ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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異常事態(イレギュラー)

「っ~~~~~~……い、今のは効いたぁ~……。だ、大丈夫ですか、レフィーヤさん?」

 

「ど、どうして、私なんかを……?」

 

 ステルス化してる防具の性能や特殊能力のお陰で鞭の打撃力を抑えてくれたとは言え、それでも相当の痛みが僕の背中に走った。地味に結構痛いが、決して動けない程ではない。

 

 痛みを堪えながらもレフィーヤさんの安否をするも、彼女は僕に抱き抱えられながらも信じられないように見ていた。

 

「どうしてって……仲間を助けるのは当然じゃないですか」

 

「仲間? で、でも、私と貴方は違う【ファミリア】で……」

 

「そんなの――っ!」

 

 違う派閥だからって関係と言おうとするも、触腕型モンスターが再び二つの鞭を振るおうとしたので、僕はすぐに離れた。

 

 すぐに長銃(アサルトライフル)から長杖(ロッド)――カラベルフォイサラーに変えて、向かってくる鞭を――

 

「斬り裂け、闇の衝撃波! ルーフコンツェルト!」

 

 二度の連撃で叩き落した後、三撃目に×字の衝撃波を放って弾き飛ばした。

 

「まだまだ!」

 

 更にルーフコンツェルトの裏技を発動させ、今度は斬撃の輪を一発発射させた。

 

 それは弾き飛ばした二つの鞭の先端を簡単に斬り裂く。

 

『~~~~~~!!』

 

 自身の一部を斬られた事で、怪音波とは違う痛々しい悲鳴をあげる触腕型モンスター。

 

 まるで生まれて初めて痛みを味わっているような感じだ。もしかしたら、此処に落ちた冒険者達やモンスターは、アレにまともなダメージを与える事が出来ずにやられたかもしれない。

 

 触腕攻撃と、対象の動きを止める怪音波。これまでの相手をそれだけでずっと倒し続けたんだろう。そして今回落ちてきた僕とレフィーヤさんに対しても、今まで通りやれば問題無く勝てると高を括ったんだろう。

 

 けれど、僕から予想外の反撃を喰らい続けてる事により、触腕型モンスターは痛みを受けながらも混乱している様子だ。こんな筈では、みたいな感じで。

 

 さて、向こうが混乱している隙に、早くレフィーヤさんも戦闘に参加してもらわないと。

 

「レフィーヤさん」

 

「え? あ……」

 

 僕が即行で触腕型モンスターに反撃をした事が予想外だったのか、レフィーヤさんは少し呆然気味になっていた。

 

 そんな彼女に僕は気にせず言葉を続ける。

 

「さっきの返答ですが、他所の【ファミリア】だからって関係ありません。僕達は遠征に参加した仲間なんですから、助け合うのは当然です。貴女を見捨てるなんて選択肢は一切ありません」

 

「………………」

 

「レフィーヤさんが僕に対して、何らかの負の感情を抱いているのは何となく分かります。ですが、今はそれを抜きにしてどうか力を貸して下さい。この状況ではどうしても貴女の魔法が必要なんです」

 

 僕一人であの触腕型モンスターを倒せるけど、かなりの時間を要してしまう。それを一気に短縮する事が出来るのは、レフィーヤさんの魔法だ。

 

 ラウルさんから聞いた話だと、レフィーヤさんはリヴェリアさんの直弟子と言ってた。更にはあの人に次ぐ魔力を持ち、複数の強力な魔法を使う事が出来るが故に【千の妖精(サウザンド・エルフ)】と言う二つ名で呼ばれていると。

 

 ダンジョン59階層で『精霊の分身(デミ・スピリット)』と戦った時、レフィーヤさんが撃った魔法はアレに効かなかったけど確かに凄かった。リヴェリアさんの弟子であるので、僕以上に強力な魔法を使える事を改めて認識した。

 

 故に僕は頼ろうとしてる。この状況を一気に打破する事が出来るのは彼女しかいないと確信しているので。

 

「大切な仲間であるレフィーヤさんを、僕が全力でお守りする事を誓います!」

 

「! い、いきなり何を言ってるんですか貴方は!?」

 

 ん? 何で突然顔を赤らめて焦った声を出しているんだ?

