ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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今度はロキ・ファミリアです。

『ロキ・ファミリアの遠征㉑.5』の最後に書いてある驚愕の事実が判明します。

フライング投稿です。


遠征の後日談② 【ロキ・ファミリア】前編

 ベルと別れた【ロキ・ファミリア】は、【ヘファイストス・ファミリア】の団長椿にも同行の感謝と別れを済ませた。その直後に椿はベルの所へ向かおうとしたが、【ヘファイストス・ファミリア】の()()()達が即座に拘束して阻止される。彼等はフィン達から前以て椿を止めるよう事前に頼まれていたので、叫ぶ彼女の声を無視して自身の本拠地(ホーム)へと戻っていく。

 

 後はもう大丈夫と判断し、彼等も自身の本拠地(ホーム)――『黄昏の館』へと戻ろうと足を運ぶ。

 

 以前にベルを追い出した門番を見た途端にフィンは咄嗟に思い出すも、そこは団長としての仮面を崩さずに対応する。しかし、他はそう言う訳にはいかなかった。主に女性団員の殆どが。

 

 リヴェリアはあの杖(・・・)に対する思いが強い事もあってか、思わずギロリと睨んだ。それを知らない門番達は以前説教された件が蘇るも、自分が犯した失態をまだ怒っていると判断して甘んじて受け入れた。………この時までは。

 

 遠征に参加した女性団員の殆どが門番達に軽蔑の眼差しを送っていた。理由は当然ある。ベルが身体に染みついた体臭を消し、清潔にしてくれる治療魔法――アンティの件だ。

 

 ダンジョンへ行って帰還した際、必ずと言っていいほどにモンスター臭が身体に染みついてしまう。女性冒険者にとって、それは一番嫌な事である。それが体臭とならないよう、帰還してすぐ念入りに身体を清めるほどだ。

 

 けれど、遠征中の間にそれは無理だった。体臭を消すにも安全階層(セーフティポイント)で水浴び、もしくは身体を拭く事しか出来ないので。【ロキ・ファミリア】の女性団員達は、何とか工夫しつつも体臭を消していた。尤も、それで完全に体臭を消す事は出来ないが。

 

 今回の遠征もいつも通りのようにやっていた中、治療師(ヒーラー)と雇われたベル・クラネルが(女性にとって)重大な事実を明かした。彼が使う治療魔法は毒などの異常だけでなく、身体に染みついた体臭を消して清潔にしてくれると。

 

 その事実を知って、アキを筆頭にした女性団員達は一斉に頼んだ。直後、ベルの治療魔法によって今まで悩まされた体臭は一瞬で無くなり、地上にいる時の清潔な状態になった。と言っても、ダンジョン内を移動している間は再びモンスター臭が身体にこびり付くが。

 

 もしもベルが【ロキ・ファミリア】に入団していれば、ダンジョン探索や遠征でも体臭問題は解消されていただろう。しかし残念な事に、その彼は門番によって門前払いされてしまった為に、別の【ファミリア】へ入団する事になってしまった。

 

 それ故に【ロキ・ファミリア】の女性冒険者の殆どが殺意を湧かせた。『余計な事をしなければ、女性にとっての体臭問題(なやみ)を一気に解決できた筈なのに』と、恨みを込めた軽蔑の眼差しを送るほどだ。事情を知らない門番達は、一体何故睨まれているのかを知らずに戸惑っていたが、後にベル関連だと判明して更に肩身が狭くなる日々を送る事になる。

 

 閑話休題(それはさておき)

 

 本拠地(ホーム)に戻って解散した団員達はそれぞれの部屋に戻った後、一気に疲れと眠気が襲いかかり、即行で寝台(ベッド)に倒れ込んで泥のように眠り込んだ。

 

 

 

「そんでフィン、ベルは無事なんやろな?」

 

 多くの団員達が眠りに付いている中、主要幹部達はある報告をしようと執務室へ訪れていた。

 

 既に入っているロキからの問いにフィンが答えようとする。

 

「ああ、すっかり元気になって自力で本拠地(ホーム)に戻ったよ」

 

