ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
オークションが終わった後から色々大変だった。
競売に出した『ソーマの神酒』の金額が合計二億七五〇〇万ヴァリスなんて、リリは全く予想だにしなかったようだ。余りにも凄い金額に頭がおかしくなりそうだと言っていたから。
これにはギルド長のロイマンさんが、余りにも高額だからと言う理由で何割かを徴収させてもらうと言っていたところ、ガネーシャ様が即座に抑えてくれた。
とは言え、
因みにその取り分は、
ギルド……一〇〇〇万ヴァリス
【ガネーシャ・ファミリア】……四〇〇〇万ヴァリス
僕……二五〇〇万ヴァリス+オマケ有
【ソーマ・ファミリア(リリ)】……二億ヴァリス
と言う結果となった。
だけど、依頼とは言え助手役をやった僕がそんな大金を受け取るのは少しばかり気が引く。リリ曰く、急なアドリブをやらせたお詫びだとか。
「ふ、ふざけるな! 何故ギルド側の取り分が一番低いのだ! 不当にも程があるだろう!?」
ロイマンさんが取り分に納得行かないと即時抗議してきた。確かに僕や【ガネーシャ・ファミリア】より取り分が低いのだから、その抗議は至極尤もだろう。
僕も少しばかり気になったが――
「ガネーシャ様が『あの時の件』について謝罪したのに対し、
リリの言い分を聞いて僕は納得した。どうやら『ノームの万屋』襲撃の件は今もご立腹のようだと。
詳しい事は知らないけど、どうやらあの事件の裏側にはギルドと【ガネーシャ・ファミリア】が深く関係しているらしい。ガネーシャ様は既に謝罪したけど、ギルド側は未だ謝罪の一つも見せていないとリリが愚痴っていた。
ロイマンさんは結局のところ、謝罪せずに歯軋りしながら、渋々と言った感じで引き下がった。謝罪するだけで正当な取り分を得られるのに、どうしてやらないんだろうか。
☆
翌日。僕はある場所へ向かっていた。
因みに神様は一緒じゃない。あの方は昨日に続いてバイトで忙しく、開発した新商品のジャガ丸くんが結構売れているようだ。聞いた話だとアイズさんは最近、神様がいる屋台へ行って常連客になり始めているとか。
あと他にも、昨日あったオークションでの売上を教えた瞬間――
『
と言う仰天っぷりを見せてくれた。その後にジャガ丸くんが何百万個買えるとか言ってたけど。
神様の行動を思い出しながら歩いていると、いつの間にか目的の場所へ辿り着く。
「すいません」
「……【
僕を見た門番の人が間がありながらも、フィンさんとリヴェリアさんがいない事を教えてくれた。
前に会ったのは【ロキ・ファミリア】との遠征前だけど、会う度に反応が違う気がする。今日はいつもと違って大人しいと言うか、反応が控えめと言うか……まぁそこは気にしないでおこう。
「いえ、今日はガレスさんに会いに来たんです。宜しければお取次ぎを」
「珍しいのう。お主がワシに会いたいと聞いて、少しばかり耳を疑ったぞ」
「あはは……」
門番の人がすぐに取次いでくれて、僕は早々に応接室へと案内してくれた。その数分後、【ロキ・ファミリア】首脳陣の一人であるガレスさんが来て、すぐに向かいの椅子に座って対面となる。
「ところで、ロキ様もいないんですか?」
「いや、今は部屋で寝ておる。何せ昨日のオークションでは散々な結果になったから、ワシと一緒に適当な酒場でしこたま飲んでな」
自棄酒してたのか。道理で来れない訳だ。
と言うかガレスさんも一緒に飲んだと言ってるのに随分と元気そうだ。まぁこの人は第一級冒険者で、酒に強いドワーフだからなのだろう。
因みにサラッとティオナさんの事を訊いてみたが、フィンさん達と同じく所用で出かけているらしい。まぁいないのは何となく想像していた。もし
「まぁそんな事よりも、今日は一体どのような用件で来たのじゃ?」
ロキ様がいない理由を教えて、すぐ本題に入ろうとするガレスさん。
「えっと、ガレスさんにこの前のお詫びも兼ねて……」
「詫び? 一体何の話じゃ?」
いきなりの事に首を傾げるガレスさんに、僕はすぐに説明する。
