ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
観客席でベルがレフィーヤと一緒に試合が始まるまで待っている中、控え室では『大剣闘祭』を行うメンバーが勢揃いしていた。
今回のメインイベントに参加してるメンバーは以下の通りである。
【ロキ・ファミリア】……フィン・ディムナ、ガレス・ランドロック、アイズ・ヴァレンシュタイン、ベート・ローガ
【フレイヤ・ファミリア】……オッタル
【ガネーシャ・ファミリア】……シャクティ・ヴァルマ
【ヘルメス・ファミリア】……アスフィ・アル・アンドロメダ、ルルネ・ルーイ
以上の上級冒険者達がこの後に試合をする予定となっている。
加えて、二つの集団に分けて戦う事になっていた。それには当然リーダーがいる。
方は【ロキ・ファミリア】のフィン・ディムナ。
方は【ヘルメス・ファミリア】のアスフィ・アル・アンドロメダ。
上記の二名がリーダーを務め、試合を円滑に終わらせるよう主催者――ロイマンから命じられている。
友好国の大使が来賓として観戦する際、オラリオ冒険者の力を見せ付けるのだ。但し、一切本気でやらずに加減してやるようにと。
因みに去年は本気でやり過ぎてしまった為、オラリオ上級冒険者達の出鱈目な強さに大使が泡を吹いて倒れたと言う失態を犯していた。それによって友好関係を結ぼうとしていた国が急遽ご破算になってしまい、ロイマンは散々な目に遭っている。
「いいか!? 絶対に! ぜーったいに、去年のような二の舞にはなるなよ!?」
それによりロイマンは、口を酸っぱくしていた。もうあの時のような事は御免だと。
強く念を押しながら控え室から去って行くロイマンを確認した後――
「絶対に上手くいく筈がないとわかりきっているのに、何故繰り返すのか……理解に苦しむなぁ」
「同感です。他国への示威行為としては非常に効果的、というのはわかりますが……」
リーダー役を務めるフィンとアスフィは失敗すると確信していた。と言うより、自分の
特にソレを一番現しているのが、ベートとオッタルだ。この二人は既にロイマンの警告を無視してる。
「私としては、先日『Lv.3』にランクアップした【
「んー……確かに彼なら、ロイマンの言いつけをちゃんと守るだろうね」
ベルは礼儀正しくて目上の相手には必ず敬語で話し、とても好感が持てる人物だ。人が良過ぎるのは冒険者として少々致命的であるが。
そんな彼が以前あった【ロキ・ファミリア】の遠征に加わり、色々と助けてくれた。同時に大きな借りも出来てしまった。団長のフィンとしては、それを清算したい事も含めて、今後もベルとは友好的な関係を結びたいと思っている。
フィンはアスフィと違い、逆に参加しなくて好都合だと思っている。もしも出ていたら、とある団員二人がイベントそっちのけで真っ先にベルに挑もうとするのが容易に想像出来るから。姫君と
「でも、今回彼は不参加だ。いない者に頼ってもしょうがない。お互い、善処はしよう」
(やっぱりベルは、参加しないんだ……)
試合を待ち望んでいながらも、フィン達の会話に聞き耳を立てていたアイズは内心残念がっていた。今回の『大剣闘祭』にベルが参加しない事に。
彼女としては、今もベルと本気の戦いをしたがっている。『大剣闘祭』に出場していたら、絶対に全力でやってくれると期待するも、当の本人がいない為に叶わなかった。
その他に、とある
☆
闘技場のステージに多くの有名上級冒険者達が勢揃いしていた。僕が見知ってる人達がいれば、知らない人もいる。
と言っても、僕が知ってるのは【ロキ・ファミリア】の人達だけだ。他のファミリアの人達と会った事は一切なかった。
あの中で一番の実力者は見ただけで分かる。会った事はないけど、
アークスの僕でも今のままじゃ勝てないだろう。そう思わせる程にあの人は強い。
もし勝てる人がいるとしたら、僕が今も憧れてる
因みにキョクヤ義兄さんは、僕がストラトスさんと同じく
そう思ってると、闘技場では上級冒険者達が二組に分かれて戦いが始まった。
「確かにレフィーヤさんの言う通り、本気で戦っていませんね……。フィンさんやアイズさんの動きはいつもより遅いですし」
