ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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異常事態(イレギュラー)

  ~ラウルがフィン達に報告をする前に少し遡る~

 

 

 

 ――身よ―――きろ――

 

 ……あれ? 誰かが僕を呼んだような……。それに、凄く久しぶりに聞いた声だ。

 

 ――我が半――ルよ―――るんだ――

 

 まただ。誰なのか分からないけど、僕は知っている。この声は、オラクル船団で引き取られた時に……。

 

 ――さっさと起きろ――ベル――

 

 あ、そうだ。身寄りのない僕を引き取ってくれたキョクヤ義兄さんの声で――

 

 ――いつまで寝ている!? さっさと起きろ!

 

 へぁ!?

 

 ――貴様と言う奴は……! 俺と血の盟約を交わした我が半身でありながら、その体たらくは何だ!?

 

 ちょ! ま、待ってキョクヤ義兄さん!? 何でそんなに怒ってるの!? いきなり怒鳴られても分からないんだけど!

 

 ――それすらも分からぬか!? あの程度の毒如きで寝てるお前の体たらく振りに、俺がどれだけ嘆いておるのかも知らぬとは!

 

 ど、毒って……あっ! ご、ごめんなさい! 僕が受けた毒は思っていた以上に厄介で……!

 

 ――言い訳は無用だ! ベル、お前には再度教育が必要だ! その腑抜けた暗黒の闇を今一度、徹底的に鍛え直してやる!

 

 待って待って! 僕、まだ毒が抜けてないから! せめてアンティで解毒を……!

 

 ――俺と同じ《亡霊》なら、そんな毒などお前の内に眠る暗黒の闇で染めろ!

 

 いくらなんでもそれは無理だよぉ、キョクヤ義兄さん!

 

 ――つべこべ言わずにとっとと行くぞ、我が半身ベルよ!

 

 

 

 

 

 

 

「だから解毒ぐらいさせてよ!」

 

「おわっ!」

 

 キョクヤ義兄さんが余りにも無茶苦茶な事を言ってる為に反論してると、何故か僕の近くにラウルさんがいた。

 

 ………………あれ? ここは、一体何処……?

 

 僕は思わず自分の周囲を見渡す。

 

 先ず今の僕は上半身だけを起こしていて、簡素な寝床の上で毛布をかけられていた。服は『シャルフヴィント・スタイル』のままだけど、ブーツと上着がない。と言っても、それ等は僕の近くに置かれている。

 

 近くには驚いた顔をしているラウルさんがおり、天幕の中にいると認識する。

 

 さっきまで話していたキョクヤ義兄さんの姿は当然ない。それは即ち……夢と言う事になる。

 

 ……どうやら僕はさっきまで夢を見ていたようだ。夢とは言え、久しぶりに見て早々義兄さんからの厳しい言葉を受ける事になるとは……。

 

「ビックリしたじゃないっすか、ベル君! 思わず心臓が飛び出るかと思ったっすよ!」

 

「す、すいませ……あれ?」

 

 憤るラウルさんに僕はすぐに謝って頭を下げようとした瞬間、身体が急にふらついてきた。

 

「っ! だ、大丈夫っすか!?」

 

 ふらついて倒れそうになる僕にラウルさんが支えてくれた。

 

「ま、またしてもすいません。ところでラウルさん、此処は一体……? 何で僕、こんな姿になってるんですか……?」

 

「ベル君、あの時の事を憶えてないんすか?」

 

 再び僕を横にしながら、ラウルさんは状況を簡単に説明しようとする。

 

 ダンジョン下層で毒妖蛆(ポイズン・ウェルミス)の大量発生により、【ロキ・ファミリア】は予想外の襲撃を受けた。そのモンスターによって放出された毒の所為で、負傷者達を18階層まで運び、今はこの場に留まって治療に専念しているようだ。

 

 因みに僕はリーネさんを突き飛ばし、毒妖蛆(ポイズン・ウェルミス)の毒を受けてしまい、一日近く意識を失っていたと。

 

 ……そっか。僕、あのモンスターの毒で気絶してたんだ。しかも一日近くって……道理でキョクヤ義兄さんが夢に出てまで僕を叱った訳だ。

 

 アークスなら毒を受けても体内フォトンで中和されながらも意識を失わず、即座に治療用テクニックかアイテムで完全解毒、もしくは毒が消えるまで耐えきっている。それなのに一日近くも意識を失うのは致命的だ。

 

「そうだったんですか。すいませんでした、色々とご迷惑をお掛けしまして」

 

「いやいや、謝る必要なんてないっすよ」

 

 僕は【ロキ・ファミリア】の足を引っ張っていた事を謝るも、ラウルさんは全く気にしてないように言った。

 

 向こうは必要無いって言っても、コッチとしては非常に申し訳ない。自分の不甲斐無さでこうなってしまったから。

 

 しかし、ラウルさんは優しくて余り厳しい事は言わない人だ。後でフィンさん辺りに怒られるかもしれない。

 

 って、自分の事よりも気になる事があるんだった。

 

「そう言えばラウルさん、リーネさんは無事ですか?」

 

