ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

42 / 178
これで最終回です。


番外編 戦争遊戯⑫

 【アポロン・ファミリア】との戦争遊戯(ウォーゲーム)が終わってから二日後。

 

 勝者である【ヘスティア・ファミリア】は新しい本拠地(ホーム)を得て、いつもの日常を過ごし、唯一の団員である僕も再びダンジョン探索の日々を送る………筈だった。

 

「いや~、ここの魚料理は美味しいね~。オラリオでは輸入物しか食べれなかったけど、メレン本場で食べる魚料理がオラリオ以上に美味しいだなんて思いもしなかったよ~」

 

「ええ、そうですね。活きが良くて、食べ応えも最高です」

 

 現在、僕と神様はオラリオの本拠地(ホーム)にいない。オラリオから少し離れた港町メレンにある宿泊施設で、魚料理を美味しく堪能している。

 

 戦争遊戯(ウォーゲーム)を終えた僕は、リューさんと一緒にオラリオへ戻った。古城跡地から一日をかけて漸く都市に帰還する直前、門の前で神様と会った。

 

 最初は迎えにきたのかと思いきや――

 

『ベル君、今すぐ港町メレンに行くよ! 色々と言いたい事はあるだろうけど、今は何も聞かずにボクの言う通りにしてくれ! あと助っ人として参加してくれたエルフ君、ベル君を手伝ってくれてありがとう! 君はこのままオラリオへ戻っても大丈夫だから!』

 

 と、神様が有無を言わずに急遽、進行方向をオラリオから港町メレンへ向かう事になってしまった。

 

 因みに一緒にいたリューさんとは既に別れている。僕と同様に事情を呑み込めないまま、呆然と見送る事になってしまっていた。

 

 そしてメレンに着いて早々、神様は目的地と思われる宿泊施設へと向かい、少し広い二人部屋用の個室に泊まる事となった。あと、宿泊料に関しては問題無いと神様が言っている。それがどうしてかは今も分からないけど。

 

 取り敢えず僕は神様に言われた通り、メレンにある宿泊施設で過ごす事にした。翌日となった今は、朝食として魚料理を堪能している。

 

「あのぅ、神様。出来ればそろそろ教えてくれませんか? どうして僕達がオラリオに戻らず、ここにいるのかを」

 

「ん?」

 

 残っていた魚の切り身を食べ終えた神様は僕の問いを聞いた途端、コップに入っている水を飲み干そうとする。

 

「んぐんぐ……ぷはぁ~~。そうだね、取り敢えず一段落ついたところだし、そろそろ説明しないといけないね」

 

「一段落?」

 

 水を飲み切って気になる単語を言う神様に、僕は思わず鸚鵡返しをしながら首を傾げる。

 

「話せばちょっと長くなるんだけど、戦争遊戯(ウォーゲーム)が終わった直後の事だ」

 

 説明が長くなると分かった僕は、料理を食べるのを止めて神様の話を聞く事に集中する。

 

 先ずは【アポロン・ファミリア】についてだった。僕たち【ヘスティア・ファミリア】が勝利した事によって、何でも要求する権利を得た。それを神様がアポロン様に全財産没収にファミリア解散、そしてオラリオ追放の要求をした。

 

 神様の要求を絶対に受け入れなければいけない立場となったアポロン様は、号泣しながらも全て承諾。それにより【アポロン・ファミリア】が解散となり、眷族達との別れと退団の儀式が決定となった。アポロン様は今頃、儀式を終えて都市を発っている頃だろうとの事だ。それと、儀式によって無所属(フリー)となった元団員達の今後は、彼等の各自判断で決めてもらうとの事だ。

 

 アポロン様たちの今後を聞いた僕は、ほんの少しだけど罪悪感を感じてしまった。向こうが仕掛けた戦争遊戯(ウォーゲーム)とはいえ、僕の所為で彼等の生活を奪ってしまったから。恨まれるのは当然だと思う。

 

「ベル君がアポロン達の事で気に病む必要なんか一切ないよ。軽い気持ちでボク達に戦争遊戯(ウォーゲーム)を仕掛けたアポロンや、絶対に負けはしないと高を括っていたアポロンの眷族(こども)達が招いた結果だ。君に一切の非は無い。それは断言する」

 

 僕の考えを見抜いていたのか、神様は気にしないようにと言い切った。本当に、神様は何でもお見通しなんだなぁ。アポロン様達の話を終え、次は僕たち【ヘスティア・ファミリア】の話題となる。

 

