ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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グランド・デイ イヴ③

「さぁ、そろそろ時間ね。オラリオ最強美女コンテスト……」

 

「開催だああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 デメテル様とガネーシャ様の宣言により、美女コンテストが開催される事となった。

 

 その直後に観客達のテンションが一気に上がっていく中、一番目の女性が登場してくる。

 

 流石は美女コンテスト、と言うべきだろう。容姿だけでなく綺麗な服を着た女性達が順番に現れていく。

 

 登場してる人の中には僕の知っている人もいた。それは当然【ロキ・ファミリア】で、ティオナさんにティオネさん、そしてレフィーヤさんだった。

 

 ティオナさんとティオネさんは踊り子みたいな衣装を身に纏っているも、何だか余りやる気がないように見えた。多分だけど、ロキ様から参加するよう強要されたのかもしれない。

 

 因みにティオナさんは僕がいる事に気付いたのか、途端にキョロキョロと観客席を見回していた。目が合ったら絶対此方に来そうな気がした僕は、咄嗟に変装用の帽子を頭に被った。僕の白髪が見えないように。

 

 それと自分の着てる服はオラリオ用の普段着だ。戦闘着の『シャルフヴィント・スタイル』を纏っていたら簡単に見付かってしまうし、即行で僕だとバレてしまう。ダンジョンに行く訳でもない為、今は休日スタイルにしている。

 

 急に話は変わるが、アマゾネス姉妹とは別に、レフィーヤさんが凄い登場の仕方をしていた。別に派手な魔法を使って登場した訳じゃない。レフィーヤさんらしくない衣装を身に纏っていたのだ。ティオネさんが着てるアマゾネス衣装で。

 

 この世界のエルフは基本、肌の露出を嫌う習性がある。筈なのだが、レフィーヤさんは全く該当しないかのように、思いっきり肌を露出していた。もしかしてあの人、ニューマンじゃないだろうかと錯覚してしまう。それは勿論、僕がアークス船団にいた頃に見た種族だ。

 

 アークス船団にいるニューマンは、エルフと同じく耳が尖った特徴がある。他にもフォトンの感応力が高い為、フォースやテクターなどのテクニックを主体とした戦いを好む。けれどその反面、他の種族と比べて非常に打たれ弱い。特に打撃に関して強烈な一撃を受けてしまえば、すぐに立ち上がる事が出来ないほどに。

 

 エルフとニューマンに色々な共通点があるも、唯一違うとすれば肌を見せる事の抵抗が無い事だ。僕が知ってるニューマン女性のアークスは、この世界にいるアマゾネスみたいな衣装を着てる人もいた。大気中のフォトンと感応できるようにしてるとは言え、凄い刺激的な戦闘服だから。

 

 そう言った女性ニューマンを見た為、僕はアマゾネス衣装を着てるレフィーヤさんもニューマンじゃないかと考えてしまう。なんて、それはあくまで僕がそう思っただけに過ぎない。あの人は正真正銘エルフの筈。恐らくあんな格好をしてるのは、ティオナさん達と同じくロキ様に強要されたんだと思う。

 

 もしも僕が見ていたなんて知られたら、彼女の事だから絶対襲い掛かるだろう。真っ赤な顔をしたまま、『見た事は忘れなさい!』と言いながら杖で撲殺しようとする姿を想像しながら。魔導士は常に冷静にならないといけないのに、レフィーヤさんは何故か僕に関して感情的になるんだよなぁ。

 

 どうにかならないかと思いながら美女コンテストを見続けてる中、また僕の知ってる人が現れた。【タケミカヅチ・ファミリア】の千草さんと命さんだ。

 

「じゅ、十八番! 【タケミカヅチ・ファミリア】のヤマト・命です!」

 

 千草さんの次に命さんの紹介となっていた。

 

 意外だったな。まさかあの人達がこう言ったイベントに参加するなんて。てっきり桜花さんやタケミカヅチ様と同じく、何処かの屋台でバイトをしてると思っていた。

 

「ほ、本来ならば出場の予定はなかったのですが、弟が勝手に応募してしまい……」

 

 あれ、命さんに弟なんていたかな? 後でタケミカヅチ様に訊いてみよう。

 

