ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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番外編 戦争遊戯⑧

 リューさんと一緒に既に破壊された城門を通ると、中は壁や建物の一部が破壊されている状態だった。怪我をしている団員達も数名いる。

 

 それは当然だ。ついさっき僕がフォトンブラストで召喚したヘリクスが城門を突破した後、中で暴れ回るように指示したんだから。それを聞いたヘリクスは僕の指示通り、僅かな時間で辺りを走り回って壊していた。同時に敵側の団員達の数名がそれの巻き添えとなって負傷しているんだろう。因みに役目を終えたヘリクスは既に消えて、再びマグの姿となって僕の近くで浮遊している。尤も、今はステルス化してるので、認識している僕以外は誰にも見えない。

 

 アポロン・ファミリアは百名以上の団員がいるから、ここまで僕が倒した数は未だ一割ってところか。ヒュアキントスさんの元へ辿り着くまでに八割以上の団員達を倒しておかないと厄介だね。

 

「おい! ベル・クラネルが入り込んできたぞ!」

 

 すると、小人族(パルゥム)の少年が僕の侵入に気付いて叫ぶ。それを聞いた他の団員達が一斉に僕の方を見てくる。

 

 目の前にいる団員達は考えを改めたのか、警戒を強めながら一斉に武器を構えている。

 

「さっきまで暴れ回っていたユニコーンらしき幻獣は貴様の仕業か!?」

 

「ええ、そうです。アレは僕の可愛いペットみたいなものです」

 

 マグは僕達アークスに様々なサポートしてくれる戦闘支援型の機械生命体で、使い魔と似た存在でもある。僕からしたら可愛いペットも同然だ。

 

 エルフの青年の問いに答えた直後、その人は凄まじい敵意と殺気を出しながら僕を睨みつけてくる。

 

「この薄汚い蛮族が……! ユニコーンは我等エルフにとって神聖な存在だと言うのに、人間(ヒューマン)がペット扱いするなどと断じて許さん!」

 

「ええ~……」

 

 何だかよく分からないけど、どうやら僕の返答はエルフの青年からしたら許せない内容みたいだ。

 

 それと、さっきのヘリクスはフォトンによって形成されユニコーン姿となったマグだから、この世界のユニコーンとは一切関係ない。本当ならそれを伝えたいけど、激昂している今のあの人に言ったところで無駄だろう。

 

「クラネルさん、あの同胞(エルフ)の相手は私が――」

 

「いえ、ここは僕がやります」

 

 あのエルフの青年の様子からして、リューさんが相手になろうとしても、速攻で無視して僕に襲い掛かって来ると思う。あの怒りに満ちた目を見るだけで、もう手に取る様に分かる。

 

 以前にキョクヤ義兄さんがこう言っていた。

 

『真実を知ろうともせず、底の浅い目先の憎悪に囚われる愚者ほど救いようがない』

 

 要は、表面的な内容だけで全てを決め付けようとする人には何を言っても無駄だと言う事だ。

 

 ヘリクスをこの世界にいるユニコーンだと勝手に決めつけた挙句、勝手に激怒しているエルフの青年みたいに。

 

「リューさんは残っている弓兵をお願いします。戦ってる最中に、いきなり横槍を入れられると堪ったものじゃありませんので」

 

「そう言われても……」

 

「まぁ、すぐに従えないのは当然ですね。だからここで、僕が前衛でも充分に戦えるところをお見せします」

 

 ダンジョン中層にいるモンスター達と戦っていたと言う証拠をリューさんに見せようと、僕は前に出て背中に収めているカラミティソウルを手にして構えようとする。()()の準備をしながら。

 

「来るがいい! 数でしかモノを言わせる事しか出来ない雑兵共よ! 我が闇の力の一端を見せてやろう!」

 

『あぁ!?』

 

 僕が敵を誘き寄せる為の挑発をすると、向こうは雑兵と聞いて頭に来たのか、エルフの青年みたいに思いっきり顔を歪ませた。

 

「この、新人冒険者の分際で……!」

 

「言うに事欠いて、俺達が雑兵だァ……!?」

 

「クソ生意気なガキがぁ!」

 

「ぶっ殺してやる!」

 