「さよか、それは何よりや」

 

 返答を聞いたロキは一先ずと言った感じで安堵の息を漏らした。

 

「ベート経由で手紙を見た時はマジで肝が冷えたわ~。もし解毒の特効薬を用意出来ずにベルが重傷のままやったら、ドチビに色々と文句言われるところやった」

 

「………確かに、神ヘスティアが黙っていなかっただろうね」

 

「「………………」」

 

 数日前にロキはベルが毒妖蛆(ポイズン・ウェルミス)の毒で負傷したと知って、本拠地(ホーム)に待機してる団員にベートの手伝いをするよう指示した。

 

 大嫌いなヘスティアに頭を下げる事にならないかと焦っていたが、ベルが元気になった報せを知って漸く肩の荷が下りた。これで文句を言われても、自分達はちゃんとベルを治療をしたとの言い訳が出来るので。

 

 だが、この時のロキは知らない。ベルが用意した特効薬で回復せず、自力で治療した事を。

 

 フィンは思わず真実を言いそうになったが、それは後にした。この場にいるリヴェリアとガレスも複雑な表情をしていたが、フィンと同様に敢えて何も言わないでいる。

 

「ま、無事で何よりなら結果オーライや。そんで、遠征の内容についてはフィンの手紙で粗方知ったが、何でベルについて書かなかったん? 『ベル・クラネルについては、自分が戻ってから直接報告する』とか書いてあったが」

 

「今回の遠征では、またしてもベルに色々と本気で驚かされてね。手紙で書くには内容が余りにも多すぎる上に、見せたところでそう簡単に受け入れられないだろうから、敢えて書かなかったんだ」

 

「? 何や、その凄く勿体ぶった言い方は。ベルが凄いのは既に知っとるわ。こちとら、ゴライアス単独討伐や戦争遊戯(ウォーゲーム)で散々驚かされた身なんや。ベルがどんな凄い事をしたのか聞いたところで、今更驚いたりせぇへんわ」

 

『……はぁっ』

 

 もう驚きはしないと言い切るロキの発言に、フィン達は思わず嘆息した。同時に内心こう思った。そう言っていられるのは今の内だと。

 

「ロキ、その言葉忘れるなよ」

 

「後でワシ等に八つ当たりは無しだからな」

 

「リヴェリアにガレスまで、ホンマに一体何なん?」

 

 警告をするリヴェリアとガレスにロキは更に不可解な表情となった。

 

 二人の言い分を軽く流し、一先ずはと言った感じでロキは問おうとする。

 

「まぁええわ。そんで、ベルは今回の遠征でどんな活躍したん?」

 

「では報告しよう。治療師(ヒーラー)として雇ったベルがダンジョン中層以降での活躍を――」

 

 長い内容だと分かっていながらも、フィンは語り始める。

 

 最初にベルが強化種のミノタウロスと戦闘時に強力な魔法を使って倒した内容についてだが、ロキはこれと言って驚かなかった。ミノタウロス以上に強いゴライアスを一人で倒したから、内心とんでもない奴だと驚いた程度だ。

 

 中層以降では【ヘファイストス・ファミリア】の椿と二人で木竜(グリーンドラゴン)と戦って完勝。下層や深層にいるモンスターと戦っても殆ど無傷で撃破。モンスターとの戦闘で発生した複数の怪我人を、一度の治癒魔法だけで即座に完全回復。モンスターからの奇襲に慌てず、後方から数々の魔法で一掃。『Lv.2』とは思えない活躍だが、ロキはそれでも冷静さを保っていた。だが、ここから一変する。フィンの判断でベルをダンジョン深層51階層の一隊(パーティ)に加わった後から。

 

 突入前にベルが保険と称して、一隊(パーティ)全員に【ステイタス】を上昇(ブースト)させる魔法を行使。進行中にトラブルが起きて、後衛に配置していたベルが急遽前衛に移り、回数制限の無い複数の魔剣を披露して深層モンスターを撃破――の内容でロキが待ったを掛けるも、フィンはそれでも続ける。

