ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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久々の更新です。

今回は各ファミリアの内容です。


遠征の後日談⑤

 ①【ヘファイストス・ファミリア】

 

 

「あの子が壊れない魔剣を数本持っている!? 本当なの!?」

 

「それだけではない。詳しい話は残念ながら聞けなかったが、ベル・クラネルの扱う魔剣には、何と特殊能力とやらも備わっておるらしい」

 

 (()()()達から強制的に)本拠地(ホーム)へ戻って来た椿は、自身の主神ヘファイストスに一通りの報告をしていた。

 

 前々から【ロキ・ファミリア】が目的としていたダンジョン59階層達成と聞いてヘファイストスは内心称賛していたが、椿がベルの話題に切り替わった直後に豹変した。特にベルが遠征中に使用していた魔法だけでなく、椿ですら知らない未知の武器で。

 

 特に驚かされたのは魔剣に関してだ。物理的に破壊されない限り何度でも使用可能な魔剣と聞いた瞬間、最初は信じる事が出来なかった。しかし、団長の椿が嘘偽りなく答えているので、それは真実と受け止めたヘファイストスは仰天している。

 

 魔剣は本来、一定回数以上の使用によって砕け散る消耗品である。冒険者が扱う魔法より威力は弱いが、誰でも速攻で魔法を使用出来るので、消耗品と言えど重宝される。これは冒険者だけでなく、制作する鍛冶師としての常識だ。

 

 しかし、遠征中にベルが壊れない魔剣を持っていると知った椿は、一瞬でその常識を粉々に破壊されてしまった。しかも数本所持しており、思わず研究用として欲しい衝動に駆られる程に。更には魔剣に備わっている魔法以外の特殊能力と聞いて、彼女の好奇心を刺激して止まない状態となる。しかし、遠征中だからと言って【ロキ・ファミリア】から厳重注意を下されてしまい、結局はベルから壊れない魔剣を借りる事が出来なくなって、物凄く不満そうに本拠地(ホーム)へ戻る破目となってしまったが。

 

「特殊能力って……壊れない魔剣でも充分過ぎるほど凄いと言うのに、一体どんな物が備わっているのよ……鍛冶師として凄く気になるわね」

 

「そうであろう? だから手前は明日にベル・クラネルと会って、是非とも借りる為の交渉をしようと思ってな」

 

「止めなさい。どうせ貴女の事だから、何度もしつこく強請るのが目に見えてるわ」

 

 ヘファイストスとしてもベルが所持してる壊れない魔剣には非常に興味はある。だが相手の主神が神友のヘスティアである上に、世界クラスの高級ブランドを背負っている【ヘファイストス・ファミリア】としては色々と問題がある。新興して一年未満の【ヘスティア・ファミリア】にいる新人冒険者の少年に武器を貸してくれと言う交渉などすれば、余りにも世間体が悪くなってしまう。

 

 一人の()()()として知りたい欲求を抑えつつも、椿には【ヘスティア・ファミリア】の本拠地(ホーム)へ行ってはならない他、ベル・クラネルと接触しないようにと厳しく言っておくのであった。当人としては物凄く不服だが、後日に【ロキ・ファミリア】から渡される予定の武器素材(ドロップアイテム)で我慢しておこうと、一先ずと言った感じで収める事となる。

 

 

 

 

「全く、本当は主神様も知りたいくせに見栄を張りおってからに……ん?」

 

「椿、遠征から帰って来ても相変わらず元気だな」

 

 報告を終えた椿が自身の工房へ戻っている最中、視線の先には同僚の()()()の男――ヴェルフ・クロッゾがいた。

 

「何じゃヴェル吉、団長の手前が漸く戻って来たと言うのに随分な言い草だな。心配の言葉の一つくらい言うべきであろうに」

 

「アンタが簡単にくたばる奴じゃないのは最初から分かってるんでな。んで、どうだったんだ? 今回の遠征にアイツ(・・・)がいたんだろ?」

 

 如何でもよさげに言い返しながら、早くも本題に移ろうとするヴェルフ。

 

 因みにアイツとはベル・クラネルの事を指している。以前の戦争遊戯(ウォーゲーム)でベルが使用した武器について非常に気になっている一人でもある。特に魔剣について知りたがっていた。

 

 ヴェルフからの問いに、椿は笑みを浮かべながら彼に近寄っていつものヘッドロックを仕掛ける。

 

「おいおいヴェル吉~、それが人に聞く態度ではなかろう~?」

 

「って、いきなりかよ! てめ、ふざけろ!」

 

 端から見れば仲の良い姉弟みたいなやり取りだった。しかし、残念ながらこの場にそれを突っ込む者は誰もおらず、ヴェルフは椿に良いように遊ばれる破目となった。

 

