ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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今回は短いです。


オリオンの矢⑧

 再び飛竜での移動を再開した僕達は、前と違って地上を警戒していた。再び蠍型モンスターの群れが出てきたら即座に戦えるよう、僕とアイズさん、そしてティオナさんはそれぞれの武器を携えている。

 

 しかし、アレ等は全く出現しないどころか、それらしい気配も無いまま数日が経った。あの時の出現は一体何だったのかと疑念を抱いている中、岩山にある河道を沿って進んで大森林の光景を目にした途端に状況が一変した。

 

 昨日まで何の変哲もない緑に囲まれた大森林だったが、僕の視界には異なる風景が映し出されている。毒々しいと思う紫色に染まった木々が多数あるからだ。

 

「どういうこと……」

 

「なんなの、これ?」

 

 緑から紫の大森林と化している事に、飛竜に乗っているアイズさんとティオナさんが下を見ながら呟いていた。

 

 よく見ると、木が折れているのが何本かある。明らかに腐敗して折れたとしか言いようがない。だとすると、変色した草木は全て腐っている事になる。

 

「森が……死んでる……」

 

「アンタレスの仕業だ……」

 

 僕の呟きに反応するように、アルテミス様がそう言った。

 

 大森林をこんなにした元凶(アンタレス)は、相当危険なモンスターと改めて認識した。これはある意味、あらゆるモノを汚染させるアークスの天敵――ダーカーみたいなものだと。

 

「そして……あれがエルソスの遺跡……」

 

 前方を見ながら言うアルテミス様に僕も倣うように見ると、視界の先には建築物があった。

 

 あそこにアンタレスがいる……。そう考えるだけで、警戒心と緊張感が一気に高まってくる。

 

「くっ……!」

 

 逸る心をどうにか落ち着かせていると、途端にアルテミス様が胸に手をあてて苦しそうな声をあげた。

 

「アルテミス様、どうしました!」

 

「……来る……」

 

「えっ?」

 

 そう言ったアルテミス様に、突然何かが降り注ぐ音がした。思わず空を見上げると、無数の光の矢が僕達に襲い掛かろうとしている。

 

「よけてぇ~~!」

 

 ティオナさんの叫びに僕達はそれぞれ、操っている飛竜に回避行動をさせた。

 

 僕が長銃(アサルトライフル)で迎撃しようにも降り注ぐ光の矢が余りにも多すぎるどころか、向こうに先手を取られてしまった為に回避せざるを得ない。

 

 しかし、こちらの行動が一足遅かった為、回避出来ずに光の矢のシャワーを浴びる事となってしまう。

 

「ぐっ!?」

 

 僕はせめてアルテミス様に直撃しないよう、咄嗟に覆い被さるように引き寄せて盾役となり――

 

「うわわわわっ!」

 

「くっ……!」

 

 慌てるティオナさんに、どうにか回避しようとするアイズさん――

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

 

「くそっ……!」

 

 悲鳴をあげる神様と必死に飛竜を操るヘルメス様。

 

 僕達を乗せている三匹の飛竜達も何とか回避してるが、降り注ぐ無数の光の矢の勢いに負けて、そのまま地上へ落下していく。

 

 

 

 

 

 

 

「くっ、大丈夫ですか、アルテミス様?」

 

「ああ」

 

 飛竜達が地上に落下して分散するも、僕は一先ずアルテミス様の安否を確認した。

 

 返事を聞いた僕は、次に神様達の元へ向かおうとする。

 

「神様ー! みなさーん!」

 

「なんとか無事だよ~!」

 

 走りながら叫ぶと神様が反応して無事な姿を見て安堵していると、ティオナさんの声がした。

 

「大丈夫~?」

 

「ティオナさん! アイズさん! ケガはありませんか?」

 

 僕が声を掛けると、二人はこちらへ振り向く。

 

「アルゴノゥト君! アタシ達は大丈夫だけど……竜が」

 

 ティオナさんとアイズさんが乗っていた飛竜を見ると、傷穴が出来た翼膜を痛々しそうに舐めていた。

 

 後で僕がレスタで治癒しておこう。もしかしたら他の飛竜も傷付いているかもしれないから、確認しておく必要がある。

 

「さっきの光は、一体……?」

 

「おそらく、私を……いや、彼が持つ槍を狙ったのだろう」

 

 アイズさんの疑問に付いてきたアルテミス様がそう答えた。

 

