ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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今回は前回より短いです。


二人のアークス⑩

 壁を壊した先の通路に、僕達は足を踏み入れた。

 

 今回は未開拓領域に入る為、先程までの前衛を務めていたリリから僕に変更している。それは当然向こうも了承済みだ。

 

 しかし、石板で覆われた通路を進んでいる事に妙な違和感を感じていた。

 

「ここ本当に迷宮(ダンジョン)なのか? 何と言うか、妙に造り方が人工的な気がするな」

 

 そう。ヴェルフの言う通り僕達が進んでいる未開拓領域は、天然の迷宮(ダンジョン)とは言い難い光景だった。

 

 以前僕が【ロキ・ファミリア】の遠征で、フィンさん達と一緒に進攻(アタック)した51階層に少しばかり似ている。だけどあそことは違って、不気味な怪物を象った彫像が散見しており、壁面には植物の彫細工(レリーフ)が刻まれており、壁に埋め込まれた青い魔石灯など一切無かった。

 

 余りにも違和感だらけな光景だと思いながら進んでいると、突如足を止めざるを得なかった。

 

「何だ? この扉は」

 

「行き止まり、ですね」

 

 僕が見る先には、分厚そうな扉があった。しかも随分と人が造ったと思われるデザインの凝った扉が。

 

 ヴェルフが気になるように調べている最中、リリは僕達に背を向けて何かを取り出していた。それが小型端末機だと分かっている僕は敢えて何も気にしないでいる。

 

「ッ!? まさか、こいつは……!」

 

「どうしたの、ヴェルフ?」

 

 扉を調べていたヴェルフが驚きの声を上げたので、それが気になった僕は声を掛けた。

 

「俺の知識が確かなら、目の前にある扉は『最硬金属(オリハルコン)』で出来てるぞ……!」

 

「え? オリハルコンって……」

 

 ティオナさんの『大双刃(ウルガ)』は超硬金属(アダマンタイト)で作られているが、オリハルコンはそれ以上の硬さを持つ金属だと言う事を知っている。因みにアイズさんが使っている片手剣『デスペレート』に不壊属性(デュランダル)があるのは、オリハルコンで出来ているからと教えてくれた。

 

「確か凄く貴重で高価だから、()()()でも簡単に手に入らない金属だよね?」

 

「その筈なんだが、こんな分厚い扉一つだけに丸々使うなんざ、とても正気じゃねぇぞ……!」

 

 ()()()であるヴェルフからしたら、オリハルコンと言う希少金属(レアメタル)を扉の為だけに作られたのは全くの予想外だったんだろう。

 

 僕も気になってコンコンとノックするようにやると、確かにかなりの硬さを感じられた。僕が持つ大剣で斬ろうとしても、余りの硬さに大剣の方が折れてしまうのが容易に想像出来る。

 

 尤も、フォトンを纏う事が出来るアークス製の武器なら話は別だった。流石に抜剣(カタナ)は難しいけど、長銃(アサルトライフル)長杖(ロッド)を使ってのテクニックなら何とか破壊できるかもしれない。とは言え、こんなに分厚いオリハルコン製の扉を壊すには、相応の体内フォトンを消費する事になる。

 

「どうする、リリ。一旦引き返してギルドに報告した方が良いかな?」

 

「そうですねぇ……」

 

 リリは小型端末機を見終えたのか、僕達と同じく扉の方を見ていた。

 

「ヴェルフ様が仰るオリハルコン製の扉があると言う事は、この先に何かとんでもないモノがあるかもしれません」

 

 ですが、と言いながらリリは続ける。

 

「未開拓領域を発見しておいて、このまま戻るのは癪なので、もう少し進んでみましょう。何一つ収穫が無かったことを、あの強欲なギルド長が知れば嫌味を言われそうですし」

 

 そう言えばリリは、この前あったオークションの件でギルド長のロイマンさんに睨まれているんだった。エイナさんから聞いた話だと、リリがもしダンジョン探索中に何かしらの不手際が発覚したら報告しろと言われたらしい。

 

 確かに未開拓領域を見付けただけで帰還して報告すれば、あの人はここぞと言わんばかりに嫌味を言うかもしれない。冒険者であれば更に調査すべきとか、何の収穫も無いのは冒険者としては如何なものとか、みたいな事をネチネチと(なじ)る可能性がある。

 

 多分リリはそうなることを回避しようと考えているのだろう。でなければ、普段から慎重なリリが自ら更に進もうと言い出したりしない筈だ。

 

「進むって、こんな分厚いオリハルコン製の扉をぶち破る方法でもあるのか?」

 

「ええ、ちょっとばかり手荒なやり方ですが……ベル様、今からとっておきの魔剣(・・・・・・・・)を使いますので、ヴェルフ様と一緒に下がって下さい」

 

 そう言いながらリリは長槍を背中に背負った後、何も無い筈の両手から大きな黒い筒型の武器が出現する。

 

「お、おいリリスケ、一体何処からそんなデカい武器を出した!?」

 

「ヴェルフ、気になるのは分かるけど、取り敢えず下がろうか」

 

 リリが出現した大砲(ランチャー)――『D-A.I.Sブラスター』について訊こうとするヴェルフに、僕がすぐに彼の腕を引っ張りながら下がろうとする。

 

 すると、チャージしているのか彼女の武器が青白く光り出している。大砲(ランチャー)でチャージするフォトンアーツと言えば……あっ!

 

「ヴェ、ヴェルフ! もう少し下がるんだ!」

 

「は? 一体何を言って――」

 

「いいから早く!」

 

 ヴェルフが全く分からないと不可解な表情をするも、僕は有無を言わさず再度腕を強く引っ張って再度強引に下がらせようとする。

 

 そしてすぐに耳を塞ぐように言った直後、チャージを終えたリリがフォトンの砲弾を発射した直後――大きな爆発音と爆風が起きるのであった。

 

 

 

 

 

 

「これは……!」

 

 少々薄暗い広間にある石造りの台座の前に、一人のヒューマンの男が立っていた。

 

 台座には月の光を思わせる青白い水膜が張られており、それには人造迷宮(クノッソス)に侵入した【ロキ・ファミリア】の眷族達が映し出されていた。罠に嵌められた事で、殆どが焦燥に満ちた表情で苦戦を強いられている。

 

 このまま順調に進めば連中を倒せると見ている中、予期せぬ事が起きてしまう。水膜には【ロキ・ファミリア】ではない者達が人造迷宮(クノッソス)に侵入しているどころか、オリハルコン製の扉を破壊していた。

 

「一体誰だ? 我々の『作品』を傷付ける愚か者は」

 

 ヒューマンの男――バルカ・ペルディクスは激昂した。第三者が土足で侵入しただけでなく、大事な作品の一部を破壊するなど許される事ではないと。

 

 侵入者は白髪の男性ヒューマンと赤髪の男性ヒューマン、そして小人族(パルゥム)と思われる少女の三名。扉を壊したのは小人族(パルゥム)だと分かった瞬間――

 

「あの小娘、生きては返さんぞ!」

 

 既にバルカは監視している【ロキ・ファミリア】の事など如何でも良くなっていた。『作品』を壊した小人族(パルゥム)の少女――リリに憎悪の目を向けている為に。




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