ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
「リューさん、本当に良いんですか? フィンさんに事情を話せば、多分泊めてくれると思いますよ」
「そうはいきません。例えそうであっても、彼等と
階層の天井が暗くなって『夜』の時間帯となり、僕はリューさんと一緒に【ロキ・ファミリア】の野営地へと戻っていた。
しかし、その寸前で彼女は別れを告げて、再び森の奥へと戻っていく。
女性をあんな暗い森へ行かせるのは色々と不味いが、リューさんは『Lv.4』の元冒険者なので、そう簡単に後れを取られたりはしない。以前の
「アルゴノゥトく~~~んっ!」
「ぐっ!」
僕が残念そうに思いながら野営地へ到着して早々、僕を見付けたティオナさんが突撃してそのまま抱き着かれた。
「どこ行ってたの!? 全然戻らないから心配したよ!」
「す、すみません。ちょっと森の中を迷ってしまいまして……」
プンスカと怒っているティオナさんに、僕は謝りながら理由を話した。
森の中を迷ったのは嘘じゃないが、リューさんと会った事は内緒だ。彼女から、自分の事はなるべく言わないで欲しいと言われているから。
すると、抱き付いているティオナさんは何故かクンクンと僕の臭いを嗅ぎ始めている。
「ティオナさん、何してるんですか?」
「何か、アルゴノゥト君から女性のニオイがするような気がする」
「ええっ!?」
ニオイって……リューさんと一緒に歩いた程度なのに、どうしてティオナさんはそんなに鼻が良いんだろうか。
「まさか、あたしがいながら浮気してたの?」
「ちょっ! 浮気って何ですか!?」
と言うより、僕達いつからそんな関係になったんですか? 大体僕はお付き合いするって了承してませんからね!
不機嫌顔になってるティオナさんに少しばかり反論しながら戻ると、待ち構えていたと思われるレフィーヤさんはいなかった。どうやら看病に専念しているようだ。無表情にやっていたと聞いて、途轍もなく嫌な予感がする。
それとは別に、知らなかったとは言え、女性の裸を見てしまった事に対する謝罪を始める。ティオナさんは全然気にしてないどころか、寧ろあのまま一緒に水浴びしたかったと言ってた。後半部分は敢えて聞き流しておこう。
ティオネさんも大して気にしてないと笑い飛ばしていた。もしもフィンさんだったら……と言う事をぼやいていたが、その部分は聞かなかった事にしておく。
そして最後にアイズさんは、顔を合わせた瞬間に顔を赤らめていた。アマゾネス姉妹と違って正常な反応だと失礼な事を思いながらも謝るも、気にしてないからと恥ずかしそうに言い返される。お互いに気まずそうな雰囲気を出してる事に、傍にいたティオナさんが少しばかり面白くなさそうな顔をしていたが。
他に、水浴びを警護していたレフィーヤさんを除く女性陣にも会ったが、フィンさんから事情を説明された事もあってお咎めなしとしてくれた。今度は前以て話しておくように、と軽い注意程度で。
更に驚く事に、【ロキ・ファミリア】の団員達が凄まじい嫉妬と殺意で襲い掛かって来た。しかも男女関係無く。どうやらアイズさんを尊敬している方々で、僕が彼女の裸を見た事が許せなかったようだ。思わず武器を構えそうになるも、アイズさんが必死に対処してくれた上に、フィンさんたち首脳陣も一緒に止めてくれた事で事無きを得た。
取り敢えず謝罪を終えたので、僕は一旦ティオナさんと別れて天幕に戻ろうとする。夕餉前に端末機が記録されているかを確認したかったので。
そう思いながら戻っている最中、背後から急に感じた。凄まじい凶悪な気配が。
「………えっと、まだ貴女とは話していませんでしたね」
「…………………………」
思い出したように言いながら振り向くと、そこには杖を両手に持った妖精――レフィーヤさんがいた。
僕以上にドス黒い暗黒の瘴気を両肩に背負い、無言で俯いている状態だ。
見た目は可憐な妖精だけど凄まじい恐怖感を全身から放たれている。以前戦った17階層の
