ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
「ほう。ラウルは冒険者の先輩だけでなく、年長者として良くやっているか」
「え、ええ。ヴェルフやリリも、頼れる人だと見ています」
再び喫茶店に戻った事で店長から不可思議な眼で見られるも、すぐに一変した。リヴェリアさんが来たと分かった瞬間、店長だけでなく他のエルフのお客達も少々騒ぎかけていたから。
そうなるのを予想していたのか、リヴェリアさんは全く気にせず僕と相席させた後、【ヘスティア・ファミリア】へ出向してるラウルさんの近況を聞いて今に至る。
「フィンが聞いたら、さぞや鼻を高くするだろうな」
話を一通り聞いて満足したかのように、店長自ら運んできた紅茶を飲み始めるリヴェリアさん。
因みに僕も彼女と同じ紅茶を飲んでいる中、周囲の客達の視線がグサグサと体中に突き刺さっている。【ロキ・ファミリア】の
一刻も早く話を終えて
「それと……もう一つ訊きたい事があってな」
聞いた僕は『来た!』と瞬時に直感した。
先程まで副団長として振舞っていたリヴェリアさんが、急に躊躇うような感じで訊こうとするのは間違いなく
「偶然にもラウルから聞けたのだが、何やらお前が凄い魔法を使っていたらしいじゃないか」
こう言ってるリヴェリアさんだけど、既に真相をラウルさんから教えてもらった。
いつかはバレると覚悟していたが、まさかこんな早くになるとは。こういう時に僕の【
「リヴェリアさん。分かっているとは思いますが、いくらお世話になってる貴女でも魔法について明かす気は……」
「も、勿論分かっている……! お前は他派閥の団長なのだから、訊き出すなど御法度にも程がある」
そう言ってるリヴェリアさんは、物凄く知りたいと言う顔だ。もし僕が【ロキ・ファミリア】に所属していたら、問答無用で問い質しているだろうと確信出来る。
魔法の知識として得られるのは非常に不味いだけど、既にラウルさん達に見られた以上諦めるしかない。
とは言え、僕の口から教えてしまったら情報流出する事になり、またしてもリリに怒られてしまう。リーネさんにあげた『スケープドール』の件でもOHANASHIされたから。
「だから、その、もしベルが何か知りたいことがあれば、それを等価交換としてだな……」
「いくらなんでもソレは流石に……」
流石に等価交換でもダメに決まって……あっ。もしかしてリヴェリアさんなら、ヘルメス様が言ってた『殺生石』について何か知ってるかも。
ちょっと危険な賭けかもしれないけど、言ってみる価値はあるかもしれない。
「リヴェリアさん、今、等価交換って言いましたね?」
「え? あ、ああ」
「でしたら、知っていれば教えて欲しいんですが……」
他言無用と言う条件を課した僕に、リヴェリアさんは全く気にしないように「良いだろう」と完全に乗り気だった。
☆
喫茶店を出た僕は、思わぬ結果に残念な気持ちになっていた。
リヴェリアさんなら『殺生石』の情報を知ってると踏んでいたけど、全く知らないとの事だ。
ハイエルフのあの人が知らないとなれば、やはり
因みに僕が知る事が出来ないと分かった後、リヴェリアさんは――
『ならばすぐに調べるとしよう』
と言って、店を後にした。
別にそこまで調べてもらう必要は無いと言った筈なんだけど、向こうは何が何でも調べる様子で阻止する事が出来なかった。そこまでして僕の複合テクニックを知りたいのかと凄まじい執念を感じたほどに。
漸く解放された僕は、ギルドに向かう事無く
そして
「どうかしたんですか?」
「あ、ベル君。帰ってきたんだね」
僕が帰ってきたのを気付いた神様が振り向きながら言ってきた。
「名のある商会からの
「商会? そう言うのはお断りしてる筈じゃ」
リリは神様が持っている羊皮紙を見ながら答えた事に、何故と疑問を抱く。
【アポロン・ファミリア】との
既に知っている神様達とは別に、後から聞いたリリ達も僕が断固拒否する理由を聞いて大いに納得している。ラウルさんだけは何か心当たりがありそうな顔をしていたが、そこは別に気にする必要はない。
「俺達が何度断っても、余りにもしつこくてな」
ヴェルフがそう言うには理由があった。
何でも都市経済の一端を支える巨大商会みたいで、その内の一つが今回【ヘスティア・ファミリア】にギルドを通さず直接来たとの事だ。
