ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
オークやインプだけでなく、蝙蝠型のモンスター『バットバット』も群れで出現する事もあったが、苦戦する事も無く大剣だけで全て倒した。
戦ってる最中、霧によって時々リリを見失いかける事はあったけど杞憂で済んでいた。付かず離れずの距離を維持していただけでなく、戦闘してる僕の妨げにならないようモンスターの死骸を運んでいたのだ。お陰で凄く戦いやすく、効率良くモンスターを倒す事が出来た。
やっぱりサポーターがいると非常に戦いやすいとつくづく思う。冒険者の事を考えながら動いてくれるから、僕としては今後も雇い続けたい程だ。と言っても、それはあくまで上層限定だけど。
僕がメインで行ってる中層は『Lv.1』のリリを連れて行けない。あそこは今いる上層と違ってモンスターの強さだけでなく、出現頻度も全く異なっている。アークス製の武器を使えば問題無いけど、大剣だけで戦う今の僕でも正直厳しい。
もし行くなら他の冒険者も連れて行くのが理想だけど、【ロキ・ファミリア】を抜きにして、この前僕が直接契約をしたヴェルフぐらいしかいない。彼は
と、それはあくまで僕の希望的観測に過ぎない。勝手に役割を押し付けられるヴェルフとしては堪ったモノじゃないだろう。加えて『Lv.1』だと教えてくれたから、中層に同行させるのは無理がある。
「ベル様、そろそろ戻りませんか?」
残り一体のオークを大剣で仕留めると、リリが帰還しようと言ってきた。
モンスターの群れを一通り倒した後に休憩――リリはその間に魔石回収――を何回も繰り返した事で、このルーム周辺の地面はモンスターの灰が散らばっている。代わりに魔石は全てリリが回収済みで、大きなバックパックが満杯と言わんばかりに膨らんでいた。
上層にいるモンスターの魔石は余り大きくないと言っても、数多く積もればそれなりに稼ぐ事だって出来る。他の冒険者からすれば獲物を狩られた事で不満を言うかもしれないが、幸いにも此処は僕達以外の冒険者はいない。なので僕は現れるモンスターを遠慮無く狩りつくしていた訳である。
その際、大型であるオークとの戦いは好都合であった。今まで小型モンスターばかりだったから、感覚のズレを修正するには大型モンスターも一緒に戦わなければならない。だから今日はとても良い経験になった。
「そうだね。じゃあ戻ろう」
時間も時間だったので、僕はリリの言う通りにしてダンジョンを出ようと地上へ向かう。
☆
「え? アーデ氏はもう帰っちゃったの?」
「はい。下宿でお世話になってる人を診なければいけないと言われまして」
ダンジョンから帰還して早々、リリは探索する前に言った通りすぐに僕と別れた。さり気なく少しでも良いから顔合わせしに行こうと言っても、リリはお爺さんを優先したいと断られている。何だかまるでギルドに行くのは不味いみたいな感じで。
その後に僕はギルドへ足を運び、向こうが用意してくれた魔石入りの大袋を換金所に渡した後に約四万ヴァリスとなって返ってきた。塵も積もれば山となるって、正にこの事を言うだろう。
換金を終えて今度は受付にいる担当アドバイザーのエイナさんに会って、今日の成果を報告して今に至る。
「そうなの。出来れば今日会いたかったんだけど……」
「?」
僕の返答を聞いたエイナさんは何故か凄く残念、と言うより疑問が解決出来ないように嘆息していた。
前から気になってたけど、何だかリリに対して凄く気になってるような気がする。午前に此処へ来た時にも、エイナさんから探索を終えたらリリを連れて来るよう僕に念を押していた。
「あの、エイナさん。どうしてそこまでリリに会いたいんですか?」
「…………………」
僕の質問にエイナさんは途端に無言となった。まるで何か言い辛そうな感じがする。
一体何なんだ? 逆に物凄く気になってしまうんだけど。
僕が益々疑問が深まっていく中、無言だったエイナさんは意を決したかのように口を開く。
「ベル君、ボックスに行こうか」
「えっ……」
きょとんとしてる僕だが、エイナさんは気にせず連れて行こうとする。
「エ、エイナさん、これって……!?」
先程まで打って変わるように、僕は驚愕していた。手元にある資料用のファイルを見て。
場所は面談用ボックス。冒険者と担当官が打ち合わせをする遮音性の高い一室で、エイナさんが此処へ来る前に持って来たファイルを渡された。
ファイルの中身は【ソーマ・ファミリア】に関する資料であり、本来は冒険者の僕が見てはいけないけど、今回は事情があって見せてくれた。一人の構成員に関する情報を。
目にしてる情報内容はサポーターの『リリルカ・アーデ』で、今日一緒に探索した
どうして僕に見せてくれるのか疑問を抱きながらも目にすると、信じられない内容が記載されていた。リリは数年前からダンジョンで消息不明になっていると。
最初は一体何の冗談だと思っていたが、エイナさんが何の意味も無く僕にファイルを見せたりしない。益してやコレはギルドが調書した内容だから、決して虚偽ではない筈だ。もし違っていたら、それは【ソーマ・ファミリア】がギルドに虚偽報告をしたと言う事になる。
「あ、あの、これって本当なんですか……?」
「ベル君が疑いたくなる気持ちは分かるわ」
ギルドを疑っているような言い方をする僕に、エイナさんは不快にならないどころか同意するように頷いていた。
「ソレを確かめる為、私は昨日【ソーマ・ファミリア】を視察しに行ったのよ」
ファイルに書かれた内容が事実であるか確認する為に、受付嬢である筈のエイナさんも同行したと言う訳だったのか。
僕も知っていたら、間違いなく【ソーマ・ファミリア】について調べてもらうよう頼んでいただろう。行方不明中になってる筈のリリが生きているのは一体どう言う事なのかと。
「結果はどうだったんですか?」
「何か誤魔化してるような感じはしたけど、少なくとも生きている事は全く知らない様子だったわ」
彼女が本物のリリルカ・アーデ氏であれば、エイナさんはそう付け加えた。
(どう言う事だ? 僕が今まで会っていたリリは偽物、なのかな?)
