ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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二人のアークス⑫

 アークス用の武装に切り替えて早々、先制攻撃を仕掛けた僕は一瞬で植物型モンスターの群れの一匹目を斬り伏せた。

 

 同胞がやられても、他のモンスターは僕目掛けて鋭い牙と歯がある大きな口を開けながら接近しようとする。初見だったら戸惑うかもしれないが、既に経験してる僕はその単調な攻撃を躱した後、居合切りの如く斬り返す裏の技(シフト)用フォルターツァイトでもう一匹目を仕留めた後、クイックカットで別の植物型モンスターに接近し、再度裏のフォルターツァイトで斬りつけた。

 

 裏のフォルターツァイト→クイックカット→裏のフォルターツァイト→クイックカット、と言う連続攻撃をやった事で、先程までいた筈の植物モンスターの群れは全て斬り伏せられている。

 

「ふぅっ、次は――うわぁっ!」

 

 植物型モンスターの群れを片付けたので、蜘蛛型モンスターと交戦してるリリとヴェルフの加勢に行こうと思いきや、突然の衝撃と爆風が襲い掛かってきた。思わず倒れそうになってしまいそうになるも、何とか堪えながら振り向くと、その先には耳を塞ぎながら伏せているヴェルフと、大砲(ランチャー)『D-A.I.Sブラスター』を両手に持ってフォトンの弾丸を撃ち続けるリリがいた。

 

 さっき僕に襲い掛かった凄まじい衝撃と爆風は、大砲(ランチャー)のフォトンアーツ『ディバインランチャー零式』だとすぐに分かった。此処へ来る前にオリハルコンの扉を破壊した時と全く同じだったから。

 

 今は通常の射撃で撃っているからそこまで酷くはないが、それでもアダマンタイトが埋め込まれてる壁が次々と破壊されている。どうやらフォトンアーツを使わなくても、出力最大で撃てば簡単に壊せるようだ。

 

 ――って、そうじゃなくて!

 

「ちょ、リリ! もう(モンスター)はいないから!」

 

「え? ……あっ」

 

 既に蜘蛛型モンスターがいないにも拘わらず、未だに撃ち続けているリリを見た僕はすぐに止めようとした。

 

 僕の声に反応したリリはすぐに止めて、漸く新手のモンスターが来ない事を理解してくれる。

 

「す、すみません。余りの数の多さに、思わず苛々してしまって」

 

「それは、まぁ……」

 

 リリの言いたい事は僕も分かる。

 

 オラクル船団でアークスとして活動していた時、ダーカーの群れに襲われた事があり、何度倒しても減らない状況に陥った経験がある。一緒にいたキョクヤ義兄さんが、諦めない姿勢を見せてくれたお陰で如何にかなったけど。

 

 もしかしたらリリも僕と似たような経験をした事があるかもしれない。そうでなければ大砲(ランチャー)で撃ちまくるなんて事はしない筈。と言っても、あくまで僕の予想に過ぎないが。

 

「ど、どうやら収まったみたいだな……」

 

 恐る恐ると言った感じで立ち上がるヴェルフの声に、僕はすぐに振り向いて話し掛けようとするが、ある事に気付いた。

 

「あれ? ヴェルフ、武器はどうしたの?」

 

 さっきまであった筈の大刀が無いので聞いてみると、途端にヴェルフが罰が悪そうな表情になる。

 

「蜘蛛みたいなモンスターの所為で溶かされちまってな」

 

「正確に言うと、あのモンスターの口から吐いた溶解液らしきモノの所為で、ヴェルフ様の武器があっと言う間に溶かされたんです」

 

「ッ!」

 

 ヴェルフの返答にリリが補足するように付け加えてくれた事で、僕は思わず目を見開いた。

 

 溶解液って……まさかあの蜘蛛型モンスターは、ダンジョン深層で見た芋虫型と似たモンスターだったのか?

 

 さっき戦った植物型モンスターの群れがいたって事は、もしかして此処にダンジョン59階層で戦った『精霊の分身(デミ・スピリット)』がいたりして……そんな訳無いよね?

 

 もしそれ等をこの場で口にすれば(アークスの)リリはともかく、ヴェルフが絶対混乱すると思うから、僕の心の内に留めておこう。

 

「……出来れば僕の思い過ごしであって欲しいんだけど」

 

「ベル様?」

 

「おいベル、何ブツブツ言ってんだ?」

 

「あ、いや、気にしないで」

 

 小声を聞いたリリとヴェルフが怪訝な表情になったので、僕はすぐに誤魔化すように振舞った。

 

「取り敢えず今は、一刻も早く此処を出よう」

 

 僕の台詞に二人は何の文句も無く頷いたので、閉ざされた扉を再びリリに大砲(ランチャー)で壊してもらう事にした。

 

 そんな中、僕達が戻る筈の反対側の通路から、何かが呼びかけてくる。

 

(今のは風……え、風?)

