ベルがアークスなのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
『ロキ・ファミリアの遠征㉑.5』の最後に書いてある驚愕の事実が判明します。
フライング投稿です。
ベルと別れた【ロキ・ファミリア】は、【ヘファイストス・ファミリア】の団長椿にも同行の感謝と別れを済ませた。その直後に椿はベルの所へ向かおうとしたが、【ヘファイストス・ファミリア】の
後はもう大丈夫と判断し、彼等も自身の
以前にベルを追い出した門番を見た途端にフィンは咄嗟に思い出すも、そこは団長としての仮面を崩さずに対応する。しかし、他はそう言う訳にはいかなかった。主に女性団員の殆どが。
リヴェリアは
遠征に参加した女性団員の殆どが門番達に軽蔑の眼差しを送っていた。理由は当然ある。ベルが身体に染みついた体臭を消し、清潔にしてくれる治療魔法――アンティの件だ。
ダンジョンへ行って帰還した際、必ずと言っていいほどにモンスター臭が身体に染みついてしまう。女性冒険者にとって、それは一番嫌な事である。それが体臭とならないよう、帰還してすぐ念入りに身体を清めるほどだ。
けれど、遠征中の間にそれは無理だった。体臭を消すにも
今回の遠征もいつも通りのようにやっていた中、
その事実を知って、アキを筆頭にした女性団員達は一斉に頼んだ。直後、ベルの治療魔法によって今まで悩まされた体臭は一瞬で無くなり、地上にいる時の清潔な状態になった。と言っても、ダンジョン内を移動している間は再びモンスター臭が身体にこびり付くが。
もしもベルが【ロキ・ファミリア】に入団していれば、ダンジョン探索や遠征でも体臭問題は解消されていただろう。しかし残念な事に、その彼は門番によって門前払いされてしまった為に、別の【ファミリア】へ入団する事になってしまった。
それ故に【ロキ・ファミリア】の女性冒険者の殆どが殺意を湧かせた。『余計な事をしなければ、女性にとっての
「そんでフィン、ベルは無事なんやろな?」
多くの団員達が眠りに付いている中、主要幹部達はある報告をしようと執務室へ訪れていた。
既に入っているロキからの問いにフィンが答えようとする。
「ああ、すっかり元気になって自力で
「さよか、それは何よりや」
返答を聞いたロキは一先ずと言った感じで安堵の息を漏らした。
「ベート経由で手紙を見た時はマジで肝が冷えたわ~。もし解毒の特効薬を用意出来ずにベルが重傷のままやったら、ドチビに色々と文句言われるところやった」
「………確かに、神ヘスティアが黙っていなかっただろうね」
「「………………」」
数日前にロキはベルが
大嫌いなヘスティアに頭を下げる事にならないかと焦っていたが、ベルが元気になった報せを知って漸く肩の荷が下りた。これで文句を言われても、自分達はちゃんとベルを治療をしたとの言い訳が出来るので。
だが、この時のロキは知らない。ベルが用意した特効薬で回復せず、自力で治療した事を。
フィンは思わず真実を言いそうになったが、それは後にした。この場にいるリヴェリアとガレスも複雑な表情をしていたが、フィンと同様に敢えて何も言わないでいる。
「ま、無事で何よりなら結果オーライや。そんで、遠征の内容についてはフィンの手紙で粗方知ったが、何でベルについて書かなかったん? 『ベル・クラネルについては、自分が戻ってから直接報告する』とか書いてあったが」
「今回の遠征では、またしてもベルに色々と本気で驚かされてね。手紙で書くには内容が余りにも多すぎる上に、見せたところでそう簡単に受け入れられないだろうから、敢えて書かなかったんだ」
「? 何や、その凄く勿体ぶった言い方は。ベルが凄いのは既に知っとるわ。こちとら、ゴライアス単独討伐や
『……はぁっ』
もう驚きはしないと言い切るロキの発言に、フィン達は思わず嘆息した。同時に内心こう思った。そう言っていられるのは今の内だと。
「ロキ、その言葉忘れるなよ」
「後でワシ等に八つ当たりは無しだからな」
「リヴェリアにガレスまで、ホンマに一体何なん?」
警告をするリヴェリアとガレスにロキは更に不可解な表情となった。
二人の言い分を軽く流し、一先ずはと言った感じでロキは問おうとする。
「まぁええわ。そんで、ベルは今回の遠征でどんな活躍したん?」
「では報告しよう。
長い内容だと分かっていながらも、フィンは語り始める。
最初にベルが強化種のミノタウロスと戦闘時に強力な魔法を使って倒した内容についてだが、ロキはこれと言って驚かなかった。ミノタウロス以上に強いゴライアスを一人で倒したから、内心とんでもない奴だと驚いた程度だ。
中層以降では【ヘファイストス・ファミリア】の椿と二人で
突入前にベルが保険と称して、
『
その後、
「――とまあ、こんな所だ。内容は少々省いているが、詳しい事は明日以降に話すよ。ここまでで何か質問は――」
「ふざけんなぁぁぁああああああああああああああああああああ!」
フィンが一通りの報告を終えて質問を問おうとしてる最中、我慢出来なくなったロキが力強く叫んだ。前回(番外編 戦争遊戯⑤)と同じく、
因みにロキの怒号が聞こえたのか、
「静かにしろ。今は遠征で疲れた団員達が寝ているんだぞ」
「こんな時間に叫ぶのは非常識じゃぞ」
「やかましい! ベルの方が一番非常識やないか!」
「「………………」」
リヴェリアとガレスが突っ込むも、ちょっとズレた返しをするロキ。それに関して思うところがあるのか、二人は何も言い返そうとしなかった。
「突っ込みたいところは山ほどあるが、うちが一番言いたいのは主に最後の方や!
