ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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また小ネタを出してしまいました。

今回は「オラリオの歓楽街 幕間②」に関しての話になります。


小ネタ④

 ~バベル最上階でのちょっとした騒ぎ~

 

 

 ベルがファントムスキルを使って、【タケミカヅチ・ファミリア】の眷族二人――ヤマト・命(ミコト)とヒタチ・千草(チグサ)を追跡している頃、バベルの最上階にいる美神は今までに無いほど深く考え込んでいた。

 

「………一体どういう事かしら」

 

 普段であれば余裕を崩す事など滅多にない美神が、珍しく眉根を寄せている。

 

 その姿は事情を知らぬ者が見れば、都市の命運を左右する重大事でも起きたのかと思うほどだった。

 

「フレイヤ様、如何なさいましたか?」

 

 椅子に座って深く考え込んでいるフレイヤに、オッタルは心配そうに問う。

 

 声が届いたのか、美神はハッとしたように振り返る。

 

「ここ最近、ロキの所にいる眷族の一人が、あの子と同行しているどころか、あの子の本拠地(ホーム)にいるのよ」

 

 その言葉には露骨な不満が含まれていた。

 

 フレイヤがいつものようにベルの見守り(ストーカー)行為をしていたところ、いつもと違う光景が目に入った。

 

 ダンジョン探索をする【ヘスティア・ファミリア】の中に、明らかに部外者がいたのだ。その者は【ロキ・ファミリア】に所属する男性眷族で、中肉中背の凡庸な風貌をした黒髪のヒューマンの青年。

 

 名前までは憶えていないが、どこにでもいる脇役(モブキャラ)みたく地味な人間(こども)だと見覚えがある程度だった。本来ならばフレイヤが気に留めるような相手ではない。ベル以外の者など、美神の目にはほとんど映らないのだから。

 

 だが、その青年だけは話が別だった。何故かベル達と行動しているだけでなく、本拠地(ホーム)にまで出入りし、明らかに寝泊まりしているのである。

 

 探索を共にし、食卓を囲み、まるで以前からの仲間であるかのように自然に振る舞っている。それを見た事でフレイヤは、一体どういう事なのだと頭の中が疑問だらけになっていた。

 

「あの子が他人を家に泊めるなんて、そんな話聞いてないのだけど……」

 

 誰に聞かせるでもなく呟く。

 

 それだけ不可解だった。

 

「【ロキ・ファミリア】が【ヘスティア・ファミリア】と何かしらの同盟を結んだのでは?」

 

 可能性を提示するオッタルに、フレイヤはあり得そうな話だと思いながらも即座に首を横に振った。

 

「いいえ、そういった情報は今のところ無いわ。仮にそんな話があったら、今頃オラリオにいる神々が騒いでいる筈よ」

 

 注目の的になっているベルが【ロキ・ファミリア】と同盟を結んだとなれば、フレイヤの言う通り大騒ぎになっているだろう。

 

 今や【ヘスティア・ファミリア】の名は都市の各派閥に広く知られている。多くの他派閥も接触(コンタクト)を図ろうとしているが、一切話す気がないと言わんばかりに姿を消してしまうのがお決まりとなっていた。

 

 そのせいで、ベル本人と満足に会話すら出来ていない神や冒険者も少なくない。にも拘らず、それがロキ・ファミリアと同盟を結んだとなれば、今まで何度も袖にされていた多くの他派閥からすれば非常に面白くない。真っ先に抗議しに行ってもおかしくないのに、それが無いのは周知されていない事になる。

 

「確かに。となれば、あくまで派閥同士だけで密かにそういう話をしたという事に」

 

「その可能性が高いわね」

 

 フレイヤは溜息を吐いた。

 

「全く、ロキとあの子の繋がりがどんどん強くなっていくじゃない」

 

 元々ベルと【ロキ・ファミリア】の距離は決して遠くない。何よりベルは剣姫アイズ・ヴァレンシュタインに強い憧れを抱いている。

 

 その時点でフレイヤからすれば十分面白くないというのに、今度は見知らぬ団員までベルの傍に入り込んできたのだ。

 

 それがロキの差し金かどうかは分からない。だが疑いたくなるには十分だった。

 

「そろそろ本気で潰そうかしら……?」

 

 笑顔で言っている分だけ余計に怖い。

 

 【ロキ・ファミリア】がベルと協力関係を築くだけでも腹立たしいのに、密かに同盟を結んでいたとなれば、流石のフレイヤも我慢の限界が訪れようとしていた。

 

 此方が見守っているのを良い事に、これ以上仲良くしている光景を見せられては、本気で【ロキ・ファミリア】と全面戦争を辞さない覚悟すら抱き始めている。

 

「どうかお怒りをお静め下さい。仮にそのような事をすれば、かの兎との繋がりが永遠に断たれてしまうかと」

 

 敬愛する女神が命令すれば是と受け入れるオッタルでも、流石に不味いと思って引き留めようとしていた。

 

 私情に囚われる余り、オラリオ最大級の派閥と全面戦争をするなど余りにも体裁が悪過ぎる。普段から学が無いと自称する彼でも、それくらいは察していた。

 

 何よりベル本人から完全に拒絶される可能性が高い。それだけは避けなければならなかった。

 

 命を辞さない覚悟で進言する眷族に、フレイヤは途端に笑みを浮かべる。

 

「冗談よ。イシュタルならまだしも、ロキ相手には流石に……」

 

 喋っている途中、フレイヤが途端に固まった。

 

 ベルの姿を目撃した際、ある場所へ向かおうとしている為に。

 

「…………え?」

 

 オッタルが怪訝そうに眉をひそめる。

 

 一方のフレイヤは信じられないものを見るように目を見開いていた。

 

「あの子……何で……」

 

 ベルが向かっている先。その瞬間、美神の顔色がみるみる青ざめていく。

 

「何で、何であの子がイシュタルの歓楽街(ところ)に…………」

 

 数秒の沈黙。

 

 そして次の瞬間。

 

「イヤァァァァァァ!!」

 

『フレイヤ様!?』

 

 まるで絶望するような悲鳴を上げた事で、オッタルだけでなく、それを耳にした従者達も大慌てで入室してきた。

 

「フレイヤ様、一体何が!?」

 

「大変よ! あの子が! あの子が歓楽街に行ってるのよ!」

 

「は……?」

 

 従者達が困惑する中、当のフレイヤだけは半ば錯乱状態だった。

 

 ベルが強敵と戦おうとしている時よりも遥かに狼狽している辺り、彼女らしいと言える。

 

 偶然ベルが一人で歓楽街に入るところを目撃してしまったフレイヤは、暫く錯乱状態に陥る事になった。




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