「この場に立つこと自体、お恥ずかしい限りですが……少しでも声援を頂ければ嬉しいです!」

 

 緊張しながらも自分をアピールする命さん。

 

 ああいう人を見てると応援したくなってしまうから、今回は千草さんか命さんに声援を送るとしよう。ティオナさんが知ったら怒られるかもしれないが。

 

「というわけで、ここで特別審査員の話を聞いてみようと思う!」

 

 すると、ここでガネーシャ様がそう言ってきた。

 

「今回の美女コンテストの大会委員長にして、製作総指揮、そして『美女コンテスト製作委員会』会長! ヘルメスさん、何かコメントはありますか!?」

 

 三つの肩書きを持った男神――ヘルメス様が現れた。

 

 変だな。あの方は初めて見た筈なのに、どこかで会った気がするんだけど。(注:劇場版の話と繋がっていないので、このシリーズのベルはヘルメスと未だに会っていません)

 

 そう考えてる僕を余所に、登場したヘルメス様が勿体ぶるようなコメントをする。

 

「そうだなぁ。今回の大会はオレの完全ディレクションによる大会なわけだけど……自分に自信がある女性も、恥じらう姿を見せる女の子も、みんな美しくて、みんなイイ。なに一つ同じものはない、乙女という名の花……一番の花じゃなくていい、特別な一つの花ならそれでいい……。本当はこんな野暮なイベントなんて開くべきじゃないんだろう……。――でも」

 

 途端にヘルメス様が目を見開きながらこう叫んだ。

 

「見たいもんは見たいんだぁああああああああああああ!! そうだろう、みんなあああああああああああああああ!!」

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

 ヘルメス様に賛同する様に、観客達も一斉に叫び出した。

 

「もっともっと盛り上がっていこうぜぇえええええええええ! オレ達の花のために!!」

 

『オレ達の花のために!』

 

 観客達がまるで人心掌握されたんじゃないかと、凄まじい叫びと熱狂を見せていた。

 

 モンスターの叫びとは全く異なっている為、僕の耳が少しばかり響いている。

 

 大会委員長のヘルメス様のお言葉が終わって、デメテル様が次に移ろうと思いきや――

 

「ちょっとストップやぁ~~~~~!」

 

 突如ロキ様が現れた事により、僕を含めた観客達が戸惑い始める。

 

「ロキ? どうしたの? みんな紹介はおわったはずでしょう?」

 

 デメテル様も僕達と同じく戸惑いながらもロキ様に尋ねた。

 

 確かこの後は声援による投票の筈。けれど、明らかにそれで終わりじゃないみたいな登場の仕方をするロキ様だから、何かやるんじゃないかと僕は推測する。

 

「ふっふっふ……今日はお祭りやろ? こんな特別な日に必要なのはサプライズやんか。うちらから、もう一人エントリーさせるでぇ!」

 

「なんだとぉ!? 飛び入りということか!」

 

 予想外だと驚くように叫ぶガネーシャ様。

 

 ティオナさん達以外の人をエントリーって……誰なんだろう?

 

 まぁ少なくとも、リヴェリアさんは出ない筈だ。あの人はこう言ったイベントには全く興味なさそうだから。

 

「だまくら……いや、説得にギリまで時間かかってもうたが、この子が出てきたら優勝は決まりや!」

 

 ちょっと待って。ロキ様が妙な事を言いかけたな。

 

 単語から察するに、何か騙したような感じがするのは僕の思い過ごしかな?

 

「さぁ、出ておいで~♪ うちの秘密兵器!」

 

 ロキ様はそう言いながら誰かをステージに登場するよう促していた。

 

 一体誰が出てくるのかと思っていたら……僕の予想を裏切り、登場したのは何と【ロキ・ファミリア】の副団長リヴェリアさんだった。まるで王女様みたいな衣装を身に纏っている。

 

「くっ……なんだ、この辱めは……」

 

「そら見ぃ! 大歓声や! 一度出てもうたらもう逃げられへんで~」

 

「ロキ、貴様……!」

 

「なははははは! 全てうちの(たなごころ)やー!! エルフ票はいただきやで~!」

 

 あ、会話で何となく分かった。リヴェリアさんはロキ様に騙されたと言う事に。

 

