ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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オリオンの矢⑤

(はぁっ。何も起こらないのは良い事なんだけど、もう見飽きてきたなぁ……)

 

 飛竜に乗って遠出すると言う初体験に最初は戸惑ったが、あっと言う間に慣れた。と言うより、飛竜が僕に合わせてくれるように飛んでくれているから、慣れるのにそんな時間が掛からなかったと言う方が正しい。

 

 初めてアークスシップに乗った時の事を思い出してしまう。こんな大きな箱で本当に遠い星へ行けるのかと疑問を抱きながら乗船し、転送(ワープ)機能で何万キロ以上もある惑星ナベリウスへあっと言う間に辿り着いた時は本当に驚いた。傍にいたキョクヤ義兄さんから物凄く呆れられたけど。

 

 機械による乗り物は問題無いけど生き物、益してや竜に乗るなんて思いもしなかった。惑星アムドゥスキアにいる龍族とは探索時に何度も戦っていたけど、こんな風に乗った事は一度もない。飛竜と言えば龍族の巨大エネミー――磁晶龍(クォーツ・ドラゴン)と最初戦った時には物凄く苦戦した。両翼をジェット噴射するような素早い突進攻撃をしたり、口や翼からレーザーを放ってきたりと、攻撃どころじゃなくて避けるのに必死で初戦は散々な結果となって苦い思い出となっている。

 

 流石にこの世界でクォーツ・ドラゴンなんていないだろうけど、万が一にもいた場合は問題無く対処出来る。飛竜タイプは基本的に移動手段である翼を先に潰してしまえば、速度がガクンと落ちて倒しやすくなるのを身を以て経験しているので。

 

 それはそうと、オラリオを出てもう既に一週間も経っている。ヘルメス様が言った目的地――エルソスの遺跡はオラリオから遥かに離れた大陸の果てで、大樹海の秘境にあるらしい。今はもう半分以上進んでいるから、あと数日で到着予定となっている。

 

 因みに移動中の際、ちょっとした騒動が起きていた。特に夜の就寝時に。

 

 テントを建てた後にアルテミス様が僕と一緒に寝ようと誘おうとしたところを、神様が速攻で止めた。『アルテミスはボクと一緒に寝るんだ!』と言って。問題はその後で、今度はティオナさんが僕と寝ようと言い出した。神様が当然反応して当然却下しようとするも、テントは人数分しかないので仕方ないと諦めざるを得なかった。だから僕はティオナさんの他、アイズさんと一緒のテントで就寝する事となった。

 

 普通に考えれば男の僕はヘルメス様のテントで寝れば良いんだけど、他所の主神――神様曰くヘルメス様は怪しいから――と言う理由で無理だった。だから派閥は違えど、下界のヒューマン(僕とアイズさん)アマゾネス(ティオナさん)はギリギリセーフと言う事となった。

 

 まさか今回の冒険者依頼(クエスト)で女の子二人と一緒に寝るとは思いもしなかった。相手は僕の片思い中のアイズさんに、僕が好かれているティオナさん。どちらも凄く綺麗で可愛い女の子だから、最初は全然眠れなかった。二人揃って、それぞれ僕の腕に引っ付きながら寝ていたので。と言っても、何日か経てばもうすっかり慣れて普通に寝れているが。もしフィンさん達に知られたら絶対に不味いだろう。特にレフィーヤさんの場合、問答無用で強力な魔法を撃ってきそうな気がする。

 

「いや~、いい風だなぁ。いつまででも翔んでいられるねぇ~」

 

 後々恐ろしい目に遭いそうな事を考えている中、僕と同じく飛竜に乗って手綱を引いているヘルメス様の呑気そうな声が聞こえた。因みに相乗りしている神様は飛竜に慣れたのか、器用な体勢になって気持ち良さそうに寝ている。

 

「アタシもう見飽きたよ~。一週間もずっとこんなんだし。アルゴノゥト君もそう思わない~?」

 

「……ハハハ」

 

 僕と同じ気持ちになってるティオナさんはそう言って、アイズさんも口に出さずともかなり退屈そうな感じがした。

 

 流石の第一級冒険者二人も、ここまで何事も無いまま進んでる事に段々飽き始めたようだ。ダンジョンの遠征では問題無く進んでもモンスターと戦うが、今回はそれすらないので二人からすれば退屈極まりないだろう。

