ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
出来れば未練がましい奴だと罵らないで下さい。
僕と神様は少し名残惜しくもメレンを後にして、迷宮都市オラリオへと戻っていた。一週間経ったとは言え、僕に関する事で完全に冷めてないのは予想していた。なので変装用の服と外套を纏ってオラリオへ入ると、周囲からは誰も気付かれる事なく仮の
僕達の帰還にミアハ様とナァーザさんは笑顔で迎えて、少し遅めの
またしてもオラリオの外に出なければいけなくなった為にギルド本部へ行くと、そこには怒気のオーラ全開で恐い笑みを浮かべているエイナさんと遭遇した。その直後に僕は応接室へ強制的に連行され、特大級の雷が落とされたと同時に長いお説教をされたのは言うまでもない。あと、物凄く心配もしていたと。
エイナさんからの長いお説教から解放され、漸く手続きを終えて再びオラリオを出た。今回は【ヘスティア・ファミリア】と【ミアハ・ファミリア】の総出だ。因みに
ブラッドザウルスは本来ダンジョン30階層に出現する凶暴なモンスターだけど、ナァーザさん曰く『地上のモンスターは迷宮のモンスターと比べて弱い』らしい。地上に住まうブラッドザウルスは、ダンジョン上層にいる『オーク』より少し強い程度だと。
実際に戦ってみると、本当に大して強くなかった。ナァーザさん達が卵を採取する為に、僕が囮となって何匹か引き付け、ある程度の数になった際に
そんなこんなで卵を調達し終えた僕達は、すぐにオラリオへ戻る事になった。その後には僕と神様は、ミアハ様とナァーザさんの新薬開発――『
因みに僕達が採取したモンスターの『卵』の他に、『ブルー・パピリオの翅』の材料が必要みたいだった。けれど、後者の材料は他の【ファミリア】に依頼していたらしい。【タケミカヅチ・ファミリア】と言う零細ファミリアらしい。そこの主神とは神様やミアハ様とも親交もあると言っていた。
それらの材料が揃ったので、体力と
相応の利益を上げられる新薬に、灰色のかかった髪と髭を蓄える初老の男神――ディアンケヒト様は悔しい顔をしながらも買い取る事となった。この男神様はミアハ様と折り合いが悪いみたいだけど、利益が上がる物を提供すれば文句は言わないようだ。去る時には悔し紛れの悪態を吐いていたけど。
用件が済んだ僕達が大豪邸から出ようとした矢先――
「お待ちを。もしや貴方はベル・クラネルではありませんか?」
「え? あ、はい」
【ディアンケヒト・ファミリア】の女性団員――アミッドさんが突然僕に声を掛けてきた。
僕が思わず返事をした途端、目の色が変わったように僕に近付いてくる。
「先日の
「ど、どうも……。それで、僕に何か御用ですか?」
何だろうか。この人は丁寧な口調で僕を称賛しているけど、妙な迫力があるような気がするんだけど。
「貴方が
「ちょっと待ったぁぁあああ! ベル君を引き抜くなんて僕が認めないぞぉぉぉぉおおお!」
「……アミッド、私の顧客を奪おうとするなんて、いい度胸している……!」
物凄く饒舌となっているアミッドさんに、神様とナァーザさんが待ったをかけようとする。神様はともかく、ナァーザさんが物凄く睨んでいる。聞いた話によると、ナァーザさんとアミッドさんは凄く仲が悪いみたいだ。
予想外な騒動が起きるも、取り敢えず【ミアハ・ファミリア】の
翌日。ミアハ様とナァーザさんに住まわせてもらった礼を言った後、僕と神様は『青の薬舗』を後にした。目的の場所へと向かう為に。
着いた場所には、広い庭の中に巨大な屋敷が建っていた。と言うか、物凄く見覚えのあるところだ。
「じゃーん! どーだベル君? メレンにいた時に教えたけど、これが今日からボク達の
「おお~~っ」
神様が示す屋敷を見て僕は感嘆する。以前住んでいた古びた教会とは全然違う。正に住居の
見上げる程の三階建ての大きな邸宅で、神様が言うには中庭と回廊までも備わっているようだ。しかも敷地は背の高い鉄柵に囲まれていて、花や庭木が植えられた広い前庭も備わっている。
