ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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後日譚として更新するつもりでしたが、内容が番外的な物ですので変更しました。

今回はフライング投稿です。


異常事態(イレギュラー) 番外

 遠征から戻って来たベルは、ヘスティアにある事を問い質そうとしていた。

 

「神様、僕の二つ名が【亡霊兎(ファントム・ラビット)】になったみたいですが……」

 

「え、何で知ってるんだい?」

 

「遠征中の時に偶然知ったんです」

 

「ほほう、それは凄い偶然だね」

 

「そんな事より、何で(ラビット)が入ってるんですか? 僕としては【亡霊(ファントム)】だけで充分なんですけど」

 

「あ、あ~……一応ベル君のリクエストも言ってみたんだけどね。実はあの時――」

 

 説明を求める事に、先日にあった出来事をヘスティアは話そうとする。

 

 

 

 

 

 

 ベルを加えた【ロキ・ファミリア】が『遠征』に出発して四日目の頃に遡る。

 

 場所は地上で、オラリオの中央にそびえ立つ白亜の巨塔『バベル』。

 

 その三十階の大広間に多くの神々が足を運んでおり、三ヵ月に一度開かれる神の会合――『神会(デナトゥス)』が開かれていた。

 

 下界に娯楽を求めて降臨した神々の大半がいい加減な性格と化している為、殆どが不真面目でふざけた内容が多くを占めている。

 

 しかし、その中には冒険者の一生に関わる称号の進呈『命名式』などが含まれている。他にも大事な内容も含まれているが、そこは割愛させてもらう。

 

(こ、ここまで狂っているなんて……!)

 

 今回の『神会(デナトゥス)』にはヘスティアも参加している。理由は当然、ベルの称号(ふたつな)を決める為だ。

 

 隣に座っている神友――ヘファイストスからは聞いてはいたものの、予想以上の酷さにドン引きしていた。

 

 しかし、ヘスティアはめげていない。大事な愛しい眷族であるベルの為にも無難な二つ名を何としてでも勝ち取ろうと決心しているので。

 

 因みに彼女はベルから『白き狼』や『亡霊(ファントム)』等の二つ名を要望されている。それを聞いて思わず、遠い目となってしまった。どんなに強くても、やっぱりそう言うのに憧れているんだなぁと。

 

 ヘスティアがそう思いだしてる最中、『神会(デナトゥス)』は命名式に進んでいた。

 

 対象冒険者の名前が出た瞬間、恩恵を与えた主神がビクッと身体を震わせる。そして、いやらしい笑みを浮かべる神々が痛恨の二つ名を考案し、決定した直後に絶望の雄叫びをあげる。

 

 それが二人目、三人目、四人目と、痛々しい称号を与えられて主神が慟哭し続けるも、他の神々はその不幸を嘲笑っていた。下界で言うなら『人の不幸は蜜の味』と言ったところだろう。

 

 その中にはヘスティアのもう一人の神友――タケミカヅチも含まれていた。彼の眷族である女性冒険者――『ヤマト・命』に無難な称号をしようと決めていた。

 

 だが――

 

「じゃあ、命ちゃんの称号は【絶†影】に決まりで」

 

『異議なし』

 

「うわぁ、うわぁあああああああああああああああああああああっ!?」

 

 結局は他の冒険者達と同様、途轍もなく痛々しい称号となってしまい、タケミカヅチは慟哭を迸らせていた。

 

(タケ、本当にすまない!)

 

 止める事が出来ない事にヘスティアは心の中でタケミカヅチに只管謝り続けていた。

 

 本当であれば自分が二つ名を決めたかったが、『神会(デナトゥス)』に初参加である為に何も出来ない。ただあくまで提案をするだけだ。例え提案しても、他の神々が即座に却下するのがオチなので。

 

 次に【ロキ・ファミリア】のアイズ・ヴァレンシュタインも出た。彼女は階層主(ウダイオス)を一人で倒して『Lv.6』になった為、命名式の対象となっている。

 

 これらを知った神々はその偉業に戦慄するも、調子に乗って【神々(おれたち)の嫁】とふざけた二つ名を提案した。

 

 だがしかし、すぐに却下された。司会進行役かつ主神ロキが鶴の一声による一睨みで一蹴されてしまったから。

 

 ふざけていた神々は相手が都市最大派閥の主神だからか、即座に平伏しながら心からの謝罪をした。誰もがロキの報復を恐れ、強制天界送還されたくないので。

 

「さて、最後はドチビ……ヘスティアんところのベル・クラネルやな」

 

(きた……!)