 

「あ~あ、また森だよ」

 

 再び大森林の光景となって嫌そうに呟くティオナさん。最初は興奮しながら見ていたけど、一週間も続けばそうなるのは無理もない。

 

 すると、僕の懐にしまっている小型携帯端末からアラームが鳴り出した。幸い僕にしか聞き取れない小さな音なので、相乗りしているアルテミス様には聞こえない。

 

 アラームには色々な音の種類はあるが、この音はエネミー出現の警鐘だった。僕達が乗っている飛竜の周囲にはエネミーらしき物が見当たらない。そうなると――

 

「下へ!」

 

「はっ、はい!」

 

 森にいるかと下へ視線を移す寸前、アルテミス様が突然降下するよう言ってきた。

 

 言われた通り僕は竜に地面ギリギリの低空飛行をするように指示をしている中、アルテミス様はいつの間にか弓を取り出して番える矢で何かを射抜こうとしている。

 

「あれは……!」

 

 矢の先にいる方へ視線を向けると、必死に逃げている母娘の後から無数のモンスターらしきモノが追いかけていた。

 

 母娘を追いかけているモンスターは大量の黒い(さそり)だった。僕が知る限り、ダンジョンであんなモンスターは見た事が無い。

 

 そんな中、アルテミス様が弓を引き絞って放たれた矢は木々の間を通り抜けるように、母娘を追っていた先頭にいる蠍型モンスターを見事に射抜いた。

 

 お見事だった。今の僕ではあそこまで正確に射抜けない。強弓(バレットボウ)を使うブレイバークラスにならなければいけない他、誘導性能が追加されたリング――バレットボウホーミングを使わなければ出来ない芸当なので。

 

「まだだ! そのまま回り込んで!」

 

「はい!」

 

 内心で称賛しているのとは他所に、アルテミス様が回り込むよう指示してきたので、僕は言われるまま飛竜を操作する。

 

 飛竜も僕の指示に従うように旋回すると、森の切れ目から母娘とモンスターの群れが出てきた。

 

 一先ずはあのモンスターの方をどうにかする必要があったので、僕は即座に長杖(ロッド)――カラベルフォイサラーを展開する。

 

「ラ・フォイエ!」

 

 フォトンを収束させて起爆し任意の場所に爆発を発生させる中級の炎属性テクニック――ラ・フォイエを放った。一匹に命中した後、近くにいた他の蠍型モンスターにも誘爆して連鎖爆発が起きる。本当は詠唱したかったけど、非常時なので敢えて割愛した。

 

 

 

 

 ベルとアルテミスに乗っている竜が降下した事に気付いていないヘスティア達が移動していると、突如連続の爆発音が響いた。

 

「なんだ!?」

 

「一体何の音だい?」

 

 何処かからした爆発音にヘルメスが困惑し、さっきまで寝ていたヘスティアも急に目覚めて困惑していた。

 

「大変だよ、ヘスティア様!」

 

「えっ!?」

 

 突如、ティオナの叫びにヘスティアが振り向くと、後方から火の柱らしきものが立っていた事に気付く。

 

「アルゴノゥト君がいない!」

 

「ベル君!」

 

 異変に気付いたヘスティア達は、すぐにベルとアルテミスの元へと向かおうとする。爆発したと思われる場所へ。

 

 

 

「くっ! 数が多過ぎる……!」

 

 再びラ・フォイエを使って一掃するが、モンスターの群れが余りにも多過ぎた。

 

 アレはまるで蟲型ダーカー種――ダガンみたいだ。しかも数で相手を追い詰めるタイプだから、今の蠍型モンスターが正にソレと同じだった。

 

 そんな中、母親に手を掴まれて走っていた少女が躓いて転んでしまった。それにより母親も足を止めて、少女を守るように力強く抱きしめている。

 

「アルテミス様、代わりにお願いします!」

 

「ま、待てオリオン……って、消えた!?」

 

 アルテミス様に手綱を渡した直後、僕はファントムスキルを使って姿を消した。

 

 足を止めている母娘に蠍型モンスターが接近して尖った尾で振るおうとする寸前、姿を現わした僕は抜剣(カタナ)――呪斬ガエンであっと言う間に斬り裂いた。

 

