ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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久しぶりの更新です。


二人のアークス③

 ヴェルフの造った武器『聖女(フィアナ)の槍(・スピア)』を購入した翌日、僕とリリは探索しようとダンジョンへ向かう準備をしている。

 

「リリ、今日の探索は本当にその槍だけで良いの?」

 

「勿論です」

 

 確認の意味も込めた僕の問いに、リリは当然と言わんばかりに頷いた。

 

 今日もダンジョン上層で感覚のズレを修正する為、アークス製の武器を使わずに大剣のみで探索する予定だ。けど今回は僕だけじゃなく、リリも一緒に戦う事になっている。

 

 リリは数年前にオラクル船団でアークスとして鍛えられ、充分な戦闘能力も備わっている。【ヘスティア・ファミリア】に改宗(コンバージョン)したのを機に、僕と同じく冒険者側として一緒に戦う事にした。戦闘スタイルは長銃(アサルトライフル)大砲(ランチャー)等の中・遠距離攻撃をメインとして、他にはレンジャースキルを利用した後方支援もやってもらう。

 

 その予定だったんだけど、今回行うダンジョン探索でその戦闘スタイルは一切やらない。それどころか僕と同じく前衛で戦う事になっている。昨日購入した長槍のみで。

 

 既にオラリオで周知されてるとおり、リリは『Lv.1』から『Lv.3』へと昇格(ランクアップ)している。一気に二段階も上がった事による反動なのか、リリは身体に凄い違和感を感じると言っていた。

 

 身体の違和感を聞いた僕はすぐに思い至った。どうやらリリも僕と同じく、ランクアップによる反動で感覚のズレが生じていると。

 

 それを解消する為には一度基本に戻る必要がある。この世界の冒険者で言えば、ダンジョン上層のモンスターを倒しながら感覚のズレを修正しなければならない。

 

 僕が今も上層にいる理由を知ったリリは納得してくれた。何故アークス製の武器を使わず、上層(あんなところ)に留まっていたのかが全くの謎だったみたいだ。確かに事情を知らないアークスであれば、そう言う風に疑問を抱くのは当然かもしれない。

 

 それが判明した事で、リリも僕に倣って身体のズレを修正しようと、長槍のみでダンジョン上層のモンスターを倒そうと決めた。遠距離攻撃メインであっても、修正しないと照準が狂ってしまうかもしれないから、一刻も早く解消したいそうだ。同じ長銃(アサルトライフル)を使う僕としても、リリの言う事は大変理解出来る為に反対する理由が無い。その結果、今回の探索でリリは僕と同じく前衛で戦う事にした訳だ。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「はい」

 

 準備を終えた僕達は本拠地(ホーム)を出ようとする。

 

 因みに神様は既にバイト先へ向かっていた。何でも午前を担当する人が休みになったみたいで、それを神様が急遽やる事になったらしい。当の本人は『何でボクが……』と少々愚痴っていたけど。

 

 リリと一緒に本拠地(ホーム)の門を開けて、今日もダンジョンへ――

 

 

「アルゴノゥトくぅぅぅうううううんっっっ!」

 

 

「ッ! こ、この声はどわぁっ!」

 

「へ?」

 

 向かおうと思った直後、物凄く聞き覚えのある声がしただけでなく、途轍もないスピードと衝撃が襲い掛かってきた。突然の事にリリは目が点になっている。

 

 声を聞いたことで無意識に身構えた事もあって、どうにか倒れず踏ん張る事に成功してる。僕に突進、もとい抱き着いてきた人は誰なのか既に分かっていた。

 

「お、お久しぶりですね、ティオナさん」

 

「ああ~~久しぶりのアルゴノゥト君だぁぁぁ~~!」

 

 僕が挨拶をするも、抱き着いてるティオナさんはまるでマーキングするかのように、僕の胸にグリグリと顔を埋めていた。それとは別に、両腕に力入れ過ぎでちょっと痛い。

 

「あの、ベル様。このお方は?」

 

 状況が全く飲み込めていないリリだが、一先ずと言った感じで僕にティオナさんの事を訊いてきた。

 

