ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

95 / 178
遠征の後日談④

「なるほど。遠征の後処理としてギルドの報告に来たんですか」

 

「まぁね。他の団員達も戦利品の換金や何やらで、今は大忙しだよ」

 

 フィンさんと偶然に鉢合わせた僕は、思わずその場で話し込んでいた。僕からの問いにフィンさんは嫌な顔をせずに対応してくれている。

 

 やはり『遠征』は通常のダンジョン探索と違うと改めて認識する。僕は今回【ロキ・ファミリア】に治療師(ヒーラー)として雇われただけに過ぎないから、向こうの事後処理とは全く分からない。けど、アークス視点からすれば、どれだけ忙しいかは理解出来た。

 

 アークスはクエストが終わった後、上に提出する報告書を作らなければいけない。他にも武器が破損すれば修理依頼、現地で入手した素材(ドロップアイテム)をショップで換金、もし素材調達の依頼があれば依頼主へと渡す等々と。アークスの事後処理は本当に大変だ。

 

 …………あ。考えてみれば、この世界の冒険者もアークスがやっている事と大して変わらないな。

 

「それはそうとベル、折角だし一緒に報告しにいかないかい? 君の成果報告を聞いてもギルドは簡単に信じないと思うから、僕が証言すれば円滑に進めれる筈だ」

 

「え? お忙しいのに、良いんですか?」

 

 確かにフィンさんがいれば、僕の報告が真実だと理解してくれるだろう。『Lv.2』の僕が【ロキ・ファミリア】の遠征で主力メンバーと一緒にダンジョン59階層まで進出した、なんて報告しても疑われるのは目に見えてる。

 

 とは言え、都市最大派閥の団長であるフィンさんは忙しいのに、零細派閥である僕の為に付き合うのは流石に気が引ける。

 

 僕の問いに、彼は何でもないように言い放つ。

 

「遠慮なんか必要無いよ。君には色々と恩があるからね。こんな程度で恩返しとはいかないけど、僕に出来る事なら喜んで手伝うよ」

 

 おお、流石は大物ファミリアの団長だ。こういう寛大な所があるから、【ロキ・ファミリア】の人達はフィンさんに付いてきているというのがよく分かる。

 

 向こうがああ言ってる事だし、ここで遠慮する訳にはいかない。なので僕は了承して、フィンさんと一緒にギルド本部へと向かう事にする。

 

 因みにギルドの報告が終わった後、『黄昏の館』へ来て欲しいと言われた。報酬を渡したい他、大事な話もあると。特に断る理由がない僕は了承した。

 

 

 

 

 

「【ロキ・ファミリア】フィン・ディムナだ。事前に知らせていた通り『遠征』から帰って来た」

 

「『遠征』に同行した【ヘスティア・ファミリア】ベル・クラネルです。フィンさんと同じく『遠征』から帰ってきました」

 

 各【ファミリア】の代表として振舞う僕達に、目の前にいるギルドの受付嬢は凛として対応する。

 

「お待ちしていました、ディムナ氏、クラネル氏。今回はエイナ・チュールが担当させて頂きます。お帰りなさいませ」

 

 対応する受付嬢は僕の担当アドバイザーであるエイナさんは、僕達の帰還報告を受け入れて笑みを浮かべた。

 

 僕だけの時は親しげに接してくれるが、今回はフィンさんと一緒なので流石に無理だ。だからエイナさんは私事を一切抜きにした接し方をしている。

 

「団員達のランクアップも含め、遠征結果はこの報告書にまとめてある。ロイマン達と共有しておいてくれ」

 

「僕は口頭での報告です。今回の遠征で【ロキ・ファミリア】のフィンさん達と一緒にダンジョン59階層へ進出し、並びに『Lv.3』にランクアップしました」

 

「分かりました。報告書は頂戴します。クラネル氏の報告については後ほど………ん?」

 

 エイナさんがフィンさんからの報告書を受け取りながら対応している中、途中で動きが止まった。

 

 それとは別に、僕が『Lv.3』にランクアップした事にフィンさんが驚いた表情をしている。

 