死んでいた人物に成りすまして冒険者に接触するのは、正直言って危険な行為だ。それは【ファミリア】だけでなくギルドからも問題視されるから、もし発覚すれば懲罰は免れない。
だけどリリが本当に生きているのであれば、どうして態々僕とサポーター契約を結んだのだろうか。そんな事をすれば自分の存在が周囲に知れ渡ってしまうと言うのに。加えて【ソーマ・ファミリア】も絶対に黙っていない筈だ。何か理由があるにしても、それはリリ(と疑わしき人物)に問わなければ分からないが。
話を聞いた以上、リリの事を確かめなければならないようだ。明日もダンジョン探索する予定になっているから、その時に訊けば良いのだが、生憎今の僕はとても悠長にしていられる気分じゃない。
☆
エイナさんとの話を終えた僕はギルドを後にして、リリが下宿先でお世話になっている所へ向かう事にした。
確か『ノームの
こういう時にオラリオを散策して良かったと思いながら、僕は人のいない場所で端末機を取り出して起動する。
「え……」
僕は思わず言葉を失ってしまう。端末機を起動して早々、誰かが僕に連絡したと思われる通信ログが表示されていたのだ。しかもそれは昨日だけでなく、ログを遡れば一週間以上も前から続いていた。
それはつまり、僕と同じアークスの誰かがこの世界にいるという事になる。しかも一週間以上も前から。
(何で僕は電源を切っていたんだよ!?)
僕以外のアークスはいないと高を括っていた自分に腹を立てながらも、リリの事を一旦後回しにして、通信ログの内容を確認しようと中身を開いた。
そして今まで僕に通信をしていたアークスの名前は――リリルカ・アーデだった。
(ど、どうして……?)
またしても予想外な人物の名前が出た事に、僕はもう完全に混乱する一方だ。
だけど、今はもうそんなの如何でも良かった。通信ログの中身には『ノームの
「ん? 何だ?」
目的の場所へあと少しという所で駆け付けるも、何やら野次馬と思わしき人が集まっていた。
僕は不可解に思いながら『ノームの
「あの! ここで一体何が遭ったんですか!?」
建物の惨状を見た僕は状況を確認しようと、近くにいる人に訊ねた。
直接見た訳じゃないみたいだが、何でもガラの悪い冒険者達が突然店に押し入って暴れたそうだ。そして店の品物や売り上げを奪うだけでなく、店主であるノームのお爺さんも連れて行ったと。そしてつい先ほど、その店の関係者と思われる
(間違いなくリリだ! でも一体何処へ……?)
情報を得た僕は
出来れば現場検証をしたいが、関係者じゃない僕が店の中に入る事は出来ない。下手をすればガラの悪い冒険者達の仲間だと怪しまれてしまう。
リリの向かった場所を確認する方法は……端末機しかない。あの子が本当にアークスであるなら、それで居場所が判明出来る筈だ。
そう考えた僕は一旦場所を変えようと、再び人目のつかない場所で端末機を使い、地図を表示させながらも、オラリオに来て使う事の無かったアークス用の探知モードをONにする。
(此処か!)
地図には登録していない筈のリリの情報だけでなく、居場所もすぐに判明した。そこはあの子の所属先である【ソーマ・ファミリア】の
僕は他所のファミリアだから門前払いされるのがオチかもしれないが、それでも行かなければならない。リリが僕と同じアークスであるなら、冒険者と互角に戦えるどころか、簡単に倒す事だって可能な筈だ。
アークスのクラスは多数ある。通常クラスにはハンター、レンジャー、フォース、ファイター、ガンナー、テクター、ブレイバー、バウンサー、サモナー。そして後継クラスにはヒーロー、ファントム、そして(余り知らないけど)エトワール。どんなクラスでも、冒険者を簡単に倒せる力を持っているのは確かだ。
リリが一体何のクラスになっているかは全然分からない。サポーターであるならテクターが無難かもしれないが、見た目だけで判断出来ない。身体が小さいサポートパートナーがレンジャーで
(取り敢えず急がないと!)
早く向かおうと、僕は再び全速力でリリがいると思われる【ソーマ・ファミリア】の
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