ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
アイズさんの『風』が途中で途絶えるも、自身の経験と勘を頼りに辿り着いたと思いきや、途轍もなく恐ろしい存在と遭遇してしまった。
闘牛と思わしき巨大モンスターは初めて見るが、その東部の額辺りにある女体の上半身には物凄く見覚えがあった。以前に【ロキ・ファミリア】の遠征でダンジョン59階層で戦った存在――巨大植物の下半身を持ち、天女の如く美しい上半身を持つ巨大モンスター『
戦闘で負傷したと思われるガレスさん達を至急治療したかったけど、リリがアレを最優先で倒すべきだと判断が正しかったから、僕は反対する事無く応戦する事にした。
『
硬そうな身体をしてる闘牛の方をリリに任せるとして、僕は女体型の上半身に標的を変更した。自身の背中に氷と光の翼を発生させ、飛行しながら弾丸を撃ち続ける氷と光の略式複合テクニック――『レ・バーランツィア』で当てる事にした。ラウルさんが何か突っ込むように叫んでいたが、今は気にしてる暇など一切無いので無視させてもらう。
『グゥゥゥゥゥゥゥッ!!??』
女体型は両腕を交差しながら光と氷の弾丸によるテクニックを防いでおり、闘牛の方は銃弾によって何度も脚を撃たれている。僕とリリの二段攻撃を同時に受けている『
「ベル様! リリはこのまま脚を狙い続けますから、一気に勝負を決めて下さい!」
移動しながら射撃しているリリは僕に聞こえるように大きな声で言った。
一気に勝負を決めるのは僕も賛成だった。ここには負傷してるガレスさん達がいるから早く治療しなければならない。
それに複合テクニックを撃ち続けている事で、丁度
未だに怯んでいる『
「【無慈悲なる光と葬送の氷。織り成すは審判の剣。汝、罪あり】!」
詠唱をしながら右手に氷の力、左手に光の力が出現してチャージがすぐ間に完了し――
「【バーランツィオン!】」
合わせた瞬間に氷と光で作られた刃を両手に持ち、突撃を行い標的に華麗なる剣舞を見舞う氷と光の複合属性テクニック――バーランツィオンを発動させた。
本当ならフォメルギオンを使いたかったが、此処にはリリやヴェルフ、そして負傷してるガレスさん達がいる。いくら大広間でも炎の拡散や闇の爆発によって味方まで巻き添えを食らう恐れがあるから、それを避けようと違う複合属性テクニックを使う事にした。
バーランツィオンは単体向けの近接攻撃をする複合属性テクニックだから、フォメルギオンと違って周囲に被害を齎す事はしない。今のように『
加えて、あの『
「ダメっすベル君!」
「ソイツに接近してはならん!」
「ッ!?」
突如、ラウルさんとガレスさんからの声に僕が反応するも、それはすぐに理解する事になった。
『【
僕が接近した事で『
『【カエルム・ヴェール】』
(超短文詠唱!?)
僕の視界には『
(これは――アイズさんの【エアリエル】と似た
気付いた僕だが、それはもう今更だった。
『【
次の瞬間、凄まじい電撃が僕に向かって展開された。
「アァァァァァァアアアアアアアアアアアアアッッ!?」
「ベル様ァ!」
『
それを見た事でリリは思わず射撃を止めてしまい、吹っ飛ばされたベルの方へ視線を向けてしまう。
「アルゴノゥト君ッ!」
「ベル君がッ!?」
「抜かった! ワシとした事が……!」
リリと同じく吹っ飛んでいくベルを見て悲しみの声を上げるティオナとラウルとは別に、ガレスだけは凄まじい自己嫌悪に陥っていた。
以前の遠征でベルは『
『アハッ!』
鬱陶しい一人がいなくなったと認識したのか、未だに雷鎧を纏い続けてる『精霊』は次にリリの方へ突進していく。
「ガッ!?」
すぐに回避に移ろうとするリリだが、向こうの方が一足早かった所為で突進攻撃を受けてしまう。
未だに帯電させている『
そして――
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
まるで今までの恨みを晴らすかのように、雷光を纏った牛蹄を何度も振り下ろしていた。
リリが倒れている位置が爆砕する。
大広間に衝撃と雷震が起きるも、ガレス達の時と違ってそこまで酷くはなかった。だがそれでも、その中心にいるリリは一溜まりもないだろう。
余りの光景に誰もが絶句し、何も出来ない状態になっている。
闘牛が踏み荒らしていた地面は完全に破壊されて瓦礫状態と化しており、粉塵が舞っていた。そこにリリがいるかもしれないが、大量の粉塵によって見えない。
『アハッ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!』
自分の前脚を傷付けていた物凄く小さい
「ベルだけじゃなく、リリスケまで、嘘だろ……?」
先程まで負傷してるガレス達を運んでいたヴェルフだが、ベルとリリがやられた事に呆然と突っ立っていた。
『Lv.1』の自分と違って二人は『Lv.3』の実力者であり、先程まで優勢に戦っていたと言うのに、一気に逆転された事で信じられない気持ちになっている。
そんな中、『
「ふざけろ……一体何なんだよお前はぁ!?」
ヴェルフは『
だがそれでも叫ばずにはいられなかった。やっと一緒にパーティを組んだ仲間が目の前で殺されてしまった所為で。
叫びが聞こえたのか、『
『貴方モ、遊ビタイノ?』
「ッ!」
目が合った事で凄まじい恐怖に駆られるヴェルフだが、それでも自身を奮い立たせながら、背中に背負っているもう一つの武器を取り出す。
飾り気が一切無い柄と剣身だけの長剣。まるで岩から削り出されたような無骨な外見にも拘わらず、まるで炎を凝縮したかのようにたけだけしく、そして美しかった。
『? ソレッテ、マサカ……』
『
『貴方モ一緒ニ――ギッ!』
ヴェルフに突進しようとする『
「何処を見ている? 僕はまだやられていないぞ」
闘牛の後脚に攻撃をしたのは、先程電撃を受けて吹っ飛ばされた筈のベルだった。感電している筈なのに全く無傷な状態で
『ベルッ!』
「アルゴノゥト君!」
ベルが生きていた事にヴェルフ達やティオナは歓喜の声を上げていた。
『オ前……ッ!』
逆に『
「お前の相手は
「ベ、ベル、お前何を……?」
いきなりベルが不可解な事を言った事でヴェルフは混乱するも――
「フ、フフフフ……リリとした事が、久しぶりに強烈な攻撃を食らいましたよ」
『ッ!?』
もう一人の聞き覚えがある声がしたかと思いきや、粉塵が晴れた先には少々傷を負ったメイド姿のリリが立っていた。
驚愕するヴェルフだけでなく、ガレス達も同様に信じられないと言わんばかりに目を見開いている。あの闘牛の巨大な蹄で何度も踏まれた筈なのに、何故あの程度のダメージしか受けていないのかと。
『マダ、生キテル……!』
確実に仕留めた筈のリリも生きていた事に、『
だけど、その彼女は何やら様子がおかしかった。顔を俯かせてる事で、前髪によって目が見えないまま笑っているから。
その直後――
「このクソ牛がぁ! その澄ました顔を今すぐグチャグチャにしてやるから覚悟しやがれぇ!!」
「………え?」
リリが怒りの表情となりながら、途轍もなく口が悪くなるのであった。
余りの変わりように、ベルも頬が引きつってしまうのは無理もないと言えよう。
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