ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
目の前の敵を全力で倒そうと決めた僕は一旦距離を取ろうと、刃によるぶつかり合いのままファントムスキルで姿を消す。
「ちっ、またか……」
僕が姿を消した事に、
「さっきから消えたり現れやがって……!」
「……混沌の闇に絶望せし者よ 闇の
「ッ!」
悪態を無視して僕が詠唱をしながら
オラリオに来て初めて撃つイル・メギドに向こうは驚いた様子を見せるも、慌てていないどころか――簡単に躱されてしまった。突進してくるイル・メギドを、素早く横へ一歩移動しただけで。アレはそれなりの速度が出てる筈だけど、相手はそれ以上の敏捷があるようだ。
「初めて見る魔法だな。だが、そんな遅い
「後ろから魔法が来てるぞ!」
「なっ!?」
さっきまで余裕そうに言っていたけど、現在アイズさんと交戦している小柄の黒い影の一人が叫んだ。それを聞いた
「この魔法、追尾性能があるのか……!?」
イル・メギドも再び狙おうと旋回し、対象に向かって突進していく。躱しては追尾の繰り返し状態だった。
僕が放ったイル・メギドは対象に当てようと追尾する性能がある。尤も、効果時間があるから、何度も躱され続ければイル・メギドは徐々に消えていく。
なのでその隙に僕は再び姿を消し、違う場所から現れて、もう一度イル・メギドを放とうとする。
「舐めんじゃねぇ、クソ兎がぁ!」
一度目のイル・メギドは効果が切れて消えたの違い、二発目に放ったイル・メギドは
凄いな。僕が放ったテクニックを、何の障害とも思わないように振り払うなんて。
「ふざけた真似をしやがって!」
「おっと」
僕が放ったイル・メギドがお気に召さなかったのか、
当然、向こうの攻撃を躱そうと姿を消したのは言うまでもない。
「ちっ、今度はどこだ!?」
僕みたいな相手と戦うのは初めてなのか、
「そこかぁ!」
また違う位置から出現すると、向こうは即座に僕を捉えて動こうとする。
テクニックを撃たせまいと接近してくるのは既に予測済みだ。なので僕は既にカラベルフォイサラーから
呪斬ガエンもカラベルフォイサラーと同様、今の僕に分不相応な武器だけど、今は敵を全力を持って倒すので非常時として使っている。因みにこの呪斬ガエンには面白い能力が付いているけど、それは今回省かせてもらう。
既に構えていた僕は真上に跳び上がり、その場に持続する斬撃を設置するシフトフォトンアーツ――ローゼシュヴェルトを発動させる。
「! くっ……!」
目の前に空間が切れるように出現した斬撃の跡を見た
脚を止めた彼の判断は正しい。もしそのまま突き進んでいれば、槍や身体が真っ二つになっているところだ。
因みにローゼシュヴェルトはヒュアキントスさんに使った時は刺突技だけど、
動きを止めたのを確認後、僕は更なるフォトンアーツ――ヴォルケンクラッツァーを放つ為にもう一度構える。そして斬撃の跡を跳び越え、そのまま敵目掛けて斜め下へフォトンの斬撃を飛ばす。
アイズさんに使った物とは違い、シフト用のヴォルケンクラッツァーは斬撃を飛ばす裏の技。射程距離もそれなりにある。ファントム用の
「次から次へと――なっ!?」
僕が飛ばしたフォトンの斬撃を物ともせずに躱すも、僕が一瞬で接近して来る事に再び驚愕する
敵と僕の間合いは少し離れているのに一瞬で接近出来たのには勿論理由がある。
ファントム用の
「はぁっ!」
「この、さっきから……!」
懐に入った僕は鞘に納めてた
さっきと似ているが、今度は
「いつまでも、調子に乗ってんじゃねぇ!」
「ぐっ!」
すると、
何とか
しかし、僕は慌てる事無く、槍の穂先に当たる寸前にファントムスキルの回避を使って再び姿を消す。
「くそがっ!」
絶好のタイミングだと思ったのか、
「チッ! やり辛ぇったらありゃしねぇ……! あの
「出来れば
「また後ろ……がっ!」
『!』
相手が後ろを振り向いて攻撃する瞬間、凄い勢いで吹っ飛ばされて建物の壁に激突する。その事に、少し離れた場所で交戦しているアイズさんと黒い影四人が一斉にこちらへ視線を向ける。
吹っ飛ばされた理由は、僕が
もう言うまでもないけど、セレイヴァトス・ザラも普段使わないので非常時の武器だ。コレも当然、スカルソーサラーより威力は断然上である。頼もしい潜在能力だけでなく、他の武器とは違う特殊能力も備わっている。それについては、いずれ紹介するので今回は省かせてもらう。
