ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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活動報告で書いた通り、久しぶりに更新しました。


二人のアークス⑨

「ベル様、あの時は緊急事態だったとは言え、もう不用意に使わないで下さいね」

 

「分かってるって」

 

 他所の冒険者(どうぎょうしゃ)を救出した翌日。

 

 準備を終えた僕は、リリと一緒に再びダンジョン探索をしようとバベルへ向かっていた。

 

 昨日は色々な意味で大変だった。非常事態だったとは言え、僕が放った魔法(テクニック)の【レ・ザンディア】や【フォメルギオン】の所為で、ダンジョン11階層がとんでもない事になっていたから。救出した冒険者達だけでなく、後から駆け付けたヴェルフが驚きの絶叫を上げていたほどに。他にも地上へ帰還しようとしていた他の冒険者達も、11階層の光景を見て困惑していたとか。帰還した後、リリに物凄く怒られたのは言うまでもない。

 

 だけどそれとは別に、フォースやテクターでしか使えない筈の略式複合や複合属性のテクニックを、ファントムクラスの僕が発動させた事にリリはかなり驚いていた。事前に教えたとは言え、本当に使えるのかと疑問視していたらしい。それはアークスとして当然であり、僕も当初疑っていた程なので無理もなかった。

 

 取り敢えず今後の方針として、ダンジョン上層で使用禁止になった。威力が高過ぎて上層のモンスター達は簡単に終わってしまうだけでなく、『Lv.1』などの下級冒険者達の目に入れば非常に良くないと言う理由で。

 

 因みに救助した冒険者達には地上で口外しないことを了承してくれたけど、正直言って余り期待出来ないとリリは言っていた。人の口には戸が立てられないから、広まってしまうのは時間の問題かもしれないって。

 

 だとすれば、以前僕が遠征でお世話になった【ファミリア】のあの人達も知る事になるだろう。特にオラリオで有名な王族妖精(ハイエルフ)妖精(エルフ)の魔導士の二人から、色々追求される光景が目に浮かんでしまう程に。

 

「にしてもまぁ、昨日は本当に凄かったな。ベルが強いのは前から知ってたが、あんな凄い魔法使えるなんて」

 

 途中で合流したヴェルフが、昨日の光景を思い出したように言ってきた。

 

 直後、リリはすぐに指摘しようとする。

 

「ちょっとヴェルフ様! こんな公衆の面前で言わないで下さい!」

 

「大丈夫だって。周りに誰もいないだろう?」

 

 ヴェルフの言う通り、確かに僕達の会話を聞こうとしている人達はいない。

 

「それでもです! 人通りが多い所で言えば、聞き耳を立てなくても情報が漏れてしまう事があるんですから!」

 

「分かった分かった。もう言わねぇよ」 

 

 リリの指摘(ちゅうい)にヴェルフは少々ウンザリ気味になりながらも、根負けしたかのように頷いていた。

 

「まぁまぁ、落ち着いてよリリ。と言うか、そんな事を大声で言えば余計目立つから」

 

「………すいません」

 

 少々神経質になっていたと、リリは僕達に謝罪する。

 

 これ以上この話題は余り良くないと思った僕は、話題を変えることにした。

 

「ところで、今日の探索も僕は昨日と同じく後衛で良いのかい?」

 

 僕の台詞に、二人はすぐに反応してすぐに頷いた。

 

「そうですね。リリはまだ感覚のズレがありますので、是非ともお願いします」

 

「俺もだ。ベルの援護は俺としても非常に助かる」

 

 リリとヴェルフは後衛をやる僕に何一つ異論は無いどころか賛成していた。

 

 前から言ってるように、僕のテクニックはアークス専用の武器を持つ事で威力を発揮するから、それを持たずに使えば威力は激減する。回復用のレスタやアンティ、補助用のシフタとデバンドは全く別だけど。

 

 ダンジョン探索する前の確認を終えると、丁度良くバベルに辿り着いた為、僕達三人は11階層を目指そうとする。

 

「ねぇヴェルフ。合流した時から気になってたんだけど、大刀以外に背負ってるソレって……」

 

「ん? ああ、コレはちょっとした保険(・・・・・・・・)だ。昨日の件でヘファイストス様から心配されて、万が一の為に持って行けってしつこく言われてな」

 

 僕は少し気になるも、ヴェルフから余り触れて欲しくなさそうな感じがしたので、それ以上何も言わない事にした。

 

 

 

 

 

 

「流石はダンジョンだ。もう元に戻ってやがる」

 

 ダンジョン11階層へ来て、ヴェルフの呟きを聞いた僕とリリも同感だと思いながら見回している。

 

 僕が放ったテクニックで惨状とも言うべき光景になっていた筈が、何事も無かったかのように枯木が所々にある草原に戻っていた。

 

 ダンジョンに修復機能があるのを知っているとは言え、ここまで完璧に戻せるのは改めて凄いと認識してしまう。

 

 それらを一通り確認した僕達は、モンスターの出現に警戒しながら辺りを散策する事にした。

 

 途中で当然モンスターが出現したので、後衛の僕はテクニックで前衛のリリとヴェルフを援護する。

 

(何か妙だな)

 

 威力の低いラ・フォイエで『オーク』を怯ませると、隙有りとヴェルフが大刀で両断していた。

 