「大丈夫っす。ベル君のお陰で毒の被害は免れてるっすから」

 

「そうですか。良かったぁ……」

 

 彼女の無事を聞いた僕はすぐに安堵するも、ラウルさんが途端に何か言い辛そうな表情になる。

 

「ただ……結構落ち込んでるんすよ。自分の所為でベル君が毒を受けさせてしまった事に」

 

「え? 僕は別に気にしていませんよ。寧ろ被害は僕だけで済んで良かったかと思うんですが」

 

「ベル君が良くても、本人が許せないんすよ。リーネは自分以上に真面目っすから」

 

「そう、ですか……」

 

 確かにリーネさんは真面目な人だ。まだ会って間もないけど、凄く真面目な人なのは僕も分かる。

 

 だったら後で僕が直接会いに行く必要がありそうだ。リーネさんがそこまで責任を感じる必要はないって。

 

 けれど、あの人を庇った僕の判断は間違ってないと思う。毒妖蛆(ポイズン・ウェルミス)の毒は非常に厄介で、リーネさんが受けたらとんでもない事になっていた。

 

 直接受けた僕としては、本当に普通の毒とは大違いだったと認識した。アークスのクエスト中にエネミーから毒攻撃を受けた事は何度もあるけど、あそこまで激痛の走る猛毒は経験した事はない。

 

 もしも体内フォトンが無かったら、ずっと寝込んでいる破目になっているだろう。今はある程度中和されているが、それでも完全に抜けきっていない。アンティさえかければすぐに解毒を……って、そうだ!

 

「あの、話を急に変えてすいませんが、僕以外に毒を浴びた負傷者はどうなってるんですか?」

 

「え? 今もベル君と同じく寝込んでいるっすよ」

 

 寝込んでいる!? 不味い! フィンさんから治療を任されたのに、僕がいつまでも寝てる訳にはいかないじゃないか! 早く負傷者達の治療をしないと!

 

 そう決断した僕は再びガバッと起き上がると、まだ残っている毒の所為か、身体が怠くなってフラフラしてくる。

 

「って、急に何してるんすかベル君!? 今は寝てるっす! 解毒用の特効薬を持ってくる二日の間は絶対安静っすから!」

 

「ふ、二日間もですか!?」

 

 解毒の特効薬と聞くも、余りにも時間が掛かり過ぎるじゃないか! やはり僕が治療しないとダメだ!

 

「浄化せよ、アンティ!」

 

「え? その魔法ってまさか……!」

 

 僕が治療用テクニックのアンティを使うと、僕の他にラウルさんも柔らかい光に包まれた。

 

 光を包まれた数秒後――

 

「はい、治りました!」

 

「え……ええぇぇぇぇぇぇぇえええ!?」

 

 毒が完全に無くなったので、僕は元気よく立ち上がった。ラウルさんが信じられないように仰天しているけど。

 

 すると、誰かが天幕のカーテンを開けようとしている。

 

「ラウルさん、騒がしいけど一体何が……え?」

 

「あ、アイズさん」

 

 入って来たのはアイズさんで、僕を見た途端に目が点になっていた。

 

「……え? え? ……ベル、さっきまで寝てた、よね……?」

 

「はい、ついさっき起きました」

 

「……えっと、毒妖蛆(ポイズン・ウェルミス)の毒は、どうしたの?」

 

「もう自分で治しました」

 

「……そう、なの?」

 

 僕の言ってる事が理解出来てないのか、何故かアイズさんは全く分からないような表情で首を傾げていた。

 

 しかし、今はそんな事を気にしている場合じゃない。負傷者達がいる所へ案内してもらおう。

 

「それはそうとアイズさん、毒を受けた負傷者の皆さんはどこにいるか案内してもらえますか?」

 

「う、うん。案内するから、付いてきて」

 

「お願いします」

 

 今だ困惑中のアイズさんだけど、一先ずと言った感じで要望に応えようと移動した。僕はすぐにブーツを履き、上着を羽織ってすぐに天幕から出ようとする。

 

「だ、だ、団長に報告しないと……!」

 

 すると、呆然としていたラウルさんが数秒後に天幕から出てどこかへ行ってしまった。

 

 慌ただしく走る彼を見て気付いたのか、【ロキ・ファミリア】の団員達が一斉に僕を見てくる。

 

 

「……え? あれ? クラネル?」

 

「ちょ、ちょっと待って、あの子は確か毒を受けて寝込んでる筈よね……?」

 

「何でもう起きてるどころか、あんなにピンピンしてるんだ?」

 

「ど、どういう事なの? 一体何がどうなって……?」

 

 

 皆が信じられないように僕を凝視していた。それは当然か。ついさっきまで天幕で寝込んでいたから、驚くのは無理もないだろう。

 

 しかし、今はそんな事を気にしてる場合じゃない。早く負傷者の治療をしないと。

 

 誰もが僕を見る度に固まっている中、アイズさんの案内で少し大き目の天幕につく。

 

「あれ? どうしたんですか、アイズさん……って、ベル・クラネル!?」

 