そんなどうでも良い事を考えていると、レフィーヤさんは、ゆっくりと顔を上げた。
「許セナイ、許サナイ、許サレナイ」
(あ、これ無理だ)
不気味な眼光を放ち、壊れた人形のように殺意の言葉を連ねるレフィーヤさんを見て確信した。まともな話し合いが出来ない状態だと。
今の彼女はダーカー因子に侵食されているんじゃないかと錯覚する程、恐ろしい形相になっている。キョクヤ義兄さんも見たら、僕と同じ事を考えると思う。
身体を深く沈みこんだレフィーヤさんを見た直後、僕は背を向け――
「待ちなさぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいッ!!!」
「それは無理ですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!!」
即座に逃走すると、向こうが凄まじい速度で追いかけてくるのであった。
勿論ファントムスキルで姿を消して、どうにかやり過ごそうとするも――
「そこぉッ!」
「うわっ!」
位置が分かるのか、レフィーヤさんが即座に捕捉して杖を振り下ろしてきた。
恐らくだけど、僕が焦っている事によって気配が駄々漏れとなってしまい、怒り状態となってるレフィーヤさんは本能的に僕の位置を察知したかもしれない。
もうついでとして、彼女が杖を振るった事で地面に直撃した地面は少しばかり陥没していた。魔導士とは思えない程の腕力で、もし頭に当たったら決して軽傷では済まないだろう。
前衛の戦士としてもやっていけるんじゃないかと一瞬考えるも、取り敢えず逃走と回避に専念する。勿論、向こうも負けじと必死に僕を追いかけてくるが。
しかしこの時、僕達は完全に失念していた。『夜』の時間となってる森が大変危険である事を。
~少し時間を遡る~
「うるせぇな……何の騒ぎだっての」
ベルが水浴びをしてるアイズ達を覗いたと知った【ロキ・ファミリア】の団員達が騒いでいる中、それに混ざっていない一人の団員――ベート・ローガは煩わしそうに、団長のフィンがいる本営に向かっていた。
大量の試験管が入ったバックパックを持ちながら入ると、そこにはフィンの他、リヴェリアとガレスがいる。ベートが入って来た事にフィン達は一瞬固まったが、当の本人は気にせずバックパックを渡そうとする。
「ほらよ、特効薬だ」
「あ、ああ。ご苦労だったな、ベート」
(ん? 何かババアの様子が変だな……)
「なんじゃ、随分と服が汚れているではないか。休憩もろくに取らんかったのか?」
受け取る事にリヴェリアは一瞬躊躇うも、それをさり気なく誤魔化しつつ礼を言う。
その仕草にベートが一瞬怪訝そうに見るが、咄嗟にガレスが話題を逸らそうと質問をしてきた。
「うるせぇババア、ジジイ。おいフィン、俺は寝るからな」
「分かった、ゆっくり休んでくれ。………すまない、ベート」
(あ? 何でいきなり謝ってるんだ?)
用は済んだと言うように本営から出る
明らかにおかしいと気付くベートだが、超特急で特効薬を運んで来た疲れている事もあって、一先ずは後回しにしようと別の天幕へと向かう。
「本当だったら僕が此処ですぐに言うべきだったんだが……」
「いや、言わなくて正解だったと私は思うぞ」
「そうじゃな。あんな状態になってまで特効薬を届けに来たベートに言うのは、余りにも不憫過ぎる」
彼が本営からいなくなった事に、三人は大きな溜息を吐いている。
それをフィンが言う予定だったが、頑張ったベートの姿を見た事で言うに言えなかった。この場で言ってしまえば、ベルに対する殺意が最高潮に高まって襲い掛かるのではないかと危惧する程に。
流石に嘘を吐く事が出来ないから真実を告げるつもりでいるが、一先ずは彼が目覚めた後にしようと決断する。
それとは別に、野営地では団員達がベルをぶちのめそうと躍起になっているとラウルからの報告があったので、それを諫めようとフィン達は本営から出た。下らない理由で【ヘスティア・ファミリア】との繋がりを断たせる訳にはいかないと。