ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
オークションが終わった後、オラリオは再び平穏の日常を過ごしている。
それとは別に、リリは色々な後処理を行っていた。【ソーマ・ファミリア】脱退手続きの他、
彼女一人でやるには流石に手が回らない事もあって、チャンドラ・イヒトが【ソーマ・ファミリア】の団長を急遽務める事となり、一緒に手伝っている。当の本人は乗り気で無いのだが、リリとの取引で神酒を数本受け取った事により、渋々やらざるを得なかった。
オークションで得た合計金額が二億七五〇〇万と聞いた瞬間、チャンドラは放心していた。今まで上納金と言うシステムで金を集めていたより、文字通り桁が違っていたのだから無理もない。ザニスが知れば絶対驚くだろうが、生憎今も意識不明であり、治療後に長い牢屋生活を送る予定になっている為、その情報が耳に入るのは当分先の話となる。
ギルドや各派閥に謝礼金を払う為に差し引いても二億ヴァリスであり、【ソーマ・ファミリア】に脱退金+修理費用として一億ヴァリス渡す予定となっている。チャンドラからは「余りにも多過ぎる」と遠慮していたのだが、リリがケジメを付けたいと言う理由で受け取るしかなかった。
そして残りの一億ヴァリスは主に『ノームの万屋』の修理費用の他、店主の迷惑料として支払うに事なる。
後から聞いたボム爺さんは――
「爺としては建物を直してくれるだけで充分じゃ」
修理費用だけで満足していて、残りは全て自分の世話をしてくれたメイドに寄付する事にした。そのメイドであるリリとしては断りたかったが、相手が相手だけに強く出れず、受け取らざるを得なかったようだ。
「はい。こちらが、脱退金並びに
金貨が詰まった二つの大袋が、リリの両手から差し出される。
それらを見たソーマは、無言で受け取った。
オークションから二日後。一通りの手続きを終えたリリは【ソーマ・ファミリア】の
因みにリリはつい先程『
大金を渡したら手続きは終了となり、これで完全に【ソーマ・ファミリア】と決別する事になる。
「……」
派閥の主神である為、ソーマは大人しく脱退金を受け取っていた。
リリを信用しているのか、一億ヴァリスが入っている大袋の中の金額など一切確かめていない。
主神の自室であっさりと最後の手続きを終えたリリは、最後の挨拶をした。
「数年の間は留守にしていましたが、今までお世話になりました」
今の彼女はソーマに対する敬いなど一切無く、完全に事務的な態度であった。
ザニスの所為でまともに話す事も出来なかった主神といざ話したら、勝手な理由で
それでも最後のケジメとして、小さな体で礼を取り、碌に視線も合わせないまま、ソーマの前から辞する。
「……」
背を向けて部屋の扉に向かって行くメイド姿の少女に、立ったままでいるソーマは意を決するように声を掛けた。
「リリルカ・アーデ……本当に、本当にすまなかった」
その台詞に、リリはぴくりと反応して扉の前で立ち止まる。
思わず振り向くも、長い前髪のせいで全く表情が窺えない男神は、最後にこう告げた。
「……俺にこんな事を言う資格は無いが……体には、気を付けなさい」
今までとは全く違う、本心である
自分は神でなくても、嘘でない事が瞬時に分かった。
先ほど事務的に済ませた筈なのに、段々と俯いていく。
同時に、何故か双眸から涙が零れてしまう。
「………お気遣い、感謝します」
自分を必死に押し殺しながらも、リリは再び頭を下げた。
今度こそ、部屋を後にした。
彼女が発破を掛けた事もあって、【ソーマ・ファミリア】の派閥状況は少しずつ改善されていく事になる。
因みに余談ではあるが、リリが【ヘスティア・ファミリア】に移籍後、稀にチャンドラと会っては古巣の状況を聞いているらしい。
次からは本当に新しい話となります。
次はクノッソス編ですが、主にベル側がメインのオリジナル話になる予定です。
感想お待ちしています。