 エルフの青年よりプライドがかなり傷付いたのか、剣や槍を構えている前衛型の団員達が激昂して僕に襲い掛かろうとしてくる。数はざっと十数名ってところだ。

 

 僕みたいな子供に言われて相当頭に来たんだろう。ましてや『Lv.1』の新人冒険者から言われて猶更に。僕の挑発は冒険者に対する侮辱もいいところだ。

 

 でも、自分が僕より格上の冒険者だと思っているんなら、こんな見え透いた挑発なんか乗らないで冷静になるべきだ。僕みたいな格下の冒険者が、何の備えもないまま挑発する筈がないとね。

 

 襲い掛かってくる団員達の距離を確認した僕は――

 

「はぁっ!」

 

『がはっ!』

 

 カラミティソウルを思いっきり横に振った。その直後に敵の団員達は、急に現れた横斜めの斬撃をまともに喰らってしまい、そのまま気絶し倒れてしまう。

 

 僕がやったのはファントム長杖(ロッド)用の武器アクションだ。長杖(ロッド)を構えた数秒後にチャージが完了して武器を振るうと、前方広範囲を刈りとるように攻撃する事が出来る。

 

 やられた側にしてみれば、僕以外からの攻撃に思うだろう。魔法(テクニック)の動作をせずに、ただ構えているだけの僕を見ていれば。

 

「な、何だ! 一体何が起きた!? 貴様、いま何をした!?」

 

 さっきまで激昂していたエルフの青年だったが、僕が一瞬で十数名の団員を倒したのを見て困惑していた。他の団員達も含めて。

 

 と言うか、どうして敵の僕に答えを求めるんだろうか。僕は自分でもお人好しだって自覚はしてるけど、自分から敵に種を明かすつもりなんてない。

 

「いくら僕でも、敵相手に教えませんよ。ところで、今度は此方から仕掛けさせてもらいますから」

 

 この人達は本当に僕より格上の冒険者なのかと疑問を思うほど、動きが余りにも緩慢過ぎだった。もし彼等がアークスだったら、六芒均衡のマリアさんが見れば、もう失望を通り越して完全に呆れているだろう。

 

 僕はそう思いながら武器を切り替えようと、カラミティソウルから抜剣(カタナ)――フォルニスレングへと変わる。

 

 その直後に僕はファントムの回避で一旦姿を消し――

 

「き、消えただと!? 今度はどこへ行った!?」

 

「此処ですよ」

 

「っ! がっ!」

 

「リッソスぅ!」

 

 エルフの青年の背後から出現して、即座に背中を斬りつけた。それによりエルフの青年――リッソスさんは突然の激痛に反撃しようとせず、そのまま倒れて気絶してしまう。

 

 この人が倒れた事に他の団員達が驚いている様子だ。見た感じ、指揮官の一人がやられたってところか。これは思わぬ収穫と見ていいだろう。

 

 僕は内心面倒な相手を倒せて良かったと思いながら、剣を鞘に納めながらこう言い放つ。

 

「さあ、ここからは愉しい時間の始まりです。“白き狼”ベル・クラネル、いざ参る!」

 

 

 

 

 

 

(私は、とんだ思い違いをしていた。クラネルさんは明らかに強者だ……!)

 

 目の前で起きている戦闘にヘスティア・ファミリアの助っ人――リュー・リオンは驚愕するばかりだった。たった一人で多くの敵をバッタバッタと倒し続けているベル・クラネルを見て。

 

 ベルが手にしている抜剣(カタナ)でアポロン・ファミリアの団員達に向かって攻撃を仕掛けた事により、状況は物凄い勢いで一変していた。

 

 消えたかと思いきや、いきなり敵の前や背後に現れて斬りつけ、また消えて……と言う繰り返しを行い続けている。今までに見た事のないベルの剣技に、城内にいるアポロン・ファミリアはもう完全に浮足立っている。

 

 更には居合切りみたいな構えで剣を抜いた瞬間、風を斬るような斬撃らしきものを飛ばしていた。それを受けた敵は信じられないような顔をしながら倒れていく。

 

 それだけでなく、時々自分の目でも追えない速度で、一瞬で敵を斬り伏せていた。まるで自分の二つ名である【疾風】のように。

 