ヴェルフが言った通り当然断っていたのだが、向こうは全然諦めないどころか、是非とも受けて欲しいと何度も言われたらしい。
巨大商会でありながら何故そこまで必死になっているのかが疑問だったが、梃子でも動かない姿勢に、結局のところ条件を突き付ける事にしたようだ。先ずはギルドを通してから
因みにその時にラウルさんは同伴してないとの事だ。【ロキ・ファミリア】の眷族が【ヘスティア・ファミリア】の
「……その商会、何か怪しくない?」
完全に承諾していないのに、まるで言質を取ったかのような動きとしか思えない。と言うより、何でそこまでして僕達に
「ええ。だからリリ達は団長のベル様の判断を仰ごうかと、こうして待ってたんです」
「僕に聞かなくても断れば良かったんじゃ……」
「ベル、実は断った条件にもう一つあってだな」
リリの台詞に少しばかり呆れる僕だったが、突然ヴェルフが内容を補足した。『【ヘスティア・ファミリア】団長のベル・クラネルが内容を確認してから決める』と言う条件を。
「……何でそんな条件も出したの?」
「向こうがどうしてもベル本人に決めて欲しいんだとさ。そもそも今回奴等が此処へ来たのは、お前目当てだったみたいだ」
つまりアルベラ商会は、リリ達がどんなに拒否したところで僕の返答しか聞く気は無かったと言う事か。
【ヘスティア・ファミリア】としてでなく、僕個人に是非とも受けさせようとするなんて益々怪しい。
「因みに、依頼の内容は?」
「14階層の
僕の質問に神様が答える。
自分も目を通してみようと思った僕達は、羊皮紙に書かれている内容を細部まで読み込んでみた。
確認したところ、報酬がおかしいと思う程の依頼内容だった。いくら中層だからって、
「どうしますか、ベル様?」
「ボクとしては、あまり商人や商会とは繋がりを持ちたくないからお勧めしないよ」
「同感っす。それにあの商会、男の自分が相手だと軽く見られてる気がして」
リリとは別に、神様は気乗りしない様子だ。恐らく利権絡みの煩雑な手続きと対応、あるいは利害関係を良しとしないのだろう。ラウルさんは反対と言うか、商会に対する不満を表しているけど。
「取り敢えず明日、エイナさんと相談してから決めようと思います。ギルドの方でアルベラ商会についての情報が無いかを確認したいので」
「まぁ、あのハーフエルフ君なら大丈夫か」
「ベル君がそう判断するなら任せるっす」
ギルドで僕の担当アドバイザーの名前が出た事で神様とラウルさんは納得したのか、もう何も言わなくなった。
けど、その前に訊いておきたい事があった。
「突然ですが神様、『殺生石』って知ってますか?」
「『殺生石』? ボクは聞いたことが無いねぇ」
イシュタル様が
今度はヴェルフ達の方へ視線を向けるも――
「二人は何か知ってるか?」
「いえ、リリも知らないです」
「自分もっす」
三人とも全く心当たりがないようだった。
【ロキ・ファミリア】のラウルさんでも知らないとは、『殺生石』というのはよっぽど珍しい品なのだろうか。
となれば、今調べてもらっているリヴェリアさんからの結果を待つしかないようだ。
☆
「すまないが、『殺生石』と言う
「『殺生石』? 何やソレ、初めて聞いたわ」
「僕もだね」
「ワシも聞いたこと無いのう」
場所は変わって【ロキ・ファミリア】の
リヴェリアはベルから訊かれた『殺生石』について調べようと、書庫に保管されてるアイテム関連の本を見ても何一つ見当たらなかった。
想像以上の難題かもしれないと思いながら、彼女はロキやフィン達なら何か知ってるかもしれないと思って尋ねるも、予想外の空振りに肩透かしを食らってしまう。
「リヴェリア、戻って来て早々に何でその『殺生石』とやらを調べているんだい?」
「ベルが知りたい様子だったから、私が調べようと思ってな」
「大方その情報を提供して、ベルの魔法を知る為なんじゃろう」
「………………」
フィンからの問いに何とも無さそうに答えるリヴェリアだったが、ガレスが確信同然な発言をした事で無言となってしまう。
結局分からず仕舞いな結果となった為、彼女は明日に魔導士専用の店『魔女の隠れ家』にいるレノアに訊こうとするのであった。
原作と違って【ロキ・ファミリア】も関わる事になりました。
感想お待ちしています。