「な、何で他所のファミリアである貴方が、まるで分かってるみたいに言ってるんですか!?」
僕の台詞が聞き捨てならなかったのか、隣にいるレフィーヤさんが不服そうに声を荒げていた。
分かってるも何も、この前の遠征で一緒に戦ったんだけどなぁ。51階層の
アイズさんとは何度も手合わせしてるから、動きを見ただけで本気じゃないのが分かる。敢えて力を抑えて戦っているのが丸分かりだ。
フィンさんや他の人達はともかく、あの集団の中で一番の不穏分子とも言える上級冒険者――ベートさんも本気で戦ってはいない。今のところは、ね。
このまま何事も無く終わればいいなと見守ってる最中――
『おらあぁぁぁっ!!!』
ベートさんの叫びと同時に強烈な衝撃音が聞こえた。
それを聞いた僕が振り向いた先には、ベートさんとオッタルさんが対峙している。
見た感じではベートさんの蹴りをオッタルさんが防いだ、のだろうか。
二人は何か話してるみたいだけど、その直後――本気と思われる戦いが始まろうとする。
その光景に観客達は興奮する一方だった。ベートさんとオッタルさんの戦いに魅入られるかのように、凄まじい熱狂を見せている。
それとは別に、闘技場のステージにいるフィンさんたち【ロキ・ファミリア】側が呆れた視線を送っている。と言うより、もう諦めたみたいな感じだ。恐らくだけど、こうなる事を予想していたかもしれない。
すると、アイズさんも我慢が出来なくなったかのように、ベートさん達の下へ向かっていた。知ってはいるけど、やっぱりあの人も根っからの
「あの、レフィーヤさん、これって不味くないですか? アイズさんも本気になってますし」
「…………………」
いつもなら反論する彼女も、今の状況を見て何も言い返さなかった。と言うより、反論出来ないんだろう。僕と似たような事を考えてるから。
まぁ、これは本当に不味い状況と見て良い。その証拠に、来賓席側にいる大使と思われる人達が泡を吹いて倒れてる他、ギルドの人と思われる太っちょなエルフの男性が嘆き叫んでいた。
これは凄く如何でも良いけど、僕が知ってるエルフって男女問わずに容姿端麗なのに、あそこにいる太っちょのエルフの男性は全く正反対だ。体系とか全く気にしてないのかな?
すると、闘技場のステージにいる他の上級冒険者達の雰囲気が変わった。まるでアイズさん達の戦いを見て火が点いたかのように、全力で戦い始めている。
よく見れば、本気で戦っているのは【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】だ。他の【ファミリア】は彼等の戦いにドン引き状態になってて、何だか巻き込まれないよう避難していた。
完全に収拾が付かない状況に陥っている。こうなったらもう誰にも止められない。普段纏め役であるフィンさんですら、熱き戦いに興じている状態だ。
僕がアークスじゃなかったら、本気で戦ってるアイズさん達の姿を見て感動していたかもしれない。そして――
「「………強くなりたい」」
――そう願いながら。
あれ? 何かレフィーヤさんと台詞が被ったような。
「な、なにを言ってるいるんですか!? いきなり口を揃えてきて!」
「いえ、別に真似したわけじゃあ……。偶然同じ事を言っちゃっただけで……」
台詞が揃った事で、いつものように噛み付く感じで声を荒げるレフィーヤさんに、僕は単に偶然だと主張した。
そんな中、誰かが僕達の近くにある壁にぶつかった。
「なんなんだよもー! なんでみんな本気になってるんだ!?」
「あ、あれ? ルルネさん?」
イベントに参加してる獣人女性の上級冒険者を見たレフィーヤさんが、見覚えがあるように名前を呼んでいた。
その声に反応した獣人女性――ルルネさんは此方へ視線を向けてくる。
「ああっ! レフィーヤ! 頼む、ちょっと客席に引っ張り上げてくれ!」
「ええっ!? だってルルネさんは参加者でしょう? 中にいないとまずいんじゃ……」
ルルネさんが客席に避難したいと懇願するも、レフィーヤさんは困惑の表情となっていた。
