ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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久しぶりの更新です。


二人のアークス②

 リリが【ソーマ・ファミリア】と決別後、【ヘスティア・ファミリア】へ改宗(コンバージョン)して新たな団員として迎えられる事になった。

 

 改宗(コンバージョン)して早々、神様が【ステイタス】を更新した際、とんでもない事態を目にしてしまった。【Lv.1】から一気に【Lv.3】へ昇格(ランクアップ)と言う前代未聞な出来事に。

 

 これには流石の神様もビックリしていた。僕が約一ヵ月前後でランクアップするのに対し、リリは一気に二つもランクアップと言う、普通の冒険者では考えられない記録を作ってしまった。

 

 肝心のリリはそんなに驚いた様子を見せず、妙に納得したような表情だった。理由を尋ねると、自分は既に恩恵(ファルナ)を与えられた身のままアークスになり、オラクル船団(むこう)で死んだほうがマシと思われる地獄の特訓を数年もやらされたから、こうなるのは当然だと言っていた。

 

 その理由を聞いた僕も、確かにそうかもしれないと頷いた。オラクル船団でアークスになった僕も、キョクヤ義兄さんが一緒にいてくれたからとは言え、過酷な日々を送っていた。確かに色々辛かったけど、それでも僕としては新しい家族や仲間と過ごす事が出来て良かったと思う。

 

 と、僕の個人的感情は置いといて。リリのランクアップとは別に、新たな発展アビリティやスキルも発現している。

 

 発展アビリティはレベルが上昇する事で発現が可能な能力。基本アビリティとは異なって、特殊または専門的な能力を開花・強化することが出来る。けれどランクアップ以外に、特筆すべき経験値(エクセリア)が無ければ、発展アビリティは発現しないと言う少々厳しい条件があるとの事だ。因みにこれはエイナさんからの講習で知った知識と補足する。

 

 本来なら一度のランクアップで得られる発展アビリティは一つのみだけど、リリの場合は一気に二つもランクアップした為、二つの発展アビリティを選択する事が出来るようになった。

 

 その結果、リリが選んだのは【狙撃】と【護法】。二つ目の護法は僕も持っている。

 

 【狙撃】は、文字通り目標に狙いを定めて撃つ。同時に間接武器などを使って威力が上がるものであり、長銃(アサルトライフル)大砲(ランチャー)に勿論該当しており、レンジャーのクラスを持ってるリリに最適な発展アビリティだった。

 

 【護法】は、あらゆる状態異常の症状を防いでくれる。リリとしては信用の置ける【耐異常】が欲しかったみたいだけど、それが無かった為、ダンジョン探索をする以上は仕方ないと割り切って選んだ。

 

 最後にスキルだけど、これも発展アビリティと同じく二つ習得している。

 

 一つ目のスキルは【船団住民(オラクル・アークス)】で、僕と全く同様のモノ。名前から察しての通り、異世界のオラクル船団でアークスとして活動していた事に関係している。内容としては冒険者になる恩恵(ファルナ)を刻まれても、アークスの力を常時発動する事が出来る。僕が初めて冒険者になった時、ファントムクラスを失う事なく使えてるのが何よりの証拠でもある。

 

 二つ目のスキルは【冥怒聖女(バーサク・フィアナ)】。正直言って、僕が語るのは少々(はばか)りたいスキルだった。簡単に言えば、リリの怒りが頂点に達した時に発動して、別人になるかのように口調も変わると同時に全アビリティが一時的に急上昇するらしい。本人は大変不名誉なスキルだと哀愁を漂わせるほど嘆く程だった。

 

 まぁとにかく、リリが【Lv.3】にランクアップした事で、冒険者として大きく成長したのは確かだった。アークスの力も使える事も含めて、僕にとっては一番頼りになる相棒的存在と言っても過言じゃない。射撃武器による攻撃を主とし、中距離の戦闘を得意としたレンジャークラスをメインにしてるだけでなく、圧倒的な防御力を誇るエトワールクラスをサブにしているから。

 

 最初はエトワールクラスと聞いて疑問を抱いていたけど、そのクラスはキョクヤ義兄さんのファントムクラス、ストラトスさんのヒーロークラスと同様の後継クラスで、打撃攻撃と味方の支援を特化したモノらしい。しかしそれはあくまでメインクラス前提によるもので、サブクラスにすると打撃武器や支援スキルは使えなくなり、他の攻撃力や防御力の上昇スキル、(微量な)体力自動回復のスキルは普通に使えるようだ。

 

 僕も中距離用の武器である長銃(アサルトライフル)は使えても、あくまで汎用として使用できない。中距離戦闘に関しては、特化型のレンジャーに軍配が上がる。他にもその専用のスキルがあって、他のクラスから見ても非常に役立つモノもある。加えてレンジャーは司令塔の役割も果たしてくれるから、常に前に出て戦う僕としては非常にありがたい。この世界の冒険者で言うなら、フィンさんみたいな人を指す。