 同胞がやられた事に一瞬動きを止めるモンスター達を見て、僕はその隙を突くように再びファントムスキルで姿を消し、狙いを定めた二匹目の眼前に姿を現わして再度斬り裂く。

 

 消えては現れて斬撃の行為を何度も繰り返すも、一匹ずつ仕留めるには時間が掛かり過ぎた。なので今度はスライディングしながら剣閃を残しつつ敵をすり抜ける裏のフォトンアーツ――シュメッターリングで片付け始める。攻撃をされた事に気付いてないモンスター達は、あっと言う間にバラバラとなっていく。

 

 さっきと違って、今度は複数のモンスターを仕留めたから、裏のシュメッターリングを主に使いながら一掃する事にした。

 

 向こうも漸く攻撃をされてると認識したのか、僕の方へ集まり始めて狙おうとする。寧ろ、そうしてくれた方が好都合だ。足を止めている母娘から意識を逸らす目的だったので。

 

 今度は抜剣(カタナ)から別の武器に変更して一掃しようと――

 

「ふっ! やああ!」

 

「って、何でアルテミス様も戦ってるの!?」

 

 思っていた矢先、いつの間にか飛竜から下りて蠍型モンスターと戦っているアルテミス様を見て突っ込みを入れた。

 

 長銃(アサルトライフル)のフォトンアーツか長杖(ロッド)でのテクニック、もしくはフォトンブラストのヘリクス・ブロイで一掃しようと考えていたが、アルテミス様が急に参戦した事で却下となった。もし使えば巻き添えになってしまう可能性があるので。

 

 アルテミス様も戦っているから、今は抜剣(カタナ)で応戦するしかなさそうだ。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】!」

 

 すると、上空から詠唱らしき声と急な風が吹き荒れた。

 

 思わず見上げると、風魔法を展開しスキアブレードを持ったアイズさんが此方へ来る。

 

「はあぁっ!」

 

 攻防一体となってる風の鎧に加え、アイズさんが振るう斬撃によって多くの蠍型モンスターが一掃されていく。

 

 凄い。深層で見せた時と違って、彼女の身体から発している風がいつも以上に吹き荒れている。恐らくスキアブレードに搭載されている法撃力で、アイズさんの風魔法が強化されているんだろう。威力、スピード、何もかもが上がってる事にアイズさん自身も驚いているに違いない。

 

 僕だけでなく、母娘やアルテミス様ですらアイズさんの戦いに見入っていた。それだけ凄いと言う証拠だ。

 

「ベル、大丈夫?」

 

「見ての通りです。一先ずアレを全て片付けましょう」

 

「分かった。ベルはあの人達とアルテミス様を」

 

 そう言ってアイズさんは未だに森から湧いて出てくる蠍型モンスターを殲滅する為に突進していく。その瞬間、大量のモンスター達が細切れになって、大量の灰と魔石が出来ていく。

 

 やっぱりスキアブレードを貸したのは正解のようだ。打撃力だけでなく法撃力も備えた武器なら、アイズさんの攻撃力は上がると踏んでいたが、正にその通りだった。恐らくだけどティオナさんも、セイカイザーブレードを振るえば相当の威力を振るえるだろう。

 

 アイズさんが来てくれたから、ここからはもう焦る必要はない。抜剣(カタナ)のままで充分だ。アルテミス様と母娘を守りながら、残りのモンスターも倒すとしよう。

 

 そう思った僕は、少し残っているモンスターの殲滅に取り掛かろうとする。

 

 

 

 

「うひゃ~、あれだけのモンスターを瞬殺って……流石は【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインだね~」

 

「いいな~アイズ、アタシも一緒に戦いたかったのに~……!」

 

「……ふ、ふん! ヴァレン何某が凄いのは、ベル君が貸した武器のお陰だよ!」

 

「なぁヘスティア、良かったらベル君が貸した武器について教えてくれないか? アイズちゃんが使ってるあの剣、明らかにヘファイストスやゴブニュが作った物より凄いんだけど」

 

「教えないよ!」




劇場版と違って、ベルがファントムで強い上にアイズも加わったので、槍を使う展開は完全に無くなりました。

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