ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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久しぶりの更新ですが、今回は短いです。

内容が内容なので、フライング投稿にします。


ロキ・ファミリアの遠征 幕間②

 【ロキ・ファミリア】団長のフィンさんと主神ロキ様に遠征参加の表明後、一通りの話を終えた僕と神様は【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)を後にした。ティオナさん達と鉢合わせないよう、裏門からコッソリと脱出して。フィンさんがこの後、ティオナさん達に僕が遠征に参加する事を説明するようだ。

 

 次に会うのは明後日の朝方で、場所は中央広場(セントラルパーク)。そこでフィンさんが【ロキ・ファミリア】の団員達に僕を紹介する予定になっている。その時に僕も挨拶の一言をするよう言われてるから、当日までに考え中である。

 

「ほう、【ロキ・ファミリア】の遠征に参加とは。ベルも随分と思い切った決断をしたのだな。大変だと思うが、頑張るのだぞ」

 

「……ベル、私も応援してる。だから遠征中に薬草を採って来て欲しい」

 

 既に僕と神様は仮の本拠地(ホーム)――『青の薬舗』へと戻っており、ミアハ様とナァーザさんに先程までの事を話していた。

 

 ミアハ様は優しい笑みを浮かべながら応援し、ナァーザさんも同様だけどアイテム採取を頼まれた。聞いた話によると、ダンジョンに『大樹の迷宮』というのがあって、ポーション等の原料となる薬草があるそうだ。

 

「君は相変わらずちゃっかりしてるねぇ、ナァーザくん」

 

 ナァーザさんの台詞に神様は呆れながら言ってると、僕はある事を思い出した。

 

「そう言えば神様、新しい本拠地(ホーム)の改装はそろそろ終わると聞いてましたが」

 

「ああ、それなら昨日ゴブニュから連絡があったよ。明後日頃には終わるってさ」

 

「明後日、ですか」

 

 その日は僕が遠征に行く日だ。出来れば遠征前に神様と一緒に見てみたかったけど、こればっかりは仕方ないか。

 

 すると、神様は僕に向かってこう言った。

 

「安心しな、ベルくん。君が遠征中の間、新しい本拠地(ホーム)に行かないよ。ボクとしては君と一緒に見ようと思ってるから、それまではミアハの本拠地(ホーム)にいるよ」

 

「え? でも、それじゃミアハ様達にご迷惑じゃ……」

 

「私は全然構わないぞ。こちらとしては、そなた達がいるお陰で色々と助かっているからな」

 

「……その代わり、宿泊料は頂くから。出来れば採ってくる薬草も多めに頼む」

 

「これこれ、ナァーザ。いくらなんでも欲張り過ぎだ」

 

 どうやらミアハ様とナァーザさんは、神様がもう暫く滞在する事に反対してないようだ。ナァーザさんからの要求にミアハ様が窘めようとするも、彼女はお店の為だと言い返した。

 

 【ミアハ・ファミリア】は『二属性回復薬(デュアル・ポーション)』の作成で今月分の借金を返せたけど、それでもまだ多く残っているのが現状だ。なのでナァーザさんは早く借金を返す為に心を鬼にして………いるのかは分からないけど、お金に関して厳しい人だ。

 

 まぁ、それは別に良い。今もお世話になっているミアハ様達に宿泊料を支払うのは当然だと僕は思っている。遠征中に神様を滞在させる分の宿泊料は出すつもりだ。あと彼女の要望通りに、薬草も採ってくるつもりでいる。と言っても、遠征で後方支援の治療師(ヒーラー)として活動する僕に、薬草を採れる機会があれば良いんだけど。

 

 あ、そうだ。【ロキ・ファミリア】の遠征に参加する事をエイナさんにも言っておかなきゃ。フィンさんから、遠征を行う際はギルド本部に報告する必要があると言っていた。

 

 神様達にギルド本部へ行く事を言った後、僕は再び出掛けようと仮本拠地(ホーム)を出た。

 

 

 

 

 

 

 

「アルゴノゥト君があたし達の遠征に参加!? それホントなの!?」

 

「おいフィン、説明しろ! 何であの兎野郎を連れて行くんだ!?」

 

 場所は変わって、【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)――『黄昏の館』。

 

 ベルとヘスティアがいなくなった後、フィンはすぐに幹部達を部屋に集めて説明していた。因みにロキは、再び団員達の【ステイタス】更新を再開したので、この場にはいない。当の本人は遠征間近で更新は勘弁して欲しいと愚痴っていたが。

 

 予想通りの反応と言うべきか、ベルの遠征参加にティオナが喜ぶようにはしゃいでいる。大好きなベルと一緒に遠征に行ける事を喜んでいるから。

 

 次に反応したのはベート。ティオナと違ってフィンに説明を求めた。ベルの実力を(一応)認めてはいるものの、遠征に参加させる事に納得していないので。

 

「落ち着くんだ、二人とも。ちゃんと説明するから」

 

 こうなる事を前以て分かっていたフィンは慌てる様子を見せず、ベルを遠征に連れて行こうとする理由を説明する。

 

 因みにティオナやベートだけでなく、一緒に聞いていた他の幹部達も充分に驚いていた。ティオネやラウルは勿論の事、そして聞いていたアイズも。

 

(ベルが、私達の遠征に……)

 

 フィンが説明してる最中、アイズは声に出さずともティオナと同じく喜んでいた。ベルの事をもっと知る事が出来て、更に強くなれるかもしれないと。

 