 思わず自分の背中に背負っている槍を見るが、突然ギチギチと嫌な音がした。しかも一つだけじゃなく無数の気配を感じる。

 

「「「!」」」

 

 それを聞いた僕、アイズさん、ティオナさんは即座に得物を取り出す。僕は抜剣(カタナ)――呪斬ガエン、アイズさんは両剣(ダブルセイバー)――スキアブレード、ティオナさんは両剣(ダブルセイバー)――セイカイザーブレードを。

 

「モンスター……」

 

「まずいなぁ、これは……」

 

 僕達を囲む蠍型モンスターの大群に、神様とヘルメス様が焦った声を出す。

 

「こいつら、あの時のモンスターだよね」

 

「……ううん、大きさも形も違う」

 

 確かにアイズさんの言う通り、前に戦った蠍型モンスターとは異なっていた。けど、アレと同種である事は間違いない。群れで襲い掛かろうとしているところがソックリだ。

 

「取り敢えず速攻で倒しましょう。お二人とも、準備は良いですか?」

 

「いいよ」

 

「オッケー! 今回はアタシも暴れるよー!」

 

 僕の問いにアイズさんが武器を構えており、前回戦えなかったティオナさんはいつも以上にやる気を見せていた。持っている武器を頭上に翳してブンブン振り回した後、好戦的な笑みを浮かべながら構えている。

 

「では神様達を守りながら各個撃破でお願いします!」

 

 僕が一足先にファントムスキルで姿を消してすぐ、一匹目のモンスターを斬りつけて真っ二つにする。

 

「あ! ずるいアルゴノゥト君! アタシだってぇ!」

 

「ベル、抜け駆けはダメ!」

 

 出遅れたティオナさんとアイズさんも、蠍型モンスターの群れに突っ込んでいく。

 

 数の多さに少々気後れしたけど、強さは変わらずダンジョン中層のモンスターと同等だった。これまで深層モンスターと戦っていたアイズさんとティオナさん、そして遠征で下層以降のモンスター達との戦闘経験を得た僕の敵じゃない。

 

「遅い!」

 

 僕は裏の技用のシュメッターリング+クイックカットで瞬く間に倒し――

 

「ふっ!」

 

 華麗な剣舞で次々と斬り裂いていくアイズさんに――

 

「うおりゃぁぁぁ!」

 

 セイカイザーブレードを豪快に振り回しながらも、蠍型モンスターの硬そうな甲殻を柔らかい物のように叩き斬っていくティオナさん。

 

 アークスの僕と第一級冒険者のアイズさんのティオナさんが戦闘を初めて数分もしない内に、先程まで周囲を埋め尽くしていた筈のモンスター達はどんどん駆逐される。

 

「は……はははは! まさか今度は間近で瞬殺劇を見る事になるとはね! しかもベル君が第一級冒険者のアイズちゃんとティオナちゃん以上の働きぶりじゃないか!」

 

「当然だよ、ヘルメス! 僕のベル君は強いんだ!」

 

「凄い、あのモンスターの群れをあんな一瞬で……流石は私のオリオン……!」

 

 僕達の戦いを見守っている神様達は、それぞれ思った事を口にしていた。

 

 どうでもいいんですけどアルテミス様、いつから僕は貴女様のものになったんでしょうか?

 

 一先ずは蠍型モンスターを倒しながらも、他の個体が神様達に狙いを定めないかと警戒を続ける。

 

 そして数分後、周囲の地面には大量の灰が撒き散らしており、多くの魔石が転がっていた。

 

「ふぅっ、漸く片付きましたね」

 

「大して強くなかったけど、あの数は非常に厄介だったね」

 

「この武器すっごいねぇーアルゴノゥト君! アタシの大双刃(ウルガ)より凄い威力だよ!」

 

 大して傷を負う事無く全て倒した僕達に、見守っていた神様達から安堵の息を漏らしていた。

 

「ッ! 誰ですか!?」

 

 すると、背後からモンスターとは違う気配を感じた僕は、即座に振り向いて再び武器を構えた。僕の行動に一同は再び警戒する。

 

 木々の影から出てきたのは――

 

「まさかこんな所でお会いするとは、クラネルさん」

 

「へ? リ、リューさん!?」

 

 オラリオにある酒場――『豊穣の女主人』でウェイトレスをしているエルフ――リュー・リオンさんの登場に僕は目を見開いた。




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