 リリの方はいつもの長槍で複数の『インプ』だけでなく、『シルバーバック』も一撃で仕留めている。あの勇姿をフィンさんが見たら絶対驚くかもしれない。

 

 だけどそれとは別に違和感があった。モンスターが出現しているとは言え、余りにも出現する数が少なすぎる。僕だけでなく、戦っているヴェルフやリリも当然気付いている筈だ。

 

 もしかして、昨日の怪物の宴(モンスター・パーティー)に関係してるのかな? あの時は『インファント・ドラゴン』が二体出現しただけでなく、多くのモンスターも呼び寄せていた。その後に僕が一気に殲滅しただけでなく、11階層その物にも大きな被害を与えた。それによってダンジョンは修復に集中する余り、モンスターを出現する余力が無い状態に陥っている……とか。まぁ、そんな事はあり得ないか。

 

 モンスターの数が少ない事もあって、リリとヴェルフはいつもより早く戦闘を終わらせて戻ってきた。

 

「二人とも、今日も調子が良いみたいだね」

 

「と言うより、モンスターの数が少なくて物足りないです」

 

「俺もだ。少ないのは有難いが、パーティで戦うには何か拍子抜けっつうか……」

 

 10階層で戦ったリリとヴェルフもやはりと言うべきか、モンスターの少なさに違和感がある事に気付いていたようだ。

 

「それにモンスターだけでなく、10階層と比べて霧も薄い気がします」

 

 確かにそうだった。

 

 リリの言う通り、11階層は本当だったら深い霧に包まれている。だけど今は全く違って、霧があってもダンジョンの壁が見えるほど薄い。僕達が今いる位置からでも、ダンジョンの壁が見えるほどだ。

 

 これは僕達だけでなく、他の冒険者達も違和感を抱いているだろう。加えてモンスターの数も少ないとなれば、魔石も大して得られないのも明白だった。

 

「どうする? モンスターがあんまり出なけりゃ、いっそのこと12階層へ……ん?」

 

 ヴェルフが周囲を見渡しながら言ってる最中、途端に止まった。

 

「おい、あそこ……」

 

「え?」

 

「何かあるんですか?」

 

 指をさした方へ僕とリリも視線を向けた先には、罅だらけになってるダンジョンの壁があった。別に何ともないモノだけど、そこだけ妙な違和感がある。あの罅が入っている壁だけ、他と違って未だに修復されてる感じが見受けられない。

 

 ちょっとばかり気になった為、僕達はすぐにヴェルフが指していた壁へ向かおうとする。

 

「確かこの辺りは、昨日ベル様があの魔法によって大きく被害を受けていましたね」

 

 リリの発言に少し心が痛くなりかけるも、敢えて気にしない事にした。

 

 すると、丁度修復に取り掛かろうとすると言わんばかりに、罅の入った壁は元に戻ろうとするが……またしても罅が入る事になった。

 

「な、何だ? 修復されたかと思えば、また罅が入ったぞ」

 

「これは妙ですね」

 

 余りにもおかしな光景にヴェルフだけでなく、リリも訝りながらダンジョンの壁を調べようとする。

 

 僕も妙だと思いながら壁を凝視している中、リリは長槍で壁を突き刺していた。もしかしたら何かあるんじゃないかと思って確かめているんだろう。

 

「これは、まさか……」

 

 壁に槍を突き刺したリリは、何かを確信したような台詞を口にしていた。

 

「リリ?」

 

「どうしたんだ、リリスケ?」

 

「すいませんがベル様、この壁に向かって【ラ・フォイエ】を使って下さい」

 

 僕とヴェルフはリリの反応を見て訝るも、途端に彼女は刺した槍を戻した後にそう言った。

 

「良いけど、何か分かったの?」

 

「まだ確証はありませんが、もしかしたらこの壁の先に通路があるかもしれません」

 

「通路? 何でそんな事が分かるんだ?」

 

「槍を刺してる最中、突如何の障害もなく一気に突き刺せましたので」

 

 リリは僕とヴェルフの問いをスラスラと答えていた。

 

「って事は、この罅が入った壁を壊した先に未開拓領域があるかもしれないのか?」

 

「それを確かめる為、ベル様にやって頂きたいのです」

 

 改めて確認してくるヴェルフに、リリは僕に向かってそう言った。

 

「ベル様、そのままだと壁が壊せませんので、本来の武器を使って下さい」

 

「分かった。リリとヴェルフは下がってて」

 

 了承した僕は電子アイテムパックから長杖(ロッド)のカラミティソウルを取り出してから――

 

「爆炎の華よ 紅蓮の如く咲き誇れ ラ・フォイエ!」

 

 チャージした炎属性テクニック――ラ・フォイエを放った瞬間、罅の入った壁は突如大きく爆発した。

 

「すっげぇな! さっきまでとは威力が桁違いじゃねぇか!」

 

「……あのテクニックに本来詠唱は必要無い筈ですが……」

 

 驚くヴェルフとは別に、リリは僕のテクニックに対して小声で何か言ってたけど聞き取れなかった。

 

 そんな中、爆発によって罅の入った壁が無くなった先には――未開拓領域と思われる通路を発見する。

 

 だけど、この時の僕達はまだ知らなかった。この先は本来のダンジョンと全く異なる領域であることを。




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