ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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ロキ・ファミリアの遠征⑲

 休憩(レスト)で食事と回復、そして装備の確認を終えた僕達は59階層へ向かう連絡路の階段を下りていた。

 

「寒いどころか……」

 

「……蒸し暑いですね」

 

 移動中にティオナさんとレフィーヤさんが口にする。レフィーヤさんの言う通り、この場は蒸し暑くて湿った空気な為、近くにいるラウルさんが額から出てくる汗を腕で拭っている。

 

 ならどうしてティオナさんが奇妙な事を言っているのかと疑問を抱くだろう。それはつい先程、この連絡路を降りる前にフィンさんがある事を言っていたから。

 

 【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】が都市最強派閥になる前、嘗て【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】の両派閥がいた。僕はオラリオに来たばかりなので詳しい事は分からないけど、その二つのファミリアは既に解体されて、二柱の主神もオラリオから追放されているらしい。

 

 因みにゼウス様と聞いて、僕は思わず前に住んでいた田舎のお爺ちゃんの名前と同じだと思った。だけど、亡くなったお爺ちゃんは人間なので、恐らく名前が偶然似ていただけだろうと自己完結する。

 

 少し話が逸れてしまったけど、【ゼウス・ファミリア】が残した記録には、59階層から先は『氷河の領域』と記されていた。そこは至る所に氷河湖の水流が流れて進み辛く、極寒の冷気が身体の動きを鈍らせると。更には第一級冒険者の動きを凍てつかせる程の恐ろしい寒気でもある。

 

 そんな記録が記されていた筈なのに、現在僕達が進んでいる59階層の先からは冷気が全くと言っていいほどに伝わっていない。今は物凄く蒸し暑い空間で、寒さなんか微塵も感じない。

 

 だからティオナさんが疑問を抱きながら口にしていたのだ。全く寒くない事に。

 

 59階層へ向かう際は、【ロキ・ファミリア】が用意した防寒装備用の『火精霊の護符(サラマンダー・ウール)』を身に纏う予定だった。だけどフィンさんは冷気が伝わってこない事を考慮して、『火精霊の護符(サラマンダー・ウール)』は無しで進むと決断した。

 

 その結果として、フィンさんの判断は正しかったと僕達は改めて認識した。もしこんな蒸し暑い所で纏ったら、確実に大汗を掻くどころか脱水症状を起こしてしまうから。

 

「フィン、これは……」

 

「ああ、今から僕達が目にするものは」

 

 声を掛けるリヴェリアさんに、フィンさんが頷く。

 

「誰もが、神々でさえも目撃したことのない――『未知』だ」

 

 そして僕達は光の先へ到達する。【ロキ・ファミリア】が目的としていた未到達領域59階層へ。

 

『……………………………』

 

 59階層へ着いて早々、僕を含めた全員が無言となる。

 

 氷河など存在していない。フィンさんが言ってた【ゼウス・ファミリア】の記録とは全く異なっていた。

 

 僕達の瞳に映っているダンジョン59階層は、不気味な植物と草木が群生する密林みたいな所だ。

 

「ぜ、【ゼウス・ファミリア】が記録した内容と全然違うっす……!」

 

 周囲を見渡していると、近くにいるラウルさんが狼狽えながら驚愕の声を出している。彼だけじゃなく、他のサポーターのクルスさん達も同様の反応だった。

 

 僕としては、てっきり以前に強制転送されたダーカーの巣みたいな地獄同然の場所だと勝手に想像していた。だけど、あんな恐ろしい所とは全く違う事に少し拍子抜けであった事は僕の心の内に留めておく。

 

 しかし、だからと言って気を抜いてはいない。58階層へ来る前までは、数多くのモンスター達と交戦し、あの恐ろしい狙撃を味わった。ここはそれ以上の事が待ち受けている筈だと、僕はあの時以上に警戒をしている。

 

 そんな中、正面から音が聞こえた。まるで咀嚼してるような奇怪な音響が。

 

「前進する」

 

