ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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今回は原作7巻序盤の内容ですが、少々異なる展開になっています。


オラリオの歓楽街⑤

 【ヘスティア・ファミリア】に新たなメンバーが加わって二日後。一通りの準備を終えた僕達は、ダンジョン中層へ向かっていた。

 

 『Lv.3』の僕とリリ、『Lv.2』にランクアップしたヴェルフ、そして『Lv.4』のラウルさんが上層に留まる訳にはいかない為、今回は中層で冒険者依頼(クエスト)も兼ねた探索をする事になっている。

 

 目的地へ向かう途中は、リリとヴェルフが前衛メインで戦っていた。前者は白い毛並みの一角兎(アルミラージ)を長槍で串刺しをして、後者は吐き出された炎を大刀で防ぎながら黒犬(ヘルハウンド)に接近して大刀で両断。今まで上層のモンスターを相手にしていた二人だけど、大して苦も無く倒している。

 

 二人曰く――

 

「この前戦った大量の蜘蛛型モンスターに比べれば可愛いくらいです」

 

「溶解液と違って、炎なんか防ぐだけで問題無いからな」

 

 この前あった人口迷宮で遭遇したモンスターとの戦闘経験を得てか、全く臆する様子を見せずに戦えているようだ。

 

 同行しているラウルさんは、リリの戦いに何か思うところがあるかのように、ジッと眺めていた。小人族(パルゥム)で長槍を使っているから、もしかすればフィンさんと比べているのかもしれない。

 

 因みに僕は前回と同じく、後衛でいつでも魔法(テクニック)で援護している。流石に中層モンスター相手は上層と違って簡単に倒せないので、長杖(ロッド)の『カラミティソウル』を手にしており、もしもに場合に備えて略式複合テクニックで殲滅させる事も考えねばならない。

 

 本来だったら改宗(コンバージョン)していないラウルさんに見せてはいけないが、もう既に目撃されているから今更だった。その事をリリに教えたら、『何やってるんですか、ベル様……』と物凄く呆れられていたけど。

 

 そんな僕達だけど、これと言った異常事態(イレギュラー)が起きる事無く、順調に目的地へと進んでいく。

 

 

 

 湿った空気が漂う岩窟内で、乏しい燐光が揺らめきを作っている。

 

 うっすらとした光によって地面に伸びるのは怪物(モンスター)の灰だった。つい先程まで黒犬(ヘルハウンド)一角兎(アルミラージ)の群れがいたけど、全て僕達(主にリリとヴェルフ)によって倒されている。

 

 目的地に到達し、リリとヴェルフは冒険者依頼(クエスト)をやる為に、奥まった通路の先にある岩をガツッガツッ、と抉ると同時に砕いていた。

 

「リリスケ、本当にここで採掘出来るのか?」

 

「ええ。ラウル様の話では、この地帯(エリア)から例の鉱石を沢山持ち帰っているそうです」

 

 リリの持つ携行用の魔石灯が照らされ、ヴェルフが小型鶴嘴(マトック)で岩壁を突いて、削り出していく。

 

「此処は他と比べて取り易いんですか?」

 

「そうっす。だけどその代わり、危険が付き物っすけど」

 

 小声で話しをしている僕とラウルさんは、作業をしているヴェルフ達を見守りながら警戒に当たっている。

 

 今いる場所は細い一本道を進んだ袋小路。広間(ルーム)の広さには届かない半円形の空間で、僕達四人は採掘作業を行っている。こんな一つしかない未知からモンスターが押し寄せる、もしくは周囲の壁面からモンスターが産まれ落ちれば逃げ場はないだろう。そうなっても、僕やラウルさんが片付ける手筈になっているから、リリ達は大して慌てる事無く作業に集中している。

 

 ヴェルフとリリが向き合う壁一面は散々掘り起こした跡があり、未だに目的の鉱石を見付ける事が出来ない。ラウルさんが取り易い場所とは言っていたけど、それでもかなりの時間が掛かるようだ。モンスター達の襲撃を警戒しているとは言え、何もなく見守るのは少々退屈だった。僕が所持してる携帯端末をコッソリ見ても、モンスターが現れる気配が無いのも確認済みだ。

 

 だから僕もちょっと手伝おうと、ヴェルフの足元に置かれた予備(スペア)小型鶴嘴(マトック)を拾い、物の試しに未だ掘られていない壁に二度三度打ち込んでみた。

 

 すると、崩れた壁面から、ボロボロッと何かが落ちようとしていく。

 

「あ」

 

「「「あ」」」

 

 音を立てて、光沢を帯びた滑らかな鉱石が、そのまま地面に転がり落ちた。

 

「これは間違いなく、『紅縞瑪瑙(ブラッド・オニキス)』ですね!」

 

「おいおいマジかよ!?」

 

「凄いっすね、ベル君!」

 

 用が済んだ僕達はすぐに発見した三つの鉱石を収拾し、すぐに荷物を纏めてその場から撤退する。

 

 狭い袋小路から幅広い正規ルートまで移動し、後は帰還するだけだった。

 

「二つ以上の『紅縞瑪瑙(ブラッド・オニキス)』を入手したから、これで冒険者依頼(クエスト)は完了ですね。他の鉱石も入手しましたが、まぁこれは取っておきましょう」

 

 目的の品である、血の色にも似た紅と黒の縞状模様をした『紅縞瑪瑙(ブラッド・オニキス)』を確認するリリ。

 