「うん、まぁ平たく言えばそんなところだね」
ロキの叫びにフィンは一切否定せずにアッサリと答えた。
「ベルゥゥゥゥゥ! 何で早く目覚めなかったんやぁぁぁぁぁぁ!?」
「仕方なかろう。ワシ等とて、
「その通りだ。それにベルは善意で団員達を治療したんだから、我々が責める理由などない」
ベルを訴えそうな雰囲気を見せるロキに、ガレスとリヴェリアが空かさず彼を擁護する。
「ロキは納得しないと思うが、ここは穏便に済ませてくれ。結果として、彼は僕達【ロキ・ファミリア】の恩人でもあるんだ」
「ぐっ……た、確かにな」
二人の擁護に加え、フィンも責めてはいけないとロキを宥めた。
確かに最後の部分さえ除けば、ベルは今回の遠征で【ロキ・ファミリア】に多大な貢献をしてくれた。それに用意した解毒薬が無駄になったとは言っても、
そう考えたロキは大人になろうと怒りを抑え込む為、一旦深呼吸をする。
「取り敢えずは理解したわ。ベルがあの時以上にとんでもない奴っちゅう事は。余りにも非常識過ぎて突っ込みどころ満載やけど………それでもベルが門前払いされた件は物凄く痛いわぁ~!」
「悪いがそれは口にしないでくれ。今の私はあの馬鹿者共に対する怒りが再発しているんでな」
「……さ、さよか」
門番の話題になった途端、リヴェリアから凄まじい怒気を発する事にロキは一気に大人しくなった。
酒場で初めてベルに会った際、門前払いされたと知った彼女は恐ろしいと思う程の説教をした。あの時ほどリヴェリアが凄く恐ろしかったとロキは今も思っている。
「そんな事よりもだ。ロキ、すまないが【ステイタス】更新をしてくれないか?」
「は? 更新? それは明日やるって言うたやろ?」
「少し確かめたい事があってな」
リヴェリアがそう言うには理由がある。フィンの報告の中で、彼女はベルから武器を一時的に借りていた。それを手にして自身の魔力が沸き上がり、更には魔法詠唱中に更に魔力が増大した。
あの杖が自分を認めて力を貸してくれた事に、もしかすればアビリティ上昇、何かしらのスキルが発動したのではないかと思索していた。更なる領域へ踏み入れると確信はしているのだが、結局分からず仕舞いなので【ステイタス】更新で確かめる事にした。
明日にやれば良い事はリヴェリアも充分に理解している。他の団員達に申し訳なく思いつつも、早く確認したい欲求を優先してロキに頼み込んでいた。
「……まぁええわ。そんじゃ予定よりちと早いが、付いてきぃな」
「分かった。二人とも、すまないが先に上がらせてもらう」
そんな彼女からのお願いにロキは意外そうに思いながらも、特に断る理由がないから急遽【ステイタス】更新をやる事にした。と言っても、それをやるにはロキの神室に行かなければならないが。
主神と副団長が退室して、今の執務室はフィンとガレスだけとなった。
「珍しいのう。あのリヴェリアが我先にと【ステイタス】更新をしたがるとは」
「まぁ、見当はついてるよ。ガレスだって分かっているだろう?」
「ベルから借りたあの杖、か」
フィンからの問いにガレスは分かったように答えた。
二人は知っている。リヴェリアが今もベルから借りた強力な杖――ゼイネシスクラッチを欲しがっている事に。
魔導士でないフィンとガレスでも、あの杖の凄さは分かっていた。リヴェリアがあの時に放った魔法が、以前よりも途轍もない威力であった事を。
もしかすれば、嘗てオラリオ暗黒期時代に戦った元【ヘラ・ファミリア】眷族で『Lv.7』の魔導士――【静寂】のアルフィア以上の魔法ではなかったかと思う程に。
思わず7年前を思い出した二人が、懐かしそうに当時の事を話していると――
『リヴェリアがついに「Lv.7」になったわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
「「ッ!」」
再び
これには他の団員達――特にエルフ達が一気に覚醒して彼女を褒め称える。そして後日、オラリオに住まうエルフ達は勿論の事、都市外のエルフ達も知れ渡って大騒ぎになるのは言うまでもなかった。
思った以上に長くなりそうだったので、前編で区切りました。
次回は翌日の話になります。
感想お待ちしています。