 相手を翻弄するように凄まじい速度で敵を斬り伏せる剣技、そして城門前に見せた二つの魔法。とても『Lv.1』とは思えない実力を披露しているベルに、リューは内心猛省していた。同時に恥じていた。

 

 昨日の打ち合わせの時、ベルに『これまで格上の相手を倒せたのは運が良かった』と偉そうな事を言った。もしも過去に戻れるなら、昨日の自分を思いっきり殴りたいと思う程に。

 

 ベルが中層でモンスターを倒し続け、更に階層主(ゴライアス)を倒したと言っていた。それを聞いていたリューは半信半疑で、ベルに説教しながらも、恐らく偶然同行したロキ・ファミリアの助力があって出来たのだろうと判断した。

 

 しかし、今の光景を見てその判断は誤りだったと気付いた。ベルの言った事は全て事実であったと。その証拠に、明らかにベルより格上である『Lv.2』の上級冒険者達を梃子摺る様子を見せる事なく、殆ど一撃で倒し続けているから。ベルに倒された相手も思わず『ば、バカな……!』と口にするほどだ。

 

(クラネルさんがこんなに強いのであれば、私が助っ人として参加する必要はなかったのでは……?)

 

 余りにも実力差があり過ぎる光景を見ている事に、リューは思わず疑問を抱いてしまう。明らかに自分は場違いだと。

 

「ん? あれは……」

 

 思わず思考を放棄してしまいそうなリューだったが、ふと気付いた。戦闘しているベルの後方から、先程まで唖然としていた数名の弓兵(アーチャー)がベルを狙撃(スナイプ)しようとしている。ベルは弓兵(アーチャー)狙撃(スナイプ)に気付いていないのか、眼前にいる敵との戦闘に集中している。

 

 今から倒しに行こうにも距離があって間に合わない。向こうはもう射る寸前だった。自分がやる事は唯一つ。

 

「やらせません!」

 

「え? リューさん?」

 

 リューは疾風の速さでベルの元へ辿り着き、手にしている木刀で弓兵(アーチャー)が放った幾本の矢を叩き落す。

 

「あっ、くそっ!」

 

「しまった、助っ人もいたんだった……!」

 

 ベルの狙撃(スナイプ)に失敗した事により、弓兵(アーチャー)達が舌打ちをしている。今回の戦争遊戯(ウォーゲーム)でヘスティア・ファミリアには助っ人が参加している。それはアポロン・ファミリアも当然知っている。

 

 だが、ベルが派手な戦闘を行い続けている事により、向こうは助っ人の存在を完全に失念していた。

 

「ってか何なんだよ、あの助っ人は!」

 

「あんなに速く矢を全部叩き落すなんて、とても外部の冒険者とは思えないぞ!」

 

 一瞬でベルの元へ辿り着いたかと思いきや、持っている木刀で全ての矢を叩き落す動作は尋常ではなかったと弓兵(アーチャー)達は疑問を抱く。とても『Lv.1』や『Lv.2』が見せる芸当ではないと。

 

 もしかしたら団長のヒュアキントスより強い助っ人じゃないかと思っている最中――

 

「闇の風よ 竜巻となりて吹き荒れよ サ・ザン!」

 

「うわぁぁぁぁ~~~!!」

 

「今度は風魔法だと~~~!?」

 

「なっ!?」

 

 突然、詠唱と魔法名が聞こえた瞬間に弓兵(アーチャー)達の周囲に竜巻が発生した。それにより集まっていた弓兵(アーチャー)が、暴風の風によって吹き飛ばされていく。

 

 リューが思わず振り向いた先には、いつの間にか大鎌に持ち構えていたベルが此方を向いていた。

 

「助かりましたよ。リューさんがいなかったら、危うく狙撃されているところでした」

 

「あ、い、いえ、私はクラネルさんの指示に従ったまでで……」

 

 予想外な風魔法を見た事により、リューは混乱しつつも言い返す。見た事のない爆発魔法や召喚魔法だけでなく、風魔法を使うなんて完全の予想外だったから。

 

「と言う事は、僕の力を認めてくれたってくれた事ですか?」

 

「……ご、ゴホン。こんな状況を見せられて、従わない訳にはいきません」

 