 それを聞いた僕達は思わず音がした方へ意識を向けるも、フィンさんが僕達にそう命じた。

 

 周囲を警戒し、聞こえてくる音を頼りにしながら密林を進んで数分後、樹木が途端に途絶えて視界が一気に広くなった。

 

「……なに、あれ」

 

 大剣を携えているティオナさんの唇から、声が零れ落ちた。それもその筈だ。

 

 現在進んでいる灰色の大地の先には、夥しい量の芋虫型と植物型のモンスターがいる。

 

 極めつけは、それらの怪物が囲んでいる中心には巨大植物の下半身を持つ、女体型のモンスター。

 

「『宝玉』の女体型(モンスター)か」

 

「寄生したのは……『死体の王花(タイタン・アルム)』なのか?」

 

 ガレスさんとリヴェリアさんは見覚えがあるのか、それぞれ思った事を口にする。

 

 未だこちらの接近に気付いてないみたいで、芋虫型モンスターは口腔から舌みたいな器官を出して、その先端にある魔石らしき物を差し出していた。植物型モンスターも巨大な顎を開いて、口内にある魔石を露出させている。

 

 それらを見た女体型モンスターは、魔石を貪欲に取り込んでいた。

 

 魔石を失った芋虫型と植物型のモンスターは、吸収された側から続々と灰へと朽ちていく。

 

 周囲にある灰の山を見て僕は察した。これらは全て魔石を喰われたモンスターの死骸である事に。

 

「不味いっ……!」

 

 僕と同じく察したのか、フィンさんが顔を歪める。

 

「『強化種』か!」

 

 同じく顔を歪めるベートさんも呻く。

 

 『強化種』と聞いて僕は如何でもいい事を思い出した。六日程前、中層で僕が戦ったミノタウロスの事を。

 

 あの戦いの後、駆け付けてくれたガレスさん達から教えてくれた。ミノタウロスが予想以上に強かったのは、モンスターの核である『魔石』を大量に食べた事で『強化種』になったからだと。

 

 そして眼前にいる女体型モンスターが、芋虫型と植物型の魔石を大量に取り込んでいる。だからアレもベートさんが言ったように、『強化種』の部類となる。言うまでもなく、あのモンスターはミノタウロスなんかとは比べ物にならない程に強いだろう。

 

 これは予想以上の強敵となりそうだ。治療師(ヒーラー)の僕も、再びフィンさん達と一緒に戦わなければ不味いと思うほどに。

 

 そう思いながら僕は密かに銃剣(ガンスラッシュ)から長銃(アサルトライフル)――セレイヴァトス・ザラに切り替えてると、女体型モンスターから変化が起きた。

 

『―――ァ』

 

 周囲にいるモンスターの魔石を一通り取り込んだ女体型モンスターが、醜い上半身を起こしながら、醜怪な頭部から微かに声を漏らした瞬間――

 

『――ァアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッ!?』

 

 突如、鼓膜が破壊されるような凄まじい叫びに、アイズさんを除く僕たち冒険者が両耳を塞いでいた。

 

 アークス時代から、巨大エネミーの咆哮は聞き慣れているけど、アレはそんな生易しいものじゃない。まるで全てを破壊する高周波だ。

 

 女体型モンスターが叫び終えると、醜い上半身が蠢き、一気に肉が盛り上がって塊となる。

 

 そして僅かな時間で、肉の塊は殻を裂き、その中から女性の上半身が生まれた。

 

 綺麗な長い髪、女神にも劣らない美貌。瑞々しい両腕、胸や腰と言ったなだらかな上半身を覆う極彩色の衣。

 

 変わったのは上半身だけでなく、異形の下半身も変貌していた。組成を変容させた上に、巨大な花びらや無数の触手を出現させている。

 

 怪物の下半身に対し、天女の如く美しい上半身を持つ巨大モンスターが、僕達の目の前で誕生した。

 

「なっ……何だって言うのよ、アレ……!?」

 

 信じられないと言わんばかりに呻くティオネさん。

 

