ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
長槍を使ったリリの初陣の結果としては良好だった。
ランクアップによる感覚のズレや打撃系武器を久しぶりに使うブランクを差し引いても、リリは上層のモンスター相手に多少苦戦しそうになったが、慌てる事無く倒していた。マリアさんの地獄の特訓によって身体が染みついていたのか、戦い方が完全に
因みに苦戦しそうになった点は、7階層のキラーアント戦の時。6階層のウォーシャドウを簡単に倒せたから、その下にいるキラーアントも試そうとしたんだけど、ちょっとしたアクシデントが起きた。一撃で仕留める事が出来なかった所為で、瀕死になったキラーアントのフェロモンが仲間を呼び寄せてしまった。思わず僕も参戦しようとするが、リリから『これはリリの失態なので、責任は自分で取ります!』と言って、本当に一人で全部倒してしまった。
それとキラーアントの甲殻はそれなりに硬い為、リリが使ってる槍は大丈夫なのかと思って確認したところ、然して問題無いと言っていた。無意識の内にフォトンを纏わせていた事で、武器に大した損傷は見受けられなかったようだ。僕が使っている大剣の運用方法と全く同じやり方だと内心思いながら。
試しに作った安物の槍とヴェルフが言ってたけど、リリは凄く馴染むように使いこなしていた。何だかまるで御伽噺に出てくる聖女フィアナが現れたみたいな感じがしたのは、僕の思い過ごしという事にしておく。
まだ初日だけど、リリがアークス製の武器を使わずとも上層のモンスターと充分に戦える事を知ったから、明日以降から思い切って10階層へ行ってみようと思う。その時は当然僕も一緒に戦う予定だけど、リリの戦い次第では再度控えに戻る事になる。
今日はリリが頑張ったご褒美として、僕の奢りで外食に行く事にした。ちょっと高いけど凄くボリュームがあって美味しいご飯を作ってくれる『豊穣の女主人』へ。
「あっ、白髪頭と噂の
僕とリリが『豊穣の女主人』に辿り着くと、店内は相変わらず沢山のお客で賑わっていた。
つい先程まで対応していたと思われる
「おミャー、このところ店に来る回数減ってるニャー。此処の常連なんだから毎日来るんだニャ」
「あはは、そんなに来たら僕の財布がすっからかんになっちゃいますよ」
常連だからと言っても毎日来るなんて決まりはない筈なのに、あたかも当然のように言ってくるアーニャさんに苦笑してしまう。
「そんなこと無いニャ。おミャーはダンジョンで沢山稼げる実力を持ってるから、そのお金をミャー達の店で使うニャ」
流石にソレは横暴じゃないかと思いながらアーニャさんの台詞を軽く流して、僕とリリは運良く空いていたテーブル席に座る。
取り敢えず常連らしく振舞おうと今日のお勧め料理を頼む事にした。相変わらずちょっと高いけど、今日はリリのご褒美だから奮発したい。
「宜しいのですか、ベル様。リリも少々出そうと思いますが」
「気にしないで。この前のバイトで僕の懐はそれなりに温まってるからさ」
僕が言ったバイトとは、リリが以前所属していた【ソーマ・ファミリア】主体のオークションで臨時の助手役をやったアレの事を指している。その時にお礼として二五〇〇万ヴァリスと言う凄く高いバイト料を貰って、僕の懐は本当に余裕があるから問題無い。
他にオマケとして貰った完成品『ソーマの
……そう言えば、アイズさん大丈夫かな。
今頃『黄昏の館』はどうなっているんだろうか。もしレフィーヤさんが知れば、絶対憤慨して抗議の準備をするかもしれない。明日の朝方に僕達の
【
「もう、ベルさんったら。来たなら私に声を掛けて欲しかったです!」
「クラネルさん、常連の貴方が来ないとシルが不機嫌になります」
料理と飲み物を運んできたウェイトレス二人は僕に向かってそう言った。
抗議するように少々頬を膨らませているシルさん、僕に指摘をしてくるリューさん。
二人は料理と飲み物を置いた後、何故か僕達の席に座ろうとする。僕の隣にシルさんが、リリの隣にリューさんが。
「あの、何でシルさん達も座ってるんですか……?」
よく見たら飲み物が四人分あった。僕とリリとは別に、残りの二つは明らかに目の前にいるウェイトレス二人が飲もうとしてる。
「常連客を持て成す為に私達を貸してやるから存分に笑って飲めと、ミア母さんからの伝言です。ついでに金を使えと」
「それってぼったくりの手口じゃないんですか?」
リューさんの落ち着いた声に、リリが思わず突っ込みを入れるも、まるで無視するように流されてしまった。
僕が苦笑いをしながら振り向くと、カウンターの奥にいるミアさんは不敵な笑みを浮かべながら手をぱっぱっと振っている。久しぶりに来たんだから羽目を外せ、ということなのだろう。
まぁこの店は本当に料理が美味しいから、それなりに楽しむとしよう。
そう考えた僕は、リリ達に乾杯とそれぞれのグラスをぶつけ合った。
僕とリリは
お勧めの料理に舌鼓を打ちながら、僕達はこの時間を楽しんだ。
リリは初めて来たにも拘わらず、シルさん達に笑顔で対応している。聞いた話でオラクル船団ではメイドとしての作法を学んだとか言ってたけど、それに関係して上手くやれてるかもしれない。
「リリルカさん。貴女は【ヘスティア・ファミリア】に
「前までは単なるサポーターと冒険者の関係でしたが、今後はベル様を支える
「クラネルさん、まさかとは思いますがアーデさんの言う
「な、何でそうなるんですか!?」
リリとシルさんの会話の中で聞き捨てならない単語が入ったかのように、リューさんが少々怖そうな目で睨んでいた。
と言うか、僕って未だにシルさんの伴侶扱いされてるだね。どうしてそんな事になってるのかが全く理解出来ないんだけど。
「ところでクラネルさん、今後はどうするのですか?」
「今後、ですか?」
「ええ。今までソロで活動してた貴方が、アーデさんを新しい
談笑をしてる最中、リューさんが少々真剣な表情で訊いてきた。彼女の質問に、僕は差し障りのない返答をする。
「えーと、もう暫くの間は上層で活動しようと思ってます。僕だけじゃなく、ランクアップしたリリも
「……成程、それは賢明な判断です。特にアーデさんはそうしたほうがいい」
僕の返答を聞いて理解したのかのように、リューさんは一切疑問を抱かなかった。
どうやら彼女もランクアップによる感覚のズレの事を知ってるようだ。チラッとリリを見ながら言ったのは、一気に『Lv.3』にランクアップした事で、普通の冒険者以上にズレが酷い事を察してくれたと思っていいだろう。
「クラネルさん、余計なお世話なのは重々承知してますが、出来ればもう一人仲間を増やすべきです」
何らかの考えが至ったか、リューさんは僕にそう進言してきた。
「今後もパーティで行動するのでしたら、
「やっぱりそうなりますよねぇ……」
それは僕も分かっている。
いくらアークスの力を振るえるからと言っても、やはり仲間は必要だ。
かと言って、僕が信用出来る仲間と言えば【ロキ・ファミリア】くらいしかいない。フィンさん達なら協力してくれるかもしれないが、流石に有名な派閥に大それたことは出来ない。
それ以外で信用に値するのは今のところ【ヘファイストス・ファミリア】にいる
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