ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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書き始めた頃と違って短くなってますが、これについては申し訳ありませんとしか言えません。


オラリオの歓楽街②

 ヴェルフが本拠地(ホーム)に来て早々、【ヘスティア・ファミリア】に改宗(コンバージョン)したいと聞いた時は本当に驚いた。これは僕だけでなく、神様やリリも同様に。

 

 最初は勿論丁重に断るつもりだった。聞けば『Lv.2』にランクアップして、念願の【鍛冶】の発展アビリティも習得。これで晴れて上級鍛冶師(ハイ・スミス)となり、【ヘファイストス・ファミリア】のブランド名を武具に刻む事を許されている。なのに改宗(コンバージョン)すると言ったのだから、これには僕だけでなく、神様やリリも断るのは当然の流れだった。

 

 だけど、僕達が断ってもヴェルフは全然身を引く様子を見せなかった。()()()特有の頑固さと言うべきか、ある意味椿さんみたいな感じがしたのは僕の胸に留めておく。

 

 何故そこまでして改宗(コンバージョン)したいのかを訊ねると、前回の探索で僕とリリが見せた(この世界の住人から見れば)壊れない魔剣に心底打ちのめされたからだそうだ。同時に僕達以上の壊れない魔剣を作れない限り、本当の意味での魔剣鍛冶師になれないと。

 

 やはり僕達が見せた武器の所為なのは間違いない。特にリリの長銃(アサルトライフル)大砲(ランチャー)が、ヴェルフにとって一番衝撃を受けたのだろう。オリハルコン製の壁を破壊、挙句の果てには『精霊の分身(デミ・スピリット)』を瀕死になるまで追い詰めていたから、それは無理もないと思ってしまう。

 

 緊急事態だったとは言え、一緒に聞いていたリリも何も言えず仕舞いになっていた。自分の武器で改宗(コンバージョン)させてしまう決定的な原因を作ってしまったのだと、改めて理解してしまった為に。

 

 結局のところ、僕達はヴェルフの改宗(コンバージョン)を認めてしまう結果になる。絶対反対していたリリですら、ヴェルフをあんな風にしてしまった責任を痛感している程だった。神様としても、常日頃から僕達を探り出している冒険者や商人よりは良いみたいで、「まぁヘファイストスのところの眷族(こども)なら問題無いか。嘘は一切言ってないし」と歓迎の姿勢を見せている。

 

 此方が承諾したのを耳にした事で、ヴェルフは「よし! じゃあすぐにヘファイストス様に報告してくる!」と言った直後に、慌ただしく本拠地(ホーム)から去って行く。報告の際に改宗(コンバージョン)する為の儀式だけでなく、引越しの準備をするだろうから、すぐには戻ってこないだろう。

 

 本当なら歓迎の準備をしなければならないけど、僕とリリはこれから【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)へ行かなければならない為、後回しにせざるを得ない。本当は神様も行く予定だけど、ヴェルフが戻って来た時の事を考えて留守番してくれるそうだ。僕一人だけだったら絶対付いて行ったかもしれないけど、今回はリリが同行するから安心してるとか。どうして安心してるのかは分からないけど。

 

 

 

 

 

 

「済まないね。急に呼び出してしまって」

 

 僕達は【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)――『黄昏の館』の応接室へ案内されて、フィンさん、リヴェリアさん、ガレスさんの三人が僕達を出迎えてくれた。

 

 ティオナさんが突撃してくると思って警戒してたけど、今回は珍しく来ていない。何故か分からないけど、本拠地(ホーム)全体が険悪な雰囲気になっている事に関係してるかもしれない。

 

「いえ、お気になさらず。でもフィンさん、まだ休んだ方が良いんじゃ」

 

「大丈夫。君のお陰で完治してるから」

 

 フィンさんは二日前、呪詛(カース)によって死の淵寸前で酷い重傷を負っていたが、僕の方で解呪によるアンティと治癒のレスタによって一命を取り留めている。だけど流石に失った血液まで戻す事は出来ないから、本当ならまだ休むべきなんだけど、流石は第一級冒険者と言うべきかもしれない。

 

 僕達が今回此処へ来たのは、その二日前にあった探索の件についてなのは言うまでもない。ダンジョンで未開拓領域を発見、そして『精霊の分身(デミ・スピリット)』との交戦について。

 

 まさか【ロキ・ファミリア】と遭遇するなんて、流石に予想外過ぎた。尤も、それは向こうに言える。何しろ地下水路を通じた疑似ダンジョンを調査している時に、ダンジョン探索していた僕達と遭遇するなんて夢にも思っていなかったらしい。

 