 

 他の神達とは違う扱いにヘスティアは内心差別だと歯軋りするも、ベルの名が出た瞬間に緊張が走る。

 

「待ってましたぁぁーーー!」

 

「やっと来たぜぇーー!」

 

「この時をどれだけ待ち望んだ事か!」

 

 すると、他の神々からも凄まじい反応を示していた。

 

 それは当然と言うべきかもしれない。何しろベルは『神会(デナトゥス)』が始まる前に、『Lv.1』でありながらもオラリオ中を轟かせる程の偉業を成し遂げていた。そして『Lv.2』にランクアップしたのだから、神々が気にならない訳がない。

 

 冒険者になって一ヵ月未満である筈なのに、中層に進出して階層主(ゴライアス)を単独撃破。その後に百名以上の眷族がいた【アポロン・ファミリア】と戦争遊戯(ウォーゲーム)をやり、助っ人を一人付けて、たった二人だけで『攻城戦』に勝利。更には未知の武器や魔剣、数々の魔法を披露。

 

 余りにも異常で、余りにも反則染みた強さを持つベル・クラネルに、オラリオにいる神々はあの手この手を使って引き抜こうと考えていた。しかし、戦争遊戯(ウォーゲーム)終了後にヘスティアがベルを連れて行方不明になってしまった事で頓挫してしまう。故に決めた。この『神会(デナトゥス)』で、ヘスティアからベル・クラネルについて根こそぎ情報を頂いた後、積極的に動いて引き抜こうと。

 

「なぁなぁヘスティア。あの少年、一体何者なんだ?」

 

「あんなに可愛くて強い子を独り占めなんて酷いじゃない」

 

「と言うか、なんでヘスティアの眷族になったんだ?」

 

「俺の所に来てくれれば大歓迎だったんだけどなぁ~」

 

「教えろよ。ベル・クラネルについて知ってるのお前だけなんだからさ」

 

「あの武器や魔剣、そして三種類以上の魔法。全て吐いてもらおうか」

 

「言っておくが拒否権はないぜ♪ 全部吐くまで返さないからな♪」

 

『さぁ! さぁ! さぁ!』

 

「ぐっ……! い、今は命名式なんだぞ! 称号を決めるのが先だろう!?」

 

 多くの神々から速攻で問い詰められる事にヘスティアは気圧され気味となるも、何とか抵抗するも無駄だった。

 

「いやいや、そんなの後回し」

 

「先ずはベル・クラネルについての情報だ」

 

「こっちは知りたくてウズウズしてるんだ。教えてくれなけりゃ称号は決めん!」

 

「早く教えてくれよ~! あの少年の全てを知りたいんだよ!」

 

「俺達から逃げようたってそうは行かないぜ♪」 

 

「さぁ吐け! お前の持つ情報を全て!」

 

『吐け! 吐け! 吐けぇぇ!』

 

「………………」

 

 もう完全にベル・クラネルの情報公開を求められていた。

 

 ヘスティアは思わず隣のヘファイストスを見るも、彼女は嘆息しながらも首を横に振った。自分ではもう如何にも出来ないと言うように。

 

 因みにヘファイストスも内心ベルの事を知りたがっていた。申し訳ないと思いつつも、魔剣について自身の眷族――椿やヴェルフが凄く気になっていたので。

 

 完全に命名式とは別物の空気になっている中――

 

「よし、もう一回黙れ!」

 

『…………………』

 

 すると、司会のロキが突然一喝した。

 

 その直後には先程まで騒いでいた神々が急に静まり返り、何事も無かったかのように無言となる。

 

 予想外の展開にヘスティアは一瞬戸惑うも、ロキは気にせず続けようとする。

 

「自分らがドチビからあの子について訊きたがってるのはよ~く分かった。けど止めときぃ。今は命名式の最中や。それは却って自分らの首を絞める事になるで」

 

「おいおいロキ、それはないだろぉ!?」

 

「ってか、ベル・クラネルについて知りたがっているのはロキじゃなかったか!?」

 

「お前らしくないぞ! 何でここで水を差すんだ!?」

 

 他の神々は当然反発する。いくら都市最高派閥の主神だからとは言え、自分達が知りたがっている情報を遮らせる事は流石に我慢出来ないと。

 

 こうなる事を分かっていたのか、ロキは嘆息しながらも理由を告げようとする。

 

「しゃ~ないなぁ。これはあんまり言いたくないんやけど、ベル・クラネルはドチビの【ファミリア】に入団する前、自分らの【ファミリア(ところ)】へ行って、全部門前払いされたらしいで。うちの【ファミリア】も含めてな」

 

『………へ?』

 

 全く初耳だと言わんばかりに、神々が目が点になっていた。

 

 【ファミリア】の主神は下界の子供が自身の所に入団希望者がいれば通す事になっている。その者を見定めて入団する資格があるかを確かめる為に。【ロキ・ファミリア】も当然その内の一つだ。

 

 しかし、ベルは各ファミリアの主神と会って話しをする事もなく、その眷族達の独断によって門前払いされてしまった。外見が弱そうな子供、怪しい奴だという勝手な理由で。

 

 それを知ったロキは最初、勝手な事をした団員にお仕置きをしようかと考えていた。けれど、自分以上に怒っていた団員(リヴェリア)がいた事により、一先ずは収める事にする。