 

 『精霊の分身(デミ・スピリット)』の強力な魔法で全滅しかかったところを、ベルがエリクサー以上の回復アイテムを使用して一隊(パーティ)全員を完全回復。その後、ベルが所有している強力な杖をリヴェリアに一時的貸与。その杖によってリヴェリアが放つ魔法が普段以上の威力を解き放って、『精霊の分身(デミ・スピリット)』の防御を貫通。アイズが止めを刺し損ねたモンスターを、ベルが決めて戦闘終了。

 

 その後、毒妖蛆(ポイズン・ウェルミス)の大量発生による異常事態(イレギュラー)でベルが毒で負傷して気絶するも、ベートが地上へ戻っている間に目覚めてすぐ治療魔法を使って自力復活。早々に他の負傷者達に治療魔法を駆使し、ベートが戻って来た翌日に地上へ帰還。余談として、ベルがラウルに付き添ってくれたお礼として、地上へ戻るまでの間、自身の武器をラウルに貸与。

 

「――とまあ、こんな所だ。内容は少々省いているが、詳しい事は明日以降に話すよ。ここまでで何か質問は――」

 

「ふざけんなぁぁぁああああああああああああああああああああ!」

 

 フィンが一通りの報告を終えて質問を問おうとしてる最中、我慢出来なくなったロキが力強く叫んだ。前回(番外編 戦争遊戯⑤)と同じく、本拠地(ホーム)全体に響く程の大絶叫で。

 

 因みにロキの怒号が聞こえたのか、本拠地(ホーム)で泥のように眠っている団員達が一瞬目覚めるも、またしても夢の中へと戻っていく。主に驚いたのは、遠征に参加しなかった団員達の他、入り口前にいる門番達だけだ。まだ眠ってない遠征に参加した団員もいるが、ロキの叫びは恐らくベル絡みだろうと思って、何事も無かったかのように眠りに付こうとしている。

 

「静かにしろ。今は遠征で疲れた団員達が寝ているんだぞ」

 

「こんな時間に叫ぶのは非常識じゃぞ」

 

「やかましい! ベルの方が一番非常識やないか!」

 

「「………………」」

 

 リヴェリアとガレスが突っ込むも、ちょっとズレた返しをするロキ。それに関して思うところがあるのか、二人は何も言い返そうとしなかった。

 

「突っ込みたいところは山ほどあるが、うちが一番言いたいのは主に最後の方や! 毒妖蛆(ポイズン・ウェルミス)の毒を受けても自力で治した!? その後に他の負傷者達に治療魔法を施した!? 何やそれは!? ちゅうことは何か! ベートや本拠地(ホーム)におるウチ等が大至急で用意した解毒薬が無駄になったやないかぁ!」

 

「うん、まぁ平たく言えばそんなところだね」

 

 ロキの叫びにフィンは一切否定せずにアッサリと答えた。

 

「ベルゥゥゥゥゥ! 何で早く目覚めなかったんやぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「仕方なかろう。ワシ等とて、彼奴(あやつ)が目覚めて早々に治療するなど予想しなかったんじゃ」

 

「その通りだ。それにベルは善意で団員達を治療したんだから、我々が責める理由などない」

 

 ベルを訴えそうな雰囲気を見せるロキに、ガレスとリヴェリアが空かさず彼を擁護する。

 

 毒妖蛆(ポイズン・ウェルミス)の毒は非常に厄介な毒なので、いくらベルでも一筋縄ではいかないと判断していた。それを覆して自力で目覚め、更には他の負傷者達も治療したと誰が予想出来るだろうか。

 

「ロキは納得しないと思うが、ここは穏便に済ませてくれ。結果として、彼は僕達【ロキ・ファミリア】の恩人でもあるんだ」

 

「ぐっ……た、確かにな」

 

 二人の擁護に加え、フィンも責めてはいけないとロキを宥めた。

 