 神様はすぐに結論を言った。今回の戦争遊戯(ウォーゲーム)で、僕は派手にやり過ぎてしまったようだ。オラリオ中から大注目されるだけじゃなく、更には各国の商人にも知れ渡ったと。

 

 戦争遊戯(ウォーゲーム)終了後、バベルにいた神様は他の神々から猛烈なアプローチを仕掛けられていた。主に僕に関しての事で。引き抜きは勿論の事、自分のファミリアと同盟を結ばないか等々。

 

 更には神々以外にも、多くの冒険者や商人達からも同様のアプローチもあったと言う。冒険者側は僕をパーティに加えたい為の専属契約をしたいとか、商人側は自分の顧客になって欲しいと。他にも魔法関連を扱う人達から、僕が使っている未知の魔法について詳しく教えて欲しいと懇願されたらしい。更には弟子にして欲しいと言う人もいたそうだ。

 

 神様の話を聞きながらも、確かに僕はやり過ぎてしまったようだ。向こうからすれば、僕のファントムクラスとしての力は未知なる物だ。それを多くのテクニックやスキル等を湯水の如く使ったから、見ていた彼等がそんな行動を取るのは無理もない。

 

 今思えば、ダンジョン中層で遭遇したフィンさん達が妙な反応をしていたのは、そう言う事だったんだろう。僕が教えた内容は、彼等にとって自分達の予想を遥かに超えたものだったと言う事を。そしてリューさんや、【アポロン・ファミリア】があんなに驚いていたのも含めて。

 

 様々なアプローチを仕掛けられている事にウンザリした神様は、暫くはオラリオから離れて身を隠そうと決心した。戦争遊戯(ウォーゲーム)のほとぼりが冷めるまでの間として、一週間ほどの休みを取ろうと。

 

 その為に神様はギルドにいる僕の担当アドバイザーであるエイナさんに事情を話したところ、すぐに承諾してくれた。どうやらギルド上層部が、僕達にお詫びをしたいと自ら申し出て、こうしてメレンの宿泊施設を手配してくれたと。

 

 理由としては、【アポロン・ファミリア】に本拠地(ホーム)を破壊された件を突っぱねた事に対してお詫びをしたいとの事だった。神様がオラリオから出る煩雑な手続きや、メレンにある宿泊施設の手配と宿泊料は全て請け負ってくれるとも言ってた。その代わり、自分達が先日に【ヘスティア・ファミリア】の申告を突っぱねた事を言い触らさないで欲しいとの条件付きで。

 

 ギルドの手厚い対応内容を聞いた僕はすぐに察した。戦争遊戯(ウォーゲーム)で大活躍した僕は現在注目の的だ。もしも、あの件が知れ渡ればギルドの評判に傷が付いてしまうのを恐れたのだと。だからそれを隠す為に、色々な根回しをする事にしたんだろう。どこの世界の組織も、都合の悪い事は全て闇に葬るのがお決まりのようだ。

 

 因みに神様もギルド上層部の態度に物凄く呆れてたみたいだけど、願ってもない事だったので受け入れる事にした。エイナさんや神様と同様に、上層部の変わり身な対応に呆れた視線を送り続けていたらしい。

 

「とまあ、こう言う訳だよ。これで分かったかい、ベル君?」

 

「ええ、納得しました。僕達がメレンに滞在するまでの間、宿泊施設の費用は全てギルドが出すと言ってましたが、それ以外はどうなんですか? 例えば観光費用とかは」

 

「それは僕達で支払えだってさ。向こうはあくまで衣食住の提供のみで、娯楽用品の購入までは認められないらしい。全く、ギルドは妙なところでケチ臭いったらありゃしないよ」

 

「あはは……」

 

 確かにギルドとしては、いくら後ろめたいからと言って、そこまでの面倒は見切れないだろう。多分だけど、ギルド上層部は神様がメレンで色々な物を買いまくるのを予想して、宿泊施設の費用のみにしたんだと思う。

 

「ま、この施設が無料で使えるんなら、思う存分利用させてもらうよ。ここは前の本拠地(ホーム)と違って、かなり寝心地が良くて食事も最高だからね♪」

 

 神様も神様で、この施設を最大限に寛ぐようだ。前向きと言うか何というか、色々な意味で逞しいお方だね。

 

「とは言ったけど、折角メレンに来たんだ。観光も楽しまないとね。よ~しベル君、朝食を終えたら早速出掛けようじゃないか」

 