 

 門前払いされたベルの心情を考えて、無理矢理引き抜く事はしないでおこうと決めている。これ以上の悪印象を抱かれれば色々と不味いので。

 

 同時にロキは他の神々にも警告をしておこうとする。自分達の眷族が独断で追い出したのに、それを手のひら返しすれば却って最悪な事態になると。

 

「……待て待て、そう言えば以前、俺に会おうとしていた怪しい子供を追い出したって話を聞いたような……」

 

「俺の所も似たような話が……」

 

「まさか、門番やってたアイツ、ベル・クラネルを追い出したんじゃ……」

 

「あれ? まさかあの子……!」

 

『後でアイツ等に確認しないと!』

 

 何か思い当たる節でもあったのか、神々の中には自分の眷族がやらかしたんじゃないかと不安を抱き始めていた。

 

 先程まで問い詰められかけていたヘスティアは、敢えて何も言わなかった。ベル君を外見で判断しておいて、今更何をしたところでもう遅いと。

 

 ロキはそれと別に――

 

(取り敢えずは一応釘をさせたみたいやな。つっても、それを分かっていながらも諦めとらん奴もおるな。問題は……)

 

 周囲の神々の反応を見て、暫くベルを無理矢理引き抜こうとする神は大半いなくなったと観察していた。

 

 フィン達が今後ベルと友好的な関係を築こうとしている為、自分は他の神達が余計なちょっかいを掛けないよう釘を刺しておいた。

 

 けれど、そうしても全く気にしていない神が複数いた。その中でロキが一番に警戒しているのが、銀髪の女神――フレイヤだ。彼女はロキからの警告に一切表情を変えず、ただ面白そうに眺めているだけ。ベルの話題になった瞬間、待ってたと言わんばかりに更に笑みを浮かべていた。

 

「そうね。ロキの言う通り、最初は勝手な理由で門前払いした後、実はとんでもない実力者だと知って根掘り葉掘り問い質そうとするのは良くないわ。ヘスティアやこの子の心情を考えれば、さぞかし嫌な気分でしょうね」

 

(この色ボケがうちに賛同して、ドチビやベルを擁護するっちゅう事は………やっぱり狙っとるな)

 

 フレイヤがベルを狙っているとロキは既に予想していたが、今回の『神会(デナトゥス)』で確信した。あの女神が誰かの為に動くと言う事は即ち、その人物を見初めていると知っている。

 

 厄介な相手に目を付けられたと改めて内心舌打ちするも、敢えて何も言わない事にしておいた。ロキはとある個神的な事情で、フレイヤに口出しする権利がないので。

 

 因みにフレイヤの言い分に、自分の近くにいた男神――ヘルメスが先程から妙だった。ベルのプロフィールを見て何か思うところがあったように笑みを浮かべた後、フレイヤの言い分に支持すると少し気色悪いモーションをしている。

 

 その後、漸くベルの二つ名を決める事になるも――

 

「なら、【美神の許婚(ヴァナディース・フィアンセ)】なんてどうかしら?」

 

「却下だぁぁぁぁ! いつからベル君が君の許婚になったんだぁぁぁ~~!?」

 

 フレイヤがいきなり如何にも自分の物と言うような二つ名を候補に挙げ、主神のヘスティアが即座に却下したのは言うまでもない。

 

 これには流石のロキも口を出し、ベルとの今後の付き合いも考慮しようと(非常に気に食わないが)大嫌いなヘスティアを擁護する。

 

 他にも【死兎(デス・バニー)】、【幽霊兎(ゴースト・ラビット)】、【強化兎(ストロング・アルミラージ)】等々と……。ベルの外見故か、殆どが兎を連想させる二つ名ばかりだった。

 

 このままだとおかしな二つ名になりそうなので、一応ヘスティアがベルの希望で【白き狼】はどうかと尋ねるも――

 

『ないない。狼と呼ぶには無理があり過ぎる』

 

 と、一斉に却下される事となった。

 

 ヘスティアもやっぱりなぁと思っていたのか、もう一つの候補として【亡霊(ファントム)】も出した。

 

 これには神々も何かピンと来たようで、それを踏まえた二つ名を考慮しようとする。その結果……【亡霊兎(ファントム・ラビット)】となった。

 

 結局は兎が入った二つ名だが、一応ベルの要望には入っているとヘスティアはこれ以上何も言わない事にしようと完結させる。

 

 ベル・クラネルの二つ名が決まった中――

 

(フレイヤがあそこまでベル・クラネルを気に入るとは……。目的のついでに私が魅了して(とりこ)にすれば、あの女は一体どんな顔をするだろうねぇ……)

 

 もう一人の美神――イシュタルが良からぬ事を考え始めようとする。

 

 しかし、それを本当に実行して【ファミリア】どころか己の身を滅ぼしてしまう事態になると、この時のイシュタルはまだ理解していなかった。




ベルの二つ名決定の経緯でした。

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