ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

4 / 178
オリオンの矢④

「どうだい、旅のスペシャリスト、このヘルメス監修のオーダーメイドの数々は!?」

 

 一通りの準備を終えた僕達は、オラリオの城壁にいた。

 

 ちょっと離れた所でヘルメス様が自慢気に叫んでいるのは、僕達が身に纏っている防具――戦闘衣(バトル・クロス)を指している。

 

「素材は厳選! 軽量性、伸縮性に富んでいるのは勿論! 生地にはレアメタルの欠片をふんだんに織り込み! 耐久性は従来の30パーセントアップ! バトルクロスでありながらも、鎧にも負けない防御力を秘めている! そのしなやかさは装着者の動きを妨げることはなぁーい! これほどの一品を数時間で揃えられるのは――」

 

「うわ、なんかこの武器凄そう! アタシの大双刃(ウルガ)と全然違うけど、こっちはこっちでカッコいいかも!」

 

「この剣、変わった形してるね。でも……凄い魔力を感じる……!」

 

 ヘルメス様の防具説明とは別に、ティオナさんとアイズさんは僕が用意した武器を見て驚愕しながらも喜んでいた。

 

 ティオナさんに貸したのは両剣(ダブルセイバー)――『セイカイザーブレード』。これは当然、僕がファイタークラスで使用した時の武器だ。形状としては、巨大な槍の矛先みたいに見えるが、それを変形接続する事で大双刃(ウルガ)と似た両剣(ダブルセイバー)へと変わる。

 

 僕が愛用していた武器でもあるから、特殊能力や潜在能力もある。特殊能力は『アクト・ジ・ソール』などの打撃力をメインに付けており、潜在能力――『希望の証』を開放させている。一定間隔で傷を回復させ、ダメージ上昇の他、受けたダメージを僅かに軽減させると言う便利な潜在能力だ。

 

 続いてアイズさんの方も両剣(ダブルセイバー)――『スキアブレード』。同じくファイタークラス時に使用した武器で、他の両剣(ダブルセイバー)と違って変わった特徴をしている。本来は一対になってる剣の柄先に繋げて両剣(ダブルセイバー)と呼ばれるけど、このスキアブレードはサーベル型の片手剣だった。ただの片手剣(セイバー)じゃないかと多くのアークスから突っ込みを入れられたが、それでも両剣(ダブルセイバー)の部類として扱われている。

 

 セイカイザーブレードよりランクが一つ落ちるけど、これには法撃力――この世界では魔力――が備わっている。アイズさんは攻防一体の風魔法を使えるから、もし発動すれば相当な威力を出せる筈だ。以前リヴェリアさんに『ゼイネシスクラッチ』を貸した際、法撃力が魔力として変換し、凄まじい威力を出した確証があるので。

 

 当然、スキアブレードにも特殊能力と潜在能力もある。特殊能力も打撃力メインで、潜在能力は隠しとして『飛天の崩撃』を開放済みだ。これは少々特殊な潜在能力で、空中で攻撃している時に三割近くのダメージを上昇出来る。分かりやすく言えば、アイズさんが『精霊の分身(デミ・スピリット)』に止めを刺す時、風魔法を使った突貫技を使えば威力が通常よりも上昇と言う訳である。

 

「お二人とも、お気に召しましたか?」

 

「うん! 持った途端に力が沸き上がってくるから、早く使ってみたい!」

 

「私も。使うのが楽しみ」

 

 満面の笑みを見せるティオナさん、無表情ながらも興奮しているアイズさん。どちらも気に入ってくれて何よりだ。尤も、この冒険者依頼(クエスト)が終わったら返してもらうけど。

 

 昂っている二人を見た神様が、不安そうな表情で僕に訪ねて来た。

 

「いいのかい? あんな凄そうな武器をロキの眷族(こども)達に貸しちゃって」

 

「向こうが協力してくれるんでしたら、これくらいはしないと割に合いませんからね。それにあの武器は、今の僕じゃ扱う事は出来ませんし」

 

「……ベル君がそう言うなら良いんだけど……」

 