 今回の件については本来ギルドに報告すべき案件なんだけど、ロキ様から伏せて欲しいと言われた。今回は余りにも異常事態(イレギュラー)な案件だから、【ロキ・ファミリア(じぶんたち)】の方で纏めて報告するとの事だ。同時に今回僕達が発見したダンジョンの未開拓領域はギルドに報告せず、一切外に漏らさないよう箝口令も敷かれた。他派閥からの一方的な要求とは言え、色々世話になってるファミリアだから従わない理由は無い。

 

 後々考えてみれば、ヴェルフが【ヘスティア・ファミリア】に改宗(コンバージョン)したのは、却って好都合かもしれない。同じ派閥内で秘密を共有する事が出来れば猶更に。

 

「僕も含めた重傷の団員達を救ってくれた事に感謝の念に堪えない」

 

「お前達がいなければ、我々は危うくフィン達を失うところだった」

 

「偶然とは言え、ワシ等を助力してくれて本当に助かった」

 

 フィンさんたち三首領が一斉に僕とリリに感謝の言葉を述べながら頭を下げていた。都市最大派閥の一角である筈の【ロキ・ファミリア】が、新興して半年も経っていない【ヘスティア・ファミリア】に頭を下げるなど普通に考えて有り得ないだろう。もしこれが他の【ファミリア】に知れ渡ったら、スキャンダル扱いされてもおかしくない。

 

「良いんですか? ベル様ならともかく、リリにまでそのような事をしても」

 

「リリルカ・アーデ、君についてもガレスから聞いているよ。ベルと一緒に『精霊の分身(デミ・スピリット)』に挑み、更には強力な魔剣で追い詰めていたそうだね。勇敢な同族がいる事に、僕は大変嬉しく思っている」

 

「……【勇者(ブレイバー)】の貴方様にそう言われるのは光栄です」

 

 小人族(パルゥム)として有名なフィンさんからの称賛の言葉にリリは若干間がありながらも、取り敢えずと言った感じで受け取っていた。

 

 その直後――

 

「あと他に、何でも戦闘中に文字通りの意味で眼の色が紅色に変化していたとか」

 

「ッ!」

 

 フィンさんが意味深な台詞を口にした瞬間、リリが少々目を見開いていた。

 

 僕もあの時の事を思い出す。『精霊の分身(デミ・スピリット)』の攻撃を受けた後、完全にキレたリリが激昂していただけでなく、栗色の瞳が紅眼に変わっていたのを。アレは間違いなくリリのスキル【冥怒聖女(バーサク・フィアナ)】が発動したのだと瞬時に理解した程だ。

 

 それと途端に別の出来事も思い出した。【ロキ・ファミリア】との遠征で、ダンジョン59階層で【精霊の分身(デミ・スピリット)】と交戦した際、フィンさんが【ヘル・フィネガス】と言う魔法(きりふだ)を使った時の事を。あの時は気にする余裕なんて無かったけど、フィンさんの眼の色が碧眼から紅眼に変化していた。

 

 僕が言いたいのは、リリのスキルとフィンさんの魔法が共通している部分があると言う事だ。発動条件は異なるが、二人は紅眼になった事で全能力が急上昇している。ここまで共通しているなんて凄い偶然、と言う台詞だけで簡単に片付けられない。

 

 もしかして実はこの二人、前世の頃に血の繋がった身内だったりして。兄妹、もしくは親子とか。まぁそれは流石に僕の考え過ぎかもしれないが。

 

 フィンさんが何を考えてるかは知らないけど、少なくともリリを見る目が僕とは明らかに違う。この前あった二人だけの飲み会で『結婚する相手は同族の女性と決めている』と言ってたけど、まさか……いやいや、そんな事を考えたらダメだ。考えた瞬間にティオネさんが乱入してきそうな気がする。

 

「あの、フィンさん。僕達はこの後用事がありますから、出来れば手短に済ませて頂けると非常に助かるんですが」

 

「そうだったのか。なら仕方ないね」

 

 僕が余計な詮索をさせないよう話題を戻すと、フィンさんはそれに気付いていながらも簡単に引き下がった。多分この人の事だから、今後リリと会う機会があれば、積極的に話し掛けようとするかもしれない。そしてその後に起こるであろう最悪の事態も含めて。

 

 因みにリヴェリアさんとガレスさんは我関せず状態だった。面倒事に巻き込まれたくないと言うのがよく分かる。出来れば僕もそうしたいんだけど、立場上【ヘスティア・ファミリア】の団長だから無理なのが辛い。

 

 無駄だと分かってても面倒事に遭遇しませんようにと内心祈っていると、フィンさんは本題に入ろうとしていた。




本当は今回の話で対談を終わらせるつもりでしたが、内容の都合上として前編で区切りました。

ティオネがいなくてがっかりされてるかもしれませんが、重要な対談なので敢えて参加させていません。

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