 少しズレた問いをしてくるベルに、リューは少々呆れてしまった。如何にベルが強くても、やはり少しばかり幼いようだと。ベルが見せた笑みに一瞬見惚れてしまったなどと、口が裂けても言えないが。

 

「そうですか。では改めてリューさん、僕の背中を任せてもいいですか?」

 

「ええ、お任せ下さい。私は助っ人らしく、クラネルさんの背中をお守りしましょう」

 

 リューは決意した。自分はベルを守る為の盾に徹しようと。そして、シルの想い人であるベルを絶対に守ろうと。

 

 今ここに、急造でありながらも息の合った名コンビが誕生しようとしていた。攻撃のベルと、防御のリューによる攻防コンビが。

 

 

 

 

 

 

『な、何と言う事でしょうかぁぁぁぁ~~!!?? ベル・クラネルが魔法を使うので魔導士かと思いきや、とても「Lv.1」とは思えない攻撃速度の剣技を見せているぞ~~~!! もう既に【アポロン・ファミリア】が半分以上やられている~~~!!』

 

 場所は変わってオラリオ。実況役のイブリがハイテンションな声で響き渡るも、オラリオ中は完全に熱気に包まれていた。ベルが一人でアポロン・ファミリアの団員達を相手に圧倒しているから。

 

「な……な……! 何なのだ、これは! 何故ベル・クラネルに、あれ程の魔法と力があるのだ……!?」

 

 神々が観戦している『バベル』にて、アポロンは口をあんぐりと開けながら目が点になっている。自身の陣営が一方的に蹂躙する筈が、全く逆の展開になっている事によって。

 

 無論、それはアポロンだけでない。他の神々ですらも驚愕する一方だった。詠唱無しの魔法や、見た事のない魔法生物を召喚する魔法、更には敵を圧倒するほどの剣技。もう誰もがベルを『Lv.1』とは思えない実力者だと改めて認識する瞬間でもある。

 

「おいおい、なんだよコレは!?」

 

「ヘスティアの所の眷族(こども)が、あんなに強いなんて聞いてないぞ!」

 

「可愛い顔をしてえげつない魔法を使うかと思えば、何かカッコいい台詞を言いながら敵を倒し続けていくベル・クラネル……!」

 

「あんな子に斬られるなら私……本望かも」

 

 他の男神達が驚愕する一方、女神はベルの強さに惹かれるように顔を赤らめている。

 

「ほえ~~……ベル君が強いのは分かっていたけど、まさかこれほどだったなんて……」

 

 これにはベルの主神であるヘスティアですらも驚愕していた。シルバーバックを瞬殺したのだから強いのは知ってても、多くの敵を簡単に倒すのは完全に予想外だった。今更ながらもヘスティアは、ベルがよく自分の眷族になってくれたなぁと思ったのは秘密だ。

 

「凄いわね、あのベルって子。あんなに凄い子が、よくヘスティアの眷族(こども)になろうと思ったわね。あれ程の強さなら、ロキだったら大歓迎じゃなかったの?」

 

「ああ、せやな。あの時の門番達が追い出さなければ、今頃ウチのファミリアに入団しとった筈だったのに……!」

 

 圧倒的な力を見せるベルに驚愕し続けるヘファイストスに対し、既にベルの力を知っているロキは歯噛みしている。

 

 改めて確認したベルの凄さに、ロキは非常に残念がった。ベルが色々と厄介で非常識な事をしたのを抜いたとしても、あれ程の力を持った存在がヘスティアなんかの眷族になるのは余りにも勿体無さすぎると。

 

 もしもベルがロキ・ファミリアに入団していれば、遠征時には様々な手助けが出来ていただろう。一番に助かるのは治療師(ヒーラー)としての役割だった。多くの負傷者が出たとしても、エリクサー並みに回復させる事が出来る治癒魔法、更には毒などに対する状態異常の治療魔法を瞬時に使う事が出来る。加えて前衛で戦えるだけでなく、見た事のない攻撃や補助魔法も行使してサポートする事も。あんな逸材を門番が追い出してしまった事に、ロキは今でも非常に惜しく思っている。

 