 僕の言い分に取り敢えずと言った感じに納得してくれた神様。

 

「まぁそれよりも、ベル君のそれ、似合ってるぜ!」

 

「ありがとうございます。神様もお似合いですよ」

 

「へへへー、そうかい♪ やー、自分でもそうかなーって思ってはいたけど、やっぱりそうかなー♪」

 

 すると、話題を変えようと急に笑顔となって僕が纏っているバトルクロスについて言ってきた。僕も似合ってると返すと、神様は満面な笑みを見せる。

 

 僕のバトルクロスは、白を主体とした銀の胸当て付きの上着を着ていて、銀の膝当て付きの丈夫な黒いズボンと赤いブーツを履いている。欲を言えば全身黒が良かったけど、ヘルメス様が用意してもらったから文句は言えない。

 

 神様は、白と青の生地を使ったドレスを身に纏い、お馴染みの青い紐も巻かれている。男の僕から見ても凄くお似合いだ。

 

「ねぇねぇアルゴノゥト君、アタシは~?」

 

「私は、どうかな?」

 

「……ゴホンッ。お二人も、充分お似合いですよ」

 

 神様だけでなく、ティオナさんとアイズさんも感想を求めてきたので、僕は思っている事をそのまま言った。

 

 ティオナさんはアマゾネス故か、露出が目立つ衣装だった。分かりやすく言えば踊り子みたいな服だけど、ヘルメス様が言ったように、普通の防具以上の耐久性はあるだろう。ちょっと目のやり場に困るけどね。

 

 そしてアイズさんは……見惚れてしまう程に似合っている。お姫様風な赤い戦闘ドレスで、正に【剣姫】の二つ名に相応しい衣装だ。思わず声が上擦ってしまいそうになったが、それでも何とか平静を保つ事が出来た。

 

「ちょっとベルく~ん、なんかボクの時とは違う反応じゃないかい?」

 

「そ、そんな事ありませんよ。僕は思った事を言っただけですから」

 

「ふ~ん……」

 

 これは嘘じゃないので、神様の嘘センサーに反応しない。僕の言ってる事が本当だと分かってくれたみたいだけど、それでもまだ疑念が晴れてない様子だ。

 

「ところで、オラリオの外に出るのに、どうして外壁の上なんですかね?」

 

「さぁ……? アルテミスー、何か聞いてるかい?」

 

「いや、私はなにも……」

 

 神様もそれが気になっていたみたいで、僕達に背を向けてオラリオの外を眺めているアルテミス様に聞いた。

 

 向こうは声を掛けられて振り向くも、全く何も聞いてないと首を振った。

 

 依頼主(スポンサー)の筈なのに知らないって、どう言う事なんだろうか? 移動に関してはヘルメス様に一任してるのかな?

 

「ヘルメス、どうするんだい?」

 

 僕と同じ考えだったのか、神様はヘルメス様に問う。

 

「来た来た」

 

 ヘルメス様が空を見ながら言った瞬間、ふと空が暗くなった。

 

 思わず上に視線を見上げると、飛竜(ワイバーン)と思わしきモンスターが三匹飛んでいる。

 

「えっ!?」

 

「!」

 

 驚きの声を出す神様とは別に、アイズさんが即座に剣を構える。

 

「ハハハハーー!」

 

「わっわっ……!?」

 

「神様っ」

 

 すると、飛竜(ワイバーン)に乗っていると思われる誰かが飛び降りながら、僕達の方へと接近してくる。

 

 飛び降りてくる誰かに神様は驚きながら後退して躓きそうになったので、僕が即座に支えた。

 

 そして僕達の目の前に着地したのは、象の仮面を被っている人……もとい男神様だ。

 

「ガッ、ガネーシャ!?」

 

「そう! 俺がガネーシャだ!」

 

 どうやら神様が知っている男神――ガネーシャ様のようだ。

 

 確かこのお方は【ガネーシャ・ファミリア】の主神で、その【ファミリア】はオラリオの治安維持活動を行っている。以前にあった、ギルド公認の祭典である怪物祭(モンスター・フィリア)の主催・運営もしていると聞いた事がある。