 その後、ヴェルフは何とか椿からベルが扱う魔剣を聞けることになるも、ヘファイストスと同様に仰天していた。自身が作る魔剣とは全く異なるどころか、特殊能力を備えた壊れない魔剣をどうやって作れるのかを非常に興味を抱く事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ②【ディアンケヒト・ファミリア】

 

 

 遠征を終えた翌日、【ロキ・ファミリア】は団員総出で本拠地(ホーム)を出ている。戦利品の換金をする為の後処理として。

 

 ティオナ、ティオネ、レフィーヤ、そしてアイズたち四人の少女は、【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院へ足を運んでいた。治療薬の原料を取引する他、友人であるアミッド・テアサナーレに会う為に。と言っても主に後者の方が強く、彼女達は回復薬を出してくれたアミッドに感謝しているので。

 

「そう言えば、そちらの遠征でベル・クラネルを治療師(ヒーラー)として同行させたみたいですね」

 

「あら? アミッドはベルの事が気になるの?」

 

 予想外な質問だったのか、ティオネは少し驚いた顔をしていた。彼女だけでなく、アイズ達も同様の反応を示している。ティオナが少しばかり睨んでいるが。

 

「ええ、それなりに。何しろ彼は以前の戦争遊戯(ウォーゲーム)で、負傷者を瞬時に治癒する回復魔法を披露していましたので。同じ治療師(ヒーラー)である私としても、ベル・クラネルの魔法は非常に興味深いので」

 

「だそうよ、ティオナ」

 

「あ~良かった」

 

 非常に安堵した顔になるティオナの反応に、訳が分からないアミッドは首を傾げる。

 

「あの、何故ティオナさんが安心しているのですか?」

 

「この子ったら、ベルに心底惚れているのよ。私達が呆れるほどに熱烈なアピールをしてて、もう嫌になるくらいよ」

 

「……そ、そうですか」

 

 理由を言うティオネにアミッドは何か言いたそうになるも必死に押し留めた。

 

 彼女は知っている。目の前にいるアマゾネスの姉が、自身のファミリアにいる団長(フィン)に心底惚れている事を。時折、店を訪れる時にその団長を困らせる程の熱烈なアピールを目撃した事があるので。

 

 だからアミッドとしてはティオネの台詞に、『貴女がそれを言いますか?』と危うく言い返してしまいそうになった。何とか無表情を装って何でもないように言い返すのが、少しばかり大変だったと。

 

 しかし、それとは別にティオナが誰かに恋をする事に驚いていた。恋愛事に余り興味がないように見ていたが、そうなるほどの出来事が起きたのだろうと推測する。人の恋路にああだこうだと口出しする気もなければ、目の前のアマゾネス相手に藪を突く気も無いから。

 

「ところで、ベル・クラネルは今回の遠征で、どのような活躍をなされたのですか? 彼の事ですから、貴方達を驚かせるほどの事をされたかと思いますが」

 

 アミッドは話を戻そうと、ベルの活躍を聞き出そうとする。

 

 本来は他所の【ファミリア】が行った遠征の詳細内容を聞くのはご法度である。向こうもそれは分かっているだろうが、友人である彼女達なら、ある程度の内容を譲歩してくれるかもしれないと踏んで聞いている。

 

 ティオネはどこまで言おうかと悩んでいると――

 

「うん、凄かったよ! アルゴノゥト君ってば、この前毒妖蛆(ポイズン・ウェルミス)の毒を受けても自力で治して、他の皆にも治療魔法を使って、全員あっと言う間に治したんだから!」

 

「………え?」

 

 ティオナから信じられない情報を齎してくれた事に、アミッドは思わず固まってしまった。

 

 因みに、その情報に関しては誰にも言わないようフィンから言われていた。理由は言うまでもなく、特効薬を用意してくれた【ディアンケヒト・ファミリア】に申し訳がないからと。

 

「ちょ、ちょっとティオナさん!」

 

「バカ! それは言っちゃダメだって団長が言ってたじゃない!」

 

「え? ………あ、やば!」

 

 空かさずレフィーヤとティオネが注意すると、ティオナが今思い出したみたいな顔になって口を手で押さえるも遅かった。

 

「……ふ、ふふふふふ」

 

「ア、アミッド?」

 

 突如、アミッドがらしくない笑い声を出した事に、アイズが恐る恐ると尋ねた。

 

 そして――

 

「そのお話、とても興味深いので詳しくお聞かせ願えませんか? 勿論、無料(ただ)ではなく相応の報酬も用意しますので。さぁ、教えてくれますよね?」

 

「「「「…………………」」」」

 

 ニッコリと営業スマイルとなるアミッドであるが、物凄く迫力がある事に四人の少女は気圧されていた。

 