参加者であるこの人が勝手に抜け出したら色々と不味いだろう。
「そんなの知るもんか! あんな化け物の中で私にどうしろっていうんだ!?」
「そ、それは……」
ルルネさんの言い分にレフィーヤさんは反論出来なくなったようだ。
確かにあんな状況で逃げ出したくなるのは当然かもしれない。下手をすれば巻き添えを喰らって、怪我どころじゃすまなくなるのは確実だ。
「わ、わかりましたよっ。じゃあ手を伸ばして……ちょっと、貴方も手伝ってください!」
「ええっ、いいんですかね? こんなことして……」
「良いんだってば! 早くしないとぉ……」
僕が困惑してるのを気にせず、ルルネさんが早く引き上げてくれと催促してる最中、突如凄まじい衝撃が僕達に襲い掛かって来た。
「きゃぁぁっ!?」
「うわわぁぁぁっ!?」
その衝撃によってレフィーヤさんだけでなく、気を抜いていた僕も落ちてしまった。
不覚を取ってしまったと思いつつも、どうにか両足で地面に着地しようとする。
……ん? あれ? ここって、まさか……。
『おいおいおい! 【
誰かが僕が参戦したと声高々に叫んだ事で、観客達が一層興奮する様に叫んでいた。
えっ……? えっ…………?
「し、しまったっ! 僕、闘技場に……!?」
落ちたのが闘技場であった事に今更気付くも遅かった。
『おい! あっちは【
「こ、これは……!?」
「レフィーヤさん!? レフィーヤさんも落ちちゃったんですか!?」
観客の叫び内容を聞いて思わず周囲を見ると、僕の近くで倒れていたレフィーヤさんがいて起き上がろうとしている。
「落ちちゃったって……嘘、そんな!?」
この人も完全に予想外だったようで、僕と同じく困惑した様子だ。
ど、どうしよう。僕達は単に事故で落ちちゃっただけなのに、観客達は飛び入り参戦だと完全に勘違いしている。
それは当然、闘技場で今も戦っている上級冒険者達の耳に入っている。
☆
「【
本気で戦っているオッタルが突如止めて、ベルの方へと視線を向けていた。
今回の『大剣闘祭』に【
恐らく不意の事故で闘技場に落ちてしまった。普段のオッタルならそう考えるのだが――
(丁度良い。フレイヤ様の隣に立つ資格があるか、今この場で確かめるとしよう)
却って好都合であると考えた。この機にベルの本当の力を探る事が出来ると。
以前から敬愛する
実力は知っていても、今まで直で戦った事は無い。オッタルとしては、こんな機会は滅多に訪れないものだ。故にベルと戦おうとする。
だが、それはオッタルだけではなかった。
「あのノロマはともかく、
ベート・ローガは以前にベルに敗北した苦い
雑魚と侮っていた相手に負けた。これはベートにとって一番許せない事だった。と言っても、ベルにではなく己自身に対してだ。
あの敗北を払拭する為のリベンジではないが、今度は本気で戦って勝つ。そう考えながら、機会が訪れるのを待っていた。
(もし『Lv.3』にランクアップして調子乗ってんなら、此処でぶっ飛ばしておくか……)
そう考えながらベートは動こうとする。ベルと戦おうとする口実を作ろうと。
(ベルが来た。今なら本気のあの子と戦える!)
ついでと言ってはいけないが、この闘技場にはもう一人いる。ベルと戦いたがってる戦闘狂かつ【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインが。
以前から手合わせしている彼女だが、これまでベルとは本気で戦った事は無い。遠征が終わった以降も手合わせをしてるが、51階層で見せた武器を使ってくれない為、アイズとしては不本意だった。
今やってる【大剣闘祭】は本気でやってはいけないのだが、既に殆どが全力で戦っている。この状況ならベルも本気で戦ってくれるかもしれないと、アイズはそう考えている。尤も、それは彼女の一方的な思い込みに過ぎないが。
(この機を、逃さない……!)
今の内にベルと合流し、本気で戦うようにお願いしようとアイズは動き出した。
【
有名冒険者三名が揃いも揃って、己が目的の為に【
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