「ク、クラネル氏? い、今何と仰い――」

 

「あ~、59階層進出については確かだよ。そこは【ロキ・ファミリア】団長の僕が証言する。彼には治療師(ヒーラー)として参加するよう頼んだんだ」

 

「……そ、そうですか」

 

 今すぐにでも問い詰めようとしてくるエイナさんに、フィンさんが空かさず擁護してくれた。

 

 良かった。これで僕だけだったら、僕は間違いなく以前みたいなOHANASHIをされるところだった。フィンさんには本当に感謝しないと。

 

 相手が相手だからか、エイナさんは頬を引き攣らせながらも一先ずと言った感じで信じてくれたようだ。

 

 僕の事は後で対応すると言った後、フィンさんから受け取った報告書へ目を移し――

 

「ええええええええええええええええええぇ!? 『Lv.6』が三人!? しかもリヴェリア様が『Lv.7』!?」

 

「ほぁ!?」

 

 エイナさんが絶叫をし、聞いていた僕も思わず驚きの声をあげた。

 

 これによって建物内にいる職員だけでなく、冒険者達も一斉に此方へと視線を向けたのは言うまでもない。それとエルフと思われる人達が物凄い反応をしていた。

 

「さてベル、報告は済んだから行こうか」

 

「え!? 僕は魔石の換金が……!?」

 

 フィンさんが僕の腕を掴んで逃げるようにギルド本部から出ようとしてると――

 

 

「今の話は真か!?」

 

「リヴェリア様が『Lv.7』ですって!?」

 

「そこを詳しく聞かせろ!」

 

「これは大事ではないか!」

 

「お、落ち着いて下さい! 私もついさっきこの報告書を読んで知ったばかりでして……!」

 

 

 ギルドに来てる冒険者――特にエルフの人達が一斉にエイナさんに詰め寄っていた。

 

 ……成程。フィンさんはこれを予想して一刻も早く退散したかったのか。遠征に参加した僕達に狙いを定められないように。

 

 確かにこんな空気で魔石の換金なんか出来ないな。仕方ない。魔石換金は後日にしよう。

 

 意図を察した僕は、フィンさんと一緒に素早くギルド本部から退散する事にした。

 

 因みに後日、僕が再びギルド本部へ訪れた際、エイナさんが色々な意味で疲れ果てていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、本当に驚きましたよ。ティオナさんとティオネさんとベートさんが『Lv.6』、そしてリヴェリアさんが『Lv.7』にランクアップするなんて……」

 

「僕から言わせれば、僅か一ヵ月で『Lv.3』にランクアップする君も充分に驚いたよ」

 

 場所は変わって【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)『黄昏の館』。今は客人を迎える応接室にいる。ティオナさんと鉢合わせるかと思っていたが、アイズさん達と一緒に遠征の後処理として今は出払っているようだ。殆どの団員達も同様に。それを聞いた瞬間、突進を兼ねたティオナさんの抱擁が無い事に安心したのは心の内に留めておく。

 

 ギルド本部から退散した後、ここへ訪れる事となった。あそこは今も多くのエルフの人達が騒いでいるだろう。

 

 それとは別に、フィンさんが僕のランクアップに驚いているとは言ってたけど、予想はしていたようだ。僕がダンジョン下層以降で戦った事を考えれば、ランクアップしてもおかしくはないと。

 

「さて、君とゆっくり話したいのは山々だが、ティオナ達が戻って来る前に用件を済ませておこうか」

 

 そう言ってフィンさんは本題に入ろうとする。

 

 先ずは報酬の話だった。前に話した際、【ロキ・ファミリア】から一千万ヴァリス以上の提示をされた。更にはフィンさんからの個人的な報酬も含めて。

 

 神様から金額はちゃんと確認するようにと言われているので聞いてみると――

 

「ご、ごご、五千万ヴァリス!? そ、それは何かの間違いじゃないですか!?」

 

 余りの金額に僕は仰天してしまった。

 

「いや、間違ってはいない。今回の報酬額は正直言って余りにも安過ぎるぐらいだ。最低でも一億ヴァリス以上出すべきだと僕は思っている」

 

「一億以上!?」

 

 待て待て待て待て! 余りにもぶっ飛び過ぎにも程がある! いくらなんでも高過ぎて頭の処理が追い付かないんですけど!