 

 ここに来てから風らしきモノは全く感じなかった筈なのに、その音が段々と近付いてくる。

 

「ん? この音は……」

 

「何だ、風か?」

 

 聞こえたのは僕だけでなく、ヴェルフやリリも当然耳にしている。

 

 次の瞬間――ドッッ! と波濤の如く、風が凄まじい勢いで轟いた。

 

「うわっ!?」

 

「どわぁっ!?」

 

「おわっ! っと、ととと!」

 

 通路の奥から一気に吹きわたった疾風に、僕とヴェルフは仰け反って踏鞴を踏み、リリはバランスを崩しそうになっていた。

 

 大砲(ランチャー)の砲身が此方に向けられそうになるも、辛うじてフォトンの弾丸が消失し事なきを得ている。

 

「何ですか今の風は!? 危うく誤射するところでしたよ!」

 

「もしかして何かしらの(トラップ)か!?」

 

「――いや、違う」

 

 風に対して抗議するリリと警戒するヴェルフだけど、僕だけは違った。

 

 この澄み切った風には憶えがある。

 

 同時に感じられる魔力から――金髪の女性の姿を連想させられる。

 

「アイズさんの『風』だ!」

 

「え!? ちょ、ベル様!」

 

「お、おいベル! 何処に行くんだよ!?」

 

 届いた風からアイズさんのSOSを感じ取った僕は、それを頼りに進むのであった。

 

 

 

 

 

 

「ふざけるなふざけるなふざけるなぁ!!」

 

 クノッソス11階層が所々破壊される惨状を目にした事で、バルカは怒りを通り越して混乱を極めていた。ダンジョン深層クラスのモンスターを送り込んで下級冒険者達を殺す筈の算段が、物の見事に覆されてしまったどころか、更にクノッソスが破壊されてしまう破目になってしまったから。

 

 本当なら今すぐにでも大事な作品を破壊し続けた小人族(パルゥム)小娘(リリ)を殺しに行きたい。しかしバルカは主神タナトスの命令で操作を命じられており、加えてリリ達に目を離すと何を仕出かすか分からないから動くに動けなかった。

 

食人花(ヴィオラス)晶黽(ヴァルグ)だけでなく、毒妖蛆(ポイズン・ウェルミス)も送り込めば今度こそ確実に仕留めれるかもしれないが、それをやったらあの小娘にまた破壊されてしまう!」

 

 クノッソスを操作している彼なら新たなモンスターを送り込むのは容易いが、先ほどまで見せられた惨状を再び目にする事を恐れていた。

 

 もし主神タナトスがこの場に居れば早急に手を打ってくれただろう。しかし、肝心の彼はとある出資者(スポンサー)の対応をしている為に無理だった。

 

(確か奴等は来た道を戻ろうとしていた。となれば、此方が何もしなければ……)

 

 バルカは混乱しながらも、リリ達が引き返すのなら放置すれば良いのではないかと考えを改める。このまま逃がすのは業腹だが、これ以上破壊される光景は見たくない為、彼は敢えて見逃すと言う決断を下した。奴等が地上に帰還した後、闇派閥(イヴィルス)を使って密かに拉致し、その時に思う存分恨みを晴らせば良いのだと。

 

 すると、台座の水膜に映し出される小娘達とは違う場所で、予想外な光景を目にする。金髪の少女(アイズ・ヴァレンシュタイン)が放った『魔法』により、クノッソス内を縦横無尽に走り抜ける『風』が【ロキ・ファミリア】の冒険者達を集結させる事になったから。

 

「! 小娘と一緒にいる小僧が……!」

 

 11階層にも『風』が届いたのか、リリ達がいる方でも動きがあった。先程たった一人で食人花(ヴィオラス)を倒した少年(ベル)が、導かれる『風』の元へ向かったのだ。

 

 ベルの予想外な行動に、リリとヴェルフも当然追いかけている。それを見たバルカは『扉』を閉じようとするも――

 

「駄目だ! あの小娘がいる以上、またしても我々の作品に大きな傷が……!」

 

 平然と『扉』をぶち破る事が出来るリリを警戒してか、彼は操作するのを躊躇うのであった。

 

 しかしその後、主神タナトスと出資者(スポンサー)がとんでもないモノを解放する事で、またしても予想外な出来事と同時に更なる悲惨な光景を目にしてしまう。




何とか【ロキ・ファミリア】に合流する展開に持って行きました。

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