「えっと、この人は【ロキ・ファミリア】の――」

 

「あっ! 君が例の小人族(パルゥム)ちゃんだね!」

 

「はい?」

 

 すると、僕に抱き着いているティオナさんが突然離れて、今度はリリに近付く。

 

「あたしティオナ! よろしくー!」

 

「ど、どうも。リリはリリルカ・アーデと申します」

 

 自己紹介をするティオナさんに、リリは困惑しながらも彼女と同じく名乗り返した。

 

「えっと、ティオナ様」

 

「‶様″なんて付けなくていいよー。普通にティオナでいいからさー」

 

「すいません、これがリリの性分なのでお気になさらず。それとリリの事はリリと呼んで結構ですので」

 

「そうなの? じゃあ『リリちゃん』って呼ばせてもらうね」

 

 いつもの笑みを見せながらフレンドリーに話しかけるティオナさんは、あっと言う間にリリとの距離を縮めようと親しげな名前で呼んでいた。

 

 凄いな、この人。リリとはこの場で会ったばかりなのに、こうまで仲良くなろうとするなんて。これはある意味、一種の才能かもしれない。

 

「ところでティオナさん、今日は一体どのようなご用件で?」

 

 取り敢えず彼女が此処に来た理由を聞こうと、僕は改めて尋ねる事にした。

 

 第一級冒険者が来たとなると、場合によっては今日の探索は中止になる可能性がある。この人であれば猶更に。

 

 僕からの問いにティオナさんが振り向いて答えようとする。

 

「久しぶりにアルゴノゥト君と会うついでに、リリちゃんに聞きたい事があってね」

 

「僕はともかく、リリもですか?」

 

 ティオナさんが僕に会いに来るのは分かるけど、リリに関して全く分からなかった。

 

 リリの『ランクアップ』について、もしくは【ヘスティア・ファミリア(ここ)】へ改宗(コンバージョン)した理由を聞く。その可能性が高いだろう。

 

 もしかしてフィンさんが、ティオナさんを通じて情報を聞き出そうと送り込んだのだろうか。でも以前港街(メレン)の件では、あの人さんが直々に来て僕に直接依頼したから、今更そんな回りくどい方法を取るとは思えない。

 

「ティオナ、急に置いて行かないで」

 

「あ、アイズ」

 

「って、アイズさん!?」

 

 僕の考えとは余所に、今度はアイズさんが現れた。

 

 ティオナさんだけじゃなく、何でこの人まで?

 

「ゴメンねー。アルゴノゥト君の匂いがしたから、つい先走っちゃったー」

 

 匂いってティオナさん、貴方の嗅覚はどれだけ凄いんですか?

 

 僕はこの本拠地(ホーム)から出て間もない筈なのに、一体どこら辺で嗅ぎつけたのかを聞いてみたい衝動に駆られたが、そこは敢えて聞かないでおくとする。

 

 リリも同様の事を考えたのか、少々引いたように彼女を見ているが気にしないでおく。

 

「ベル、久しぶり」

 

「え、ええ。会ったのは港街(メレン)以来ですね」

 

 ティオナさんと同様、この人に会うのは本当に久しぶりだ。相変わらず綺麗な人だと見惚れそうになるも、それは僕の心の内に仕舞っておく。

 

 すると、アイズさんは僕の近くにいるリリの方へ視線を向ける。

 

「ティオナ、この人が……」

 

「うん。【ヘスティア・ファミリア】に改宗(コンバージョン)したリリちゃんだよ」

 

「ど、どうも。リリルカ・アーデです」

 

 ティオナさんが軽く紹介すると、リリはすぐにフルネームを名乗った。

 

 アイズさんも改めて自己紹介をした後――

 

「ねぇ、貴女は一体どうやって『Lv.1』から『Lv.3』にランクアップしたの?」

 

「え?」

 

 いきなり本題に入った事でリリは困惑した。

 

 この問いを聞いた直後、僕はすぐにフィンさん思惑とは一切関係無い物だとすぐに察した。

 

 今回二人が来たのは、単なる個人的な理由で僕達に会いに来たのだと。




久しぶりに書いた為、今回は短いです。

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