 アイズとしては、ベルが遠征に同行しても問題無いと思っている。この数日の間、何度もベルと手合わせをして実力をある程度理解しているので。尤も、彼女としては未だにベルが全力を見せない事に不満を抱いているが。

 

(あ、そう言えば……)

 

 そんな時、ふと思い出した。手合わせ中にベルの動きが鈍かった時の事を。

 

 いつもだったら自分の攻撃を問題無く回避していたベルが、急に当たってしまったのが何度もあった。更には気絶してしまった事も含めて。

 

 ベルが気絶してる時に膝枕をさせて、彼の頭を撫でながら疑問を抱いていた。何故急に動きが鈍くなったのかと。

 

 思い切って理由を聞いた結果、悩みがあるとベルは教えてくれた。ある【ファミリア】からパーティの誘いがあってどうしようかと悩んでいたらしい。

 

 ベルの悩みを聞いたアイズは参加すべきだと答え、一体どこの【ファミリア】なのかと思っていた。けれど、フィンの話を聞いて漸く合点がいった。ベルが【ロキ・ファミリア(じぶんたち)】の遠征に参加するかしないか悩んでいたのだと。

 

(もしかして……私が後押ししたから参加しようとしたのかな?)

 

 その時のアイズは思った通りの事を言っただけだが、自分達の遠征に関わっていたなんてアイズは微塵も考えなかった。今となっては、我ながら良い返答をして良かったと前の自分を誇らしげに思っている。

 

 ベルの遠征参加は自分の功績かもしれないと、内心ガッツポーズを決めるアイズ。

 

「以上が、ベル・クラネルを参加させようと思った理由だよ。それに君達も、治療師(ヒーラー)がいかに重要であるかを理解している筈だ」

 

(あ……)

 

 そんな中、フィンが幹部にベルを遠征に参加させる理由を話し終えていた。アイズは不味いと思いつつも、何とか誤魔化そうとする。

 

「チッ……」

 

 説明を聞いていたベートは未だに不満気だが、舌打ちをしながら押し黙った。ベルがそれなりの実力者であると同時に、自分では出来ない治療師(ヒーラー)としてやれる事も知っていたので。

 

「ラウル、遠征中はベル・クラネルと行動してもらうよ」

 

「じ、自分がっすか?」

 

「ええ~!? 何でラウルとなのぉ!? あたし達と一緒でもいいじゃん!」

 

 自分が指名されるとは予想しなかったラウルに対して、ティオナが速攻で抗議した。彼女としては、大好きなベルと一緒に戦えると思っていたので。

 

 こうなる事も予想してたように、フィンは宥めようとする。

 

「流石にそれは無理だよ、ティオナ。いくら彼が中層まで行ける実力があるとは言っても、まだ冒険者になったばかりでダンジョン探索の経験が浅い。下層や深層に対する知識のないまま彼を前線に出してしまったら、却って僕達の足手纏いになってしまう」

 

「だったらそこはあたし達がフォローすれば――」

 

「いい加減にしなさい、ティオナ!」

 

 文句を言い続けるティオナに、姉のティオネが痺れを切らしたようにきつい口調で言い放つ。

 

「団長の決めた事に文句言ってると、私がぶっ飛ばすわよ?」

 

「う……そ、それでもさぁ!」

 

 フィン絡みになるとティオネが誰であろうと容赦しない事を知ってるティオナは、彼女から発する怒気に少し押し黙る。

 

 しかし、ベルと一緒に戦いたいティオナも負けじと言い返そうとしていた。このままだと姉妹喧嘩になりそうな雰囲気の中、リヴェリアとガレスが止めようとする。 

 

「そこまでにしろ、お前達」

 

「ティオナ、お主の気持ちは分からんでもないが、これはもう決定事項なんじゃ。それにお主は【ロキ・ファミリア】の幹部として遠征に行くのだから、あの小僧ばかり見てる訳にもいかんじゃろうに」

 

「ぶ~……」

 

 二人からの台詞に、ティオナはさっきまでの勢いが徐々に失われつつあった。

 

 普段から天真爛漫で誰とでも笑顔で接する彼女だが、【ロキ・ファミリア】を代表する幹部。少しおバカな所があるティオナでも、それくらいの自覚はしている。

 

 漸く落ち着いたティオナを見たフィンは、ラウルに指示を出そうとする。

 

「それじゃあラウル、君にはベル・クラネルと行動する際にやってもらいたい事がある」

 

「何をっすか?」

 

「それは――」

 

 色々な指示を出してくるフィンに、これはまた忙しくなりそうだと内心嘆息するラウルであった。

 

 そんな中――

 

(明日はベルと最後の手合わせ……あ、そう言えばレフィーヤの訓練もあった)

 

 アイズは手合わせ最終日に意気込むも、その日には別の訓練もある事を思い出していた。

 

 因みにそのレフィーヤだが、本拠地(ホーム)に戻った後にベルが遠征に参加する事を聞いて思いっきり叫んだのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 一方、そのベルは――

 

「ねぇベル君、もう一回言ってくれないかな? 私、聞き間違えたかもしれないから」

 

「ですから、【ロキ・ファミリア】の遠征に参加しますと」

 

「………ねぇベル君、ちょ~っと向こうの部屋でお話をしようか」

 

「え?」

 

 ギルド本部でエイナに報告していた。

 

 しかし、聞いていたエイナは余りにも非現実的な内容だったのか、少しばかりベルとOHANASHIをしようと強制的に応接室へと連行させた。




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