 結局話さざるを得なくなってしまったので、一通り話す事となった。

 

 四人から情報を得た後、彼女はこう呟く。

 

「やはり彼は冒険者でなく、治療師(ヒーラー)として活動すべきですね。瞬時に負傷者を治癒する魔法に、毒妖蛆(ポイズン・ウェルミス)の毒を一瞬で治療する魔法……そんな優秀な治療師(ヒーラー)は、是非とも【ディアンケヒト・ファミリア】に来るべきです」

 

 

 

 

 

 ③【フレイヤ・ファミリア】

 

 

「はぁっ、やっと遠征から戻って来たみたいね。オッタル、あの子について何か情報はないかしら?」

 

 白亜の巨塔の最上階にいるフレイヤが、調べに行かせたオッタルにベルの情報を聞き出そうとした。

 

 使い走り同然の事をされているオッタルは特に気にする事なく、淡々と事実を告げようとする。

 

「今しがたギルドからの公開情報にて、かの兎が『Lv.3』にランクアップしたとの報告が入りました」

 

「もうそこまで至ったのね。まだ『Lv.2』になって一ヵ月も経ってないのに……ウフフフフ」

 

 予想を遥か斜め上の展開になっている事に、フレイヤは非常に満足そうな笑みを浮かべていた。それどころか、益々ベルに対する思いが強くなっているばかりだ。

 

 しかし、急に不機嫌そうな表情と豹変する事になる。

 

「でも、ロキの所で強くなるのは少し頂けないわね。全く、あの子を遠征に行かせるなら私に言って欲しいわ」

 

「……………」

 

 ベルを自分の物であるような言い方しているが、それはベルや【ロキ・ファミリア】には知った事ではない。あくまでフレイヤの勝手な主張に過ぎないので。

 

 普段から主神の為に尽くしているオッタルも流石に突っ込もうとするが、何とか堪えて無言を貫く。

 

「フレイヤ様、その【ロキ・ファミリア】側にも情報が入っております」

 

「何かしら?」

 

「【狂狼(ヴァナルガンド)】、【大切断(アマゾン)】、【怒蛇(ヨルムガンド)】の三名が【Lv.6】に至り、更には【九魔姫(ナイン・ヘル)】が私と同じ領域――【Lv.7】に至ったようです」

 

「……へぇ、中々面白いじゃない」

 

 ベルの時には恋する乙女の如き笑みだったが、今度は不敵な笑みを浮かべた。

 

「ロキの所にいる眷族(こども)の誰かもランクアップするとは思っていたけど、まさか【Lv.7】になるなんて思いもしなかったわ。ヘディンやヘグニも、さぞかし驚いているでしょうね」

 

「恐らくは」

 

 フレイヤに報告しに行く前、オッタルと同じくギルドから情報を入手していたエルフ二人は、リヴェリアのランクアップを聞いて他の同胞達と同じく絶賛するも押し殺していた。【ファミリア】は違えど、王族(ハイエルフ)を尊敬しているエルフとしては当然かもしれない。

 

 もしも【ロキ・ファミリア】との確執が無ければ、ヘディンとヘグニだけでなく、他のエルフの団員達もリヴェリアに対して心から絶賛しているだろう。

 

「まぁいいわ。ロキ達が何をしようが、私には関係の無い事だし」

 

 ロキ側の戦力が増強されたと言うのに、フレイヤは途端に興味を失ったように言い放った。今の女神はベルに夢中の他、大して気にする事じゃないと見ている。尤も、【ロキ・ファミリア】がベルを手に入れたとなれば絶対に黙っていないが。

 

「フレイヤ様、もう一つ気になる情報があります」

 

「まだあるの?」

 

 もうこれ以上はどうでもいいように言い返すも、オッタルはもう一つの情報を伝えようとする。

 

「神イシュタルが眷族達を連れて、観光を理由に港町(メレン)へ足を運んでいるそうです」

 

「………あのイシュタルがメレンに、ねぇ。ギルドは何の疑問も抱かずにイシュタル達を通したの?」

 

「以前の出来事があった所為か、今も変わらず静観しているそうです」

 

「使えないわね。何の為のギルドなんだか」

 

 普段から中立を主張しているギルドが、【イシュタル・ファミリア】に弱みを握られて言いなりになっている。

 

 これほど滑稽な話はないとフレイヤは不快を通り越して嘲笑するのであった。

 

 その【イシュタル・ファミリア】が、実は【フレイヤ・ファミリア】を襲撃する為に外部の【ファミリア】から協力を得ようとする為に動き始めている。だが、その目論見は【ロキ・ファミリア】によって潰されるのは翌日以降となる。




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