 

 とは言え、それはもうちょっと先の話になる。ランクアップしたリリには、感覚のズレを修正させなければならない。【ステイタス】の更新で身体能力が激変したから、恐らく僕以上に大変なことになっている筈だ。なので暫くの間はダンジョン上層のモンスターと戦わせて身体を慣れさせなければ、強いモンスターとの戦闘で足手纏いになってしまう恐れがある。当然それはリリも承知済みで、今後は僕と一緒にダンジョン上層でお世話になる。流石にアークス製の武器で戦わせても意味が無いから、僕と同じくオラリオ側の武器を使ってもらうしかない。

 

 最初は【ゴブニュ・ファミリア】にリリ専用の武器製作依頼をしてもらおうと考えたけど、とある()()()を思い出したので、彼がいる工房へ行ってみる事にした。

 

 

 

 

 

「嫌です。リリはこんなダサい武器使いたくありません」

 

「はぁ!? おい待てリリスケ、いくら何でもそれは聞き捨てならねぇぞ!」

 

 リリに僕が直接契約を結んだ()()()――ヴェルフを紹介した後、彼が作った武器をいくつか見繕ってもらったんだけど、思いのほか上手くいかなかった。

 

 さっきまでは問題無く互いに自己紹介を終えて、リリはヴェルフ様、ヴェルフはリリスケと呼び合っていた。本当にそこまでは良かったんだよね。

 

 いざ武器の話になって短剣やボウガン等を用意し、上層のモンスターなら問題無くやれるほど良い出来だとリリは評価していた。けど数秒後、すぐに嫌そうな表情になるどころか、ダサい武器と言って今に至る訳だ。

 

 ダサいと言った理由は勿論ある。短剣はキラーアントの素材を利用した『虫短剣(キラたん)』、ボウガンは普通の素材なんだけど『(ピュン)(ピュン)(まる)』。その銘を聞いてリリだけでなく、僕も流石にソレは無いだろうと内心突っ込んでしまう。僕が使ってる防具の『(ピョン)(キチ)』より酷いネーミングセンスとしか言いようがない。

 

「そんなダサい名前をした武器を使うくらいなら、そこら辺にある名無しの棒切れを使った方がまだマシです!」

 

「おまっ、ふざけろ! おいベル、何なんだよコイツは!? 失礼にも程があるぞ!」

 

「あ、いや……」

 

 リリに自分の作った武器を貶されて憤慨するヴェルフが、今度は僕に向かって怒鳴ってきた。

 

 本当はヴェルフを擁護(フォロー)すべきなんだけど、正直に言ってちょっと無理。僕も武器のネーミングセンスについて、指摘したい気持ちだったから。

 

 だけど、それじゃ非常に申し訳が立たないし、リリを説得するしかない。

 

「リ、リリ。ヴェルフは他の()()()より腕は立つし、武器自体も結構良い出来だから、僕は使うべきだと思うよ」

 

 敢えてネーミングセンスに触れず、武器の性能を強調させてもらった。

 

「いくら性能が良くても、こんなダサい武器を使ってダンジョンに行きたくありません! もし誰かに知られたらリリはもう恥ずかしくて二度と外に出られなくなっちゃいます!」

 

「なんだとコラァ!」

 

 僕の擁護(フォロー)が無意味になってしまい、リリは此処で更に貶してしまった事により、ヴェルフは完全にキレてしまった。

 

「さっきから黙って聞いてりゃ、言いたい放題抜かしやがって!」

 

「事実を言っただけです! ベル様の『(ピョン)(キチ)』を聞いてから思ってましたが、貴方様はネーミングセンスが壊滅的に酷すぎます! そんなダサい名前を付けられた武器や防具が余りにも不憫です!」

 

「不憫だぁ!?」

 

 ギャーギャーと怒鳴るように言い争うリリとヴェルフ。

 

 まさか二人の相性が此処まで悪かったのは、完全に僕の誤算だった。こんな事になるなら、最初から【ゴブニュ・ファミリア】の方へ行けば良かったかもしれない。

 

「ちょ、二人とも、落ち着いて……あっ!」

 

 このままじゃ不味いと思った僕は割って入ろうとするが、不意に立て掛けていた武器が肘に当たってしまい、そのまま落としてしまった。

 

 倒れてしまった武器――綺麗な装飾が施された長槍からカランと音を立てた事で、言い争っていたリリとヴェルフの耳に入って此方へ振り向く。

 

「ご、ごめんヴェルフ! 大事な武器を倒しちゃって……!」

 

「いや、そこまで謝る必要はねぇよ。それは単に練習用として作った試作品で――」

 

「これは……」

 

 僕の謝罪にヴェルフは全く気にしてないように言ってる最中、突然リリが倒れてる長槍を凝視しながら手で拾う。

 