「そうですね。あ、その前に此処にあるギルドに寄っても良いですか? この前のダンジョン中層で得た大量の魔石やドロップアイテムを換金したいんで。それを観光費で使おうと思ってますけど、どうでしょうか? ついでに、進出したダンジョンの報告と昨日の【ステイタス】更新でランクアップした件も含めて」

 

「おっと、そうだったね。じゃあベル君。観光の前に、ギルドで換金と報告しに行くぜ!」

 

「はい、神様!」

 

 僕と神様はオラリオに戻るまでの間、観光をしようとメレンで一通り楽しむ事にした。

 

 

 

 

 

 

 数時間後、オラリオにあるギルド本部では騒然としていた。メレンにあるギルド支部からの報告によって。

 

 ギルドの案内掲示板にある張り紙には、とある人物の似顔絵と一緒に説明文が書かれている。

 

 

『ヘスティア・ファミリア――ベル・クラネル。戦争遊戯(ウォーゲーム)前にダンジョン十八階層で階層主ゴライアスを単独撃破。そして戦争遊戯(ウォーゲーム)後に「Lv.2」へランクアップ。所要期間は一ヵ月。尚、ゴライアスの単独撃破についてはロキ・ファミリア団長――フィン・ディムナと一行が目撃したと証言。疑うのであれば、ロキ・ファミリアの本拠地(ホーム)へ問い合わせを願う』

 

 

「ですから、掲示板に書かれている内容は事実ですので!」

 

「ダンジョン中層進出やゴライアス撃破については、ロキ・ファミリアにご確認ください!」

 

 注目の的となっているベル・クラネルがとんでもない偉業を成し遂げていた事に、多くの神々や冒険者達がギルド職員達に問い詰めていた。この情報は確かなのかと。

 

 ベルが強い事は戦争遊戯(ウォーゲーム)で知ったが、『Lv.1』のまま単身でダンジョン中層進出やゴライアス撃破をしていたなど寝耳に水だった。尤も、それはギルド本部にいる職員達も同様である。

 

 メレンのギルド支部から通信を聞いた職員も、思わず耳を疑ったほどだ。何故そんな情報が今になって入って来たのかと混乱する程に。

 

 現在メレンで身を隠しているベル・クラネル本人からの報告だと言っている。更にはロキ・ファミリアのフィン・ディムナと複数の幹部が目撃していると。いきなり都市最高派閥と【勇者(ブレイバー)】の名が出た事に、その職員は仰天していた。

 

 一応確認しようと、一人のギルド職員――エイナ・チュールがロキ・ファミリアの本拠地(ホーム)へ訪れた。ベル・クラネルの報告に間違いがないかと。

 

 対応したフィンは即座にハッキリと答えた。その報告に一切の偽りはなく、自分や幹部数名が間違いなく目撃したと。それを聞いた直後、エイナは気絶してしまいそうになるも、すぐに踏みとどまる事に成功する。そして彼女は誓った。ベルが戻って来たら、じっ~~~くりとOHANASHIをする固い決意をして。

 

 

 

 

 

 

 場所はオラリオから遠く離れた場所。そこには仮面を付けた幼い女神が愉快な笑みを浮かべている。

 

「ほんの気まぐれで『鏡』を見たが、中々に面白いものを見せてくれた」

 

 女神の名はカーリー。【カーリー・ファミリア】の主神でありテルスキュラの長。

 

 偶々外の世界から入手した情報の中に、オラリオで久々に戦争遊戯(ウォーゲーム)を開催すると知った。

 

 レベルの低いファミリア同士の闘争に興味が無いカーリーだったが、特にやる事がなくて暇だった為、手慰みとして見物する事にした。弱者共の闘争だと思いながら。

 

 そんな時、彼女は目を見開いた。戦争遊戯(ウォーゲーム)が開始して早々、『Lv.1』である筈の最弱な雄が、カーリーですら知らぬ未知の魔法を行使し、たった一人で多くの強者たちを圧倒したのを見て。

 

「あれが『Lv.1』だと? はっ! オラリオにおる連中の目が腐っておるのではないか? あの雄は明らかに『Lv.5』に匹敵しておる。雄でありながら、あれ程の実力……実に興味深い!」

 

 カーリーは雄――ベル・クラネルに物凄い興味を抱き始めて笑みを浮かべる。あれ程の雄なら、さぞかし優秀な兵士(アマゾネス)を量産する事が出来るかもしれないと。

 

「よし、久しぶりに観光として外の世界へ赴くとしよう。そして運良くあの雄を見付けたら――すぐに捕獲だ!」




今までお付き合い頂き、ありがとうございました。

これ以上書くと、他の作品が滞ってしまうので本当に終了です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。