ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
僕達が参加しようとステージ手前まで向かうも、他の冒険者達も参加して槍を抜こうと躍起になっていた。腕っぷしの強そうな人達でも、結局抜けず仕舞いの結果となっている。
一人、また一人と挑戦するも、さっきまで強気になっていたステージに上がった冒険者達は、諦念の表情となってステージから下りていく。この繰り返しが続いている所為か、さっきまで興奮して見ている観客側も段々冷静になり始めている。
「さぁー! 次の挑戦者は誰だぁー!?」
ヘルメス様が新たな挑戦者を求めるように言うと、今度は誰もすぐに立候補しなかった。
それを見たティオナさんが空かさずに手を上げて叫ぶ。
「はいはーい! アタシやる―!」
「おぉー! 何と【
ティオナさんが出て来たと分かった瞬間、観客達からどよめきが起こる。
挑戦するのが都市最大派閥の【ロキ・ファミリア】幹部だから、もしかすれば抜けるかもしれないと思っているんだろう。
確かに他の冒険者と違って……女性に対して大変失礼だけど、相当な怪力の持ち主だ。軽く手合わせした僕も経験しているので。あの人が本気を出せば槍を簡単に引き抜けるかもしれない。
「むんっ!」
意気揚々とステージの中央に立ち、両手で槍を強く握りしめて引き抜こうとする。
しかし――
「ぐぎぎぎぎぎ……だぁぁ!! ダメだぁ~! 全然ピクリとも動かないよコレ!」
「おーっと、まさかのティオナちゃんがリタイアだぁ!」
ティオナさんですら槍を抜く事が出来なかった。
これには僕だけじゃなく、他の観客達も驚愕している様子。先日『Lv.6』にランクアップしたティオナさんが抜けないとなれば、コレは無理だと殆ど諦めている感じだ。
「さぁー、次は……おっと、これはー!」
ヘルメス様が次の挑戦者を促している最中、スタスタとステージに上がるアイズさんに驚きの声を出した。
「今度は【剣姫】こと、アイズ・ヴァレンシュタインの登場だぁー!」
挑戦しようとするアイズさんに、周囲から歓喜の声が上がった。
ティオナさんと違い、オラリオで一二を争う有名な美少女剣士だから、観客達が騒ぐのは無理もない。
「さぁー! 力が入るアイズ・ヴァレンシュタイン!」
「がんばれ~、アイズ!」
アイズさんが槍を手にして抜こうとすると、ヘルメス様が応援するような実況をしていた。ティオナさんもまるで自分の敵を取ってくれみたいな感じで応援している。
そして数秒後、途端に槍から手を放すアイズさんに誰もが拍子抜けする事となる。
「だめ……抜けない……」
「嘘~!? アイズでも抜けないの~!?」
ビックリするティオナさんの台詞に、僕も内心驚いていた。まさか『Lv.6』のアイズさんですら抜けないなんて。
そう考えると、次に挑戦する僕がやっても無理そうな気がする。先日にランクアップしたとは言っても『Lv.3』だし。
「よし! ベル君、アマゾネス君とヴァレン何某を見返してやれ!」
「ま、まぁやるだけやってみます」
「がんばってね、アルゴノゥト君! アタシ達の敵を取って!」
ティオナさんとアイズさんが抜けないから、僕が頑張ったところで無理な気がするなぁ。
これはお祭りなので例え抜けなくても楽しもうと思いながら、僕はステージに上がろうとする。
「さぁ、次の挑戦者は……おっ!」
僕が上がったのを見たヘルメス様が、今までと違った反応を示した。
「これはこれは! 一月ほど前に【アポロン・ファミリア】との
「ちょっ!?」
何かいきなり僕の経歴を紹介してるんだけど!? って言うか、何か大袈裟過ぎない!?
