなかったどころか、お金を沢山欲しがる素振りも一切無かった。僕にそう気付かせない為の演技をしていると言えばそれまでだが。

 

 気になる点があるとすれば、あの子は何故か僕が使う魔剣や魔法について知りたがっていた。正確にはアークス製の武器とテクニックをだけど、ね。因みに今はまだランクアップの感覚のズレを修正してる最中である為、ミノタウロスの大剣しか使っていなく、次の探索ではヴェルフが用意した防具を使う予定だ。自分が考えていた以上に感覚を修正するのは大変だと認識させられる。

 

 そして情報を全て聞いた僕は、約束通り失敗作の神酒をロキ様に渡した後、自身の本拠地(ホーム)へと戻った。

 

 帰ってる途中で――

 

「よっしゃ~! ベルに買ってもらったこの酒で一杯やるでぇ~!」

 

 ロキ様が周囲に自慢するかのように叫びながら去って行くのを見て、少しばかり嫌な予感がしたのは僕の杞憂であって欲しかった。もしティオナさんの耳に入ったら絶対面倒な事になりそうな気がしたから。

 

 

 

 

 

 

 情報を教えて貰った翌日の午後、僕はバベルの門の前へやって来た。

 

 今日は午後からリリとダンジョン探索を再開する予定となっている。

 

 前回と同じく感覚のズレを修正をする為に上層に籠るので、いつもの大剣を使うのだが、ヴェルフが補強してくれた防具『(ピョン)(キチ)Mk(マーク)II(ツー)』を身に纏っている。

 

 ヴェルフの手前だったから敢えて何も指摘しなかったけど、ネーミングセンスが非常に残念だった。キョクヤ義兄さんがいたら、絶対ボロクソ言った後に訂正してるだろう。僕としても『(ピョン)(キチ)』じゃなく『(ラビット)(アーマー)』が無難かと思う。

 

 まぁ向こうが本気で考えたから、下手にケチを付けたら関係が悪化してしまいかねない。取り敢えずは『(ピョン)(キチ)』で通すけど、もし新たな防具を作ってくれた際、余りにも酷い名前だったら流石に訂正するつもりでいる。

 

「ベル様」

 

「!」

 

 思考が打ち切られる。

 

 僕の名前を呼ぶ声に、ヴェルフの防具から意識が舞い戻った。

 

「リリ、おはよう」

 

 考え事をしていたのを気付かれないよう、僕はすぐに返事をする。

 

 リリは僕の格好が気になるのか、少々興味深そうな目をしていた。

 

「おはようございます、ベル様。この度はリリの都合に合わせて頂き申し訳ございませんでした」

 

「気にしてないから大丈夫だよ。こっちも色々やる事があったからね」

 

 実際それは本当だ。この二~三日の間、驚く事が起きていた。特に略式複合テクニック、複合属性テクニックの計六つを習得出来たのが一番の驚きだ。

 

 ファントムクラスは本来、それらのテクニックを使用する事が出来ない制限となっている。けれど、魔導書(グリモア)によって何故か強制発動して今も原因が分からない。もし僕と同じアークスが知れば絶対に驚くだろうと断言出来る。尤も、この世界に僕以外のアークスなんていないから、そんな展開は絶対に起きたりしない。

 

 他にも【ソーマ・ファミリア】の内情について、ロキ様のお陰で一通り判明している。色々と問題行動を起こしていた事も含めて。

 

 午前中にギルドへ寄って聞いてみたところ、今まで彼等が換金所でやらかした問題点を突いたそうだ。そして今回起きた住民に迷惑を被った件が決定打となった事で、【ソーマ・ファミリア】には(ペナルティ)を下したらしい。数々の迷惑行為を仕出かしたと言う理由で、多額の罰金を科した以外にも、警告も兼ねてソーマ様が酒造りをする為の器材も没収したとか。

 

「あ、ところでギルドが昨日、【ソーマ・ファミリア】の本拠地(ホーム)へ視察しに行ったみたいだけど、リリは大丈夫だった?」

 

「ご心配には及びません。主に対応していたのは団長様でしたから」

 

「そっか」

 

 良かったぁ~。もしかしたらと懸念していたけど、どうやら僕の思い違いみたいだ。てっきり目を光らせたエイナさんが厳しく追及してるかと失礼な事を考えていたが、これは僕の心の内に閉まっておく。

 

 あ、そう言えばエイナさんから妙な事を訊かれたな。僕がサポーターとして雇っているリリについて。

 

 質問の意図が全く分からなくて戸惑うも、エイナさんはダンジョン探索を終えてギルドに寄る際、リリも連れて来れてきて欲しいと言われた。どうしてなのかを訊いても、ギルドへ来た時に説明するとの事だ。

 

「ねぇリリ、今日は探索を終えたら一緒にギルドへ行こうか。そこにいる僕の担当アドバイザーが顔合わせしたいみたいで」

 

「っ……」

 

 あれ? 急に顔色が変わったけど、何か不味い事を言ったかな?