「ど、どうも……」

 

 看病をしているレフィーヤさんが、多くの負傷者が寝具で横になっているにも関わらず、僕を見た途端に大きな声をあげた。

 

 うなされながらも眠っていた人達は何事かと思って、彼女の方を見ている。

 

「ア、アイズさん。これは一体、どう言う事なんですか? 何でベル・クラネルが貴女と一緒にいるんですか? と言うか、この人間(ヒューマン)毒妖蛆(ポイズン・ウェルミス)の毒で寝込んでいましたよね?」

 

「えっと……自分で治したらしいよ」

 

「……へ?」

 

 アイズさんの返答を聞いた途端、レフィーヤさんは目が点になった。

 

 さっきから気になってるんだけど、僕が自分で解毒する事に何かおかしいのかな?

 

 確かに毒妖蛆(ポイズン・ウェルミス)の毒は凄かった。正直言って、もう二度と喰らいたくない激痛だったが、決して治せない毒じゃない。

 

 けど、それは一先ず後回しだ。早く負傷者の解毒をしないと。

 

「すみません、レフィーヤさん。すぐに治療しますので、ちょっと退いてもらえますか?」

 

「え? あ、ちょっ! 貴方、毒を治したって言っても、すぐに治療魔法を使える訳が――」

 

「浄化せよ、アンティ!」

 

 止めようとするレフィーヤさんを無視するように、中央に立っている僕は再び治療用テクニックのアンティを放った。その直後には僕の周囲にいる負傷者達は一斉に柔らかい光に包まれていく。

 

 そして――

 

 

「あ、あれ? 何か急に身体が……」

 

「軽く、なった……?」

 

「さっきまでの苦しさが無くなってる……?」

 

 

「……嘘」

 

 この天幕内にいる負傷者達の治療は一先ず完了し、僕は自身のテクニックに問題無い事を確信した。レフィーヤさんが何故か急に呆然としているけど。

 

 しかし、治ったとは言っても一日近く寝込んでいた為か、全員が治療されてもすぐに動ける状態じゃなかった。暫く寝ていれば元に戻るだろう。

 

「凄い。たった一回の魔法だけで全員治してる」

 

「…………もうヤダ、この人間(ヒューマン)。余りにも非常識過ぎて、もうどこからどう言えば良いのか……」

 

 感心するアイズさんに、何故か複雑そうに僕を見ているレフィーヤさん。

 

「よし、ここは一先ず大丈夫だな。アイズさん、この人達で全員ですか?」

 

「ううん、まだ他にもたくさんいる」

 

「では、その人達の所へお願いします」

 

 どうやら負傷者はこの天幕だけじゃなく、他にもいるようだ。ならば一人残らず全員治療しないと。

 

 レフィーヤさんを置いて新たな天幕へ移動していると――

 

 

「アルゴノゥトくぅぅぅぅぅぅぅんっ!!!!!!!!」

 

 

 ティオナさんの叫び声が聞こえた。しかも野営地に響くほどの大声だ。

 

 このパターンだと、また急に抱き着かれるなと思って身構えながら振り向くと……って!

 

「ちょっ、ティオナさん!? 何て格好をぐほっ!」

 

「うわぁぁああああんっっっ!」

 

 何故か分からないけどティオナさんが全裸だったので僕が指摘するも、彼女は全く気にせずそのまま突撃しながら抱き着いてきた。その所為で僕は倒れ、彼女に押し倒されてしまう。

 

 アイズさんや周りにいる人達も完全に予想外だったみたいで、仰天しながら見ている。男女関係無く、ティオナさんが全裸であることに顔が赤い。

 

「良かった! 本当に無事で良かったよぉぉぉおおお!」

 

「ティ、ティオナさん! その前に服! 服を着て下さい!」

 

 僕が指摘しても、当の本人は全く気にしないで抱き着いたままだった。

 

 誰か助けてぇぇぇぇ! このままだと僕が色々な意味でやばいんですけど~~~~!!!

 

「ちょっとティオナ! アンタ何やってるのよ!?」

 

 すると、僕の願いが通じたように、後から来たティオネさんがやって来た。

 

「さっさと離れて服を着なさい!」

 

「やだ! アルゴノゥト君から離れたくない!」

 

 ティオネさんが引き剥がそうとしても、ティオナさんは一向に僕から離れようとせず更に抱き着く力を強めていた。

 

「お、お願いですからティオナさん、早く服を着て下さい!」

 

「その子の言う通りよ! てかいい加減にしろゴラァ!!」

 

 慌てふためきながら離れるように頼む僕と、無理矢理引き剥がそうとキレ気味になってるティオネさん。

 

 しかし、それでもティオナさんは一向に離れようとせず、柔らかい胸や身体を強く押し付けてくる一方だった。

 

 本当にお願いだから離れてぇぇぇぇぇぇぇ!!!!! このままだと僕が性犯罪者扱いされてしまうんですけどぉぉぉぉぉ!!!!!!!!




色々と突っ込みどころ満載でしょうが、感想お待ちしてます。
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