「……うそ」

 

 正体不明の存在に、誰もが戦慄の眼差しを向けている中、アイズさんだけが違った反応をしていた。

 

 あの高周波みたいな叫びを聞いても耳を塞がず、愕然と立ち尽くして身体が震えている。まるで、あの存在を知ってるような感じで。

 

 すると、女体型モンスターは漸く気付いたのか、首をグルリと回す。此方に視線を向けると、アイズさんを見た途端に歓声を上げる。

 

『アリア――アリア!!』

 

 アイズさんに向かって『アリア』と嬉しげに叫ぶ女体型モンスター。

 

 ……えっと、アリアって誰? 女体型モンスターと僕達が見ている人物はアイズさんの筈なんだけど、アレは誰かと間違えているんだろうか?

 

 けれど、アイズさんは向こうの呼び方を気にしてないのか、震えている唇を開く。

 

「『精霊』……!?」

 

「……え?」

 

 アイズさんが予想外の単語を口にした事に、僕は思わず女体型モンスターを凝視した。

 

 僕がオラクル船団がある異世界へ飛ばされる前、うろ覚えだけど幼少時にお爺ちゃんから聞いた事がある。

 

 『精霊』は神様達が下界に現れる前まで、神に代わって英雄を助けてくれる存在であると。

 

 けれど、目の前にいる存在はとても『精霊』とは言い難い。ついさっきまで巨大なモンスターであり、同じモンスターの魔石を大量に取り込んでいた。

 

 いくら上半身が美しい女性型でも、嫌悪感を伴う醜い下半身を見て、神々しい『精霊』だなんて誰が言うだろうか。僕だけでなく、ラウルさん達も似たような事を考えている筈だ。

 

「『精霊』って……あんな薄気味悪いのが!?」

 

 アイズさんの発言に、視線の先にある存在に向かって叫ぶティオナさん。

 

 僕も叫んだ彼女と同じ気持ちだけど、アイズさんは何も言い返そうとしなかった。ただ只管、目の前の女体型を凝視している。

 

「……新種のモンスター達は触手に過ぎなかったか。女体型をあの形態まで昇華させる為の……!」 

 

 フィンさんの推測を聞いて、僕も内心納得した。

 

 ついさっき芋虫型と植物型モンスターの群れは、あの女体型に魔石を捧げていた。そして魔石をアレに取り込ませた結果、モンスターだった女体型があのような姿になっている。

 

『アリア、アリア! 会イタカッタ、会イタカッタ!』

 

 まるで子供みたいにアイズさんを『アリア』と呼び続ける女体型。

 

『貴方モ、一緒ニ成リマショウ』

 

 アイズさんに向ける言葉の羅列に、聞いていた僕は察しながら長銃(アサルトライフル)の銃弾を装填する。

 

 そして――

 

『――貴方ヲ、食ベサセテ?』

 

 女体型は不気味に三日月の笑みを浮かべながら、聞くに堪えない内容を口にした。

 

 ……あんなのが『精霊』だなんて、僕は絶対に認めない。いや、断じて認めたくない。

 

 それにアイズさんを食べさせてって……何をふざけた事を言っているんだ、あの存在は?

 

 僕が一目惚れした女性に向かってそんな悍ましい事を口にするのは………万死に値する!!

 

「! ベルくんが消えたっす!」

 

『?』

 

 久しぶりにキレた僕は、即座にファントムスキルを使って姿を消した。

 

 ラウルさんが反応するも既に遅く、アイズさんを凝視していた女体型は突然僕が消えた事にキョロキョロと周囲を見渡している。

 

「消えて下さい。穢れし存在よ」

 

『!』

 

 少し距離はあるも、自分と同じ目線の位置から出現し、長銃(アサルトライフル)を構えている僕を見た女体型は驚愕した。

 

 向こうの反応に僕は気にする事なく、シフト用のフォトンアーツ――クーゲルシュトゥルムを放とうと、空中に留まったまま女体型の顔面目掛けて無数の弾丸を連射する。

 

『ギャァァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』

 

 一〇〇(メドル)以上離れてても僕の遠距離攻撃の銃弾が命中した事に、女体型の顔は抉られながらも悍ましい悲鳴をあげる。

 

 向こうも反撃をやろうとしてるのか、女体型の下半身から数本の触手が僕目掛けて襲い掛かろうと撃ちだしてきた。

 

 これ以上は無理だと判断した僕は、迫ってくる触手から躱そうと姿を消した後、フィンさん達がいる地面の上に姿を現わす。

 

「ベル、僕の指示前に勝手に動くのは困るんだけど」

 

「すみません。あのモンスターがアイズさんに対して凄く不快な台詞を言ったので、我慢出来ずに不意打ちを仕掛けさせてもらいました」

 

「……………」

 

 少し呆れながらも注意してくるフィンさんに僕が謝ってると、聞いていたアイズさんはジッとこっちを見ていた。

 

 そんな中、僕の銃弾で顔を抉られていた女体型は、まるで巻き戻しするかのように再生していく。

 

『オ前! オ前! オ前ェェェェェェエエエエエエ!!』

 

 再生が終わって元に戻るも、その美貌は思いっきり歪ませて憎々しげに僕を睨みながら叫ぶ。

 

「どうやら、僕の攻撃がお気に召さなかったようですね」

 

「いやいやベルくん! あんな事されたら誰だって怒るっすよ!」

 

「と言うより手前としては、あれだけ離れた所から攻撃を当て続けたその魔剣の凄さに改めて驚いたぞ!」

 

 僕の台詞にラウルさんと椿さんがそれぞれ突っ込む。

 

『殺ス! 殺ス! オ前ヲ殺シテヤルゥゥゥゥゥ!!!』

 

「総員、戦闘準備!」

 

 僕に対する明確な殺意を向ける女体型に、フィンさんが即座に指示を出そうとする。

 

 それを聞いたティオナさん達は武器を構えると、向こうからも大量の芋虫型と植物型が此方へ進行してくる。

 

「フィン! ワシも前衛に上がるぞ!!」

 

「兎野郎に先を越されたのは気に食わねぇが、どうせいつもとやる事は変わらねぇ! ブッ殺す!!」

 

 後衛のガレスさんが急遽前衛に出て、ベートさんと一緒に迎撃を開始しようとする。

 

「レフィーヤ、狙いは女体型、詠唱を始めろ! ラウル達は『魔剣』でアイズ達を援護!」

 

「わ、分かりました!」

 

「はいっす!」

 

 サポーター役のレフィーヤさん達にフィンさんが指示を出した直後――

 

「ベル、君は罰として僕達と同じく前衛に出るように! 勝手に動いた責任は取ってもらうからね!」

 

「勿論そのつもりです!」

 

 僕にも前衛行きの指示を下す事に何の反対もする事なく、前衛で戦ってるアイズさんとガレスさんとベートさんの援護をしようと銃弾を撃ち、迫ってくる芋虫型を倒し続ける。

 

 モンスターの他に、ついさっき僕に襲い掛かって来た触手群は、ティオナさんとティオネさんが疾走しながら迎撃している。

 

 僕たち前衛組が迎撃してる最中、さっきまで顔を歪めていた女体型が途端に微笑んだ。

 

 

『【火ヨ、来タレ――】』

 

 

 距離があるにもかかわらず、女体型からの詠唱が聞こえた。

 

 僕を含んだ全員の驚愕が重なり合う。

 

「詠唱!? モンスターがじゃと!?」

 

 僕が知る限り、この世界にいるモンスターは魔法を使う事は出来ない。ただ己の本能に従って相手を破壊する存在だと。

 

 なのに、あのモンスターは魔法を使おうと詠唱している。だからガレスさんが信じられないと叫ぶのは無理もなかった。

 

 誰もが驚愕しつつも、女体型の下半身から広大な魔法円が展開されていく。

 

「リヴェリア、結界を張れ!!」

 