 

「そうですか。アドバイザー様には大変申し訳ないんですが、リリは今日の探索を終えたら、すぐにお爺さんの様子を診なければいけませんから、またの機会にして下さい」

 

 すぐ元に戻ったリリは今日は無理だと言ってきた。

 

 お世話になってるお爺さんの腰が回復したと言っても、まだまだ予断を許さない状況らしい。

 

「でもそこで換金もするから、報酬を分け合わないと」

 

「それは明日で大丈夫です。普通は当日にやるのが当たり前ですけど、ベル様は他の冒険者様と違って誤魔化したりしないのは分かってますから」

 

 僕を信用している、って事で良いのかな? 

 

 と言うより、リリの言う他の冒険者達ってそんなに信用出来ないのだろうか。報酬を誤魔化すだなんて、それは冒険者以前に人として問題があると思うんだけど。

 

 けどまぁ、事情があるんだったら次の機会にしよう。他人の事を余り詮索すべきでないし、別に急いでギルドへ連れて行く必要なんてないから。

 

 それはそうと、久しぶりにリリとのダンジョン探索なので、一先ずそっちに意識を向ける事にした。今日は『大型級』のモンスターがいる10階層まで行く予定になっている。そこへ行く前に、途中で肩慣らしや、初めて纏う防具でどこまで動けるかを確かめなければならない。

 

「ベル様、先程から気になっていたのですが、その軽鎧(ライトアーマー)はリリがいない間に購入したのですか?」

 

「うん。同時にコレを作ったヴェルフって言う()()()と会って直接契約した後、補強もしてくれてね。今日初めて使うんだよ。因みに名前は『(ピョン)(キチ)MK(マーク)(ツー)』って言う銘だよ」

 

「……ベル様、大変大きなお世話だと重々承知して言わせてもらいますが、その()()()との契約を考え直した方が良いですよ」

 

「何で!? これ結構良い出来なんだよ!?」

 

「それ以前の問題です! 何ですか『(ピョン)(キチ)』って!? そんなダッッサ過ぎる名前を付けられた軽鎧(ライトアーマー)が逆に可哀そうですよ!」

 

「そこまで言う!?」

 

 確かにリリの言ってる事は分からなくもない。

 

 やっぱり他の人からしても、ヴェルフのネーミングセンスは残念にも程があるようだ。

 

 

 

 

 

 ここで時間は昨日に遡る。

 

 

 

「成程、そう言う事だったのか」

 

「も、申し訳ありやせん……」

 

 ザニスは保釈金を支払った事で戻って来たカヌゥ達を呼び出し、一連の経緯を聞いた。

 

 どうやら仲間が偶然にも数年前に死んだ筈のリリを目撃して、それを知ったカヌゥは捜すついでに金を頂こうと考えていたようだ。小綺麗なメイド服を身に纏っていたから、さぞかし裕福な暮らしをして金もたんまり持っている筈だと。

 

 そして帰ろうとしている最中に逃げられないよう挟み込もうとした。数年経っても所詮は貧弱な小人族(パルゥム)だから、此方が軽く脅せば出してくれるだろう。抵抗したところで、力の差を教える為に少し痛めつければ良いとも考えながら。

 

 カヌゥ達はそう高を括って襲い掛かったが、そこで予想外な事態が起きてしまう。リリが突然見た事の無い武器を出した瞬間、それを仲間の一人に向けた瞬間に倒れた。余りの痛みに悶え苦しむ姿を見せていて、死なずに済んでいる。

 

 それを見て魔剣かと思って警戒するも、リリが空かさず今度は自分達にソレを向けて何かを放った。足に当たった瞬間に途轍もない激痛が走って悶えているところを――

 

『どうです? 弱者だと思っていた相手にやられる気分は』

 

 その台詞にカヌゥはふざけんなと怒り狂った。お前が強気になってるのは魔剣があるからだろうと。

 

 だが、その叫びを無視するようにリリは容赦無く撃ち続けた。何度も喰らった事で意識を失ってしまう程に。

 

