ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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久しぶりの更新です。


二人のアークス⑦

「おいベル、アイツ本当に凄いな」

 

「あ、あははは……」

 

 僕がテクニックを主体で援護している中、ヴェルフは少々呆然とするように別の方へ視線を向けている。

 

 ヴェルフの言うアイツとは、当然リリの事を指している。その台詞に僕も内心同意で少々苦笑気味だった。

 

 何しろ、僕達が見ている先には無双の如き光景が目に映っている。

 

「ふっ!」

 

『ギギャッ!』

 

 僕達が見ている視線の先には、長槍を振るっているリリがインプの群れを殆ど一撃で倒していた。

 

 彼女は小さな体を最大限に活かすように、素早いスピードでモンスター達を翻弄させている。小柄なインプ達は同じ目線である冒険者(てき)を迎撃しようにも、リリの速さに付いて行けず頭を貫かれ、もしくは首が宙に飛ばされているのが殆どだ。

 

 スピードだけでなく跳躍(ジャンプ)も凄い。まるで背中に羽根でも付いているんじゃないかと思う程のジャンプ力を披露して、少々高めに飛んでいるバットバットに接近して仕留めている。さり気なく2段ジャンプ可能なアークスのクラススキル――ネクストジャンプを使ってる事は気にしないでおく。

 

 あそこまで機敏に動いて一撃でモンスターを倒す小人族(パルゥム)は滅多にいないだろう。『Lv.3』だから当然と言われればそこまでになっちゃうけど、それはあくまで恩恵(ファルナ)の話に過ぎない。あそこまで戦えるのは、オラクル船団でアークスの戦闘訓練を受けた賜物だ。同時に鬼教官と呼ぶに相応しい六芒均衡のマリアさんからの地獄の特訓を受けて生き延びたからこそ、リリは並の冒険者以上の強さを得た。必死で培った努力を恩恵(ファルナ)だけで済ませて良い訳がない。

 

 もし此処に【ロキ・ファミリア】のフィンさんがいれば、絶対に称賛の言葉を口にするのが目に浮かぶ。同時にティオネさんからの嫉妬が籠った視線を送るどころか、リリに対して敵視しそうな気がするのは僕の思い過ごしであって欲しい。

 

 僕が少し如何でもいい事を考えていると、リリは次の行動に移ろうとしている。

 

「ヴェルフ様、いつまでも余所見してると獲物を頂きますから!」

 

『ブゴッ!』

 

 バットバットを倒して綺麗に着地したリリは、呆然と見ている僕達を見て言った後、一気に突進して次のモンスターを仕留めた。戸惑い気味になっているオークにあっと言う間に接近し、インプみたいに脳天を貫いて絶命させながら。

 

 未だに生き残っているインプは頼りにしていた筈の仲間が一撃で倒された事で、段々と怯え始めている。逆に他のオーク達は激昂して、手にしてる棍棒を振り回しながら、鈍足の突進をしていく。

 

 怒り状態となっているオークにリリは一切慌てる事無く、まるで掛かって来いと言わんばかりに迎撃の構えを見せている。

 

「って、おいおい! オークは任せろって言っただろう!?」

 

「だから余所見しないで戦って下さい! 早くしないとリリが全部倒しますよ!」

 

「じょ、冗談じゃねぇ! ベル、俺達も行くぞ!」

 

「そ、そうだね」

 

 確かにこのままリリ一人だけでモンスターを倒したら、ヴェルフが同行した意味が無くなってしまう。魔法で援護する僕としても、このまま何もせず黙っている訳にもいかない。

 

 僕達(主にヴェルフ)も負けじと、大型級モンスターのオーク達に挑もうとするのであった。

 

 

 

 

 

 

「しかし、とんでもなく速かったな、リリスケ。いくら『Lv.3』だからって、あんなに凄い動きするなんて思わなかったぞ」

 

「ああ言う数の戦いは、一撃で倒せる相手はすぐに片付けるように教えられましたからね」

 

 大群だったモンスターとの戦闘を終えた僕達は今、小休止を取っている。

 

 場所は変わらず10階層のルーム。戦いの後が残る草原はモンスターによって砕けたダンジョン壁面の一部が転がっていたり、オークが引き抜いた枯木が所々に散乱していたりと、割と凄い光景になっている。

 

 主に戦っていたのはリリとヴェルフだから、僕はサポーターみたいに魔石の回収を行っている。それを見たリリが自分もやると言ったが、今回の僕は余り戦ってないからと言う理由を出して、彼女を休ませていた。

 

「ってか、リリスケだけでなく、やっぱりベルも凄いな。戦争遊戯(ウォーゲーム)で見たが、あんな凄い魔法を使ってたら、そこら辺の魔導士達が形無しに見えちまいそうだ」

 

「そうかな? 【ロキ・ファミリア】のリヴェリアさんに比べたら、僕なんかまだまだだと思うけど」

 

「……あの【九魔姫(ナイン・ヘル)】を比較対象にする時点で既におかしいんだがな」

 

 思わず以前に遠征の時に見せてくれたリヴェリアさんの魔法より劣ると言ったけど、ヴェルフから何故か凄く呆れられてしまった。

 

 と言うより僕、他所の【ファミリア】で知ってる凄い魔導士はエルフのリヴェリアさんやレフィーヤさんしか知らない。あの二人以外に凄い魔導士がいるなら、ぜひ会ってみたいものだ。