 

 僕はただ、レフィーヤさんに襲い掛かる敵の攻撃を防ぐ意味で言っただけなのに。

 

『――――!!』

 

 すると、混乱状態から戻ったのか、触腕型モンスターが痺れを切らしたように動き始めようとした。

 

 先端は斬られようとも、まだまだ充分な長さのある鞭を振るう仕草をしている。

 

 思っていた以上に早かったな。レフィーヤさんに決断して欲しい時に……!

 

「はぁっ!」

 

 交互に襲い掛かってくる鞭をカラベルフォイサラーで叩くように振り払うが、向こうは負けじと再度振るい始める。

 

 鞭を防がれた事に埒が明かないと思ったのか、触腕型モンスターの動きが変わる。

 

 途端に頭部の冠を発光させた。

 

 あの仕草を見て動きを止める『怪音波』を放たれるのを既に分かっている僕は――

 

「ラ・フォイエ!」

 

 炎属性テクニック――ラ・フォイエを使った。

 

 僕がテクニック名を告げた瞬間、アレの頭部から突然爆発が起きた事により『怪音波』の発動を許さず、光冠に炸裂する。

 

『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ァッ!?』

 

 一先ず撃てるだけ撃とうと爆発の数は八。

 

 テクニックによる連続法撃全て命中し、触腕型モンスターの光冠が炎上する。

 

 頭部の器官が焼け落ちた為か、先程まで準備していた怪音波を放つ気配がなかった。やはり器官が怪音波を出す発生源のようだ。

 

 手段を潰した事によって、触腕型モンスターの攻撃は鞭だけとなった。

 

「レフィーヤさん! 早く呪文を!」

 

 呆然としている彼女に僕は叫ぶ。

 

 ラ・フォイエの炎に悶え苦しんでいる触腕型モンスターは、完全に怒りと殺意の眼差しを僕達にそそいでいた。

 

 もっと威力のあるイル・メギドで単眼を狙えば倒せるかもしれないが、アレは詠唱を除いても発動するのに時間が掛かる。向こうが最大の隙を見せなければ使う事が出来ない。

 

 その為には、どうしてもレフィーヤさんの協力が必要だ。

 

 だけど肝心の彼女が未だに動こうとする気配が無くて――

 

「……私、貴方のこと、嫌いです」

 

 ――え?

 

 何かぽつりと呟いていたが、小さくて聞き取れなかった。

 

「でも、こんな私を信じてくれている。だから――いきます!」

 

 そう言いながら彼女はさっきまでの雰囲気とは打って変わって、魔法を撃つ為の詠唱準備をしようと構えた。そして彼女から大きな魔法陣が展開される。

 

 やっとその気になってくれた。となれば、僕のやる事は決まっている。

 

「アレは『魔力』に反応します! その間は詠唱している私を守って下さい!」

 

「はい!」

 

 そう、僕の役目は彼女を守ることだ。強力な魔法を使うレフィーヤさんの盾として。

 

「【解き放つ一条の光、聖木(せいぼく)弓幹(ゆがら)】」

 

 詠唱を口ずさんだ瞬間、それに反応した触腕型モンスターが彼女に向かって二本の鞭を振るう。

 

 レフィーヤさんの細い体を粉砕しようとする鞭を、僕は難なく叩き落す。 

 

(本当にレフィーヤさんの言う通り、魔力に反応しているな。おまけに攻撃もかなり単調どころか、雑になっている)

 

 さっきまでの攻撃は明確な殺意を持った攻撃をしていたのに、今の触腕型モンスターは全く何も考えていないように見える。僕が防いでいるにもかかわらず、ただ只管レフィーヤさんを狙っているだけだ。まるで僕に対する怒りと殺意を忘れているように。

 

 もしかしたらこのモンスター、魔力に反応し続ける限り、他の事は一切考えられないかもしれない。芋虫型や植物型も同様に。

 

「【狙撃せよ、妖精の射手】」

 

 詠唱を聞きながらも何度も敵の鞭を叩き落しながら考えている中、向こうは突然やり方を変えた。

 

(同時攻撃!?)