 僕達は今回、ギルドを通じて商会からの冒険者依頼(クエスト)をやっていた。ずっと鍛錬ばかりではいけないから、冒険者らしく冒険者依頼(クエスト)もやった方が良いとリリが言ったからだ。

 

「それにもう一つの冒険者依頼(クエスト)の、『アルミラージの毛皮』も先程の戦闘で既に手に入れていますし」

 

「どっちも思っていたより早く片付いたな。にしてもベル、お前って運があるよな」

 

「自分も遠征の時から思ってたけど、ベル君といるとレアなドロップアイテムがポンポンと出てたっすね」

 

「な、何でだろうね……」

 

 ヴェルフとラウルさんに話を振られた僕は誤魔化していた。以前『Lv.2』に昇格(ランクアップ)時に発言した発展アビリティ――『高運』の効果が働いているかもしれないと思いながら。

 

「そ、それよりもヴェルフ、身体は大丈夫かい? ランクアップ後に起きる感覚のズレとかは」

 

「ん? まぁあるにはあるが、そこまで酷くはないぜ」

 

「ヴェルフ、あんまりそう言って油断しない方が良いっすよ。自分が『Lv.2』になった時は――」

 

 問題無いと言い切るヴェルフに、ラウルさんが空かさず指摘してきた後、先輩として経験談を語ろうとする。

 

 帰還しながら話を聞く事になりそうだと思っていたが、それはすぐに中断された。 

 

「――皆様、構えて下さい」

 

 察知したのか、リリが途端に前方を見据えながらそう言った。

 

 彼女だけでなく、僕達も同様にそれぞれの武器を構える。通路の暗がりの奥に浮かび上がるのは、ギラギラと輝く無数の眼光。

 

「今度は僕達がやるから!」

 

「二人は下がってるっす!」

 

 迫り来る激しい足音に、僕とラウルさんが先陣を切る。

 

「ラウルさん、正面は任せます!」

 

「了解っす!」

 

 隊列から飛び出した僕達は、十匹以上いるモンスターの群れに斬りかかる。

 

 ラウルさんに以前貸した抜剣(カタナ)――『ノクスサジェフス』で黒犬(ヘルハウンド)を簡単に斬り裂き、僕も大鎌の形状をした『カラミティソウル』による直接攻撃とテクニックで援護している。

 

 今まではリリとヴェルフが頑張っていたので、今度は僕とラウルさんが戦うと既に決めていた。特にラウルさんには僕の武器を貸した意味が無いから。

 

 アークス製の武器をこの世界の冒険者に使わせる事をリリが苦言を呈していたが、既に遠征時に貸していた事を教えている。其処から先は……もう言うまでもないだろう。

 

「おいおい、俺達より早く片付いてるな」

 

「そりゃまぁ、ベル様とラウル様ですから」

 

 戦闘が始まって一分も経たない内に敵の群れを全滅させた事に、見守っていたヴェルフとリリが目を細めていた。

 

「その武器を使いこなせていますね、ラウルさん」

 

「まだまだっすよ」

 

 敵を一通り片付けたので、僕達はモンスターの死骸に近付き、リリ達と一緒に戦利品の収集を行おうとする。

 

 直後、何やら喧しい野太い大声と、モンスターの雄叫びが鳴り響く。

 

「これは、悲鳴かな?」

 

「同時に近付いて来てますね……これはもしや」

 

 ドドドドッ、と段々大きくなる音と振動音に、僕とリリは嫌な予感が過った。

 

 それが正解だと言わんばかりに、通路の奥から冒険者の一団(パーティ)と大量のモンスターが姿を現わす。

 

「こっちに真っ直ぐやって来るっすよ……!?」

 

「おいおい、アイツ等何考えてんだよ!?」

 

 死に物狂いで走って来る冒険者達は、僕達を見た途端歓喜に歪む血走った瞳となる。

 

 この後の展開を予想したラウルさんとヴェルフさんは、心底嫌そうな表情になっていたが、向こうはそんなのを全く気にしていない。

 

『てめえ等、あの有名な【ヘスティア・ファミリア】だな!? 喜べ、俺達の獲物をくれてやるぞぉぉ!!』

 

 向こうは勝手な事を言って、僕達にモンスターの擦り付け――『怪物進呈(パス・パレード)』をしてくるのだった。

 

 三十を軽く超す怪物(モンスター)を引き連れた同業者達に呆れながらも、

 

「【風雷の天地鳴動、今ここに現れる。天災は此処に汝らを穿つ】!」

 

 僕は詠唱を口にし、前方の地面から魔法陣が浮かび上がるのを見た後、

 

「【レ・ザンディア】!」

 

 風と雷の略式複合テクニック――『レ・ザンディア』を発動させた瞬間、雷を纏った竜巻が発生した。

 

 言うまでもなく、三十を軽く超す怪物(モンスター)達は一匹残らず吸い寄せられ、竜巻で斬り裂かれながら、落雷を受けると言う悲惨な目に遭っている。

 

「おいおいおいおい! 何だよベル、その(すげ)ぇ魔法は!?」

 

「この魔法を見るのは二度目だけど、やっぱり桁違いな威力っす!」

 

「今回は非常事態だから仕方ないとは言え……『怪物進呈(パス・パレード)』をやってくれたクソ共には、後でジックリお話をする必要がありますね……!」

 

 驚くヴェルフとラウルさんとは余所に、リリだけは若干キレ気味になりながらも後々の事を考えているのであった。




感想お待ちしています。

余談ですが、活動報告でベルアクの小ネタを出しています。
此方を参照下さい

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