ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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今回は前回と違ってちょっと長めです。それでも短い事に変わりませんが。


予想外の出会い㉒

      ~緊急企画 ギルド認定オークション~

 

 開催日時:(現代で言うと三日後の正午)

 

 場  所:ギルド本部前庭

 

 主 催 者:【ソーマ・ファミリア】

 

 対象商品:完成品『ソーマの神酒』×2 失敗作『ソーマの神酒』×2

 

 進行内容:①失敗作『ソーマの神酒』×2 一般人+下級冒険者限定オークション

 

      ②完成品『ソーマの神酒』   上級冒険者限定オークション

 

      ③完成品『ソーマの神酒』   フリーオークション(神々も可)

 

 参加資格:上記の内容に書かれている通りだが、15歳以下厳禁。偽った場合は即強制退場。

 

 注  意:あくまで購入した者が飲む為のオークションであり、転売目的での購入は一切認められない。【ガネーシャ・ファミリア】主神ガネーシャより、購入時に嘘偽りが無いかを確認させて頂きます。

 

 備  考:オークション開催前に、販売商品が偽物でない事を証明する為、参加者の中から抽選で一名だけの試飲を予定しております。お金に余裕のある方、『ソーマの神酒』を飲みたい方、この機会に是非とも奮ってご参加下さい。

 

 

 

 

 リリが作成したチラシはギルド本部の掲示板に貼られただけでなく、ギルドが販売許可を出してる屋台や飲食店にも配布された。

 

 補足ではないのだが、今回やるオークションにギルド長のロイマンが色々と口出しをしてきた。会場提供による場所代や人件費、オークションで得た売上の一部を税として納めさせてもらう等々、特にお金に関する事ばかりだった。

 

 ザニスにも劣らない金の亡者みたいな発言をした事に――

 

「そもそも其方が罰金だけでなく、保釈金欲しさに犯罪者達を釈放させた結果、『ノームの万屋』で悲劇が起きたのをもう忘れたんですか?」

 

 ふざけたこと抜かすとテメエ等の失態を世間にバラすぞ、みたいな遠回しに言った結果、ロイマンが即座に大人しくなったのは言うまでもない。

 

 ギルドはその気になれば事件を揉み消す事など造作も無いのだが、当事者であるリリの前に強く出れなかった。もしも彼女に手を出せば、オークション主催に全面協力している【ガネーシャ・ファミリア】が黙っていない。下手をすれば彼等との関係が拗れてしまうから、ギルド側としては絶対避けたいのだ。

 

 そんな中、オークション開催日が近づいていく際、参加者達は早く始まって欲しいと願っていた。

 

 一部の【ファミリア】では――

 

「ガレス! 明日のオークションでは絶対に完成品の神酒(ソーマ)をうち等で頂きや!」

 

「言われるまでもない。こんな事もあろうかと思い、金を貯めておいたのじゃ!」

 

「普段ダンジョンで稼いでるガレスはともかく、ロキは参加して欲しくないんだが……」

 

「あはは……。でもまぁ、僕も思い切って参加してみようかな。少しばかり気になる同胞もいる事だしね」

 

 酒豪のドワーフと主神以外にも、とある小人族(パルゥム)の団長が参加する気満々であり――

 

「フフフ……中々面白そうね」

 

「参加されるのですか、フレイヤ様」

 

「勿論そのつもりよ。退屈しのぎには丁度良いし、それに……」

 

「?」

 

「あくまで私の勘だけど、これに参加すると良い事がありそうな気がするの」

 

 とある美神は護衛を連れて必ず参加しようと決意する。

 

 神々の中には【ファミリア】の蓄えを持って行こうと画策しており、その眷族達は主神の行動に目を光らせているのであった。

 

 

 

 

 

 

 リリが【ソーマ・ファミリア】の本拠地(ホーム)を半壊させた数日後、僕は会場となってるギルド本部の前庭にいた。

 

 何でこんな所にいるのかと問われたら――

 

『お待たせしました。本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。今回行われるオークションの司会進行を務めさせて頂きます【ソーマ・ファミリア】所属、リリルカ・アーデと――』

 

『え、えっと……【ヘスティア・ファミリア】所属、ベル・クラネルが助手を務めさせて頂きます』

 

 端末機にリリからの通信で、オークションの手伝いをして欲しいと頼まれたのだ。

 

 今の僕は彼女と一緒にステージに立ち、魔石製品の拡声器を片手に声を響かせていた。そして目の前には大勢の参加者達がいて、そうでない人達も詰め掛けている。

 

 オークションの事は知っていたが、まさか助手役をやるなんて思いもしなかった。【ガネーシャ・ファミリア】やギルドの協力があるとは言え、リリとしては一番信用出来る護衛として、アークスの僕を自分の近くにいて欲しいとの事だ。一応これは依頼であり、ちゃんと報酬も受け取る事になっている。話を聞いた神様は何故か胡散臭そうに、ちょっとばかり難色を示していたけど。

 