 意識を取り戻すも、自分達は何故か【ガネーシャ・ファミリア】に連行されていた挙句、住民に迷惑行為を仕出かしたという事で幽閉されていた。それは俺達じゃないと否定するも、【ソーマ・ファミリア】は以前から問題行動が頻発してる事もあって全く信用されなかったのは言うまでも無い。

 

 あのガキ(アーデ)に罪を擦り付けられたのだとカヌゥ達は気付くも、結局は団長のザニスが保釈金を支払うまで牢屋から出れず仕舞いで、そして今に至る。

 

(コイツ等に聞く前から既に確認済みだが、生きていたのは間違いないようだな)

 

 カヌゥ達に話を聞く前、主神(ソーマ)に確認していた。数年前に死んだリリルカ・アーデに刻まれた恩恵(ファルナ)の状況を。

 

 唯一の趣味を奪われたソーマは抜け殻のようになっていながらも、今も繋がっていると答えてくれて、やはり自分の推測は正しかったとザニスは確信に至った。

 

 しかし、リリがカヌゥ達を簡単に倒す事が出来る魔剣を持っていたのは予想外だった。いくら『Lv.1』の雑魚(クズ)共とは言ってもそれなりの実力は持っている。同じ『Lv.1』である筈の小人族(パルゥム)程度なら簡単に倒す事が出来る筈。

 

(アーデが魔剣を持っているなら厄介だな)

 

 ザニスは『Lv.2』だから、実力だけなら問題無く倒せると考えている。けれど、魔剣となれば話は別だった。それの有無で勝率が大きく変わってしまう。

 

 カヌゥ達の言ってる魔剣が相当危険な物であれば、間違いなく自分もあっと言う間に倒されるだろう。魔剣の恐ろしさを理解しているが為に。

 

「一先ず話は分かった。とは言えお前達が私に多大な迷惑を被り、剰え保釈金まで支払わせたのだ。暫く私の言う通りに動いてもらう。文句は言わせないぞ」

 

「も、勿論でさぁ。団長が助けてくれなかったら、俺達はこうして助かってませんから」

 

 カヌゥ達としては本当なら断りたい。普段から金や神酒(ソーマ)を独り占めしてるクソ野郎なんかに従いたくないと叫びたい程だ。尤も、それは他の団員達にも言える事だが。

 

 だが彼に大きな借りが出来たのは事実である為、ここは大人しく従う選択しかなかった。

 

「なら結構。さて、生きていたアーデの話に戻るが、奴の居場所はもう分かっているのか?」

 

「へ、へい。どうやら『ノームの万屋』と言う質屋に隠れ住んでいるみたいでして」

 

「そうか」

 

 嘘を言っていないと分かったザニスは考え、そして命じる事にした。

 

 

 

 

 

「さぁ~今日は飲むで~!」

 

 突然話は変わって、【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)

 

 ベルから神酒を受け取ったロキはハイテンションのまま、神室へ向かおうとしていた。

 

「ねぇロキ、どうしたの? 何か凄く機嫌良いみたいだけど」

 

 途中で一人の女性団員と遭遇するも、ロキは振り向きもせず自慢気にこう言った。

 

「いやなぁ~、今日偶々会ったベルに神酒(コレ)買ってもろうたんや~♪」

 

「…………………………はぁ!?」

 

 本当は情報を提供する事で神酒を貰えたのだが、ロキからすれば無償(タダ)でプレゼントされたも同然だった。

 

 それを聞いた女性団員――ティオナが無言となったが、すぐ正気に戻って詰め寄ろうとする。

 

「ちょっとロキ、それどういう事!?」

 

「んあ!? って、ティオナやったんか!」

 

 いきなりの事にロキは困惑するも、よく見たらティオナだと判明して不味いと焦り出した。

 

 知っての通りティオナはベルに絶賛ベタ惚れ中で、ベル関連の話になると物凄い勢いで食いつく事がよくある。加えてここ最近会えてない為、フラストレーションが溜まっている一方でもあった。

 

「ロキだけずる~い! って言うか何でアルゴノゥト君にお酒買って貰ったのさー!」

 

「ま、待てティオナ、落ち着かんか! これにはちょいと理由(わけ)があるんや!」

 

 両肩を掴まれ思いっきり揺さぶられてるロキだが、どうにか神酒を落とさないようにしながらもティオナを宥めていた。

 

 因みにこの光景を他の団員達も見ているも、下手に関わりたくないと思っているのか、敢えて素通りしている。




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