ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
今回はベル側の話ではありません。
「………はぁっ」
ヘファイストスは、机の上に置いている一枚の
今いるのは彼女の執務室。そこで仕事をするわけでもなく、手を止めて、その
その
自身の眷族になって数年以上経った今でも、未だに
昨日、突然やってきたヴェルフが【ステイタス】更新をするよう頼んできた。余りにも一方的だった為にヘファイストスは一体どうしたのと問い返すも、彼はとにかく更新してくれとの一点張り。全く此方の話を聞いてくれない様子だったので、仕方ないと妥協して【ステイタス】更新したら、予想外の結果となった。基本アビリティが急上昇しただけでなく、『Lv.2』へ【ランクアップ】可能領域に到達。
今まで成長に伸び悩んでいた筈なのに、何故こんな事になったのかとヘファイストスは更新を終えて即座に問い詰めた。立場が一気に逆転されたことで、今度はヴェルフが戸惑う方になったのは当然の流れだった。大まかな説明だったが、【ランクアップ】に至る事が出来たのは、【
ベルは
その椿から、ヴェルフはいつの間にかベルと直接契約を結んだと言う話を耳にしたヘファイストスは、少々複雑な心境になっていた。彼が【ヘファイストス・ファミリア】との繋がりを得たのは勿論嬉しいのだが、壊れない魔剣を今後目にするかもしれないヴェルフにちょっぴり嫉妬、もとい羨ましがっていたから。
ベルと一緒にダンジョン探索をした際、未開拓領域を発見だけでなく、非常に不気味な巨大モンスターと交戦したとの事だ。しかもそこには【ロキ・ファミリア】がいて、彼等でも苦戦するほどの相手だったらしい。そこをベル達が介入した事で勝利して生還と言う結果になり、ヘファイストスは無事で良かったと非常に安堵している。戦闘中にヴェルフが覚悟を決めて魔剣『
今まで忌み嫌っていた魔剣と向き合う姿勢を見せるヴェルフに心底感心するヘファイストスだが、実はまだ他にもあった。『俺を【ヘスティア・ファミリア】のもとへ行くことを許してください』と言ってきたのだ。
いきなりの退団発言に固まるヘファイストスだったが、ヴェルフは淡々と理由を語り始める。ランクアップして念願の
嘘など一切無い本心で強く語ってくれる
ヴェルフからの結果報告待ちと言う名目で、今も仕事をしないまま執務室で待っている。例え失敗して虚偽の報告をしたところで、女神であるヘファイストスは嘘を見抜く事が出来る。尤も、彼女はヴェルフが嘘を吐くなど微塵も抱いていないが。
(今になってから、ヘスティアの所に行って欲しくないと思っちゃうなんて……)
意地っ張りな問題児が急に成長した途端、自分から離れて行くのを考えるだけで嫌な気分になるヘファイストスは、我ながら女々しいものだと自虐気味になっている。
今までの彼女であれば、本人の意思で決めたなら仕方ないと完全に割り切っている。しかし、ヴェルフだけは何故か違った。その理由は今も分からない。
一体どう言う事なのだと自問自答している中、突如ノックの音が届いたので意識を切り替える事にした。
「入りなさい」
先程までの悩んでいた表情から一変したヘファイストスが促すと、開けられた扉から着流しを纏う青年、ヴェルフが現れた。
「それで、結果は?」
訊ねると、彼は何も言わず歩み寄る。
執務机を挟み、ヴェルフは彼女の目の前で跪き、瞳を閉じながら答えた。
「はい。少々時間は掛かりましたが、主神ヘスティア様より
「……どうやら嘘じゃないみたいね」
少々間がありながらも、嘘を吐いていないと判明するヘファイストス。
これで決定を下せば、ヴェルフはもう『ヘファイストス』の鍛冶師を名乗る事は許されない。やっと「Hφαιστοs」の
「一応確認だけど、どうしても行くのね?」
「勿論です」
遠回しに『今すぐ撤回すればまだ間に合う』と言うヘファイストスに、ヴェルフの決心は一切変わらなかった。
「貴方は血筋にまつわる全てを見返して、私の所で『魔剣』を超える武器を作りたいと言った筈よね?」
「ええ、確かに言いました。ですがその後に、槌と鉄、そして燃え滾る
一切の淀みなく答えるヴェルフに、ヘファイストスはもう何も言えなくなってしまう。
「いいわ。許しましょう」
但し、と言いながら彼女は警告する。
「やると決めた以上、最後までやり遂げなさい。途中で投げ出すのは以ての外だからね」
そう言いながらヘファイストスは立ち上がり、既に用意していた
「これは私からの選別よ。持っていきなさい」
「お世話になりました」
ヘファイストスの
そして彼は黒い着流しを揺らし、背を向けようと――する寸前、執務室の扉が突然開いた。
「ヴェル吉ぃぃぃぃ!! 手前を差し置いてベル・クラネルがいる【ヘスティア・ファミリア】に
「「…………………………」」
先程まで成長した
先ずはヴェルフの
次回はベル達がロキ・ファミリアと対談する話です。
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