 でもまぁ、僕がいる事で少しばかり空気が変化しているのは確かだ。さり気なく周囲を見渡してると、参加している一部の人達が若干気後れしているのが見えた。

 

 参加者の中には、僕の知っている人達も当然いる。【ロキ・ファミリア】のロキ様とフィンさんにガレスさん、【ヘファイストス・ファミリア】の椿さんとか。

 

 あと他に気になる事と言えば……単なる思い過ごしかもしれないが、見知らぬ銀髪の女神様が何故か助手の僕に熱い視線を送っている。目を合わせたら不味い気がしてる僕は、敢えて気にせず助手に専念することにした。

 

 僕の考えとは他所に、司会役のリリは進行を続ける。

 

『では先ずチラシに書いてあった通り、オークション開催前に『ソーマの神酒(さけ)』が本物であるかを確かめる為の試飲を行います。ですが完成品は一般の方々が飲んでしまうと問題が起きる危険性がある為、それを考慮した結果、今回は敢えて失敗作の方を試飲して頂きます。ですが失敗作であっても、美味しい極上なお酒に変わりない事は保証します』

 

 試飲するのは一名となっており、助手役の僕が抽選する事になっている。

 

 やり方は簡単。参加者が座っている椅子にはそれぞれ番号が割り振られており、僕はそれを無作為(ランダム)で選ぶ為のくじ引きをすると言う単純明快なモノ。

 

 益してや他所の【ファミリア】である僕が引けば、誰も文句が言えない。もし誰かがイカサマをしてると訴えれば、それはつまり【亡霊兎(ファントム・ラビット)】の僕に喧嘩を売っているも同然の行為だから。恐らくリリは、それも考慮して僕にくじ引きをさせたかもしれない。

 

『さぁベル様、お願いします』

 

『は、はい!』

 

 リリが参加者達に抽選方法を説明した後、僕にくじを引くよう促す。

 

 くじが入ってる箱に手を入れた瞬間、物凄い強烈な視線を送られている。自分に当たれと言わんばかりの表情だ。

 

 と言うかロキ様、貴女は以前に僕が失敗作の神酒を買って飲みましたよね? 別に抽選で選ばれなくても、オークションで完成品を購入すれば良いだけだと思うんですが。

 

 少しだけ呆れながらくじを引いた僕は、書かれている紙を公表する。

 

『えっと、***番の方はいらっしゃいますか?』

 

 僕が拡声器を通して番号を告げると、参加者達は一斉に自分が座ってる椅子の番号を確認し始めた。

 

 因みにもし此処で番号を誤魔化した人がいても、会場全体を見張っている警護役の【ガネーシャ・ファミリア】が確認する事になっている。嘘だと判明した瞬間、その人はオークションの参加権を失うと同時に強制退場となる流れだ。なので不用意な出任せが出来ないと分かっているから、参加者達は念入りに番号を確認している。

 

 そして選ばれたのは――

 

「はいは~い、俺で~す! 番号の確認お願いしま~す!」

 

 橙黄色の髪をして羽帽子を被った旅人風の男性、いや男神様だった。

 

 すぐに【ガネーシャ・ファミリア】の人が確認すると、間違いないとの判定が返って来た後、その方は僕達がいる舞台(ステージ)に立つ。

 

「いや~ありがとう、ベル・クラネル君。俺は【ヘルメス・ファミリア】の主神ヘルメス。以後お見知りおきを。実を言うと俺、君のファンなんだよ。良かったら握手しても良いかな?」

 

『は、はぁ……』

 

 試飲会である筈なのに、この男神――ヘルメス様は何故か凄く親しげな感じで僕に自己紹介をしながら握手を求めてきた。

 

 思わず手を伸ばしてしまうと、向こうは力強い握手をする。と言っても、アークスの僕には大した事は無いけど。

 

 すると、僕とヘルメス様が握手をしてる光景に、神々の方からブーイングが響く。

 

 

「おいヘルメス~! 試飲で選ばれたんやから、さっさと飲んで退場せんかボケェ!」

 

 

「おっと、そうだったね」

 

『ではヘルメス様、此方をどうぞ』

 

 ブーイングをしてる中で、ロキ様が一番に叫んでいた。因みに銀髪の女神様が、何やら怖い笑みを浮かべているのは何故だろうか。

 

 言われたヘルメス様は僕との握手を止めて、リリが用意しておいた神酒(失敗作)が入った杯を受け取り、すぐにグイッとあおる。

 

「美味い! これは確かに『ソーマの神酒(さけ)』だ! 失敗作でありながらも、極上の味が俺の舌を唸らせる! 今回商品として出される神酒(さけ)は、間違いなくソーマが作った物だと、このヘルメスの名に誓おう!」

 

 試飲するだけの筈なのに、何故か役者みたいに演説めいた事をするヘルメス様。

 

 けれど、それは却って好都合だったかもしれない。この方のお陰で、会場の空気が大きく盛り上がっているから。

 

『ではヘルメス様の試飲が終わりましたので、これよりオークションを開催します!』




ヘルメスが試飲で選ばれた理由は、今後関わる為の伏線としてです。

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