ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
あれから二日。今の僕は色々とあって少々疲れ気味だ。
先ずは一人目にティオナさん。あの人は服を着て以降ずっと僕の傍にいた。食料調達や水汲みなどで別行動しても、時間が経ったら再度僕の元へ戻っている。更には僕と一緒に寝るつもり満々だったけど、そこはティオネさんが何とか引き剥がしてくれたから大丈夫だった。
二人目は椿さん。僕が毒で負傷中の時、フィンさん達の許可を得ないまま下層で色々な物を採取していた。モンスターのドロップアイテムは勿論の事、下層でしか取れない素材や食料も採取していたらしい。その後はフィンさん達から怒られていたとか。ここまでは僕に関して関係無いけど、僕が元に戻ってからはずっと絡まれた。勿論、僕の武器を貸して欲しいと。何度断っても全然諦める様子を見せなかったけど、ティオナさんが牽制したお陰で今も何とか事無きを得ている。
三人目はレフィーヤさん。暇な僕と違って負傷者達の看病をして忙しいから接点はないと思われるけど、僕がアイズさんと話している時に何度も割って入りこんできた。それと同時に、『アイズさんに変な真似をしたら許さない』と言う無言の圧力をかけられて。何であそこまで嫌われているのかは分からないが、流石に何度も同じ事をされて少し参り気味になっている。
四人目はアイズさん……と言っても本人は全く無関係で、主に周囲の人だ。僕が一人で行動している時に必ずと言うべきか、あの人は僕に話しかけてきた。『身体に問題はない?』とか、『この前の戦いについて』等々と。しかし、アイズさんの行動によって、僕は【ロキ・ファミリア】の方々から嫉妬の目を向けられる事があった。周りからアイドル扱いされてる為、積極的に話しかける僕に団員達が気に入らないんだろう。
女性陣の中で
嫉妬してた人達と違って、ラウルさんだけは僕と普通に接していた。思わずアイズさんの事を訊いてみたけど、『尊敬している』と言う返答で、アイドルという風に見てない感じだ。もっと色々聞いてみようと思った矢先、戻って来たティオナさんに抱き付かれた為にそれは叶わなかったが。
とまあ、この二日の間は戦闘をしてない筈なのに、色々と疲れ気味となっている訳である。
そんな時、僕はある事を思い出した。一度
「『リヴィラの街』に行きたいだって?」
「はい。今後の為に行っておこうと思いまして」
本営には団長のフィンさんだけしかいなかった。けれど、僕にとっては別に問題無いから、『リヴィラの街』へ行く許可を貰おうと頼んでいる。
折角18階層にいるから、冒険者の補給地点にも一度行ってみたいと思っていた。けど、色々と遭って忘れていたから、今の内に行っておこうと決めた。
しかし、僕があの街へ行く事にフィンさんは少し困った表情を見せている。
「んー……正直に言って、ベル一人で行くのは危険だね。あそこは冒険者にとっての補給地点だけど、色々と問題があるところだから」
以前にリューさんが言ったように、僕が行く事に難色を示していた。思った通りと言うべきか、リヴィラの街は僕が行くのは危険みたいだ。
だけど、それは既に承知済みだ。何も僕一人で行くつもりはない。
「勿論それは分かっています。なので、向こうの対応に慣れている団員の方をお連れする許可も貰いたくて」
ラウルさんと一緒に行こうかと思ったけど、あの人は今も団員達を纏めているから野営地から離れる事は出来ない。だから手の空いている人に声を掛けるつもりでいる。まぁ、一人は確実に付いて行こうとすると思う。
「成程ね。なら許可しよう。但し、間違っても一人で行かないように」
団員と一緒なら問題無いと思ったフィンさんは、すぐに許可を出してくれた。僕一人で行くよりは安心だと。
「ありがとうございます」
「本当なら僕が
「そうなったら、ティオネさんが確実に付いてきますね」
これまでの遠征で分かったけど、ティオネさんってフィンさん絡みの事となると真っ先に食いついてくる。もしも僕がフィンさんと二人だけで『リヴィラの街』へ行こうとすると、絶対に鉢合わせて無理矢理同行するだろう。
「あはは、君もティオネの事がよく分かってきたようだね」
「そりゃまぁ、アレだけフィンさんにアピールしてたら流石に……。あの人ってどう言う経緯でフィンさんに惚れたんですか?」
ゴライアスを倒した後、妹のティオナさんに何故か一目惚れされた事がある。もしかしたらフィンさんも僕と似たような事があったんじゃないかと、少しばかり気になっていた。アマゾネスは強い男を求める種族だから、何か劇的な出来事が起きない限り、あそこまでのアピールはしない筈だ。
