ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
確認を取った後、僕は正式にアルベラ商会の
ギルドにいるエイナさんに聞いたところ、あの人も何かしらの疑問を抱いていた。あの巨大商会はギルドに依頼提出した際、必ず僕に受けて欲しいと強く言っていたみたいで訝っていたようだ。
僕の担当アドバイザーとして何か裏がないか念入りに確認していたけど、これと言って何もなかった。と言うより、尻尾を掴む事が出来なかったのが正しい。
商人は強かで交渉する時は一切顔に出さないだけでなく、相手を上手く誘導するのが基本となっている。加えてアルベラ商会は都市経済の一端を支えてる事もあって、エイナさんは余り強く出れなかったとの事だ。下手に彼等の機嫌を損ねる事をすれば、都市を運営するギルド側にも大きな損害を被ってしまうという理由で。
ギルドが調べても特に怪しい点が一切無かったという結果になった為、僕は神様達に事情を話して
リリだけは未だに難色を示していたけど――
「……はぁっ、向こうが裏がないと主張してる以上は仕方ありません」
これ以上疑っても意味が無いと漸く妥協してくれた。
「まぁそれでも
『…………………』
笑顔でとんでもない事を言いだすリリに僕だけでなく、神様やヴェルフ、ラウルさんも冷や汗を流しながら頬が引き攣っていた。
何だかとても不安になってきた。僕達よりも、アルベラ商会の今後が。
取り敢えず何事も起きない事を祈りながら、【ヘスティア・ファミリア】は二〇〇万ヴァリス獲得に乗り出したのである。
「今日は僕一人で
現在いるのはダンジョン12階層。
エイナさんに相談してから二日後、探索の準備やクエスト受託の確認に一日を要し、僕は一人で迷宮に潜入した。探索用で大剣を背負っている僕の声が、岩窟上の長い通路に反響する。
今回僕が一人でやっているのには理由がある。
リリは以前の下宿先だった『ノームの万屋』の店主さんの様子を見に行く日が丁度重なって不参加。
ヴェルフは僕達の
ラウルさんは一度【ロキ・ファミリア】の
三人の予定が丁度
「ん? あれは……」
あと少しで『上層』を突破しようとするところ、僕と同じく『中層』へ足を踏み入れようとする集団が目に入った。
普通なら他所の冒険者パーティに干渉してはいけない決まりだけど、目の前にいる人達は僕の知っている人達である。
「桜花さ~ん!」
「ん? ベル・クラネルか!」
僕が集団の一人に声を掛けると、【タケミカヅチ・ファミリア】団長のカシマ・桜花さんが此方へ振り向くと少々驚いた顔をしていた。
「ベル殿!?」
「ベルさん!?」
その人だけでなく命さんや千草さん、他の眷族達も同様の反応を示している。
どうして僕が声を掛けただけでそんなに驚くのかは分からないけど、取り敢えずそこは気にせず彼等に近付く。
「奇遇ですね。皆さんも中層へ行くんですか?」
「あ、ああ。ちょっと訳ありで資金を稼がないといけなくてな。そう言うお前は……一人だけなのか?」
桜花さんは周囲を見渡すように訊いてきた。
リリやヴェルフが【ヘスティア・ファミリア】に入団してる事を知ってるから、二人がいないのか確認してるんだろう。
「ええ、今回は僕だけです。商会からの
『ッ!』
僕一人だけで中層へ向かう事に再び驚きを示す桜花さん達。
「流石は【
「何もそんな大袈裟に言わなくても……」
称賛の言葉を送る桜花さんに僕は少々困ったように言い返してると、命さんが急に前に出てきた。
「ベル殿、無理を承知でお頼みしたい! どうか我々と一緒に同行して頂けませんか!?」
「え?」
「おい命! お前何を言ってる!?」
頭を下げながら同行をお願いしてくる命さんに、桜花さんや千草さんが慌てながら止めさせようとする。
「ダメだよ、命! いくら知り合いだからって、探索中にそんな頼みをしちゃいけないのは知ってる筈でしょ!?」
「分かってます! ですが春姫殿を救う為には――っ!」
焦っていたのか、命さんが気になる事を口にした直後、途端にハッとして口を閉ざす。
「皆さんが資金を稼ぐ目的って……ひょっとして春姫さんの為ですか?」
『……………………』
【タケミカヅチ・ファミリア】が春姫さんの知り合いである事を知っていた僕は、桜花さん達が中層へ向かおうとする理由を問う。
それが図星だと示すように、命さん達は非常に言い辛そうな表情になっていく。
資金稼ぎの目的は、恐らく『身請け』をするつもりなのだろう。大金と引き換えに娼婦を引き取るという歓楽街の習わしを誰かから聞いて、それで春姫さんを救う為にダンジョンでたくさん稼ぐしかないと。
春姫さんや桜花さん達の事情を知っている為、他人事のように思えなくなっていた。いくら他派閥には基本的に干渉してはいけないと分かっていても、個人的には何とかしたいと思っている。かと言って、今この場で僕が命さんの頼みを聞いて協力してしまえば、後々面倒な事になってしまうのが目に見えていた。
「ゴ、ゴホンッ! とにかくだ、ベル・クラネル。今回の件はあくまで俺達の問題だから、お前は気にせず
「命、行くよ」
「……………」
僕がどうしようかと少し悩んでいる最中、桜花さんが強引に話を終えようと、皆を連れて中層へ向かおうとする。
千草さんに引っ張られる命さんは何も言うなと言われた所為か、とても歯痒そうな表情だ。
(ごめんリリ! やっぱり放っておけない!)
後ろ姿を見せる【タケミカヅチ・ファミリア】に――
「あ、あの!」
『?』
僕は追いかけるように声を掛けると、桜花さん達は何事かと振り向いた。
「え~っと、僕は
『…………………』
わざとらしい演技である事を自覚しながらも、僕がさり気なく協力要請をする事に桜花さん達はポカンとしていた。
その結果、
原作と違って、【タケミカヅチ・ファミリア】と行動する事になったファントムベルです。
無理があるかもしれませんが、どうかご容赦ください。
感想お待ちしています。