ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

127 / 178
本当ならこれは前話と同時に出したかったのですが、個人的な都合で分ける事にしました。


予想外の出会い⑰.75

「さて、それでは行きますか」

 

 牢屋を出たリリは、ゆっくりと地下牢の階段を上がっていく。

 

 石造の建物の一階に出て、先程までいたザニスの所へ向かおうとする。

 

「やっぱり抜け出してやがったか、アーデ」

 

 その途中、自分の名前を呼ぶ声がして振り向くと、ザニスと一緒にいたカヌゥ達がいる。

 

 台詞から察するに、恐らく自分が牢屋から抜け出す事を考慮して見張っていたかもしれないとリリは推測した。それはつまり、見張り役であるチャンドラを余り信用してなかったと言う事になる。

 

 あの男は同じ派閥の団員を信用していないどころか、単なる自分の都合のいい手駒程度にしか見ていない。万が一に反抗された場合は、神酒を盾に無理矢理従わせている。

 

 しかし、チャンドラだけは別だった。『Lv.2』で神酒の耐性もある為、下手に脅すような事をすれば返り討ちにあってしまう。故にザニスは彼に対して脅迫行為は出来ず、指示を出す程度で済ませている。

 

 それでも万が一の事を考え、ザニスはカヌゥ達に二重の見張り役をするように命じていた。その読みは正しく、今はこうしてリリが牢屋から抜け出しているのだから。

 

「態々そちらから来て頂けるとは、捜す手間が省けて良かったです」

 

「あ?」

 

 普通なら見付かれば焦ってもおかしくない筈なのに、何故かリリは自分達を見て笑みを浮かべていた。その事を不審に思うカヌゥだが、地下牢に幽閉されて頭がおかしくなったかもしれないと結論する。

 

「団長からは手を出すなと命令されてるが、アーデが無断で地下牢から出たら、俺達が止めねぇといけねぇよなぁ」

 

 そう言いながらポキポキと手の指の骨を鳴らし、仲間二人と共に嫌な笑みを浮かべながら彼女に近付こうとするカヌゥ。

 

 前回は妙な魔剣を持っていた為にやられてしまったが、それはザニスが持っている為、今のリリは一切武器を持たない丸腰状態。あの時の分も含めて、きっちり落とし前を付けさせようと痛めつける気満々だった。

 

 カヌゥ達のやろうとしてる事は充分に命令違反となるも、勝手に抜け出したアーデが悪いと言う名目にすれば、多少叱責される程度で済む。加えてチャンドラが抜け出す手引きをしたと言えば、流石に反論出来なくなるだろうとも踏んでいる。

 

「二度と馬鹿な真似をしねぇよう、きっちりお仕置きしてやるぜ。恨むなら、脱走した自分(テメェ)を恨むんだなぁ!」

 

「はぁ……」

 

 まず最初に自分がやると仲間二人に前以て言ってある為、カヌゥは腕を振りかぶりながら襲い掛かろうとしていく。対して丸腰である筈のリリは、大の男が襲い掛かろうとしても全く慌てる様子を見せず、ただ呆れるように嘆息していた。

 

 両者の距離があと僅かとなる瞬間、状況がすぐに一変した。

 

 武器を持っていない筈のリリが突然構えるような仕草をした直後、明らかに彼女の体格以上ある大きな黒い筒型の武器と思われるような物が出現し――

 

「ふんっ!」

 

「$%#’$%’&#)#$!!!!!?????」

 

 それを思いっきりスイングした事で相手に命中し、そして真っ直ぐに吹っ飛んだ。

 

 身長さがあった所為か、黒い筒状の武器が運悪く股間にクリーンヒットした為、カヌゥは言葉にならない悲鳴を上げていた。

 

 そして真っ直ぐ吹っ飛んだ彼は、勢いよく仲間二人を通り越して大きな音を立てながら壁に激突。男の大事な急所に命中したのか、それとも壁に激突した痛みの所為かは分からないが、カヌゥは起き上がれずにピクピクと虫の息状態だ。リリ達からの位置では見えないが、彼が穿いてるズボンの股間辺りからからジワジワと血が滲み出ている。

 

「……………え?」

 

「カ、カヌゥ、さん……?」

 

 いきなりの展開にカヌゥの仲間二人は理解出来ないように、吹っ飛ばされたカヌゥの惨状に困惑する一方だ。

 

「うげっ、よりによって汚い所に当たっちゃいましたか……」

 

 吹っ飛ばした張本人であるリリは、当たった個所が分かったのか、少々嫌そうな表情だった。だが、それはほんの僅かであった。

 