以前に
終わり良ければすべて良しと言って流してくれたから、向こうが気にしてないのにお詫びをするのは逆に失礼となる。でも僕としては、何かしらの詫びをしなければ気が済まない。
だから今回、オークションで目的の『ソーマの神酒』を得られずに残念そうなガレスさんを見て、僕はコレを機にお詫びをしようと決めたのだ。
「まさかそんな話を持ち掛けるとは……お主は律儀と言うより、真面目過ぎないか?」
「僕としては、そうしないと気が済みませんので」
「……まぁ良かろう」
ガレスさんは苦笑しながらも、僕のお詫びを受け入れてくれるようだ。
「ベルの事だから、恐らく相応の品を持ってきたと睨んでおるが、どうなのじゃ?」
「取り敢えずコレを受け取って、開けてみて下さい」
僕は用意している紙袋を前に置かれてるテーブルの上に置く。
手にしたガレスさんは言う通りにして、紙袋を開けた瞬間――
「ッ!? ベ、ベル、これはまさか……!?」
信じられないように目を見開いていた。
それもその筈。目にしているのは、昨日のオークションで出していた品――『ソーマの
最初はいらないと拒否するも、【ヘスティア・ファミリア】に
あの子は今も【ソーマ・ファミリア】所属だけど、今後は僕と行動を共にしたいと言っていた。僕としても
だからリリは神様に【ヘスティア・ファミリア】の
けれど――
『こ、こんなのボクに献上されても困るよ! ベル君と同じアークスなら、君の
神様が即了承してくれたので必要無い物となってしまった。
その為、適当に処分しておいてくれと言われたが、僕は酒を飲まないから誰かにあげようかと思っていた中、ガレスさんにあげようと決めた訳である。
「はい、完成品の『ソーマの神酒』です。これが僕からのお詫びの品になります」
「……………………」
オークションで手に入らなかった品物が目の前にある事に、ガレスさんはソレを凝視していた。
「ベルよ、本当にコレを、ワシが貰っても良いのか?」
「勿論です。僕や神様は飲みませんから、それを美味しく飲めるガレスさんなら良いと思いまして」
「……………………」
ガレスさんが僕と神酒を交互に見ながら悩むような表情になっている。
僕は一切嘘を言ってないけど、向こうからすれば何か裏があるんじゃないかと疑ってるかもしれない。
そして考えが纏まったのか、ガレスさんは意を決するように口を開く。
「あい分かった。お主からの詫びは有難く頂戴しよう。だが、こんな貴重な酒を
どうやらガレスさんにとっては大きな借りのように思われてしまった。
別にそんなつもりは無くて断ろうとしたけど、余りにデカい借りだと言われてしまった為、結局僕は受け取らざるを得なかった。
もし困った事があれば、自分を頼って欲しいとの事だ。例えば僕がダンジョンでパーティーを組んで欲しいと頼まれたら、報酬は一切不要のボランティア活動をしてくれるらしい。
☆
「おい聞いたでガレスゥゥ! ベルがここに来て完成品の
「アレは
「関係無く無いやろぉぉ! うちも当事者なんやから飲む権利はある筈や! 今すぐ出して飲ませんかぁ!」
「断る。と言うかお主、この前ベルに
「ティオナがアホやらかした所為でとっくに無いんや!」
「そうか、それは気の毒じゃのう」
「んな事どうでもええから、さっさと完成品の
「昨日は泥酔するほど飲んでおいて、まだ飲み足りないのか。本当にどうしようもない主神だな」
「アハハ……。にしてもまさか、僕やリヴェリアがいない間に、ベルが此処へ来たのは予想外だったね」
「全くだ。ところでフィン、今も気になってる事があるのだが」
「何だい?」
「前にラウルが場所を変えてまで、お前だけに報告したアレの詳細内容はまだなのか?」
「……内容整理中だから、もう少し待って欲しい」
「ねぇアイズ。もういっそのこと、フィン達に内緒でアルゴノゥト君の
「うん、私もそう思ってた。久しぶりに手合わせしたいし」
「じゃあ決まりだね~」
取り敢えず、「予想外の出会い」シリーズはこれにて終了です。
感想お待ちしています。