 それが今やヘスティアの眷族になってる事に、ロキは非常に腹立たしい気持ちでいっぱいであった。もしもベルがヘスティアでない他のファミリアに入っていたら、ここまで怒らなかっただろう。

 

「あと、あの子が使っている剣は……見た事ないわね。特に刀身なんかが、まるで炎を形にしている感じがするわ」

 

 ヘファイストスはベルの実力より、ベルが使う抜剣(カタナ)に興味を抱いていた。見た事のない形状をした剣であり、刀身も普通の剣とは異なっているから。

 

「んあ? ファイたんも知らん武器なん? ちゅう事は、ゴブニュが作ったとか?」

 

 ロキの問いにヘファイストスが首を横に振っている。

 

「いいえ、ゴブニュはあんな形状の武器は作らない筈よ。多分だけど、私の所にいる椿も気になってるでしょうね」

 

 そう言いながらヘファイストスは自身のファミリア団長、椿・コルブランドの事を考える。あんな未知の武器を見たら、絶対に興味を抱く筈だと。あわよくばベルに会って武器を見せて欲しいと懇願するかもしれない。

 

「へ、ヘスティア! ベル・クラネルがあそこまで強いのは、まさか【神の力(アルカナム)】を使ったんじゃないだろうな!?」

 

「はぁ?」

 

 すると、アポロンがいきなりヘスティアに向かって叫んだ。それを聞いた他の神々は思わずヘスティアを見る。

 

「何を言うかと思えば、ボクがそんな事をするわけないじゃないか。仮に【神の力(アルカナム)】を使ったとしたら、僕は今頃下界(ここ)にいないよ」

 

「ぐっ……」

 

 神は下界へ降りる際に厳しい条件が課される。それは【神の力(アルカナム)】を殆ど制限され、普通の人間と大して変わらなくなると言う条件が。

 

 それでも【神の力(アルカナム)】を無理矢理使ってしまえば、ヘスティアの言う通り下界にいられなくなってしまう。もし使えばルール違反とみなされてしまい、天界へと強制送還されてしまう。益してや能力強化などは完全に違反なので、もし使えばヘスティアは既にいなくなって戦争遊戯(ウォーゲーム)が中止になっている。

 

 なのでアポロンの発言は完全に的外れだった。違反をしていないヘスティアは勿論の事、ベルも同様に。紛れもなくベルの実力は【神の力(アルカナム)】で施されたものじゃない。

 

 そんな話をしている中、映っている『鏡』にはベルが城内にいる一人の小人族(パルゥム)――ルアンと対峙していた。仲間を圧倒されているのを見ていたルアンが逃げようとした際、ベルは逃がすまいと即座に彼の前に現れていた。しかし、流石に逃げる相手に情けをかけたのか、ベルは持っている鞘で峰打ちをしてルアンを気絶させた。ベルに同行していた助っ人のリューもルアンの余りの弱さに、憐れむような目で見ていたが。

 

 その光景を見ていたオラリオの観衆はルアンを見てこう思った。あんなに弱いんじゃ相手が悪すぎる、と。

 

 

 

 

 

 

 

 一方、『黄昏の館』では――

 

「ねぇティオネ! アルゴノゥト君が剣だけでも相手を圧倒してる! すごいすごい!」

 

「あ~もう、うるさいわね。アンタに言われなくても分かってるわよ!」

 

 ティオナがまるで自分の事みたいに大はしゃぎしていた。自分が惚れているベルだから猶更に。

 

(凄い、あの子の剣技。あれで本当に『Lv.1』なの……?)

 

 ベルの華麗とも言える剣技にアイズは思わず見惚れそうになっていた。尋常ではない攻撃速度で翻弄させ、多くの上級冒険者達を殆ど一撃で倒している。

 

 アイズは決めた。ベルの力を知る以外にも、絶対に必ず手合わせをしようと。そうすれば、もしかしたら自分は強くなるかもしれないと。

 

(ううう~~~! アイズさんがベル・クラネルに熱い視線を送ってるなんて~~~! あの子が強いのは知ってますけど、アイズさんを独占するなんて許せない~~~!)

 

 ベルの戦いを見逃すまいと凝視しているアイズに、それを見ていたレフィーヤが嫉妬の炎をメラメラと燃やしていた。




ベルの強さを改めて認めるリューでした。

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