興奮してるヘルメス様が大袈裟な紹介をした所為で、周囲の観客達が再びどよめき始めている。
「嘘だろ!? もう『Lv.3』になったのかよ!」
「あの時の
「そう言えば聞いた話じゃ、何でも【
「あと他にも、【
観客達が僕を見ながら様々な事を言っていた。別に間違ってはいないけど、改めて言われると何か色々と来るなぁ……恥ずかしい意味で。
言っておくけど、僕とティオナさんはそんな関係じゃない。
「ちょっと四番目の君ぃ! それは完全なデマだからねぇ!」
「いや~、アタシとアルゴノゥト君の間にそんな噂が立ってたのかぁ~」
「ティオナ、顔が凄く緩んでいるよ……」
神様が速攻で否定していると、照れながら表情が緩んでいるティオナさんにアイズさんが突っ込みを入れていた。こっちもこっちでカオスな空間となっている。
こんな状況の中、ヘルメス様は全く気にせずに槍を抜くよう促していた。
色々と突っ込みたいところだけど、一先ずは目的を済ませようと後回しにして、槍を抜く為に両手で掴もうとする。
「さあ、【
ヘルメス様の掛け声を合図に、僕は両手に力を入れて抜こうとする。
すると――
……みつけた……
「えっ……!?」
急に何処からか女性の声が聞こえた。
戸惑いの様子を見せる僕を余所に、手にしている槍から見慣れない紋様が浮かび上がった直後、途端に水晶が粉々に砕け散る。
「わっ!」
『…………………』
余りにも突然過ぎたので、槍を抜こうと力を入れていた僕はそのまま後ろに倒れ込むように尻餅を付いてしまった。手にしている槍を見ながら。
これには僕だけでなく、ティオナさんとアイズさん、そして観客達も唖然としている。今まで誰も抜けなかった槍が急に抜けてしまったから、ああなるのは無理もない。
しかし神様だけは違って、そのまま勢いよくステージに上がって僕に抱き付いてきた。
「やった! ベルくーん!」
『わぁぁぁぁぁぁ!!』
神様が抱擁しながら叫んだ直後、観客達も凄い勢いで声を上げる。
「ベル……すごい……」
「すっごーい、アルゴノゥト君! ほんとに抜けたー!」
拍手するアイズさんに、称賛するティオナさん。
それを聞いた神様が即座に起き上がり、観客達の前に向かってこう叫ぶ。
「そうさ! ボ・ク・のベル君はとても凄いんだ! 君達なんて目じゃないぞ~!」
自慢気に言う神様に対し、僕は未だに呆然としながら槍を見ていた。
どうして槍が抜けたんだろう? 誰も抜けなかった筈なのに、何で僕が……?
それに『みつけた』って……アレは誰なんだ? 声が女性なのは分かるけど、それだけで特定の誰かまでは全く分からない。少なくとも、僕の知っている人の声じゃないのは確かだ。
そう思っていると、僕の眼前に誰かが手を差し伸べた。
「おめでとう、ベル・クラネル君」
「あっ、いや、僕もよく分からなくて……」
相手がヘルメス様だと分かり、僕はその方の手を掴んで立ち上がりながら言い返した。
「それじゃあ、今回の旅のスポンサーのお出ましといこう!」
「スポンサー……?」
ヘルメス様が見ている先に僕も合わせるように視線を向けると、その先には見知らぬ綺麗な女性……いや、女神様がいた。
あの方がスポンサー、なのかな?
すると、神様が見知らぬ女神様を見た途端に嬉しそうな声をあげる。
「アルテミス! アルテミスじゃないか!」
「ひょっとして、神様のお知り合いですか?」
僕の質問に神様は振り向きながら答えた。
「天界で交流していた神友だよ! ボクのマブダチさ!」
どうやら神様のお知り合いのようだ。
だと言うのに、あの女神様――アルテミス様は
「アルテミスーー!」
神様は全く疑っていないのか、すぐさまアルテミス様の元へと駆け寄っていった。
向こうもそれに倣って、久々に出会った神様と抱擁……しようとはせずに無視するどころか、そのまま僕の方へと向かってくる。
「見つけた! 私の『オリオン』!」
「へ? おわぁっ!?」
見知らぬ女神様にいきなり抱き着かれた事で、僕は戸惑いながら再び尻餅を付いてしまった。
相手がティオナさんならまだしも、初対面である綺麗な女神様に抱き付かれるなんて完全に予想外だ。
他の人達が無言となっているも、アルテミス様は全く気にしてない様子で未だ僕に抱き付いている。
「なっなっなっ……ななななななな……なんじゃそりゃ~~~っっ!!」
抱擁を無視された神様がこっちを振り向きながら固まっていたが、数秒後には信じられないような絶叫を上げるのだった。
因みにティオナさんは何故か静かだった。相手が女神様なせいか、アイズさんと同じく未だ呆然とした表情となっている。
余りにも予想の斜め上を行き過ぎている展開に、誰もが全く言葉が出ないまま、槍を抜くイベントがそのまま終わったのであった。
そしてこの後、僕と神様はアルテミス様を
ここまで劇場版と大して変わらないですが、感想お待ちしています。