 いきなりの行動に僕だけでなく、ヴェルフも訝るように見るも、当の本人は全く気にせず拾った長槍をマジマジと凝視している。

 

 長槍の穂先や柄をじっくりと見終えたリリは、すぐに制作者への方へ視線を向ける。

 

「ヴェルフ様、この槍に銘はありますか?」

 

「あ? …………まぁ、あると言えばあるが」

 

 リリが質問してきた事で顔を顰めるヴェルフだったが、真剣な表情であった為に間がありながらも答えようとした。

 

「つっても、俺が決めた訳じゃねぇがな。とある御伽噺に登場した聖女の武器を、俺なりに模倣して作ってみたんだ」

 

 あくまで見せかけに過ぎないが、と付け加えながら少々自虐気味に言うヴェルフ。

 

 けれど、リリは全く気にする事なく耳を傾けている。

 

「経緯は全く知らないが、その槍の銘は『聖女(フィアナ)の槍(・スピア)』って呼ばれてるらしい」

 

「フィアナ……」

 

 槍の銘を聞いた途端、リリは再び長槍を目にする。

 

 その名前は僕も知っている。僕がオラクル船団へ飛ばされる前、お爺ちゃんが『フィアナ騎士団』と言う絵本を僕に読ませてくれた。

 

 内容はもう殆ど憶えてないけど、神々が地上へ降臨する前までフィアナを女神として崇拝されていたが、実際は存在しない架空の女神だと判明した事で、小人族(パルゥム)は廃れてしまったとか。それは当然同じ小人族(パルゥム)のリリも知っているはず。

 

 そう言えば、以前にフィンさんと酒場で飲み会をした時、『お嫁さんにするのは小人族(パルゥム)じゃなければいけない』と言っていた。もしかしたらだけど、一族を復興させる目的の一つとして、同族の女性をお嫁さんにしようとしてるかもしれない。

 

 今この場で全く関係無い事を思い出している僕とは余所に、槍の銘を聞いて見定めていたリリは、途端にヴェルフを見て決意するように言い放った。

 

「ヴェルフ様、宜しければこの槍をリリが購入しても良いですか?」

 

「はぁ? お前、何言って――」

 

 先程まで武器を散々貶していたリリが購入したいと懇願するも、当然ヴェルフは断ろうとしていた。

 

 しかし、突然大きなヴァリス入りの袋が目の前に現れた事で状況が一変する。

 

「先程まで無礼な発言をしたお詫びとして、百万ヴァリスお支払いします」

 

「ひゃ、百万……!?」

 

 予想外と言える購入価格に、ヴェルフの目が点になっていた。

 

「リ、リリ。本当にその金額で良いの?」

 

「勿論です、ベル様。リリはこの槍を大変気に入りましたので」

 

 恐る恐る尋ねるボクに、リリは全く問題が無いと言わんばかりの表情で言い切った。

 

「待て待てリリスケ! そんな槍に百万ヴァリスは高過ぎだ! いくら見かけは良くても、ソレは一万どころか、千ヴァリスにも満たない安物なんだぞ!?」

 

「気にしないで下さい。百万出すほどの価値があると、リリが勝手にそう決めただけです。例えすぐに壊れてもヴェルフ様を一切責めたりしません」

 

「いや、そう言う問題じゃねぇんだよ……!」

 

 お詫びを含めたと言っても、()()()としてのプライドが許さないのか、自分の作った試作品を百万ヴァリスで受け取りたくないようだ。

 

 今のヴェルフはもう完全に怒りの感情が消えてるどころか、それすら通り越して凄く申し訳ない様子だった。流石にこれは僕が割って仲裁するのは正直微妙だから、判断に困ってしまう。

 

「とにかくその槍を返してくれ。そんな試作品じゃなくて、ちゃんとした槍を作るから!」

 

「結構です。それじゃリリはこれにて失礼します」

 

「あ、おい!」

 

 ペコリと頭を下げたリリは、長槍を持ったままスタスタと工房を後にした。

 

 素早く退散されてしまった為、今此処には僕とヴェルフだけになり、少しばかり無言となっている。

 

「…………ベル、一体何なんだアイツは? 自分で言うのもなんだが、あんな安物の槍に百万ヴァリス出すなんておかしいだろ」

 

「あ、あははは……」

 

 何とも言えない僕はただ苦笑するだけしかなかった。

 

 因みにこの後、ヴェルフは僕にお金を押し付けようとしてきたが、リリの決めた事に余計な真似をする訳にはいかないと思って、ファントムスキルで退散する事にした。




今回はリリの発展アビリティ・スキルの発言内容と、オラリオ側の武器を購入する話でした。

以前の活動報告でコメントしてくれたルートフクロクさん、高町司さん、ボーダレスさん、ありがとうございます。
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