 フィンさんがさっきまでと違って、全く余裕のない叫びで命令を下す。

 

 それを聞いたリヴェリアさんは、焦った表情をしながらも詠唱を開始した。

 

「砲撃っ、敵の詠唱を止めろ! ベルも一緒に!」

 

 続けざまに放たれる指示に、サポーターのラウルさんとレフィーヤさん、そして既に銃口を女体型に向けてる僕は咆哮をあげる。

 

「せっ、斉射ッ!」

 

「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!」

 

「クーゲルシュトゥルム!」

 

 ラウルさん達の魔剣による一斉射撃、レフィーヤさんの数百発にも及ぶ強力な火矢の魔法、僕がさっき使ったクーゲルシュトゥルムの弾丸連射が女体型に殺到する。

 

 僕が撃ってる銃弾は主に女体型に命中し、他の攻撃はそれ以外にも芋虫型や植物型にも当たって一掃される。

 

 こちらの一斉砲火に無数の爆発音が起きた後、それによる煙が発生して目の前の敵は見えない。

 

 ………数秒後、女体型だけは全く無傷であった。理由は、無数の花弁を盾代わりにして防いでいたから。

 

 

『【猛ヨ猛ヨ猛ヨ炎ノ渦ヨ】』

 

 

 花弁がゆっくり開くと、女体型は詠唱を続けていた。

 

「ははっ……。あれが効かないというのか……!?」

 

 無傷な女体型を見た椿さんが呟く。

 

 僕がもう一度弾丸を連射するも、花弁が反応するように女体型を守って防いでいた。

 

 どうやらアレはもう、僕の長銃(アサルトライフル)に対して完全に警戒しているようだ。さっき顔に何発も弾丸が当たって抉られたから、そうするのは無理もないか。

 

 そして女体型とリヴェリアさんが詠唱してる中、僕はある事に気付いた。あの女体型は長文詠唱をしながらも、リヴェリアさん以上の詠唱速度で紡いでいた。あの人も当然それに気付いていながらも、自身の魔法を完成させようと詠唱を続けている。

 

 何とか向こうの詠唱を阻止しようと僕や前衛側のアイズさん達も攻撃を仕掛けていた。しかし、あの花弁の他に、モンスターや触手が阻んでいる所為で女体型に直接攻撃する事が出来なかった。

 

「――総員! リヴェリアの結界まで下がれ!」

 

 向こうの魔法を阻止する事が出来ないと判断したフィンさんが、僕達に退避を命じた。

 

 前衛の僕達がすぐにリヴェリアさんの元へ駆け付けて辿り着いた瞬間、まるで示し合わせたようにリヴェリアさんの魔法が完成しようとする。

 

「【ヴィア・シルヘイム】!」

 

 リヴェリアさんが魔法名を口にした直後、地面にあった魔法陣(サークル)が光を放ち、そのままドーム状となって、僕たち全員を包み込んだ。

 

 防御魔法が展開されたのとは別に、女体型も詠唱を終えたのか魔法名を口にしようとする。

 

 

「【ファイアーストーム】」

 

 

 その瞬間、世界が紅に染まった。

 

 前方から押し寄せてくる炎の津波にリヴェリアさんの防御魔法で何とか防ぐが、光の壁にビキッと罅が入った。

 

「ガレスッ! アイズ達を守れぇ!!」

 

「ッ! デバンドッ!」

 

 リヴェリアさんの台詞を聞いた僕は咄嗟にデバンドで全員の防御力を上げさせるが、光の壁は甲高い音と共に砕け散った。

 

 その直後に紅蓮の濁流がリヴェリアさんを呑み込むも、ガレスさんが大盾を構えながら僕達の前に立つ。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 咆哮を上げながら僕達を守るガレスさんを嘲笑うのか、炎が猛威は大盾を溶かすどころか、ガレスさんが纏う鎧すら融解させた。

 

 それでもガレスさんは僕達を守ろうとするが、次には大爆発が起きた。




原作と大して変わらない流れですが、どうかご容赦ください。

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