 

「けどまぁ、改めてお前等はやっぱりどっちも凄ぇな。念願のパーティを組んでもらってくれたとは言え、正直言って今回の俺は完全に足手纏いだった」

 

「ヴェルフも充分に戦っていたよ」

 

 急に自虐な台詞を口にするヴェルフに僕はすぐにフォローするも、彼はすぐに首を横に振っていた。

 

「そんな気遣いはしなくて良いぞ、ベル。俺の活躍なんてリリスケに比べたら大したことはねぇからな。そうだろ、リリスケ?」

 

「確かに結果論から見ればそうかもしれません」

 

 僕と違ってリリはバッサリと言い切った。

 

「もしこれが他の冒険者様でしたら、事実を受け入れないどころか、物凄く下らない言い掛かりを付けるでしょうね。以前に同行した、あのどうしようもないクズ共と来たら……!」

 

「「………………」」

 

 淡々と言っていたリリだったけど、急に何か怨念が籠ったように語り始めようとする。その所為で僕やヴェルフが何も言えなくなるどころか、少々引き気味になってしまう。

 

 余り詳しく聞いてないけど、何でも彼女がアークスになる前の頃は相当悲惨な目に遭っていたらしい。横暴な冒険者達から暴行を受けるのは当たり前で、今もそう言う連中がサポーターを平然と虐げているとか。

 

 もしアークスの組織内にそんな問題行動をする人物がいれば、間違いなく厳罰に処されている。それどころかアークスの資格を剥奪してもおかしくない程に。

 

 この世界では冒険者を統括してるギルドがそう言う事をすべきなんだけど、それを指摘する暇がないのか、もしくは敢えて黙認してるのかは分からない。リリがアークスになって数年以上経っても現状が改善されてないと言う事は、もしかしたら後者なのかもしれない。キョクヤ義兄さんが知れば、『堕落に貪るギルドの職務怠慢だ』と間違いなく批判するだろう。エイナさんや真面目なギルド職員の人達を悪く言うつもりは無いんだけど、上層部が積極的に動かないと一生改善する事は無いかもしれない。

 

「ヴェルフ様、貴方様はあのクズ共と違うって信じています」

 

「お、おう……!」

 

「ベル様は問題ありませんが、決してリリ以外のサポーターを蔑ろにしてはいけませんからね」

 

「も、勿論だよ……!」

 

 若干恐い目になりながら念を押してくるリリに、ヴェルフと僕は頷くしなかった。もしこれで否定した瞬間、物凄く不味い事態が起きると分かっているから。

 

 ちょっとした小休止の筈が、少々重苦しい会話になってしまっていたが、それはすぐに途切れる事になった。

 

 

「お、おい、あそこにいるの【亡霊兎(ファントム・ラビット)】じゃないか!?」

 

「そ、そうだ! 間違いない!」

 

 

 名前も知らない冒険者達が何か焦ってるように走りながら僕達、と言うより僕を見た途端に足を止めた。

 

 直後、今度は此方へ向かって来ようとする。いきなりの事に僕だけでなく、リリとヴェルフも怪訝な表情になっていた。

 

「【亡霊兎(ファントム・ラビット)】、悪いがすぐに11階層へ来てくれ!」

 

「はい?」

 

 冒険者の一人からの突然な発言に、僕は目が点になった。

 

「おいおい、いきなり何言ってるんだ?」

 

「何故ベル様にそのような事を仰るのですか?」

 

 これにはヴェルフとリリも黙っていられないようで、すぐに割って入るように言ってきた。

 

 いくら同業者と言っても、ダンジョンの中では他所のパーティに干渉しない事になっている。下手に関わってしまえば要らぬ諍いが起きるどころか、向こう側が起こした問題に巻き込まれてしまう。と言う事を、前にギルド職員のエイナさんからの講習でそう学んだ。

 

 この人達も当然それを理解している筈の他、僕とは何の接点も無い冒険者だから、いくらお人好しと言われてる僕でもすぐに頷く事は出来ない。

 

「じゅ、11階層で俺達の仲間が、怪物の宴(モンスター・パーティー)に巻き込まれたんだ!」

 

「身勝手なお願いなのは重々分かってる! どうか助けてくれ!」

 

怪物の宴(モンスター・パーティー)って……お前等が逃げるほどなのか?」

 

 ヴェルフがまるで信じられないように問う。

 

 確かに僕から見ても、目の前にいる冒険者達は上層のモンスター程度でやられるとは思えない装備をしている。

 

 11階層は今いる10階層と違って『ハード・アーマード』や『シルバーバック』と言う強いモンスターがいても、パーティを組んでるこの人達が逃げてまで僕達に助けを乞うとは思えなかった。となれば、何か他の事情があるかもしれない。

 

「イ、『インファント・ドラゴン』が突然現れたんだよ……!」

 

「しかも二体同時に出て来た上に、他のモンスターも呼び寄せて来たんだ……!」

 

「「「!」」」

 

 名前も知らない冒険者達が助けを乞う理由が分かった僕は、ヴェルフとリリと一緒に、彼等の案内で至急11階層へ向かうのであった。




原作と違ってインファント・ドラゴンが二体出現と言うイレギュラーの他、10階層にいるファントムベルに冒険者が助けを求める流れにしてます。

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