 後で念入りに消毒(ていれ)しようと考えながら、吹っ飛んだカヌゥの方へと視線を向ける。

 

「あの様子では暫く無理そうですね。なら残りのお二方は、此方の餌食になって貰いましょうか」

 

「「!?」」

 

 半死半生となったカヌゥを確認したリリは、仲間二人へと狙いを定める。それを聞いてハッとしたのか、二人はすぐに彼女の方を見る。

 

「お、お前、何で……!?」

 

「武器は、持ってない筈なのに……!」

 

 さっきの黒い筒状の武器とは別に、またしても見慣れない形状をした武器が自分達へ向けていた。

 

 完全に逃げ腰状態となっている二人は、カヌゥを見捨ててすぐに逃走を図ろうとする。あの武器は以前の魔剣みたいに自分達を狙ってくるのだと直感したから。

 

 その判断は決して間違ってはいないのだが――

 

「逃がしませんよ♪」

 

「「ギャァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」」

 

 リリが逃がさないと口にした瞬間、カヌゥの仲間二人は突如背後から何かが突き刺さって途轍もない激痛が襲い、そして酷く悶え始める事となった。

 

 それが引き金となったように、本拠地(ホーム)全体が慌ただしくなる事となったのは言うまでも無かった。

 

 因みに先程まで起きた事を補足しておく。

 

 カヌゥが虫の息となったのは、リリは一瞬で大砲(ランチャー)――『D-A.I.Sブラスター』を出現させた直後、武器自身の圧倒的な重量を活かし全力で殴りつけるフォトンアーツ――『クレイジースマッシュ』を使ったのだ。

 

 本来は射撃専用で打撃武器ではないのだが、クレイジースマッシュのような近接戦用のフォトンアーツもある。だが大砲(ランチャー)は見ての通り重量がある武器なので、その重さを利用して鈍器としても使用可能であった。尤も、射撃を好むレンジャーは自ら接近戦をする事はしないが。

 

 次にリリはカヌゥを仕留めた後、大砲(ランチャー)から長銃(アサルトライフル)――『スプレッドニードル』に変えて、その通常攻撃で彼の仲間二人を仕留めた。と言っても、非殺傷用にしている為に殺していないが、ある意味針鼠化した対象等は悶え苦しんでいる。

 

 以上が一連の流れであった。

 

「さて、行きますか」

 

 個人的な恨みはまだ完全に晴れていないのだが、今のリリは三下(カヌゥ)達など如何でも良かった。今の彼女の頭を占めるのは、自分や死んだ両親の人生を大きく歪ませた元凶(ザニス)であったから。

 

 あのクズ野郎だけは絶対許さない。例えどんな命乞いをしたところで慈悲を与える気は無い。今まで散々好き勝手やってきたのだから、相応の報いを与えてやる。

 

 一見リリは冷静にカヌゥ達を倒したように思われるが、実はそうでもなかった。もう既にブチ切れており、ザニスの非道な言動によって、いつ火が付いてもおかしくない状態であるのだ。

 

「な、何だこれは!?」

 

「あのガキはまさか……!」

 

 先程までの激しい激突音や叫び声が聞こえたのか、【ソーマ・ファミリア】の団員達が大慌てで駆け付けてきた。

 

 それを見たリリは――

 

「テメェらみたいな三下(クソ)共に用はねぇんだよ! ザニスのクズ野郎を出しやがれぇぇぇぇ!!!!」

 

「「「「「ウギャァァァァァァァァァァ!!!!!!」」」」」

 

 もう感情のタガが外れてしまったのか、長銃(アサルトライフル)から大砲(ランチャー)に切り替えて、本拠地(ホーム)内であるにも拘わらずにぶっ放し始めた。

 

 一応補足しておくが、リリはキレていても『D-A.I.Sブラスター』の出力をある程度下げている他、ちゃんと非殺傷にしている。それでも喰らった【ソーマ・ファミリア】の団員達の多くは重軽傷を負って、段々と本拠地(ホーム)がボロボロになっていく事に変わりないが。

 

 小人族(パルゥム)の少女がたった一人で【ソーマ・ファミリア】を壊滅状態にさせたこの出来事は、後にオラリオ中に大きく広まる事となる。とある目的を掲げている某金髪の男性小人族(パルゥム)が、彼女に興味を抱くのは当然の流れでもであった。




カヌゥ達を(死んでないけど)始末した直後、ここでリリが完全にブチ切れました。

次回はベル視点になります。

感想お待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。