 

 触腕型モンスターの鞭が交差して放たれる事に、僕は思わず目を見開いた。

 

 確かに一回ずつやるより同時に振るえば、威力も倍増する。

 

 意外にも考えていたと驚くも、僕はやらせまいとカラベルフォイサラーと共に突撃する。

 

「ぐっ!?」

 

 側面を叩くが、さっきより衝撃が強かった為に、僕の身体が吹き飛んだ。

 

 だけど、防ぎ切った事に変わりない。

 

「【穿て、必中の矢】!!」

 

 そして、レフィーヤさんの詠唱が完了した。

 

 次の瞬間、触腕型モンスターの真下に向かったレフィーヤさんは、両手に持っている杖を頭上に突き出す。

 

 大きな魔法陣を全域に広め、魔法名を口にした。

 

「【アルクス・レイ】!!」

 

 レフィーヤさんの杖から放たれる光の砲撃。

 

 明らかに僕が使う光属性テクニックよりも威力は上だろう。

 

 フォトンを結晶化して光の槍を生成後、前方に向かって発射する中級の光属性テクニック――ラ・グランツと少しばかり似ている。尤も、威力は向こうの魔法と全然違うけど。

 

 それは別として、突き進む光柱は触腕型モンスターの鞭を軽く蹴散らされ、そのまま本体へと向かって直撃する。

 

『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッ!?』

 

「なっ!?」

 

 アレは悲鳴を上げながらも、レフィーヤさんの魔法を両腕を使って受け止めていた。

 

 並みのモンスターが直撃したら確実に倒せる威力の筈なのに、それを受け止めている触腕型モンスターの防御力は尋常じゃない。

 

 もしかしたら、魔法に対する防御力が高いモンスターかもしれない。

 

 当然レフィーヤさんも気付いている筈だ。しかし、彼女はそんな事を気にせず押し切ろうとしている。

 

 その直後、周囲の肉壁がボコボコと動き出した。

 

「これは……!」

 

 肉壁が隆起してる事にレフィーヤさんが驚きの声を発した。

 

 こんな状況を作っているのは恐らく触腕型モンスターの仕業だろう。このまま魔法に押し負けるのは時間の問題だと悟り、僕達を道連れにしようと。

 

 焦り出すレフィーヤさんが何とか押し上げようとするも、迫りくる肉壁に表情を歪ませている。

 

 しかし――

 

「来たれ、暗黒の門!」

 

「ッ!?」

 

 僕が詠唱を紡いだことにレフィーヤさんは反応した。

 

「混沌に眠りし闇の王よ 我は汝に誓う 我は汝に願う あらゆるものを焼き尽くす凝縮された暗黒の劫火を 我が前に立ちふさがる愚かなるものに 我と汝の力をもって 等しく裁きの闇を与えんことを!」

 

『――!?』

 

 僕が詠唱をしている最中、触腕型モンスターの単眼に魔法陣が出現し、膨張している事に戸惑いの声をあげていた。

 

 だけど、僕は気にせず闇属性テクニックを発動させる。

 

「ナ・メギド!」

 

 臨界点を超えて膨張した魔法陣から強力な闇の爆発が起きた。その直後、レフィーヤさんの魔法を抵抗していた筈の触腕型モンスターの動きが止まって一気に押されていく。更には押しつぶそうとしていた肉壁も止まっている。

 

「今ですレフィーヤさん!」

 

「ッ! 魔力全開ぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいッ!!!」

 

 僕の叫びにレフィーヤさんが空かさず、全ての魔力を解き放った。

 

 極大となった光柱は触腕型モンスターを跡形もなく吹き飛ばす。

 

 そしてそのまま地面だけでなく森の屋根も突き抜け、水晶の夜空が僕達の視界に飛び込んでくる。

 

 同時に、モンスターを失った所為か、周囲の岩盤が一気に崩壊し始める。

 

「レフィーヤさん!」

 

「えっ! ちょっ!?」

 

 全開で魔法を放ったレフィーヤさんを、武器を収納した僕は即座にお姫様抱っこの要領で抱きかかえ、膝を思いきり屈めた後に跳躍する。

 

 アークスの脚力をもって高く飛び上がり、崩れ落ちる岩を利用しながら脱出した。

 

「は、放して下さい! こんなところをアイズさんとティオナさんに見られたら……!」

 

「ちょっ! あ、暴れないで下さい!」

 

 非常時だと言うのに、レフィーヤさんが暴れるので脱出するのに凄く一苦労するのであった。




久々にナ・メギドを出しました。

中二病的なナ・メギドの詠唱を見て思わず読んだ方はいるでしょうか?

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