 

 ガネーシャ様が名乗った後、空を飛んでいる三匹の竜も降下して着地する。

 

 深層で見た飛竜(ワイバーン)と違って、目の前にいる竜は僕達を見ても襲おうとしないどころかジッとしていた。それに凄く大人しそうな表情で澄んだ目をしている。

 

「これに乗っていくのかい?」

 

「ああ、前以てガネーシャに頼んでおいたんだ。陸路なら一ヵ月かかるが、こいつに乗れば十日で到着ってわけだ」

 

 神様の問いにヘルメス様が答えて、どうやら移動手段としてこの竜を使う事になるそうだ。

 

 だとするなら、アイズさんを少し落ち着かせる必要がありそうだ。未だに警戒を解いてないどころか、すぐにでも襲い掛かりそうな雰囲気を見せているので。

 

「アイズー、攻撃しちゃダメだよー」 

 

「……うん」

 

 僕が言う前にティオナさんが止めてくれた。近くにいて物騒な気配を感じていたからか、やんわりと止めようとするティオナさんにアイズさんは漸く剣を収める。

 

 遠征の時から気になってたけど、アイズさんって何か竜種のモンスターに対して並々ならぬ殺意を抱いている。何か深い事情があるんだろうけど、せめて移動手段として使う大人しい竜に攻撃しないで欲しい。

 

「それに早く戻らないと、アスフィに叱られちゃうからな~」

 

「えっ? ねぇヘルメス様、それってどういう……ひゃあっ!? ちょ、くすぐったいよ!」

 

 ティオナさんが尋ねようとする寸前、近くにいた竜が彼女に向かって鼻息を鳴らしながらペロペロと頬を舐め始めた。

 

 神様や僕が他の竜に近付いて触ったり撫でたりすると、気持ち良さそうな表情をしている。

 

「大丈夫だ! この竜は孵化した時からテイムを施してある! 誰の言う事も聞くぞ!」

 

 自信満々に答えるガネーシャ様。道理で人懐っこい訳だ。

 

 ただ、アイズさんだけは僕達と違って、竜と戯れようとはしない。

 

「……あの、竜の数、足りなくないですか?」

 

 アイズさんの問いに僕も確かにと思った。

 

 今回の冒険者依頼(クエスト)の目的地には僕、神様、アルテミス様、アイズさん、ティオナさん、ヘルメス様の計六人が向かう。普通なら竜は六匹用意される筈だ。

 

 三匹しかいないって事は――

 

「ぶっちゃけ、揃えられなかった!」

 

 ガネーシャ様の返答に納得した。

 

 まぁ見た感じ、こういう竜は凄く希少そうだから、揃えるのには相当な手間暇が掛かるだろう。寧ろ、三匹揃えただけでも凄いかもしれない。

 

「と言う訳で、二人乗りということで」

 

 竜の数の関係で、ヘルメス様の言う通り二人乗りが決定した。

 

 折角だから、アイズさんを――

 

「オリオン、一緒に乗ろう」

 

「え? ああ、はい……」

 

 誘おうと思っていたが、アルテミス様が声を掛けてきたので思わず承諾してしまった。

 

「ぶ~、アルゴノゥト君と二人乗りしたかったぁ~」

 

「…………」

 

 僕がアルテミス様と相乗りする事に、アイズさんと一緒に乗るティオナさんが不満そうに見ていた。アイズさんも何か含んだような目で僕を見ている。

 

 そして――

 

「まぁまぁ、ヘスティア」

 

「何でベル君がアルテミスと一緒に乗ってるんだぁぁぁーーー!!」

 

 ヘルメス様と相乗りする神様が何故か叫んでいた。

 

 全員が乗った事に、竜は飛翔して目的地へ向かおうとする。

 

「行ってらっしゃ~いっ!」

 

 オラリオに残るガネーシャ様は、大声を上げながら僕達を見送った。

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、場所は変わって【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)――『黄昏の館』。

 

「アイズたんとティオナが神月祭に出掛けてからまだ戻っとらんって、どういうことや!?」

 