 どんな交渉をしたのかは知らないけど、言葉巧みに誘導させられたかもしれない。ロキ様はそう言う事に関しては長けてるって、前にラウルさんから聞いた。

 

 確かにリヴェリアさんが出たら優勝する可能性が非常に高い。確か王族(ハイエルフ)ってエルフ達に尊敬と敬意を抱かれてる筈だ。そう考えると、間違いなくこの場にいる観客のエルフ達はリヴェリアさんに声援を送るだろう。

 

 その為にロキ様は無理矢理参加させたのだろう。美女コンテストで【ロキ・ファミリア】が何としても優勝しようと。

 

 でも、果たしてそう上手く行くのかな? それどころか、騒動の火種が増したんじゃないかと思う。

 

 僕は観客側に立ってるけど、他の人達と違い冷静に見ている。

 

 周囲を見回すも、自分を除いた観客達――特にエルフがリヴェリアさんの登場で非常に興奮している最中。それ以外の観客達も似たり寄ったりだ。

 

 嫌な予感がしながら見守っていると、今度は別のエルフの女性が登場しようとする。

 

「フィ、フィルヴィス・シャリア……だ。【ディオニュソス・ファミリア】の……その……」

 

 見た事の無い綺麗な人だ。恥ずかしそうにしながらも奥ゆかしさを感じる。

 

 そんな彼女の登場に観客達だけでなく、ガネーシャ様達からも異様な盛り上がりを見せている。

 

 本当に大丈夫なのかな? 結果は見たいけど、何だか暴動が起きるんじゃないかと少しばかり不安だ。

 

 いざとなったら逃げる事を前提として構えておく。僕はそう考えながら最後まで見届けようとする。

 

「さぁ熱狂してきただろう、子どもたち! 次はいよいよ投票開始だあああああああぁぁぁ!!」

 

 そして全員の登場が終わった事により、投票に移る事となった。

 

 

 

「リヴェリア様ーーーー! やはりリヴェリア様が一番ですーーーー!」

 

「フィルヴィスちゃーーん! 君の新しい魅力に俺はメロメロ~~~~~!」

 

(思った通りだ……)

 

 僕の嫌な予感が的中したように、異様な盛り上がりを見せていた観客側は凄い事になっていた。

 

 エルフの人達はリヴェリア様を推しており、他の人達はそれぞれ別な人を推している。

 

 もう誰が何を叫んでいるのか全く分からない状況となり、完全に騒然と化していた。それどころか、喧嘩してる人達もいる。

 

 どうするんだろう、コレ。もう収拾が付かなくなっているよ。

 

 普通なら大会委員長であるヘルメス様が責任持って収拾すべきなんだけど……あの方はいつの間にかいなくなっていた。こっそりと逃げて行ったのを僕は目撃している。

 

 自分で企画しておきながら逃げるって……責任者としてあるまじき行為だね。無責任にも程がある。これがアークス船団側だったら、後で間違いなく捕縛され罰則(ペナルティ)が下されるだろう。

 

 これ以上此処にいたら、確実に自分も巻き込まれてしまうと危惧した僕は退散する事にした。周囲に沢山の人がいるけど、最終手段として考えていたファントムスキルで姿を消す。

 

 

「あれ?」

 

「どうしたのティオナ?」

 

「何か観客の一人が突然消え……って、さっきのアルゴノゥト君じゃん!」

 

 

 会場を出る際、ステージにいるティオナさんが何故か僕に気付いていた。

 

 勘が良いなぁと思いながらも、僕は敢えて気にせず抜け出す事に成功する。

 

 後から知ったけど、暴動寸前となっていた会場を有名な美の女神――フレイヤ様がどうにか収めたそうだ。

 

 

 

 因みにベルがいなくなった後――

 

「このチート! チート色ボケ女神! 自分はこの類のコンテスト永劫出禁や、出禁!」

 

(あら? あの子が観客席にいるってオッタルが言っていたのに……どこにもいないじゃない)

 

 ロキの抗議を無視しながらフレイヤは混乱を収拾したのだが、肝心の対象(ベル)が観客席にいない事に内心不満を抱く。

 

 話が違うと思いながら、先程からギャーギャー喚いているロキを困らせようとした。観客達に二番目は誰が良いのか、と。

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