ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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今回も短いです。


オラリオの歓楽街⑫

 時刻は夕方。

 

 エイナさんから【イシュタル・ファミリア】の情報を聞いて別れた後、奉仕活動を終えた僕は本拠地(ホーム)に戻っていた。

 

「すまんベル、お前にまで迷惑を掛けた!」

 

「いやいや、そこまでしなくても……!」

 

 僕が本拠地(ホーム)に戻って早々、現在対面しているタケミカヅチ様が頭を下げて謝罪していた。命さんと千草さんも一緒に。

 

 応接室にはヴェルフ、リリ、神様だけでなく、先程言った【タケミカヅチ・ファミリア】の主神と眷族二人がいる。因みにラウルさんは他派閥同士のやり取りに参加させたら不味いと言う理由もあって、席を外してもらっている。

 

 余所の主神が謝っているのは、昨夜の歓楽街の件についてだ。どうやら命さん達が歓楽街へ足を運んだのは寝耳に水だったらしい。

 

 本当なら勝手に跡をつけた僕が謝るべきなんだけど、タケミカヅチ様としては命さん達の無断行動が大問題だと捉えているようだ。その所為で僕も巻き込んでしまう事態になって非常に申し訳ないと。

 

 歓楽街に一切縁のない筈の女性二人が行ったのは、これには当然理由があった。交流のある冒険者から、数年前に行方知れずとなった極東の知り合いが歓楽街で見たと言う情報を得て不本意ながらも其処へ行った、と言う経緯らしい。

 

 僕の方でさり気なくタケミカヅチ様や団長の桜花さんを何故連れて行かなかったのかを聞いたところ、そこは神様によって止められた。命さんと千草さんが顔を真っ赤にしながら俯くのを見て、「二人にも色々事情があるんだよ」と言われてしまった為に。

 

「それで二人とも、向こうでは聞かなかったけど、君達が捜そうとしていたのは一体誰なんだい?」

 

「ある高貴な生まれの『狐人(ルナール)』の女性なのですが、その方は私達の知人でして……」

 

狐人(ルナール)?)

 

 神様の問いに命さんが種族を口にした瞬間、僕は思い出した。昨夜にアイシャさんを含めた女戦士(アマゾネス)達から逃れてる最中、僕を匿ってくれた春姫さんの事を。

 

「まさか……」

 

「ん? どうしたんだい、ベル君」

 

 僕の隣に座ってる神様が聞こえたのか、すぐに反応して振り向く。

 

「命さん、ひょっとしてその人は春姫さんだったりします?」

 

「ッ! ベ、ベル殿、どこでその名前を!?」

 

 僕の問いに命さんだけでなく、タケミカヅチ様と千草さんも身を乗り出した。

 

「ベル、本当に春姫と言う名前なのか!?」

 

「ど、どこに春姫ちゃんがいたんですか!?」

 

「え、えっとですね……!」

 

 三人が凄まじい剣幕で問い詰めてくる為、僕は思わずたじろいでしまいそうになるも昨夜のことを打ち明ける。遊郭にいた春姫さんのことを、勘当された際にオラリオへやってきた経緯を。

 

 一通りの話を聞いたタケミカヅチ様と千草さんが悲痛な表情で俯いている中、命さんはすぐに立ちあがった。

 

「ベル殿、大変貴重な情報を教えて頂きありがとうございます! この恩は何れ――」

 

「おい待つんだ命! まさかとは思うが、また歓楽街へ行くつもりじゃないだろうな!?」

 

「春姫殿が遊郭にいるのであれば、我々が助けに行かねば!」

 

「そう言う問題ではない! 春姫がベルの言った通り【イシュタル・ファミリア】にいるのであれば――」

 

「おいおい、落ち着くんだ二人とも!」

 

 タケミカヅチ様と命さんが言い争いに発展しそうになるところ、神様がすぐ割って入り阻止しようとする。

 

 神様のお陰か、二人は途端に落ち着いて騒いでしまったのを改めて謝罪した。後の事は此方で何とかしてみせると。

 

 

 

 

 

 

「まさか歓楽街にいる娼婦の中に、タケやその眷族(こども)達の知り合いがいたなんて……」

 

 タケミカヅチ様達が本拠地(ホーム)を出た後、僕達は夕食にしようと食堂に集まっていた。因みに今度はラウルさんもいて、此方の事情を察してるかのように何も言わないでいる。

 

 神様の呟きに、僕も思うところがあった。偶然だったとは言え、それでも何か力になれたらいいと考えてしまう。

 

「……ベル様、余計なお世話かもしれませんが」

 

 少しばかり暗い空気になっている中、リリが僕にこう言った。

 

「どのような事情があるにしても、他派閥の我々は関わらないべきです。益してや相手が【イシュタル・ファミリア】となれば、猶更不味い事になります」

 

 リリの言う通り、【イシュタル・ファミリア】は大派閥の一つだから下手な事は出来ない。加えてエイナさんからも手を出さないよう釘を刺されているから、今回ばかりはどうしようもない。

 

「まあ確かに、俺もリリスケの言い分に賛成だ。一人の勝手な行動で派閥を危険には晒せない」

 

「えっと、自分は話を聞いてないから余り知らないっすけど、多分団長もきっと同じ事を言うと思うっすよ」

 

 ヴェルフやラウルさんも賛同してるのか、一応みたいな感じで僕に忠告をしていた。

 

 すると、リリが突然ある事を口にする。

 

「それとベル様。言い忘れていましたが、今回の事は決してティオナ様に知られないようにして下さいね」

 

「っ! も、勿論だよ」

 

 ティオナさんと言う名前を耳にした瞬間、僕は思わずビクッとしてしまった。

 

「ティオナって確か、【ロキ・ファミリア】の所にいる【大切断(アマゾン)】だったな。そのアマゾネスとベルに何か関係あるのか?」

 

「ああ、そう言えばヴェルフ様はご存知なかったんですね」

 

 ティオナさんが僕に熱烈な好意を抱いてる事を知らないヴェルフに、リリが簡単に教えた。

 

 それを聞いた後、ヴェルフは途端に気の毒そうな表情になっていく。

 

「アマゾネスの習性は知ってるが、なんつーか、ベルも色々大変なんだな。って事はラウルも知ってるのか?」

 

「知ってるも何も、この前の遠征の時に何度も見てるっすよ」

 

 フィンさんとティオネさんの事もあってか、ラウルさんは大変気の毒そうに僕を見ている。

 

「ラウル君。本当なら他派閥の君に言える事じゃないけど、ベル君が歓楽街に行ったことをロキ達には他言無用で頼むよ」

 

「勿論そのつもりっす。……もしティオナさんやアキに知られたら何を言われるか……」

 

 神様の忠告に従う姿勢を見せるラウルさんだけど、途中から小声で何か言っても聞こえない事にしておいた。

 

 取り敢えずは様子見と言う姿勢を取る事になるも、この時の僕達は知らなかった。【イシュタル・ファミリア】が密かに動き出すどころか、僕を攫う為の手段を講じているのを。




原作と違って命が【ヘスティア・ファミリア】にいない為、積極的に動こうとしないファントムベルでした。

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