 

 混乱している僕にフィンさんが理由を説明しようとする。

 

「君の事だから、未熟な自分には余りにも分不相応な額だと思っているだろう。だけど遠征で活躍した君の功績は、それだけ大きいと言う意味でもある。特に深層の進攻(アタック)では、君に凄く助けられた。更にはエリクサー以上の貴重な回復アイテムを僕達に使ってくれて、リヴェリアに強力な武器を貸してくれた。リヴェリアも凄く感謝していたよ。君のお陰でランクアップ出来たからね」

 

「はぁ………」

 

 何とか心を落ち着かせながら話を聞くも、内容が内容だったので聞き流す状態に等しかった。

 

 だけど、気になる点があった。リヴェリアさんのランクアップの理由が。

 

「あの、リヴェリアさんのランクアップと僕に一体何の関係が……?」

 

「それなんだが――」

 

 僕の問いにフィンさんが、さっきまでと打って変わるように凄く真面目な表情となって話し始める。

 

 どうやら僕がリヴェリアさんに貸した長杖(ロッド)――ゼイネシスクラッチを使った事でランクアップしたようだ。本人曰く、『あの杖が自分を認めてくれたように反応し、凄まじい威力の魔法を放つ事が出来た』と。

 

 まさかアークス用の武器を使ってランクアップするとは夢にも思わなかった。しかし、そう考えると色々と面倒な事になる。万が一にも他の冒険者達の耳に入ってしまったら、僕に武器を貸してくれと言ってくるかもしれない。

 

 けど、フィンさんはそれを察していたみたいで、今後は不用意に他の冒険者に自身の武器を貸さないようにと警告された。神々や冒険者達に狙われ続ける日々を送る事になると。

 

 僕としても、特に反対する理由はないから警告に従う事にした。と言っても、絶体絶命の状況になった場合は流石に無理だけど。

 

 話は報酬について戻り、(フィンさんから見れば)安い理由については理由があるそうだ。

 

 もしも僕が『Lv.5』だったら迷わず一億ヴァリス以上出しているそうだが、昨日まで『Lv.2』だった僕にそんな大金を出すのは体裁が悪い。だから今回は仕方なくギリギリとして五千万ヴァリスにしたと。

 

 因みに報酬の上乗せはリヴェリアさんの所持金から主に出してくれたらしい。あの人としてはもっと出すべきだと文句を言ってたみたいだが。

 

 あと、もしも困った事があれば【ロキ・ファミリア】を頼って欲しいとも言われた。そうしてくれると、足りない分の報酬を賄う事が出来ると。

 

 それを聞いて何か裏がありそうな気はしたが、取り敢えずと言った感じで受け入れる事にする。

 

 

 

 

 

 

 

「ベル君、随分と帰ってくるのが遅かったね。と言うか、その袋は何なんだい?」

 

「えっと、ギルドへ行く途中フィンさんと会いまして。その後に【ロキ・ファミリア】としての報酬を渡されまして……」

 

「おいおい、ボク抜きであそこの団長君と話したのかい? まさかとは思うけど、報酬の額は値切られていないよね?」

 

「いえ、値切られていないどころか、結構な額です。この袋に………五千万ヴァリス入ってます」

 

「………………………ベル君、急にボクの耳が遠くなったようだ。もう一回言ってくれないか」

 

「ですから、五千万ヴァリスです。フィンさんとしては、僕の功績を考えて一億ヴァリス以上出したかったみたいですが」

 

「………それってマジかい?」

 

「僕が嘘を吐いていると思いますか?」

 

「……ご、五千万ヴァリスで、本当は一億以上出したかったって………はぁぁぁ……」

 

「ちょ!? 神様、しっかりして下さい!」




いまいちな内容だと思われるでしょうが、一先ずこれで遠征編は終わりです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。