「ぐっ……クソが! この俺が、あんなガキの攻撃如きで……!」
攻撃が当たってしまった事が予想外だったのか、
僕はその隙に相手の距離を確認し、
そして――
「闇の混沌にて 重苦に藻掻き蠢く
「! がああぁぁぁぁぁぁああ~~~!!!!」
フォトンを極限まで励起させ任意の場所に雷の嵐を発生させるカスタムテクニック――零式ゾンデを放った。
ゾンデは本来、フォトンを励起させて放電現象を作り任意の場所に一つの落雷を落とす初級の雷属性テクニック。しかし、テクニックをカスタマイズした事により、性能が大きく異なる零式カスタムとなった。その為に、さっき撃ったゾンデは初級とは比べ物にならない威力になっている。
僕がテクニックを発動させたのを見た
「お、おのれ、またしても……ぐっ!」
零式ゾンデを受けたにも拘わらず、相手は未だに立てるようだ。けれど、立てるからと言ってすぐには動けないようだ。その証拠に、彼の体中からバチバチと電気が纏っている。
アレはショック状態と言う、身体に纏わり付いている電気によって行動妨害が起きる状態異常だ。動いている最中、数秒に一回には必ず動きが止まってしまう。スピードを重視した攻撃をする
状況を見て不味いと思ったのか、アイズさんと交戦している小さな黒い影がこちらへと駆け付けてきた。
「無様だな、アレン」
「油断しているから、そんな目に遭うんだ」
「折角あの方に任せられたと言うのに」
「とんだ失態だな」
とても仲間とは思えない発言だ。四人からの暴言に、
「そういうてめぇ等の方こそ、あの【剣姫】にちゃんと警告したんだろうな?」
「勿論だ」
「お前とは違う」
彼からの問いに、四人の内の二人がキッパリと答える。
【
僕が疑問を抱いていると、
「本当なら此処で
仲間と話し終えた彼は、再び僕を見るもショック状態によって苦しそうに口元を歪めていた。
「ここまでだ、退くぞ」
そう言って彼だけじゃなく、他の四人も指示に従ってすぐに散った。
本当なら何故こんな事をしたのか問い詰めたいところだけど、格上揃いの強襲者相手に深追いはしない。チラッとしか見てないけど、あの小さな四人は息の合った連携攻撃によってアイズさんを相手に互角の戦いを繰り広げていた。なので彼等も明らかに、僕より格上の存在だ。
「ベル……」
すると、いつのまにか僕の近くへ来たアイズさんが僕に声を掛けてきた。
「ア、アイズさん、お怪我はありませんか?」
「私は平気。それより君の方こそ怪我はない?」
自分の事より僕の事を心配してくれるアイズさん。
「はい、僕も平気です。あの人達、何だったんでしょう。僕達をいきなり襲ってきて……」
全く心当たりのない僕がアイズさんに尋ねると、彼女はこういった。
「闇討ちは、よくあるよ」
「あるんですか!?」
オラリオが意外と物騒な所だったことに、僕は思わず驚きの声をあげる。
「ダンジョンの外で仕掛けるのは珍しいけど……」
「そ、そうなんですか……。一応確認ですが、アイズさんは闇討ちをしてくる相手に心当たりがあるんですか? さっきの人達は、アイズさんに警告とか何とか言ってましたが」
「……ありすぎて、逆に」
僕の確認にアイズさんは何か知っていそうな感じはするも、曖昧な返答をしてきた。
すると、彼女が急に不機嫌そうな表情となっていく。
「それと全く別な話だけど……ベル、さっきは全力で戦っていた。それに見慣れない武器も使って……」
「それはまぁ、僕より格上の襲撃者でしたし、そうせざるを得ない状況だったので」
「……さっきの襲撃者には全力を出して、どうして私には出さないの?」
「へ?」
な、何だ? アイズさんから段々と怒気が増しているような気が……。
「何だか不公平。だからベル、明日の手合わせの時には全力を出して」
「え、あ、いや、その……それとこれとは話は別で」
襲撃者の話から一変して、アイズさんが僕に全力を出すように強く求められる事となってしまった。
何と言うか、さっきまでのシリアスな空気が急に無くなってしまったんだけど。
今回のアレンとの戦闘と言うより、PSO2についての説明文でした。
中二病の詠唱ですが――
「混沌の闇に絶望せし者よ 闇の
「闇の混沌にて 重苦に藻掻き蠢く
となりました。
特に二つ目の詠唱に関しては、見覚えがある詠唱かと。