僕の問いに、フィンさんは急に嘆息しながら遠い目となって明後日の方向を見る。
「色々と遭った、とだけ言っておくよ」
「……そ、そうですか」
何だろう。一言だけの筈なのに、フィンさんの回答が凄く重みがあるように聞こえる。何だかまるで、今も大変苦労して疲れているような気が……。
……取り敢えず、もうこれ以上訊かないでおくとしよう。何故か分からないが、これ以上はティオネさんが現れそうな気がするので。
『リヴィラの街』へ行く他、団員も連れて行って良い許可を貰ったから、僕はフィンさんにお礼を言った後に本営から出た。
「さて、誰か僕と一緒に来てくれそうな人は……」
周囲にいる人達を見れば、誰もが忙しそうにあちらこちらへと移動していた。他所【ファミリア】の僕と違って、【ロキ・ファミリア】は色々とやる事があるようだ。
僕と同じ余所である【ヘファイストス・ファミリア】は、今も武器の整備等で忙しい。椿さんも当然含まれている。
先に言っておくと、僕は椿さんを誘う気は無い。声を掛ければ勿論付いて行こうとするだろうが、途中で絶対に僕の武器についての話をするのが目に見えている。故に間違って自分から声を掛けたりしない。
因みにティオナさんとアイズさんは……野営地にいなかった。周囲の人に聞いてみると、どうやら二人はついさっき食糧調達に行ってるようだ。
どうしよう、僕の予想ではアイズさんが無理でも、ティオナさんなら絶対に付いてくると予想した。けれど、当の本人がいなくては『リヴィラの街』には行けない。他の人達は忙しいし、僕と一緒に行ってくれるとは思えない。
このままでは、折角フィンさんから許可を貰った意味がない。せめて僕と普通に話してくれる団員は――
「どうしたの、ベル? 難しい顔をしてるけど」
「あ、アキさん」
僕が悩んでいる中、
因みにこの人は二日前、他の女性団員を連れていきなり頼まれた。自分達の身体を
鬼気迫るように言ってきて僕は少しばかりドン引きするも、それでもアンティを使った。その直後、アキさん達から物凄く感謝され、何か困った事があれば遠慮なく言って欲しいと。
う~ん、今この場でアキさんに言っても大丈夫かな? この人もラウルさんと似たような立場だから、同行してくれるとは限らないし。まぁ取り敢えず、言うだけ言ってみよう。
「え、えっと、『リヴィラの街』へ行こうと思ってるんですが……」
「リヴィラに?」
「ええ。だけどフィンさんから『必ず誰かと一緒に行くように』と言われて……。もしアキさんが宜しければ、僕とご一緒して頂けますか?」
「へ? 私と?」
予想外だったのか、アキさんは少し驚いた顔をしていた。
まぁ確かに、いきなりリヴィラに同行して欲しいと言われたら戸惑うだろう。
「う~ん……まだ仕事があるんだけど」
「あ、忙しいならいいですよ」
アキさんの反応を見て無理そうだと思った僕は諦めるも――
「良いわ。君にはお礼をしたいと思ってたところだし、案内してあげるわ」
「ええっ!?」
予想外な返答だった事に思わず驚きの声をあげた。
「い、良いんですか? アキさん、仕事があるんじゃ……」
「大丈夫よ、そこまで急ぎの仕事じゃないわ。それに、ベルには今後も治療魔法のお世話になるかもしれないから、これはこれで大事な事だしね」
「は、はぁ……」
治療魔法のお世話って……もしかしてアキさん、また僕にアンティを使って欲しいと頼む気かな? 治療とは別に、身体を清潔な状態にしてもらう為に。
まぁ確かに、その気持ちは分からなくもない。ダンジョンにいると、必ずと言っていいほど臭いが身体にこびり付く。だから僕はそれを消す為にアンティで清潔にしている。アキさんからすれば凄く羨ましいんだろう。
色々と考えてるなぁと思いつつも、同行してくれるなら別に構わない。仕事で忙しいアキさんに僕が無理行って誘ったんだから、ここはお互い様だ。
「それじゃあ早速『リヴィラの街』へ行くわよ、ベル。分からない事があったら、お姉さんが教えてあげるから」
「はい、お願いします」
もう支度が済んでいたのか、アキさんは『リヴィラの街』へ向かおうとした。
この人ってラウルさんとは違う頼もしさを感じる。何だか『頼れるお姉さん』みたいだ。
因みに、僕がアキさんと一緒に街へ行った後、食糧調達から戻ったティオナさんやアイズさんから文句を言われた。『どうして自分を誘わなかった』のだと。
ティオナやアイズだとありきたりだったので、今回のリヴィラ行きに二軍メンバーのアキと同行させました。
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