 確かに最後の部分さえ除けば、ベルは今回の遠征で【ロキ・ファミリア】に多大な貢献をしてくれた。それに用意した解毒薬が無駄になったとは言っても、本拠地(ホーム)でストックすれば良いだけの話だ。もしもベルがいない時、団員の誰かが毒妖蛆(ポイズン・ウェルミス)の毒で負傷した時に使えば良いので。

 

 そう考えたロキは大人になろうと怒りを抑え込む為、一旦深呼吸をする。

 

「取り敢えずは理解したわ。ベルがあの時以上にとんでもない奴っちゅう事は。余りにも非常識過ぎて突っ込みどころ満載やけど………それでもベルが門前払いされた件は物凄く痛いわぁ~!」

 

「悪いがそれは口にしないでくれ。今の私はあの馬鹿者共に対する怒りが再発しているんでな」

 

「……さ、さよか」

 

 門番の話題になった途端、リヴェリアから凄まじい怒気を発する事にロキは一気に大人しくなった。

 

 酒場で初めてベルに会った際、門前払いされたと知った彼女は恐ろしいと思う程の説教をした。あの時ほどリヴェリアが凄く恐ろしかったとロキは今も思っている。

 

「そんな事よりもだ。ロキ、すまないが【ステイタス】更新をしてくれないか?」

 

「は? 更新? それは明日やるって言うたやろ?」

 

「少し確かめたい事があってな」

 

 リヴェリアがそう言うには理由がある。フィンの報告の中で、彼女はベルから武器を一時的に借りていた。それを手にして自身の魔力が沸き上がり、更には魔法詠唱中に更に魔力が増大した。

 

 あの杖が自分を認めて力を貸してくれた事に、もしかすればアビリティ上昇、何かしらのスキルが発動したのではないかと思索していた。更なる領域へ踏み入れると確信はしているのだが、結局分からず仕舞いなので【ステイタス】更新で確かめる事にした。

 

 明日にやれば良い事はリヴェリアも充分に理解している。他の団員達に申し訳なく思いつつも、早く確認したい欲求を優先してロキに頼み込んでいた。

 

「……まぁええわ。そんじゃ予定よりちと早いが、付いてきぃな」

 

「分かった。二人とも、すまないが先に上がらせてもらう」

 

 そんな彼女からのお願いにロキは意外そうに思いながらも、特に断る理由がないから急遽【ステイタス】更新をやる事にした。と言っても、それをやるにはロキの神室に行かなければならないが。

 

 主神と副団長が退室して、今の執務室はフィンとガレスだけとなった。

 

「珍しいのう。あのリヴェリアが我先にと【ステイタス】更新をしたがるとは」

 

「まぁ、見当はついてるよ。ガレスだって分かっているだろう?」

 

「ベルから借りたあの杖、か」

 

 フィンからの問いにガレスは分かったように答えた。

 

 二人は知っている。リヴェリアが今もベルから借りた強力な杖――ゼイネシスクラッチを欲しがっている事に。

 

 魔導士でないフィンとガレスでも、あの杖の凄さは分かっていた。リヴェリアがあの時に放った魔法が、以前よりも途轍もない威力であった事を。

 

 もしかすれば、嘗てオラリオ暗黒期時代に戦った元【ヘラ・ファミリア】眷族で『Lv.7』の魔導士――【静寂】のアルフィア以上の魔法ではなかったかと思う程に。

 

 思わず7年前を思い出した二人が、懐かしそうに当時の事を話していると――

 

 

『リヴェリアがついに「Lv.7」になったわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』

 

 

「「ッ!」」

 

 再び本拠地(ホーム)全体に響くロキの絶叫だったが、今度は本気で驚いた。リヴェリアが自分達よりも先にランクアップして、【フレイヤ・ファミリア】の『猛者(オッタル)』と同じ領域へ踏み込んだ事に。

 

 これには他の団員達――特にエルフ達が一気に覚醒して彼女を褒め称える。そして後日、オラリオに住まうエルフ達は勿論の事、都市外のエルフ達も知れ渡って大騒ぎになるのは言うまでもなかった。




思った以上に長くなりそうだったので、前編で区切りました。

次回は翌日の話になります。

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