ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
【ヘスティア・ファミリア】に新たなメンバーが加わって二日後。一通りの準備を終えた僕達は、ダンジョン中層へ向かっていた。
『Lv.3』の僕とリリ、『Lv.2』にランクアップしたヴェルフ、そして『Lv.4』のラウルさんが上層に留まる訳にはいかない為、今回は中層で
目的地へ向かう途中は、リリとヴェルフが前衛メインで戦っていた。前者は白い毛並みの
二人曰く――
「この前戦った大量の蜘蛛型モンスターに比べれば可愛いくらいです」
「溶解液と違って、炎なんか防ぐだけで問題無いからな」
この前あった人口迷宮で遭遇したモンスターとの戦闘経験を得てか、全く臆する様子を見せずに戦えているようだ。
同行しているラウルさんは、リリの戦いに何か思うところがあるかのように、ジッと眺めていた。
因みに僕は前回と同じく、後衛でいつでも
本来だったら
そんな僕達だけど、これと言った
湿った空気が漂う岩窟内で、乏しい燐光が揺らめきを作っている。
うっすらとした光によって地面に伸びるのは
目的地に到達し、リリとヴェルフは
「リリスケ、本当にここで採掘出来るのか?」
「ええ。ラウル様の話では、この
リリの持つ携行用の魔石灯が照らされ、ヴェルフが
「此処は他と比べて取り易いんですか?」
「そうっす。だけどその代わり、危険が付き物っすけど」
小声で話しをしている僕とラウルさんは、作業をしているヴェルフ達を見守りながら警戒に当たっている。
今いる場所は細い一本道を進んだ袋小路。
ヴェルフとリリが向き合う壁一面は散々掘り起こした跡があり、未だに目的の鉱石を見付ける事が出来ない。ラウルさんが取り易い場所とは言っていたけど、それでもかなりの時間が掛かるようだ。モンスター達の襲撃を警戒しているとは言え、何もなく見守るのは少々退屈だった。僕が所持してる携帯端末をコッソリ見ても、モンスターが現れる気配が無いのも確認済みだ。
だから僕もちょっと手伝おうと、ヴェルフの足元に置かれた
すると、崩れた壁面から、ボロボロッと何かが落ちようとしていく。
「あ」
「「「あ」」」
音を立てて、光沢を帯びた滑らかな鉱石が、そのまま地面に転がり落ちた。
「これは間違いなく、『
「おいおいマジかよ!?」
「凄いっすね、ベル君!」
用が済んだ僕達はすぐに発見した三つの鉱石を収拾し、すぐに荷物を纏めてその場から撤退する。
狭い袋小路から幅広い正規ルートまで移動し、後は帰還するだけだった。
「二つ以上の『
目的の品である、血の色にも似た紅と黒の縞状模様をした『
僕達は今回、ギルドを通じて商会からの
「それにもう一つの
「どっちも思っていたより早く片付いたな。にしてもベル、お前って運があるよな」
「自分も遠征の時から思ってたけど、ベル君といるとレアなドロップアイテムがポンポンと出てたっすね」
「な、何でだろうね……」
ヴェルフとラウルさんに話を振られた僕は誤魔化していた。以前『Lv.2』に
「そ、それよりもヴェルフ、身体は大丈夫かい? ランクアップ後に起きる感覚のズレとかは」
「ん? まぁあるにはあるが、そこまで酷くはないぜ」
「ヴェルフ、あんまりそう言って油断しない方が良いっすよ。自分が『Lv.2』になった時は――」
問題無いと言い切るヴェルフに、ラウルさんが空かさず指摘してきた後、先輩として経験談を語ろうとする。
帰還しながら話を聞く事になりそうだと思っていたが、それはすぐに中断された。
「――皆様、構えて下さい」
察知したのか、リリが途端に前方を見据えながらそう言った。
彼女だけでなく、僕達も同様にそれぞれの武器を構える。通路の暗がりの奥に浮かび上がるのは、ギラギラと輝く無数の眼光。
「今度は僕達がやるから!」
「二人は下がってるっす!」
迫り来る激しい足音に、僕とラウルさんが先陣を切る。
「ラウルさん、正面は任せます!」
「了解っす!」
隊列から飛び出した僕達は、十匹以上いるモンスターの群れに斬りかかる。
ラウルさんに以前貸した
今まではリリとヴェルフが頑張っていたので、今度は僕とラウルさんが戦うと既に決めていた。特にラウルさんには僕の武器を貸した意味が無いから。
アークス製の武器をこの世界の冒険者に使わせる事をリリが苦言を呈していたが、既に遠征時に貸していた事を教えている。其処から先は……もう言うまでもないだろう。
「おいおい、俺達より早く片付いてるな」
「そりゃまぁ、ベル様とラウル様ですから」
戦闘が始まって一分も経たない内に敵の群れを全滅させた事に、見守っていたヴェルフとリリが目を細めていた。
「その武器を使いこなせていますね、ラウルさん」
「まだまだっすよ」
敵を一通り片付けたので、僕達はモンスターの死骸に近付き、リリ達と一緒に戦利品の収集を行おうとする。
直後、何やら喧しい野太い大声と、モンスターの雄叫びが鳴り響く。
「これは、悲鳴かな?」
「同時に近付いて来てますね……これはもしや」
ドドドドッ、と段々大きくなる音と振動音に、僕とリリは嫌な予感が過った。
それが正解だと言わんばかりに、通路の奥から冒険者の
「こっちに真っ直ぐやって来るっすよ……!?」
「おいおい、アイツ等何考えてんだよ!?」
死に物狂いで走って来る冒険者達は、僕達を見た途端歓喜に歪む血走った瞳となる。
この後の展開を予想したラウルさんとヴェルフさんは、心底嫌そうな表情になっていたが、向こうはそんなのを全く気にしていない。
『てめえ等、あの有名な【ヘスティア・ファミリア】だな!? 喜べ、俺達の獲物をくれてやるぞぉぉ!!』
向こうは勝手な事を言って、僕達にモンスターの擦り付け――『
三十を軽く超す
「【風雷の天地鳴動、今ここに現れる。天災は此処に汝らを穿つ】!」
僕は詠唱を口にし、前方の地面から魔法陣が浮かび上がるのを見た後、
「【レ・ザンディア】!」
風と雷の略式複合テクニック――『レ・ザンディア』を発動させた瞬間、雷を纏った竜巻が発生した。
言うまでもなく、三十を軽く超す
「おいおいおいおい! 何だよベル、その
「この魔法を見るのは二度目だけど、やっぱり桁違いな威力っす!」
「今回は非常事態だから仕方ないとは言え……『
驚くヴェルフとラウルさんとは余所に、リリだけは若干キレ気味になりながらも後々の事を考えているのであった。