「まさか、本当に【アポロン・ファミリア】の
「流石にこんな広い豪華な屋敷を、空き地にするのは勿体ないからね」
「それでも、僕と神様が住むには広すぎませんか?」
「まぁ今はそうだけど、いずれ新しい団員を募集するから、広いに越した事はないぜ」
確かに神様の言う通りだ。新しい団員を迎えるには、部屋を用意しないといけない。こんな豪華な屋敷なら快適に過ごせる筈だ。
因みに今は団員を募集する気はない。
僕としても、僕の力が目当てで入団されたら色々と困る。信頼関係を築く事が出来る仲間が欲しいので。
「その為には先ず、趣味の悪い彫像やらの撤去も含めて屋敷全体は改築だ! アポロンからの
「あ、彫像でしたらある程度は残しておいてくれませんか? 鍛錬用の的として使いたいので」
「…………ベル君、君って意外と容赦無いね」
「え? 的を斬ったり撃ったり、魔法の試し撃ちで使うのには絶好の道具だと思うんですが」
「……はぁっ。もしここにアポロンがいたら、果てしない慟哭をするのが目に浮かぶよ。ほんの僅かながらも同情するね」
アポロン様に対して気の毒そうに言っている神様だけど、すぐに頭を切り替えようとする。
「さて、新しい
「あれ? あそこって確か、鍛冶系のファミリアでは?」
ヘファイストス・ファミリアに知名度こそ劣るけど、質実剛健の武具を制作するファミリアだと僕は聞いた。だから僕はどうしてそこへ行くのかと疑問を抱く。
「ああ、ベル君は知らなかったか。ゴブニュは鍛冶と建築を司る神でね。あの派閥は依頼があれば建設作業も受け持ってくれるんだよ」
「へぇ~、そうなんですか」
僕はオラリオに来て日が浅いから、未だに他のファミリアについて知識不足だ。今度エイナさんに頼んで、公開されている各有名ファミリアの情報を学んでおかないと。
ダンジョン探索の他に、オラリオの知識を広める必要性を感じながら、一旦屋敷から出ると――
「アルゴノゥトくぅぅぅうううううんっっっ!」
「ん? この呼び方はどわっ!!」
「んなぁっ!? き、君は……!」
突然、何かが物凄いスピードで僕にぶつかった。その衝撃によって倒れてしまう。
神様が驚いた声を出してたので、僕は気になってぶつかった何かを確認すると……何とティオナさんだった。しかも涙目で。どうやらぶつかったと言うより、突進と同時に抱き着かれてしまったようだ。
「てぃ、ティオナさん!? どうして貴女が此処に!?」
「それはこっちの台詞だよぉ! アルゴノゥト君ってばオラリオに戻ってこないから、あたしすっごく心配したんだよ! 今までどこにいたの!? お祝いするって約束したのに!?」
「す、すみません! ちょっと色々と
そう言えば、仮の
「こらアマゾネス君! いきなり会って早々ベル君に抱き着くとは何事だぁ! 離れろぉぉぉ!!」
ティオナさんが僕に抱き着いてるのを見た神様が、引っぺがそうとするも無理だった。彼女が凄い力で僕に抱き着いているので。
「てぃ、ティオナさん、取り敢えず離れてくれませんか?」
「ヤダ! あたしを心配させたんだから、暫くこうする!」
「そ、そんなぁ~!」
何とかティオナさんから逃れようとするも、向こうが全然離れてくれない。それどころか更に力を込めている。もうついでに段々苦しくなってきた。
「ちょっとティオナ! いきなり走り出したかと思えば、こんな所で何を……って」
「ああ~~~! べ、ベル・クラネル! どうして貴方が此処に!?」
「へ? ティオネさんに、レフィーヤさん!?」
ティオナさんを追いかけてきたと思われる、ティオネさんとレフィーヤさんとも遭遇した。
そして――
「…やっと、見付けた」
「ヴァ、ヴァ、ヴァレンシュタインさんも!?」
何とアイズさんも一緒だった。しかも何故か僕を探していたような感じで凝視している。
「うがぁぁぁぁ~~!!! 何だって今日はロキの
これでもかと思う程に絶叫する神様だったが、今の僕には気にする余裕がなかった。
実はこの話、数時間で出来上がりました。他の作品は苦戦中だと言うのに、何でこうも早く出来るんだろうか……。