「落ち着いてくれ、ロキ。僕も詳しい事はまだ知らないんだ」

 

 執務室にて、アイズとティオナが帰って来てないと報告を聞いたロキがフィンに問い詰めていた。

 

 フィンもそれしか聞いていない為、二人が今どこで何をしているのかなど全く分からない。寧ろこっちが知りたいぐらいだと。

 

 神月祭が終わって翌日になっても帰ってこない事に、ロキやフィンだけでなく、リヴェリアも苛立ちを募り始める。

 

「全く。港街(メレン)での調査が控えていると言うのに、あの二人は一体何をやっているんだ」

 

「そう怒るな、リヴェリア。あやつらはもう子供ではないんじゃ。何か理由があるんじゃないかと、ワシは思うぞ」

 

「例えそうでも、せめて一度戻ってから私達に事情を説明して欲しいな。子供じゃないなら、それくらいの事は出来る筈だ……!」

 

 ガレスが宥めようとするも、リヴェリアは苛立ちを抑えないどころか、沸々と怒りが込み上がっていた。

 

 本人は否定してるが、今の彼女は完全に母親(ママ)の顔になっていた。門限を過ぎても未だ却ってこない子供二人(アイズとティオナ)母親(リヴェリア)が怒っている、みたいな感じで。

 

 リヴェリアの言う通り、【ロキ・ファミリア】は後日に港街(メレン)へ行く予定になっている。ロキとしても個神的な事情で一刻も早くアレ(・・)を披露する準備をしている事もあって、対象のアイズとティオナがいない事にロキは不安を抱いていた。

 

「取り敢えず今日は二人が戻って来るのを待つ。だけどそうでなかった場合は、ティオネやベート達に二人を捜して貰う事にする」

 

「まぁ、せやな」

 

 フィンの案にロキは一先ずと言った感じで受け入れる事にした。

 

 すると、執務室の扉からノックする音がしたので、フィンは何事かと思いながらも入室を許可する。

 

 入って来たのはラウルで手紙らしき物を持っていた。

 

「団長、失礼するっす」

 

「何かあったのかい?」

 

「えっと、神ガネーシャが本拠地(ホーム)に突然来たんすけど、団長とロキに話があるって」

 

「ガネーシャ? 一体何の用や?」

 

 予想外の客神が来た事に、聞いていたフィン達だけでなくロキも意外そうに驚く。

 

 敵対していない派閥とはいえ、【ガネーシャ・ファミリア】の主神自ら他所の【ファミリア】の本拠地(ホーム)へ訪れるのは余程の事だ。

 

「それが、アイズさんとティオナさんに関係する話だと言ってるっす」

 

『!』

 

 神月祭に参加してから戻ってこない二名の名前が出た事に、ロキ達は目を見開いた。何故二人と大して関わりのないガネーシャが二人の事を知っているのだと。

 

 そしてガネーシャから一通りの話を聞いた後――

 

「何でうち等に相談しないで勝手に決めとるんや! 天然(おバカ)アイズたんにティオナぁぁぁぁ! あとヘルメスゥゥゥゥゥ! ウチ等に港街(メレン)へ行けと言っておいて、何やらかしとんのやぁぁぁぁぁ!」

 

「やれやれ、二人が戻って来ないのはベル絡みだったか……。何となくそんな気はしてたよ」

 

「アイズとティオナはベルにご執心じゃからのう。まぁ、仕方ないと言えば仕方ないか」

 

「まさかとは思うがあの二人、武器が整備中なのを良い事にベルの武器を借りている、何て事はしていないだろうな……?」

 

 主神と主要幹部三人はそれぞれ思った事を口にしていた。

 

 特にリヴェリアはベルの武器を使っているかもしれないアイズとティオナを内心羨ましがっていた。どうせなら、自分も一緒に連れて行って欲しかったと。




衣装については、ベルとヘスティアは劇場版の「特注装備」です。

アイズはダンメモの空想衣装「勇装鎧衣」、ティオナはダンメモの踊り子衣装「百華乱舞」を基にしています。

感想お待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。